第三十三回 吹奏楽コンクールと各地の銘酒・名居酒屋3【名曲と美味しいお酒のマリアージュ】

 

音楽を気軽に楽しんでいただくため、毎回オススメの曲とそれに合わせたお酒をご紹介する連載【名曲と美味しいお酒のマリアージュ】。第三十三回は「吹奏楽コンクールと各地の銘酒・名居酒屋」の続きをお送りします。

さて、今回吹奏楽コンクール第3弾。今月はついに全日本吹奏楽コンクール、いわゆる全国大会の話題をお届けしようと思います。大編成の全国大会は、中学校、高等学校の部は名古屋国際会議場で、大学、職場・一般の部は宇都宮市文化会館で、それぞれ10月21・22日と28・29日の2週連続で開催されました。

中学校、高等学校の部は、2012年の第60回大会から名古屋国際会議場で開催されていますが、大学、職場・一般の部は全国各地の会場を持ち回りで開催されているので、こちらは毎年新たな酒場探索の楽しみもあります。

さて、まずは名古屋から。全国大会は朝早く9時開演ということもあり、前泊して金曜日の夜から気心の知れた吹奏楽仲間と、これまでの各地の大会の様子などの話題で一献傾けるのが楽しみとなっています。お店も決まっており、ここの樽酒を飲むと「今年もついに全国大会の時期か」と感慨もひとしおです。つまみは一階に並ぶ小皿をセルフで選ぶスタイルで、これがまた楽しい。刺身や温かい料理は口頭での注文です。

この日、選んだのは冷奴、板わさに酢ダコ、里芋、ぬた、黒豆、鶏のうま煮に鶏レバー。各自好きなものを取ってくるので、自然とバラエティに富んだ選択となって卓上も華やぎます。酒は店の入口にドーンと鎮座する賀茂鶴の「特別本醸造 超特撰特等酒」の樽酒をぬる燗で(「ぬる燗!」と注文すると店員さんに「どん燗ね!」と返されるのが名古屋らしいですが……)。徳利もお猪口も明治40年頃創業という店の歴史を感じさせる凛とした趣があり、実に素晴らしいです。

 

名曲と美味しいお酒のマリアージュ(1)

 

ひとしきり飲んだところで、刺身は鰯を注文。話題は、部活動の地域移行の話に。働き方改革はもちろん大事だが、これまで学校が担ってきた地域の文化である吹奏楽をどうやったら失わずに継承できるのか難しい問題だ、ということで意見が一致。最後は、名古屋ならではの味噌土手で締めました。翌朝早いし一日長いので、もう一軒行きたいところを我慢。

初日の中学の部から印象に残ったバンドをご紹介しましょう。出演順にまず前半は、西関東代表・埼玉県さいたま市立土屋中学校吹奏楽部。歌劇《マノン・レスコー》より(プッチーニ作曲)をメンバー全員が一体となって演奏。決して派手な演奏ではありませんでしたが、アンサンブルが素晴らしく、光る物がありました。次に、四国代表・香川県高松市立古高松中学校吹奏楽部。難曲の《ブリュッセル・レクイエム》(アッペルモント作曲)には手こずっていた感じもあったものの、推進力のある先生の指揮に率いられて力一杯の演奏を繰り広げていました。そして関西代表・大阪府大阪市立鯰江中学校吹奏楽部。こちらは前々回も取り上げた団体です。関西大会の演奏を超える名演奏を全国大会でも披露してくれました。後半からは、西関東代表・埼玉県越谷市立大相模中学校吹奏楽部。《不朽の大樹》(八木澤教司作曲)を抑制された大人びた音楽で表現しており惹きつけられました。東京都代表・玉川学園中学部吹奏楽部は交響曲第2番《キリストの受難》(フェラン作曲)を奥行きのある音楽で豊かに表現しており印象に残りました。

翌日の高校の部は、どこも甲乙つけ難い高レベルな演奏の数々。強いてあげるとすると、朝一番の東京都代表・東海大学付属高輪台高等学校吹奏楽部の課題曲Ⅰ:行進曲「煌めきの朝」(牧野圭吾作曲)が、まさしくタイトル通りの「煌めく」ようなサウンドでまばゆく輝いており見事。中国代表・岡山県の明誠学院高等学校吹奏楽部の自由曲、交響詩《海》より第3楽章「風と海との対話」(ドビュッシー作曲)も色彩感あふれる演奏で、吹奏楽でオーケストラの作品をここまで表現できることに感嘆しました。同じく中国代表の岡山学芸館高等学校吹奏楽部の自由曲《アルメニアン・ダンス》パートⅡ(リード作曲)は、吹奏楽の名作に果敢に挑んだ意欲的な演奏。コンクールという次元を超えて記憶に残る名演だったと思います。

翌週の大学の部は、バンドジャーナル2024年1月号に講評を書いているので、詳しくはそちらをお読みいただくとして、職場・一般の部からは、北海道代表・上磯吹奏楽団の大人の魅力あふれる課題曲Ⅲ:レトロ(天野正道作曲)、中国代表・広島県のNTT西日本中国吹奏楽クラブの自由曲《ア・ウォー・タイム・スケッチブック》より(ウォルトン作曲)の端正なサウンドと表現、関西代表・兵庫県の宝塚市吹奏楽団の流麗な課題曲Ⅱ:ポロネーズとアリア 〜吹奏楽のために〜(宮下秀樹作曲)、関西代表・大阪府の創価学会関西吹奏楽団の正統派マーチに作り上げられた課題曲Ⅰ、東北代表・秋田県の大曲吹奏楽団の自由曲《パッサカリア(B-A-C-Hによるオマージュ)》(ネルソン作曲)の構成力と音に対する胆力などが記憶に残っています。

 

名曲と美味しいお酒のマリアージュ(2)

 

今回の宇都宮滞在は、一泊だけということもあり餃子もいきたかったところですが、もうちょっと落ち着いて飲みたいということで、宇都宮二荒山神社の裏手にある居酒屋へ。まず、お通しのこんにゃくがしみじみと美味い。酒はなぜか会津の「末廣」。ポテトサラダ、もつ煮などを注文して、演奏を振り返りながら、あーだこーだとみんなでしゃべるのがなんとも言えず楽しいひと時です。美味しかったお通しのこんにゃくは「ピリ辛玉コン」と黒板にあったので、再度注文。そのほかに豆アジからあげ、ブリ大根、ぎんなん、衣かつぎ。ぬる燗をちびちびやりながら秋を色濃く感じる品書きに、今年もこれでひと段落かと、この夏出会った素晴らしい演奏に思いを馳せます。名物の納豆信田も食べて腹も満たされたところで、お会計。外へ出て、ふと店のほうを振り返ると、暖簾には「庄助さんの酒 末廣」と。「そうか、それで」と腑に落ちホテルへと戻ったのでした。

 

名曲と美味しいお酒のマリアージュ(3)

 

 

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Text&Photo:野津如弘

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