【イントロマエストロ藤田太郎が厳選】神イントロソング 年別TOP10 ~1995年編~


ある編曲家は言いました。「編曲(アレンジ)」は、良いイントロができたらほぼ完成。それが、できるかできないかで大きく違ってくる。
名曲には、すべて良いイントロあり!そんな素敵な「神イントロ」からはじまる曲を、bayfm「9の音枠」水曜DJを担当し、クイズルーム「ソーダライト」のイントロクイズでお馴染みのイントロマエストロ藤田太郎が、経験と知識を駆使し当時の音楽トレンドや背景なども含め、リリースされた年でくくった独自のランキングを決定。そのTOP10を紹介してきます。

第3回目の今回、フォーカスするのは「1995年」

 

1995年は、阪神大震災や地下鉄サリン事件が発生と、未曾有の災害・事件が立て続けに起きる中、アメリカの大リーグへ単独挑戦した野茂英雄が新人王を受賞。日本のプロ野球ではイチローを擁する、オリックス・ブルーウェーブが「がんばろうKOBE」を合言葉にリーグ優勝。マイクロソフトがWindows 3.1の後継として、新しいオペレーティングシステム (OS) 「Microsoft Windows 95」を発売と、この年の「今年の漢字」が『震』だったことが表わすように、心が「震える」ニュースが多い年でした。
そんな1995年という時代にヒットした音楽はどんな曲だったのか。先に言います。10曲厳選するのにとても苦労しました。大激戦の1995年。「神イントロ」という切り口で、それまでとは違う楽曲の楽しみ方を見つけてくれたらうれしいです。それでは、カウントダウン!


神イントロソング_第10位
 

第10位:「奇跡の地球」桑田佳祐&Mr.Children
発売日:1995年1月23日
編曲:小林武史&Mr.Children
イントロ秒数:22秒

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1995年を振り返る時「同じイニシャル」で、プロデュースした楽曲がミリオンヒットを連発していた、小室哲哉と小林武史の「TK時代」を避けて通るわけにはいきません。10位はそのツートップから小林武史プロデュース曲が登場。1992年のCDデビューから3年で、J-POP界のトップに君臨したモンスターバンドMr.Childrenと、1987年のソロ活動から小林武史と一緒に楽曲制作をしていた、サザンオールスターズのフロントマン桑田佳祐がコラボし『Act Against AIDS 1995』キャンペーンソングとして「奇跡の地球」をリリースすることが発表された時の衝撃は、今も忘れられません。
人気絶頂だったバンドと、国民的な人気を確立していたバンドのフロントマンのコラボは、自我が強すぎて、正直、曲はそんなに良くないんじゃないの!?と危惧していた自分は、イントロ一音目で衝撃を受けたことを今でも覚えています。スティービー・ワンダーの「迷信」を彷彿とさせる、電気式のキーボード「クラビネット」が奏でるイントロを聴いただけで「本気だな!」と察し、しゃがれ声の桑田佳祐と桜井和寿が、世界の危機を憂い、平和の理想を描く歌詞を魂の叫びを連呼するように歌声を響かせあう曲。私は今でも、最強のコラボナンバーだと思っているソウルフルなイントロのこの曲が10位。
1995年は素晴らしい「神イントロ」が揃った年だったことがこの1曲の発表だけでわかっていただけると思います。

 

神イントロソング_第9位
 

第9位:「スリル」布袋寅泰
発売日:1995年10月18日
編曲:布袋寅泰
イントロ秒数:16秒

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私は「神イントロ」の定義を、そのイントロを聴いた時、自分の頭の中でその曲の想い出をどれだけ多くの人が想像できるかということが大事と考えます。
「スリル」の売上枚数は、69万枚。ミリオンヒットが連発していた1995年という時代を考えると、決して売上枚数が高い方ではないです。しかし、この「イントロ」で芸人江頭2;50がバラエティ番組に登場するシーンを思い浮かべる人は、ミリオンヒット以上の数だと思います。布袋寅泰本人は、はじめこの曲がエガちゃん登場シーンに使われることに違和感があったそうです。しかし、自身のコンサートに江頭2;50を招待し「スリルはエガちゃんのおかげで売れたもんね」と話し、ジャンルは違えどもひとつの芸を究めた表現者としてリスペクトしている発言をいくつも残しています。
バラエティ番組の芸人登場シーンに起用という異例の形で長く愛されることになったこの曲のイントロを音楽的に観ると、サイバーな鍵盤の音に疾走感を加えるドラムが響くロックサウンド!突っ走る芸風の江頭2;50がドはまりしたのも納得です。布袋寅泰も江頭2;50も、令和になってキャリアハイを更新し続ける活躍をいまだ継続中。胸アツな映像が蘇るこの曲が9位です。

