101年目のジャズ vol.6 ~ライブ音源で楽しむボッサ・テイスト~


湿気が多いこの時期をいかに爽やかなマインドで過ごせるか、コレ、結構、生きる上で重要じゃありません? だからこそ、その為の方法が様々な媒体で紹介されているのだと思います。じゃあ音楽だったら何を? たとえばボッサ・テイストのサウンドはいかがでしょう? ということで、今回はジメジメムシムシした日を忘れさせてくれそうな楽曲のライブ音源+1をラジオ番組のナビゲーター気分でお届けしていきます。さい。

#1. STAN GETZ JOAO GILBERTO featuring Astrud Gilberto - The Girl From Ipanema

まずは王道からスタートしたいってことで、すみません、ライブ音源ではありません。だって、ボサノヴァといえば絶対に外せないし、やっぱりオープニングで聴いてほしいんですもの。そうです、アルバム『ゲッツ/ジルベルト』の1曲目に収録されている「イパネマの娘」です。シングル盤もリリースされ、大ヒットとなったこの曲はアナタも一度は聴いたことがあるはず。メンバーはフィラデルフィア出身のテナー・サックス奏者、スタン・ゲッツ、“ボサノヴァの神”と言われているボーカリスト&ギタリスト、ジョアン・ジルベルト、当時、彼の妻だったボーカリストのアストラッド・ジルベルト、ピアノはこの曲だけでなく、ボサノヴァの名曲を山ほど生み出したアントニオ・カルロス・ジョビン、そしてベースはトミー・ウィリアムス、ドラムはミルトン・バナナが担当しています。書き出したらキリがないほど、様々な逸話が残されているこのトラックは1963年の録音です。

The Girl From Ipanema (featuring Astrud Gilberto/Stereo Version)
Stan Getz/Joao Gilberto

 

#2. Art Pepper - The Girl From Ipanema

「イパネマの娘」のカバーはそれこそ星の数ほどあります。嘘うそ、そこまではないですね。話を盛りすぎました。でも、本当に多くのミュージシャンが取り上げていますので、興味のあるかたは「イパネマの娘」だけを10バージョン続けて聴いてみる、な~んてことをすると自分なりの発見があると思います。なんたって、このサイトではそれが手軽にできるのですから。たとえば、人気アルト・サックス奏者、アート・ペッパーが亡くなる約2年前の1980年にロンドンで行ったライブトラックを皮切りにするのもお勧めです。

イパネマの娘 (Live)
Art Pepper

 

#3. 小野リサ ‐ 3月の雨

ご存じの通り、小野リサさんは日本のボサノヴァ界を代表するミュージシャンです。10歳までブラジルで暮らし、その後、日本へ。アルバム・デビューは1989年。彼女の登場によって、ボサノヴァという音楽が日本でよりメジャーになったといっても過言ではないでしょう。その功績が認められ、2013年にはブラジル政府から「リオ・ブランコ国家勲章」が授与されました。彼女が歌う「3月の雨」はトム・ジョビンことアントニオ・カルロス・ジョビンが作詞・作曲したボサノヴァ定番曲で「3月の水」という邦題でも知られています。タイトルに3月とありますが、日本だったら6月から7月の雨の日に聴くのがいちばんしっくり来るように感じているのですが、アナタはどう思います?

3月の雨 (ライブ)
小野リサ

 

#4. Cassandra Wilson - Water Of March

続いては、カサンドラ・ウィルソンによる「3月の雨」です。1955年生まれ、ディープなボイスが魅力のボーカリストで、ジャズだけでなく様々なジャンルの音楽と向き合い、独自の表現でみずからの音楽を作り続けています。どんな曲でも自分のカラーに染め上げてしまう表現力は「3月の雨」を聴いても伝わるんじゃないかな。演奏も本当に素晴らしいので是非、チェックしてみて。

Waters Of March
Cassandra Wilson

 

#5. Dianne Reeves - Trieste

カサンドラ・ウィルソンがブルーノート・レコードからメジャー・デビューしたのは1993年でした。その5年前に同会社から世に出たジャズ・ボーカリストが1956年生まれのダイアン・リーヴスです。初めてナマの歌声を聴いたときは余りの圧力に驚いたものですが、そのパワーは増すばかり。そういえば、1999年にインタビューした際、「周りに惑わされることなくベストを尽くす、自分がどんな人間かということを見つめ直すことは何をするにしても大切よね。そして疑問が出たら、それを“ないがしろ”にせず自分で解決することが大事だと思っているわ」と話していました。その考えは間違いなく歌に表れていると思います。お聴きいただく曲は「トリステ」。“哀しみ”という意味です。

トリステ (Live)
ダイアン・リーヴス

 

#6. Gene Harris - Trieste

ザ・スリー・サウンズというグループを結成し、人気を博したジャズ・ピアニスト、ジーン・ハリスが自己名義で発表した1973年のアルバムに「トリステ」が収録されています。2000年に66歳で他界してしまった彼は、こんなふうにアプローチしているので聴いてみてください。

Trieste
Gene Harris & The Three Sounds

 

#7. Bobby McFerrin - Blue Bossa

続いてお届けする曲はトランペット奏者、ケニー・ドーハムが作曲したナンバー「ブルー・ボッサ」です。今も多くのジャズ・ミュージシャンが演奏している人気曲ですが、1950年生まれのボーカリスト、ボビー・マクファーリンと1941年生まれのジャズ・ピアニスト、チック・コリアの共演はまさに神業。何度聴いて呆気にとられてしまう世界を披露しています。人間って、ミュージシャンって、本当にすごい! ため息モノのライブトラックをこの機会に知ってほしいです。

Blue Bossa (Live)
ボビー・マクファーリン

 

#8. Joe Henderson - Blue Bossa

「ブルー・ボッサ」の初収録アルバムは、テナー・サックス奏者“ジョーヘン”ことジョー・ヘンダーソンの『ページ・ワン』です。ジャズ好きならおなじみの一枚ですよね。作曲者でもあるケニー・ドーハムも参加、ピアノはマッコイ・タイナーでベースはブッチ・ウォーレン、ドラムはピート・ラロカが演奏しています。ボビー・マクファーリンとチック・コリアの「ブルー・ボッサ」を聴いた後でオリジナルの「ブルー・ボッサ」を聴くと、その違いに目を丸くすると思いますよ。誰が演奏するかで曲はこんなにも変化する。だからいろいろ聴きたくなるんですよね。

Blue Bossa
Joe Henderson

 

ボサノヴァが流れている時に「これってカフェ・ミュージックだよね」と友人に言われたことがあります。なるほど、そのように認識をしている人もいるんだなあと思いましたし、決して間違いではありません。確かにお洒落系カフェでよく耳にしますものね。でも、なんとなくBGMとして聴いていた曲の背景をちょっとでも知ると、聴こえ方が変わる場合があるので、誰が歌っているのか、どんな人が演奏しているのか、作曲者は? などと気にしてみるのもお勧めです。では、来月最終金曜日、7月27日にまたお会いしましょう。