世界チャンピオンに聞く!プレッシャーとの闘い方 ~ASTERISM vs B-GIRL RAM~【バトル対談 シリーズVol.3】


ASTERISMとアスリートの対談企画、第3弾のゲストはB-GIRL RAMの名で知られる河合来夢さん! 2018年10月、ブエノスアイレスユースオリンピックで「ブレイキン(ブレイクダンス)」の二種目で金メダルを獲得、つまり世界一となった17歳のスーパーアスリートだ。双方が音楽、ダンス活動と学業との両立で多忙な中、ライブ直前の短時間での対面が実現! 同世代ならではの素顔の10代対談をどうぞ!

6年後のオリンピックより1年後の大会に照準!

 

RAM


ーまずはRAMさん、金メダル獲得おめでとうございます! 世界一になって何か変化はありましたか?

RAM:世界一になって変わったっていうより、3週間オリンピックのためにアルゼンチンに行っていて、海外の人と一緒に過ごす中で変わっていったなって思いはあります。日本勢だけじゃなくて同じ競技の選手で集まってることが多くて、ベトナムやカナダの子たちとか、見たり考えたりしてるものが全然違うから、それを共有し合ったりして、すごく刺激を受けました。

ー濃密な3週間だったんですね。

RAM:はい。最初は強烈なホームシックになっちゃったんですけど(笑)。でも一緒に過ごすうちに「みんながいればここに住んでもいいかな」って感じるぐらい、もっと一緒にいたい気持ちになりました。踊りで会話ができるみたいなところもありますし、小さい頃から海外には興味があったので、今後は留学も行きたいなって考えてるところです!

ーThe Floorriorz(ザ・フローリアーズ)というダンスチームにも参加していますが、1人とチームでは踊るのも違いますか?


RAM:全然違いますね。1人で踊る時は何してもいいし、ミスしたとしても自分の責任なんですけど、フローリアーズの人たちは自分が小さい頃から「こんな風に踊れたらな」って憧れてた人ばかりだから、一緒に踊るとなると緊張感がすごくて。毎バトル毎バトル手汗が半端ないです(笑)。

―2024年のパリ五輪で正式種目になる可能性がありますが、当然、目指していく?

RAM:狙ってはいきますけど、ひとつの大会って捉えてます。オリンピックって一番大きい大会で、日本だけじゃなくて海外の人も見るし注目度が大きいけど、それを気にしても何も始まらないし、それを気にするんだったら練習に回したほうがいいかなって。6年後のオリンピックを目指すよりも、1年後の目標を立てて練習したほうが確実なスキルが身につくと考えてます。


日本でも世界でも「楽しむこと」がメイン


日本でも世界でも「楽しむこと」がメイン(1)
左からMIYU(B)、HAL-CA(G)、MIO(Dr)

 

ー(ここでリハーサルを終えたASTERISMが合流)みなさん年齢は近いんですよね?

RAM:私は17歳で高2です。

MIYU:僕と同い年ですね!

RAM:ちょっと私、人見知りだから汗がやばいんですけど(笑)。

MIYU:僕もなんですよ。でも不思議とライブなら演奏すると緊張も取れるんです。

RAM:同じく! 踊る時はぜんぜん大丈夫だけど、こうやって人と話すのは苦手で…。慣れるとうるさいぐらいですけどね(笑)。

MIYU:僕たちも最初はぜんぜん喋らなかったんですよ。

HAL-CA:結成1年ぐらいはまったく喋ってなかったよね(笑)。もともとドラムのMIO とベースのMIYUの兄弟は2人で、私は1人で別々でやってたんですけど、ヤマハの音楽コンテストで出会って、見てくれてたスタッフさんが「おもしろいことが起こりそう」って引き合わせてくださったんです。

RAM:いいきっかけですね!

ー今日はまず、メンバーからRAMさんに質問があります!

HAL-CA:私たちは「バトルミュージック/戦いの音楽」をテーマに、人が戦わないといけない場面で1歩踏み出す勇気になれればと音楽を作っているんですけど、RAMさんはパフォーマンスする上でテーマはありますか?

RAM:練習と本番で違っていて、練習は「勝つ」って気持ちを持ってやっていて、バトルやコンテストは勝つより「楽しむ」気持ちをメインにしてやってます。

HAL-CA:本番が「勝つ」じゃないんですね! その理由って何ですか?

RAM:中3までは常に「絶対に勝たなきゃいけない」と思ってたんですよ。でも高1から海外に行き始めて、そこで出会ったみんなは「楽しんで踊る」ってことを前面に出してるなって気付いて。それを見て、自分の考え方も変わりました。

音楽を聴いてその場で踊るっていうのがダンスで、その中で、こう踊ったら周りの人たちはどんな反応かなとか、この技を出したらもっと沸いてくれるかなって見てくれる人のことも考えると、それができると自分も嬉しいし、楽しくなる。すると結果もついてくるし。ここ2年ぐらいはそういう気持ちを大事にしてやってます。

MIO:なるほど! 日本と海外の反応って違いますか?

