101年目のジャズ vol.1 ~ライブ演奏で楽しむビッグバンド編~


ジャズというネーミングで初めて商業用レコードを録音したとされる1917年から今年は101年目となります。その間、ミュージシャンたちは独自のサウンドを追求し、ジャズの枝葉はどんどん広がりました。それは今、この瞬間も続いています。そして、2018年現在、リスナーは以前にも増して好きな場所で気張らずにジャズを楽しめるようになりました。その場にいなければ体感できないはずのライブ音源も臨場感そのままに味わえる! そう、“ジャズはライブだ! ”とよく言われていますし、実際、ナマで味わってこその醍醐味があるのも確かです。けれども、すべてのライブに行けるはずもなく、ましてやタイムマシンでもない限り、過去のステージを会場で観ることはできません。そこで、この『101年目のジャズ』では一瞬を永遠にしてくれたジャズのライブ・トラックをラジオのジャズ番組をお届しているナビゲーター気分でご紹介していきます。初回は幕開けに相応しい華やかなビッグバンドの演奏です!

#1. Duke Ellington - Take the “A”Train(Live)

オープニングを飾るのは、普段、ジャズをあまり聴かない人でもメロディが流れただけで口ずさめてしまう(はずの)「A列車で行こう」。演奏はもちろんデューク・エリントン・アンド・ヒズ・オーケストラです。ビリー・ストレイホーンが作曲したエリントン楽団のテーマ曲でもあるこの曲を彼等は何度も録音していますが、今回、ご紹介したいのは1956年に開催された〈ニューポート・ジャズ・フェスティバル〉での演奏で、エリントンの個性的なピアノから勢いそのままにホットなアンサンブルが展開される4分38秒、次第に盛り上がる観客のひとりになってください!

Take the ”A” Train (Live)
Duke Ellington

 

#2. Count Basie - Corner Pocket

公爵(デューク)とくればお次は伯爵(カウント)でしょう。ということで、カウント・ベイシー・アンド・ヒズ・オーケストラの演奏にまいりましょう。今、ご紹介したデューク・エリントン楽団の「A列車で行こう」が録音された同じ年に、ベイシー・バンドはヨーロッパ・ツアーを行ないました。その時のライブ演奏から「コーナー・ポケット」です。この曲は楽団の最重要メンバーでありギタリストのフレディ・グリーンが作り、以降、ベイシー・ファンならお馴染み、というよりもマストなナンバーとなりました。1956年9月7日にスウェーデンで行なわれたコンサートからのトラック、実は収録されているアルバムのタイトルは『ベイシー・イン・ロンドン』というのもちょっと興味深いですよね。

Corner Pocket
Count Basie

エリントンの「A列車で行こう」もベイシーの「コーナー・ポケット」も1956年のライブ録音でしたが、1956年といえば、キング・オブ・ロックンロールことエルヴィス・プレスリーの「ハートブレイク・ホテル」が全米No.1ヒットを獲得した年で、実はNo.2もエルヴィスの「冷たくしないで」でした。つまり、プレスリー旋風が沸き起こっていた真っ只中にジャズの2大ビッグバンドがこんなにもエキサイティングな演奏を繰り広げていたというわけです。

 

#3. 小曽根 真 - ヤ・ガッタ・トライ(featuring No Name Horses)

さあ、お次はカウント・ベイシー楽団のレパートリーでもある「ヤ・ガッタ・トライ」をお聴きいただきましょう。バディ・リッチ・ビッグ・バンドのプレイも是非モノですが、日本を代表する現役人気ビッグバンド、小曽根真フィーチャリングNo Name Horsesのライブ演奏もこれまたテンション上がること請け合いです。小曽根さんのピアノ・ソロでスタートし、それを受けたプレイヤー陣の高速アンサンブルに思わず“イェイ”の声が出てしまうかも! 2010年にブルーノート東京で行なわれた先人達への愛も感じられる刺激的なプレイをご堪能あれ! 聴いたら当然、ナマのライブにも行ってみたくなるはずです。

ヤ・ガッタ・トライ (featuring No Name Horses)
小曽根 真

 

#4. Jaco Pastrius Big Band - Soul Intro / The Chicken

続いては、ベーシストがリーダーの演奏をお聴きいただきましょう。ジャズ・ファンだけでなくロック・ファンからも絶大な人気を誇るジャコ・パストリアスが率いたビッグバンドで曲は「ソウル・イントロ/チキン」。1982年、日本で行なわれた〈オーレックス・ジャズ・フェスティバル〉で披露されたこのトラックは理屈抜きに“カッコイイ!”と悶絶してしまってもいいのでは? いやいや、個々のソロをじっくり味わわなくちゃ! とまあ、とにかく聞きどころが満載でして、リピートするたびに新たな発見があります。そういえば、ジャコ・パストリアスの人生を描いたドキュメンタリー映画『ジャコ』(2014年製作)はご覧になりましたか? まだというアナタ、こちらも激しくお勧めします。

Soul Intro/The Chicken (Remastered Live Version)
Jaco Pastorius Big Band

 

#5. GRP All-Star Big Band - Blue Train (Live at Gotanda Kan-i Hoken Hall, Tokyo/1993)

ラストは、GRPオール・スター・ビッグバンドの演奏です。デイヴ・グルーシンがラリー・ローゼンと設立したGRPレコード所属のスター・メンバーで結成したこのビッグバンドが来日公演を行なったのは1993年でした。場所は2015年に閉館した東京・五反田の簡易保険会館(ゆうぽうと)で、フュージョン系トップ・ミュージシャンたちによる演奏に観客は大喝采! 今回は偉大なるテナー・サックス奏者、ジョン・コルトレーンのあまりにも有名なナンバー「ブルー・トレイン」をお聴きください。

Blue Train (Live At Gotanda Kan-i Hoken Hall, Tokyo/1993)
GRP All-Star Big Band

 

『101年目のジャズ』、初回は“ライブ演奏で楽しむビッグバンド編”と題してお届けしました。今回ご紹介した5曲をきっかけに、是非、そのアーティストの他のプレイや違うミュージシャンが奏でている同名曲もチェックしてみてください。すると人生は今よりもちょっと豊かになります。ええ、大袈裟ではなく、本当に!