 

神イントロソング_第8位

 

第8位:「しようよ」SMAP
発売日:1995年6月6日
編曲:CHOKKAKU
イントロ秒数:19秒

1995年のSMAPは発展途中。
1991年のデビュー曲「Can't Stop !!-Loving-」はシングルチャートで1位を獲得できず、少年隊や光GENJIと同じような活躍を期待された6人は、最初から想像していたような道を進むことはできませんでした。そこから歌はもちろん、ドラマやバラエティなどメンバー一人一人が、一歩一歩しっかりと結果を残し続け、1998年リリースの「夜空ノムコウ」がミリオンヒットを記録し、国民的アイドルへと一気に駆け上がるのですが、音楽的に観ると「夜空ノムコウ」以前の1990年代中盤にビックリするくらいクオリティの高いサウンドをリリースし続けていたことはあまり知られていません。
「しようよ」のイントロは、アメリカのロックバンド、シカゴの「Saturday in the Park」をオマージュ。華やかなホーンセクションがクールに響き、気持ちが一気に高まるダンスポップナンバー!2000年代以降の「みんな」で歌えるSMAP曲が紹介されることが多いですが、こんなにカッコイイ「神イントロ」からはじまる曲があったことを知っている人が少ないことが少し悲しい。90年代SMAPサウンドリバイバルという意味でも、この曲のTOP10入りは当然の結果です!

 

神イントロソング_第7位

 

第7位:「HELLO」福山雅治
発売日:1995年2月6日
編曲:佐橋佳幸
イントロ秒数:16秒

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この曲の編曲(アレンジ)を手掛けたのは、ギタリストの佐橋佳幸(さはし よしゆき)。
佐橋佳幸と聞いて顔が浮かぶ人は、相当な音楽通。しかし、佐橋佳幸が編曲(アレンジ)を手掛けた楽曲を見たら、その「イントロ」の音が浮かぶ人がとても多いと思います。「ラブ・ストーリーは突然に」(小田和正)、「TRUE LOVE」(藤井フミヤ)、「もう恋なんてしない」(槇原敬之)、「1/2」(川本真琴)、「センチメンタル カンガルー」(渡辺美里)など、まさに佐橋佳幸は数々の「神イントロ」を創り出してきたイントロ職人。その佐橋佳幸が手掛けた、「HELLO」のイントロは、清々しい恋心を演出するようにアコースティックギターがクリアに響く音からスタート!本木雅弘、深津絵里が出演した『最高の片想い』の主題歌としてドラマを爽快に彩りました。
ポップミュージック最高峰のクリエイティビティを持つイントロ職人、佐橋佳幸が手掛けた187万枚のミリオンヒット曲が7位。佐橋印の「神イントロ」はこのランキングにこれから何度も登場してくることでしょう。

 

神イントロソング_第6位

 

第6位:「Overnight Sensation 〜時代はあなたに委ねてる〜」trf
発売日:1995年3月8日
編曲:小室哲哉&久保こーじ
イントロ秒数:18秒

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6位は、1995年の日本レコード大賞を受賞した「Overnight Sensation 〜時代はあなたに委ねてる〜」ここで「TK時代」のもう一人、小室哲哉が登場!
90年代の初頭、スペインのイビサ島で開催される音楽を一晩中流す大規模なイベント「Rave(レイヴ)」を観た小室哲哉は、世界的なダンスミュージックが盛り上がりを日本の音楽シーンにも送り込んでいきたい!という思いから、ダンス&ボーカルユニットtrfをプロデュース。シンプルなコード進行が速いテンポで駆け抜けていく「EZ DO DANCE」や、皆でシンガロングして盛り上がる「survival dAnce~no no cry more~」など、ダンサー「も」際立つ楽曲でブレイクしたtrfが、この曲でチャレンジしたのは70年代を彷彿とさせるソウル・クラシック。アース・ウィンド・アンド・ファイヤーをイメージするファンキーなコーラスも際立つこの曲は、哀愁のメロディが展開しつつも、踊りたくなる要素がしっかりと曲中に盛り込まれています。
小室哲哉は、この曲がヒット中に出演したトーク番組『TK MUSIC CLAMP』で「この曲、trfのファン以外の人になんか評判がいいんだよね」と発言。この発言こそが、日本にダンスミュージックを浸透させたグループが、J-POPのど真ん中を本気で取りに来て、そして大きな結果を残したことの勝利証言だと思います。
この曲が6位。まだ上に5曲、レベルが高い!