RAM:けっこう違いますね。日本だとシャイな人が多くて静かなことが多いけど、海外のバトルだと、どんな技でもすごく盛り上がります。ダンスに限らずほかのことでも賑やかな印象がありますね。

MIO:僕たちも世界を見据えて活動しているんですけど、すでに世界の舞台に到達されているRAMさんは、アジア人として違った目で見られたりすることもあると思うんです。その中で何か対策や意識って持っていますか?


日本でも世界でも「楽しむこと」がメイン(2)

 

RAM:周りの目とかは気にしないで踊ってます。日本でも海外でも変わらず楽しむってことメインでやってるし、周りの目を気にしてたらテンパっちゃうし! でもやっぱり、わ―って盛り上がると嬉しくないですか?

HAL-CA:嬉しくてテンション上がります!

MIYU:やっぱり反応が返ってくると嬉しいのは共通してますね。

RAM:逆に静かだとけっこうズシッと来ますけどね(笑)。

 

ギタ―を弾きながら息するの苦手なんです」(HAL-CA


―RAMさんがブレイクダンスを始めたきっかけは?

RAM:母親のすすめで5歳から始めたんですけど、もっと本気でやっておけばよかったって今さら思います。10歳までは2、3ヵ月に1回スタジオに行って友達と楽しくやる程度で、練習もあまりしなかったので。

HAL-CA:本気になったきっかけって何ですか?

RAM:技ができるようになった嬉しさもあったし、ちょうどその頃から大会に出始めて、最初は予選落ちだったんです。それが悔しくて家に帰って泣いて、次の日から「勝ちたいな」って思って練習するようになりました。

―RAMさんは練習では、ダンスのために筋トレなどもするのですか?

RAM:いえ、腕立てとかスクワットとかは絶対やりたくないタイプです(笑)。でも技を練習していれば必要な筋肉は付くので、踊っている中で勝手に鍛えられるって感じですね。

―持久力を付けるため、マスクを付けて練習を重ねたとか。

RAM:酸素が少ない状態で踊り続けられる体力を付けたいなって。普段はそこまでしないんですけど、ユ―スオリンピックは踊る回数が多いのでその分体力が必要だと思って、その時だけは特別にやってました。

―HAL-CAさんはハ―ドな練習には定評がありますが、通じるものがあるのでは?


「ギタ―を弾きながら息するの苦手なんです」(HAL-CA)
 

HAL-CA: 私も最近、マスク付けてやろうかなって思っていたんです! パフォ―マンスしながら弾くとホントに体力を使うし、私、ギタ―弾きながら息するのが苦手なんですよ…。マスク付けて練習したら本番が楽になるかも!

RAM:あはは! 体力が落ちると支障が出るのってどこですか?

HAL-CA:演奏が荒くなります。あとMCでしゃべる時も息切れしちゃって伝わりにくくなったり。

RAM:そうなんですね。腕とかは疲れないんですか?

HAL-CA:腕は大丈夫だけど、私は足が疲れます。

MIO:僕も足が疲れます。アステリズムの曲ってすごく速いので(笑)。

MIYU:やっぱり速いよね(笑)。僕は最近、体力を付けるために走ってるんですよ。でも田舎だから口に虫が入ってくるし、僕もマスクしようかな!

RAM:虫予防(笑)。

 

「練習しすぎて農家の方から怒られちゃった!」(MIYU


「練習しすぎて農家の方から怒られちゃった!」(MIYU)

 

―練習や本番に加え、学業も忙しいと思いますが、普段の過ごし方は?

HAL-CA:学校に行く前に楽器を弾くこともあるし、帰ったらご飯とお風呂と寝る以外は、曲を作ったり練習したりずっとギタ―に触ってます。

MIO:僕は学校から帰ってきたら二人で合わせたり、MIYUが走りに行ってる間は個人練習でずっとテクニックを磨いています。でもドラムはあまり夜遅くまでだと近所迷惑なので…。

MIYU:遅くまで練習しすぎて農家の方から怒られたことあったよね(笑)。僕も以前は空き時間はずっと楽器をやってたんですけど、最近は勉強にも手を出し始めたんです。次の期末テストではいい点数を取りたいです!

―何か目標ができたんですか?

MIYU:いや、とにかく点数がヤバくて、あまり下がるとマネ―ジャ―さんに怒られるんですよ。

―(笑)。RAMさんは学校と練習に加えてバイトまでやっているとか?

RAM:でも少しだけですよ。やっぱりエントリ―したり遠征したりにもお金がいるし、そこは自分で出したいから。でもまだぜんぜん援助してもらってるんですけどね(笑)。ふだんの過ごし方は、学校に行ってたまにバイトに行って、10時ぐらいに終わったら駅前で夜中まで練習したりですね。

―若くして道を極めたみなさんですが、子供の頃は違う趣味もあったのでは?

