Road to 弓木流Vol.3 ~弓木ワールドの集大成! 2月16日開催「弓木流Vol.3」ライブレポート~


“ギタリスト弓木英梨乃”の生い立ちや、《弓木流Vol.3》のゲストである吉澤嘉代子・澤部渡(スカート)との鼎談、そしてリハーサルのレポートなど、これまで3回に渡って《弓木流Vol.3》の魅力をお伝えしてきました。今回は、2018年2月16日(金)にMt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASUREにて開催されたイベント当日のレポートをお届けします!

冒頭から弓木ワールド全開! 島へ誘われる観客


「YOUは何しにこの島へ? ちょっとカブ抜くの手伝ってもらえませんか?」――何が起こるかわからない、好奇心を掻き立てられるサブタイトル。今年で3度目となる《弓木流》の舞台は“島”。奇想天外なストーリーや出演者のアドリブが飛び出す一方で、堅実かつ血の通った演奏で圧倒。小芝居と演奏のコントラストに魅了された。

チケットはソールドアウト。会場にはサザンオールスターズや松田聖子、青葉市子など、島にまつわる楽曲がBGMとして流され、観客を“島”へ誘う。

開演時間になるとオープニング映像が流れ、アニメーションを交えてあらすじを解説。過去2回の《弓木流》にも出演した渡辺シュンスケ(Key)、御供信弘(Ba)、楠 均(Dr)は様々な理由で島に流れ着いた住人。今回初参加のブラス隊、小林太(tp)と鍬田修一(sax)は島に住む双子の天使。そして弓木は“世界中の島を巡る”という趣味が高じて島に辿り着いたのだが、カブの栽培に没頭、島中の畑がカブ畑になってしまったという。冒頭から弓木ワールド全開だ。

ライブは「shipbuilding」でスタート。弓木のYAMAHA LL66の軽快なアコギの音色と、躍動感のあるバンドサウンドが高揚感を煽る。間奏では弓木がジョウロで水をやり、せっせとカブを育てる仕草も。
続くファンキーチューン「キャベツのようなもの2」では、オリジナルペイントを施したYAMAHA Pacifica 611VFMを手にし、ベースと絡み合うグルーヴィなカッティングを披露した。

 

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島に大きなカブが出現。メンバーとの特別編成で演奏


メンバーが捌けると、ステージ中央から超巨大なカブの葉がニョキッと出現、会場には笑いとどよめきが起こる。「丹精込めて育てすぎて、カブが大きくなっちゃったー!」と驚く弓木。ここから、メンバーが徐々に加わる特別編成で、カブ抜きを試みては曲を演奏するという流れに。

まずは渡辺(Key)との2人編成で、メロウなナンバー「Good Night」を披露。キーボードの美しい伴奏に乗せて、弓木があどけない、そして優しい歌声でしっとりと歌い上げる。すると、カブが少し飛び出てきた。そこに御供(Ba)が通りかかり、3人でカブを抜こうとするがビクともしない。

なお、カブを抜くときは「おおきなかぶ」(童謡)に合わせて振り付けを行うのだが、わざとなのか振り付けが揃わない。しかも、渡辺や御供が「設定が…」「衣装が…」などと発言し、弓木が叱責する場面も(笑)。リハーサルで小芝居に関して弓木が「みんな本番でおもしろいことを言ってくれる」「予期せず起こることも含めて楽しみ」と述べていたが、演奏とはまた違う化学反応が笑いを誘っていた。

3人編成で演奏したインスト曲「Forest Girl in 避暑地」では、弓木の軽やかなアコギを伴奏に、ピアニカとコントラバスが歌うようにフレーズを奏でる。

そして楠(Dr)が登場し、4人でカブを抜こうとするも失敗。しかし4人でジャジーな楽曲「夕暮れカラス」を披露すると、さらにカブが飛び出てきた。そこで「いい音楽を聴かせることで、カブが地面から出てくる」という事実に気が付く。

 

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「光GENJIへの憧れを諦め切れない、リハーサルへ向かうバンドマン」澤部渡(スカート)が登場


音楽でカブを抜こうと意気込んでいると、キャップ、眼鏡、マスクを着用し、ギターケースを背負った怪しげな男が通りかかる。そう、一人目のゲスト・澤部渡(スカート)だ。

弓木が声をかけると、澤部はリハーサルに向かう途中で迷子になってしまったバンドマンであることを説明。しかし弓木は「本当にミュージシャンですか? 見た目も怪しい、バンド名も怪しい」「ミュージシャンであることを証明しないと通さない」とまくし立て、澤部はたじたじ。

 

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澤部はギターを取り出し、スカートのアルバム『20/20』で弓木がコーラスとして参加した「魔女」を演奏。2人の融け合うような歌声のハーモニー、弓木のアコギと澤部のエレキ、そしてバンドとの力強いアンサンブルで魅了する。

ミュージシャンであることを証明した澤部に、弓木はカブ抜きの手伝いを依頼するが、リハーサルを理由に拒否される。そこで弓木が「バンドバンドって言うけど、本当は光GENJIに入るのが夢なんでしょ!?」と指摘すると、澤部が音楽に興味を抱くきっかけとなった光GENJIの代表曲「STAR LIGHT」を演奏。澤部の熱唱に加え、ライトハンドなど弓木の圧巻のプレイが炸裂!続いて、同じく『20/20』で弓木がコーラスとして参加した「視界良好」を演奏した。

