ハイレゾで味わうクラシック vol.3 ~妄想の翼広がるロマン派音楽~


これまで日常を素敵にしたり、気分を変えたいときにオススメしたいハイレゾ音源をご紹介してまいりましたが、今回は、ふと煮詰まったとき、イヤなことがあったときにちょっと一休みして、いろいろなことを忘れられるような、美メロとドラマが詰まったロマン派の作品と音源をご紹介します。人間の感情やさまざまな情景、そして物語や詩に影響を受けて書かれたロマン派の音楽は、聴いていると自分が物語の登場人物になったかのような気分になったり、曲から感じられる強い情熱にパワーをもらったりすることができます。あなたも妄想の翼を広げてドラマティックな日常を過ごしてみませんか?

ショパンの「バラード第1番」(聞き比べ)


日本語では「譚詩(たんし)曲」と訳される器楽のための「バラード」は、“ピアノの詩人”フレデリック・ショパンによって生み出されました。映画『戦場のピアニスト』のもっとも重要な場面で演奏され、フィギュアスケートでは羽生結弦選手が3回も自身のプログラムに選曲していることからも窺えるように、何かに抗うような力強さに満ち、自身の置かれた状況や心境を劇的に盛り上げるパワーにあふれた作品といえるでしょう。作品にちりばめられた“うた”や華麗な技巧を余すことなく捉えた、アシュケナージの圧倒的な演奏は、ハイレゾで聞けばより感動的な“体験”として聴くことができるでしょう。

ピアノを知りつくしたショパンの書いた楽曲は、ほかの楽器で演奏されると魅力が半減してしまうことも多いのですが、作曲家 / ヴァイオリニストのウジェーヌ・イザイによる編曲は例外です。語るような旋律、絞り出すような心の叫びを、もっと生々しく歌い上げていきます。アニメ『四月は君の嘘』のクライマックスを感動的に彩った楽曲(※アニメでは編成は一緒ですが、さらに編曲されています)を、弓で弦を擦る感覚まで味わうことができるハイレゾ・サウンドでぜひお楽しみください。

ピアノ・ソロ・ヴァージョン

バラード 第1番 ト短調 作品23
Vladimir Ashkenazy

イザイ編曲のヴァイオリン・デュオ・ヴァージョン

ショパン / イザイ:バラード 第1番
篠原 悠那​​​​​​​

 

ベッリーニの『清教徒』より「あなたの優しい声が」、ドニゼッティの『シャモニーのリンダ』より「私の心の光」


19世紀ロマン派のオペラ作品は、うっとりするような美しいメロディに、目の覚めるような速い音型が融合し、登場人物の心の動きを鮮やかに描いています。とくにここで挙げた二人の作曲家の作品は、ショパンやフランツ・リストといった作曲家たちに多大な影響を与えました。恋愛をすると我を忘れてしまう……というかたは多いと思いますが、200年以上も前からそうだったんだなぁ……ということがよくおわかりいただけるのではないでしょうか。つらい恋愛に悩んでいるかたや、なかなか気持ちを伝えられなくて悶々としているかたは、森麻季さんのスカッと響く高音、ものすごいスピードで歌われていく華麗な装飾音型に身を委ね、気持ちを切り替えてみてはいかがでしょうか? ハイレゾ・サウンドの臨場感がそれをお手伝いします。

愛しい友よ~イタリア・オペラ・アリア集より
ベッリーニ:清教徒〜 ”あなたの優しい声が”​​​​​​
森麻季(ソプラノ)/大勝秀也/ヴロツワフ・スコア・オーケストラ

ドニゼッティ:シャモニーのリンダ〜 ”私の心の光”
森麻季(ソプラノ)/大勝秀也/ヴロツワフ・スコア・オーケストラ

 

リストの「ラ・カンパネラ」


世間を熱狂させていたピアニスト / 作曲家であったリストの書いたピアノ作品は、超絶技巧で多くの人々を圧倒していたニコロ・パガニーニのヴァイオリン協奏曲の主題をもとに書かれました。ピアノという楽器の限界を超えた、目の覚めるような輝かしい響きに満ちたこの作品を聞いていると、日常のしがらみを全部忘れされてくれるような気がします。作品から聞こえてくるドラマ性と超絶技巧の爆発は、どこかロックな精神も感じさせますが、反田恭平さんの演奏ではそれがより強調されて聞こえてきます。ハイレゾ・サウンドでそのロック魂を体感して、イライラを吹き飛ばしてみては!?

ラ・カンパネラ(パガニーニ大練習曲集 第3曲) S.141/R.3b
反田恭平​​​​​​​

 

パガニーニの「カプリース第24番」​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​


当時20歳のリストに「私はピアノのパガニーニになる!」と決意させ、何時間にもわたる練習によってさらなるテクニックを得るきっかけを与えたパガニーニ。彼の演奏技術は「悪魔に魂を売り渡した」と噂されるほどのものでした。そんな彼が残した作品は、悪魔のささやきや高笑いが聞こえてくるかのよう。自分の中にたまった黒い感情が音楽に昇華されていくような感覚をハイレゾの臨場感あふれる音色で味わううち、イヤなことなんて忘れてしまうかもしれません。​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​


「パガニーニ:24のカプリース24番」〜かをり、コンクールでの演奏〜
篠原 悠那​​​​​​​

 

サラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」


パガニーニと並ぶ、伝説的なヴァイオリニストであったパブロ・デ・サラサーテ。「ロマの旋律」を意味するこの楽曲、全編に哀愁が漂い、冒頭から心をわしづかみにされるような力強さに満ちた旋律が歌われていきます。哀しみと静かな情熱が込められた前半部と、後半の超高速で繰り広げられるヴァイオリンの華麗な技法からも、パガニーニの作品のような悪魔的な"何か"が感じられます。三浦文彰さんの人を引き付ける華やかな音色、次々と表情を変えていく幅広い音楽性をハイレゾサウンドで堪能してください。
 

サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン
三浦文彰​​​​​​​

 

シューベルトの「アヴェ・マリア」


“悪魔的”なヴァイオリン作品を楽しんだ後は、ぜひ天使のような森麻季さんの美声で、降り注ぐやさしい旋律を堪能してください。“歌曲王”シューベルトが書いたあたたかい世界をハイレゾ・サウンドで楽しめば、包み込んでくれるような感覚を味わうことができ、心が浄化されていくような気分になれると思います。

シューベルト:アヴェ・マリア
森 麻季​​​​​​​

 

日々頑張っていると、現実逃避したくなりますよね。今回はそんなあなたにおすすめしたい音源をご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。ドラマティックだったり、あまりにも美しかったり、悪魔的だったりする音楽をハイレゾ・サウンドでリアルに堪能していたら、現実に戻ってこれなくなっちゃうかも!?……そこには注意しつつ、ぜひ気持ちをしっかり切り替えるツールとしてご活用いただければ嬉しいです。
次回は10月6日(金)更新予定で、ロシアの美メロとアヴァンギャルドな音源をたっぷりご紹介いたします。


◆ハイレゾとは◆
ハイレゾとこれまでの音楽データは何が違うの?ハイレゾを聴くメリットって?
mysoundプレーヤーでのハイレゾ音源の聴き方などをこちらでわかりやすく説明しています!​​​​​​​