 

神イントロソング_第5位

 

第5位:「Hello, Again 〜昔からある場所〜」MY LITTLE LOVER
発売日:1995年8月21日
編曲:小林武史 & MY LITTLE LOVER
イントロ秒数:20秒

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5位は「TK時代」のもう一人、小林武史プロデュースが再び登場!
私は、9位「スリル」の紹介の時に「神イントロ」は、自分の頭の中でその曲の想い出を、どれだけ多くの人が想像できるかということが大事と書きましたが「Hello, Again 〜昔からある場所〜」はまさにその真骨頂。イントロのドラムとギターの音を聴くだけで、懐かしい昔の記憶がよみがえるイントロ。2001年に発売したMY LITTLE LOVERのベストアルバム『singles』の中に収録されたライナーノーツで、プロデューサーの小林武史は「最初、ギターの藤井謙二が作ってきた曲のメロディは難解で、でもクセはあるけど泣ける要素も感じて、そこから青春像というか、少年が慣れ親しんだ場所を離れる際の痛みと希望というか、そんな定型へと拡げていったのを覚えています」と話しているように、まさに時を経ても色褪せない「エヴァーグリーン」という言葉がぴったりの不朽の「神イントロ」。
多くのミュージシャンから『イントロ大王』というニックネームが付けられた小林武史の至高の1曲。イントロ職人に続いて、イントロ大王も登場した1995年のランキング、まだまだインフレしていきます!

 

神イントロソング_第4位

 

第4位:「LOVE LOVE LOVE」DREAMS COME TRUE
発売日:1995年7月24日
編曲:中村正人
イントロ秒数:23秒

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この曲のイントロで使用されている楽器は、チェンバロ。チェンバロは、英語ではハープシコードとの呼ばれる見た目はピアノに近いですが、鍵盤を押すと爪のついた部品が上下して弦をはじく「撥弦楽器(はつげんがっき)」で、バッハやヴィヴァルディが活躍したバロック時代に盛んに使われていました。バロック音楽は、きらびやかな王侯貴族の音楽で晩餐会や舞踏会、サロンで楽しむために作られた室内楽。
耽美なイメージが強いバロック音楽をイントロに持ってきた「LOVE LOVE LOVE」の背景には、このドラマが主題歌に起用されたドラマ『愛していると言ってくれ』の音楽も、DREAMS COME TRUEの中村正人が担当していたことが大きいです。
北川悦吏子が脚本を手掛け、豊川悦司演じる幼い頃に聴覚を失った新進気鋭の青年画家、榊晃次と、常盤貴子演じる、劇団員の水野紘子の運命的な出会いからはじまるピュアなラブストーリーの『愛していると言ってくれ』は、最終話で最高視聴率28.1%を記録したこの年を代表するヒットドラマ。放送終了後、トヨエツロスになる人が続出したこのドラマを芳醇な雰囲気に演出した「神イントロ」は、この年に起こった大きなエンタメの社会現象だったといっても過言ではありません。
この曲が4位。正直、TOP5はどの曲も甲乙つけがたいのですが、1音目からのインパクトと、文字通り「神」掛り的かどうかで決めました。いよいよ、TOP3の発表です!

 

神イントロソング_第3位

 

第3位:「ズルい女」シャ乱Q
発売日:1995年5月3日
編曲:たいせー&シャ乱Q/ホーン・アレンジ:森宣之
イントロ秒数:20秒

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ここまでランクインした曲も素晴らしい「イントロ」ばかりですが、1995年のTOP3は別格。
私は、日本初のクイズ専門店「ソーダライト」で毎月イントロクイズを出題しているのですが「ズルい女」は、どんな年齢の方が参加されても必ず皆さんの早押しボタンが素早く動き押し合う鉄板の「神イントロ」。イントロ1音目のサックスから、妖艶な世界観へ一気に引き込まれます。
当時中学生だった私は、文字通り大人の「ズルい」世界を、この曲で想像しました。イケないとおもっていても魅力的な感じ。年齢を重ねてその感じが、わかりすぎるほどリアルな現実なんだと痛感するのはそれから約10年後。聴こえ方が「憧れ」から「欲望」に変わっていったことを今も覚えています。
ホーンアレンジを担当したのは、オリジナル・ラブでサックスを担当していた森宣之(もりのぶゆき)。このアレンジで、この年の日本レコード大賞で編曲賞を受賞。記録にも記憶にもインパクトを残した「神イントロ」です。

 

神イントロソング_第2位

 