RAM:私は鬼ごっことかかくれんぼとか、外で走り回るのが好きでしたね。


「練習しすぎて農家の方から怒られちゃった!」(MIYU)(2)

 

MIO:やっぱりアクティブなんですね! 僕は絵を描くのが好きで、魚とか昆虫の絵をずっと描いてました。もう少し大きくなってからは飛行機がすごく好きになって、飛行機を作る仕事に就きたいなって思ってました。

HAL-CA:わ、初めて聞いた(笑)。

MIYU:僕はクワガタ採りとかですね。

MIO:僕は図鑑を見るほうが好きでしたけど、コイツは実物を採ってくるタイプ。けっこう鋭く居場所を嗅ぎつけるんですよ。

MIYU:木の皮を1枚めくったりすると、なんとなく分かるんですよ(笑)。

HAL-CA:私は小さい頃はレゴブロックが好きで、弟と一緒にけっこう壮大な町とか作ってました。今はまったくやってないけど、ホントに好きだったな。

―練習もストイックなHAL-CAさんは、レゴも説明書通りに正確に作るタイプでは?

HAL-CA:はい(笑)。それで町をきれいに作ったら、好きなバンドのメンバ―とかを町に並べ始めるんです。

MIYU:え、そういうキットがあるの?

HAL-CA:ううん、自分で作るの。

―「この人がオジ―・オズボ―ンで」とか?

HAL-CA:そう、そんな感じです!


ASTERISM×RAM(1)


―レゴでオジ―とは、やはりレゴでも突き抜けてます(笑)。ではそろそろアステリズムのメンバ―には本番の準備に入っていただいて。

RAM:頑張ってください!

ASTERISM:ありがとうございます!

 

ASTERISM_LIVE(1)

下北沢 LIVEHOLICで行われたライブには、平日にも関わらず多くの人が駆けつけ熱気でカメラのレンズが曇るほど。外国人のファンが多いのも特徴的!


―そんなアステリズムの今後の抱負は、近日公開予定の単独インタビュ―で!では最後にRAMさん、今後タイトルを獲りたい大会などはありますか?

RAM:あります!「バトル・オブ・ザ・イヤ―」っていう世界大会があって、チ―ムではフロ―リア―ズが三連覇してるんですけど、その中にB-Girlだけのソロのコンテンツがあって今年はそれを獲れなかったんです。来年は必ず獲りたいですね!

 

 

ASTERISM_LIVE(2)


この後、RAMさんは最前列でASTERISMのライブを堪能。
「すごかった! めっちゃ刺激もらいました!!!」と笑顔で記念撮影。
世界一という結果を出したRAMさんの胸を借りる形での対談だったが、ASTERISMも2019年1月にはアジアツアーを、3月にはテキサスで行われる最先端テクノロジーの祭典「SXSW 2019(サウス・バイ・サウスウエスト)」への出演が決まっている。
ASTERISMとB-GIRL RAMの快進撃は始まったばかり!Don’t Miss it!!!!

 

ASTERISM×RAM(2)

 


<PROFILE>
●B-GIRL RAM(河合来夢)

RAM


2001年生まれ。5歳からブレイクダンスを始め、徐々に頭角を現す。ブレイクダンスが初めて正式競技に採用された第3回ユ―スオリンピック競技大会(2018/ブエノスアイレス)にて、「女子ブレイキン(個人)」、「混合団体」で金メダルを獲得。「川崎市スポ―ツ特別賞」を最年少受賞。ブレイクダンスの世界大会「Battl Of The Year」で三連覇を果たしたThe Floorriorz(ザ・フロ―リア―ズ)に2017年10月から加入。12月25日(火)「沼にハマってきいてみた」(Eテレ)出演。

https://twitter.com/bgirl_RAM
https://www.instagram.com/bgirl_ram/?hl=ja

 

●ASTERISM

ASTERISM


福岡、佐賀を拠点にする3ピ―スHR/HMインストバンド。
2014年に開催されたヤマハグル―プ主催の音楽コンテストThe 8th Music Revolutionで出会い、意気投合し結成。Facebook上に投稿した動画が話題となり爆発的に認知が拡散する中、ジェ―ムスブラウンのバンド“JB'S” のブ―ツィ―・コリンズが自身のFBで動画をシェアしたことからさらに拍車が掛かり、ペ―ジ内動画「155」は15,000,000人の目に触れ、現在も拡散され続けている。
2017年徳間ジャパンコミュニケ―ションズより5TRACKS ALBUM『The Session Vol.1』でメジャ―デビュ―。

2018年8月22日、待望の1st フルアルバム『IGNITION』をリリ―ス!

IGNITION


◆オフィシャルサイト http://asterism.asia/

 


Text:明知 真理子
Photo:Great The Kabukicho
Edit:仲田 舞衣
Special Thanks: 下北沢LIVEHOLIC https://liveholic.jp/