 

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「朝帰りの伝説の魔女」吉澤嘉代子が現る


澤部が去ると、バレンタインに関する話題に。弓木は1年前に失恋したエピソードを話し始める。もちろんこれは、「バレンタインに翻弄される女の子の恋のお話」をテーマにした《弓木流Vol.2》のことだ。

そして昨年も披露した「CCSC」を演奏。ストレートなラブソングなのだが、変拍子や大胆な場面転換、極めつけはアームを駆使した幻想的なギターソロと、弓木のセンスが光る楽曲だ。続けて再びブラス隊が参加したインスト曲「180 degrees」では、歌うように流麗なギタープレイで魅了した。

まだ抜ける気配のないカブに、メンバーも困り果てた様子。すると双子の天使(小林・鍬田)が「この島には伝説の魔女がいるんだピヨ」と教えてくれ、魔法でカブを抜いてもらおうと画策する。

楠がなぜか持っていた「魔女呼び出しボタン」を押すと、客席後方から「私がこの島の魔女よ!」と、吉澤嘉代子が登場。妖艶な立ち振る舞いで客席を闊歩し、観客を煽りながら自身の楽曲「ケケケ」を歌い上げる。

 

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歌い終わると吉澤は泣き崩れ、朝帰りであることを告白。追い打ちをかけるように根掘り葉掘り質問する弓木に対して吉澤が言い返したり、絶妙な掛け合いで笑いを誘う。

そして、朝帰りの少女の心情を歌った「残ってる」を、弓木と吉澤のふたりだけで披露。アルペジオで爪弾いたり、ストロークでかき鳴らしたり、弓木が楽曲をドラマチックに彩り、そこに吉澤の表情豊かな歌声が乗って、たおやかな演奏で魅了した。

実は、魔女・吉澤は魔法が使えないことが発覚。「でも、ひとつだけ使える魔法があるんだよね…自分を信じる魔法」と語ると、バンド編成で「ストッキング」を演奏。毛色の異なる3曲で物語に花を添えて、魔女は去っていった。

 

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観客のみなさん、ちょっとカブ抜くの手伝ってもらえませんか?


「あと300人いれば、カブは抜けると思う」という弓木のひと声で、観客もカブ抜きに参加することに。弓木は客席に降りて「島と言えば何ですか?」と問いかけ、さまざまな回答が飛び出すが、「それは私が言ってほしい答えとは違う」と、観客に対しても容赦なくツッコむ。

ようやく“動物”という答えを引き出すと、「猛獣狩りにいこうよ~海辺のパンダ~」を演奏。コール&レスポンスで、会場の心をひとつにする。「September」では振り付けを観客と一緒に行い、会場の熱気は最高潮に。

するとついに! カブが抜け、客席にたくさんのカブ(白い大型バルーン)が飛び交う。本編ラストの「パレード~終わらない大阪のうた~」では、多幸感のある曲調が相まって、ハッピーな空気に包まれた。

 

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アンコールでは、「朝帰りの伝説の魔女(本当は魔女じゃなかった)」役の吉澤嘉代子と、「光GENJIへの憧れを諦め切れない、リハーサルへ向かうバンドマン」役の澤部渡を呼び込み、「ひょっこりひょうたん島」をコラボ。

 

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弓木は「弓木流を続けられるように、日々頑張っていきたい」と、感謝と決意の言葉を述べる。

最後はVol.1からのメンバー4人で「Dream a dream of me」を演奏。一体感のあるバンドサウンドと、優しく雄大で、それでいて感情を揺さぶる激しさもある弓木のギタープレイに胸が熱くなった。

奇想天外な設定とストーリーでありながら、気が付けば弓木英梨乃の世界観にのめり込んでしまったこの日。ギタリストとして、そしてシンガーソングライター、プロデューサーとしての才が光り、フィクションとは言え彼女の魅力的な人柄も滲み出ていた。

 

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「ここは島ですけど、一歩出たら現実の渋谷です! 気をつけて帰ってください」弓木がそう言い残し、深々と礼をして《弓木流Vol.3》は幕を閉じた。

 

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Text:神保 未来(FAMiLIES)


《弓木流Vol.3》セットリスト
1.shipbuilding
2.キャベツのようなもの2
3.Good Night
4.Forest Girl in 避暑地
5.夕暮れカラス
6.魔女(スカート)
7.STAR LIGHT(光GENJI)
8.視界良好(スカート)
9.CCSC
10.180 degrees
11.ケケケ(吉澤嘉代子)
12.残ってる(吉澤嘉代子)
13.ストッキング(吉澤嘉代子)
14.猛獣狩りにいこうよ~海辺のパンダ~
15.September
16.パレード~終わらない大阪のうた~
encore
17.ひょっこりひょうたん島
18.Dream a dream of me

 

全4回でお届けしてまいりました、1年に1度の主催イベント《弓木流Vol.3》に向けた連載企画、いかがでしたでしょうか。
「Road to 弓木流Vol.3」シリーズは今回で最終回となりますが、今後もmysoundは弓木英梨乃の活動に注目していきますので、またチェックしてみてください!

 

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