第2位:「ロビンソン」スピッツ
発売日:1995年4月5日
編曲:笹路正徳&スピッツ
イントロ秒数:35秒

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断言します、このイントロは魔法です。
1995年の音楽業界は、小室哲哉や小林武史がプロデュースする曲たちが、ドラマ主題歌に起用されミリオンヒットを連発していた、言わば音楽業界が活気づいていた時代。その中で、スピッツは、どの『色』にも染まらずに「ロビンソン」をヒットさせます。
ヒットの理由は、サウンドと歌詞から湧き出ている、バンド4人だけで作り上げてきた「音楽に対するピュアな気持ち」が、リスナーに届いたからだと思います。曲を聴かせることに特化した安定感抜群の、﨑山龍男(さきやま たつお)のドラム。他の楽器との合間を縫う様にうねる、田村明浩(たむら あきひろ)のベース。美しいアルペジオをしっかりと響かせる、三輪テツヤのギター、そして、日常で使っている言葉をいかに自然に、必然的にメロディとリズムにマッチさせていくかを念頭に、狂気の膜に包まれた柔らかな歌詞の世界を優しく彩る、草野マサムネのソングライティングとボーカル。
その武器をミックスさせてできたこの曲の「神イントロ」を表現する言葉はとても難しい。むしろどんな言葉をあてても野暮だな。と、感じる雰囲気すら漂う美しいバンドアンサンブル。素晴らしい。
それでも言葉を選べと言われたら、この曲の歌詞 ♪ありふれたこの魔法で つくり上げたよ なのかもしれない。

 

神イントロソング_第1位

 

第1位:「LOVE PHANTOM」B'z
発売日:1995年10月11日
編曲:松本孝弘・池田大介
イントロ秒数:78秒

2022年5月「音楽を聴くときにイントロやギターソロをスキップする、飛ばしてしまう若者が増えている」という話題が、テレビやネットで取り上げられていました。その時に、若者に聴かせて「長い」という声が多かったと取り上げられたのが「LOVE PHANTOM」。
2021年のビルボード年間ランキングTOP100にランクインした曲のイントロ平均秒数が10.1秒で、30年前の1991年のイントロ平均秒数22.9秒と比べると10秒以上も短くなっている結果を観ても明らかなように、最近はサブスクリプション(定額聴き放題)で音楽を聴く人が増えて、歌が出てこないと我慢できず飛ばすという聴き方をしているのでしょう。
このニュースで私が思ったのが、音楽のニュースをこういう感じで取り上げるんだという、メディアの音楽に対する軽薄さと、こういう時に取り上げられる「LOVE PHANTOM」の凄さでした。ストリングスを多用し、オペラ調のボーカルを加えた幻想的な78秒は、ライブで高さ数十メートルの高台からダイブする演出を魅せるために制作されたので長くなったこと(だからメロディは、サビとサビ以外の2つしかない)、様々な音楽ジャンルを曲にとりいれながらも「ハードロック」スタイルが太い軸となっている、ぶれないB’zの世界観をこの曲でも崩すことなくしっかり描き、令和の時代になってもB’zを代表する1曲として語り継がれていることなど「長いです、だから飛ばします」だけでは絶対に片付けられることではない、たくさんの味わい深さが重なり合うことで完成した「神イントロ」。
私は、甘美な78秒の「神イントロ」をしっかり聴くことができない、せこい人間にならなくてよかった!と思えたこの曲を、1995年の堂々TOPとして紹介させていただきます。

 

【1995年神イントロランキングの総評】

90年代のヒットソングを紹介!的なテレビ番組を観ると、必ず取り上げられるのが小室哲哉と小林武史の「TK時代」。
1995年は、2人のプロデュース曲がミリオンヒットを飛ばしまくっていた時代なので、それらの曲は意識しなくてもTOP10に入ってくるだろうと思い選考をはじめたのですが、とんでもない勘違いでした。2人のプロデュース曲が注目を集めていたからこそ(実際にTOP10に3曲ランクイン)、他のアーティストは様々なアプローチで素晴らしい「神イントロ」曲をリリースしていた年。
この連載はまだ3回目ですが、10曲を厳選するのにこんなにも苦労するレベルの高い年は他にないのではと感じるほど素晴らしい曲が揃っていた年でした。1995年リリースの「神イントロ」を知って、歌い出し前でスキップする人が少しでも減ってくれたらうれしいです。

 


 

【1995年イントロベスト25】

ランキングは25位まで決定したので、11位以下も下記に紹介します。
(藤田太郎調べ) 

 

ランキング1-10位ランキング11-20位

ランキング21-25位

 

さらに、YouTubeでイントロクイズとして楽しむことができます。

うたドン!【イントロクイズ】

 

 

【Profile】

藤田太郎

「30,000曲のイントロを0.1秒聴くだけでわかる男」イントロマエストロ。bayfm「9の音粋 」水曜日のラジオDJ、Tokyo FM『ももいろクローバーZのSUZUKI ハッピー・クローバー!』音楽コメンテーターを担当。フジテレビ『99人の壁』に出場し、ジャンル「90年代J-POP」でグランドスラム達成。日本初のクイズ専門店「ソーダライト」で毎月イントロクイズを出題中。

 

 

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Text&ランキング:藤田太郎