Plastic Treeが語る20年。これまでの歩みを辿る、移動中に聴く音楽


今年デビュー20周年を迎えたPlastic Tree。「ヴィジュアル系ロックバンド」にカテゴリされる彼らだが、中でもこの4人組は、UKロックやオルタナティヴロックを下地に、その時期/時代毎に自分たちの興味のあるジャンルを取り込み、インディヴィデュアルを繰り返し、独特な音楽観として昇華させてきた。そんな彼らの活動は、ジャンル問わず多大なミュージシャンたちにも影響やシンパシーを与え、それらは9月6日発売の『Plastic Tree Tribute〜Transparent Branches〜』へと結実。参加アーティスト毎のPlastic Treeへの独自の解釈や愛着を始め、自身の不変的なものや独自性が浮き彫りになっているところも興味深い。今回はそんなPlastic Treeが『移動中に聴くプレイリスト』と共に登場。それらはもちろん、彼らのバックボーンや信念、音楽に対する真摯な姿勢までもが垣間見れる面白い話も訊くことができた。


Plastic Treeが語る20年。これまでの歩みを辿る、移動中に聴く音楽

L→R :長谷川正(Ba) , 有村竜太朗(Vo) ,佐藤ケンケン(Dr) , ナカヤマアキラ(Gt)

長谷川正 “根本的な音楽に対する姿勢や考え方はずっと変わってないです”


─メジャーデビュー20周年おめでとうございます!まずはこの20年をざっと振り返っていかがですか?

有村竜太朗:あっという間に20年経ったという感じです。

─この20年間、常にインディヴィデュアルを繰り返してきましたもんね。

長谷川正:とは言え、このバンドが当初に目指していた方向性からはあまりブレてないかな。UKロックやオルタナを軸に色々な音楽性を取り込んで今に至ってるんで。常に自分たちの中でこれだって音楽性に従ってやってきた、その根本的な音楽に対する姿勢や考え方はずっと変わってないですから。

ナカヤマアキラ:ホント、やりたいことが都度明確で、その時々のベストと思えるものをやり続けてきただけです。まっ、それほど真剣に考えてやってきたわけでもないか(笑)。

佐藤ケンケン:僕もこのバンドに入って (佐藤は2009年に加入)まずは、“色々と自由にやってるな・・・”と実感しました。おかげさまで自分も入ってからはかなり自由にやらせてもらってます。

─9月6日は、そんなみなさんに影響を受けたり、インスパイアされたアーティストたちによるトリビュート盤もリリースされますね。

有村:各アーティストが持ち味全開で来てくれたのが嬉しかったです。自分たちの曲ながら、そのアーティストの新曲を聴くように楽しめました。各アーティスト、各々の持ち味を発揮しつつ、メロディラインはわりと原曲をキープしてくれていたので、それも愛着を感じられたし。

長谷川:Plastic Treeのことを知らない人が聴いても楽しめる作品ですよ。各曲の更なる可能性を引き出したり、広げてくれたものばかりだし。原作者冥利に尽きます(笑)。

ナカヤマ:永く続けているとこんなご褒美があるんだ・・・と感激しながら聴き進めましたから。

佐藤:自分たちでも、“次のライブでは、このアレンジで演ってみようかな・・・”なんて思ったし(笑)。

─ラストには自身の新曲「ゼロ」も入ってます。

有村:この曲はデビュー10周年の武道館公演の際に無料配布した楽曲で。それを今のメンバー(前回は前ドラマー)でセルフカバーしました。バンドの姿勢やファンや周りのスタッフの方々への感謝の気持ち、それから自分たちへの祝福を込めて作った曲でしたが、ライブでも変化してきた部分も含め、これまでの自分たちと合わせ、上手く作品化できたかなと。

 

有村竜太朗 “ツアー移動中に雨が降ったりした際にふと聴きたくなる曲”


─ではここからはプレイリストに。まずは有村さんの選曲ポイントを教えて下さい。

有村:移動中に外をぼんやりと眺めながら、気持ちをここではないどこかへと飛ばす際に聴く曲たちです。

─パワーポップバンドの印象が強い彼らですが、この曲はいささか牧歌性漂う楽曲ですね。

有村:フォークやカントリー調の曲です。僕は彼らのこういった面が好きで。結成直後、まだ車で全国を回っていた頃に、みんなでよく聴いてました。移動中の車窓から流れる景色を見ながら、“移動しているんだなぁ・・・”とか、“旅をしているんだなぁ・・・”と、しみじみとした気持ちになれます。
 


─The Cureの中でも女々しさ成分が少なく(笑)、逆に明るさを感じる曲です。

有村:彼らの曲の中でも、わりとこの先に楽しいことが待っていることを予感させるような珍しいタイプの楽曲ですよね。ツアーやライブ先で楽しいことが待っている、それを信じさせ、明るい気持ちにさせてくれた曲でした。

Friday I'm In Love
The Cure


─ソウルフルや汗を感じる曲が選ばれていたのも意外でした。

有村:今回ツアータイトルに関連している曲なので(笑)。元々は子供の頃、桑田佳祐さんのソロのカバーで知りました。ツアー移動中に雨が降ったりした際にふと聴きたくなる曲でもあります。

Have You Ever Seen The Rain
Creedence Clearwater Revival


─長谷川さんの選曲のポイントは?

長谷川:「移動中」というキーワードからパッと連想し、移動中の光景とマッチする3曲です。

─バンドのバックボーン的に、てっきりJoy Division辺りかと予想してましたが・・・。

長谷川:移動のあの感じとこの曲がピッタリなんです。彼らはどこか翳りのある曲も多いんですが、この曲は比較的その成分が少ないところも好きで。スピード感や疾走感、明るいんだけど拭いきれない翳りがあるところも彼ららしいなって。

60 Miles An Hour
New Order

─続いては・・・納得です(笑)。

長谷川:これはもう自分の青春です。もちろん多大な影響も受けていて。ラストに向かうに連れスピード感が増し、最後のカタルシスに導いてくれる。その一連の楽曲の流れや物語性はたまらないですね。

Paradise City
Guns N' Roses

─奇しくも次のCoccoさんも今年デビュー20周年なんですよね。

長谷川:みたいですね。この曲に関しては、逆に景色を眺めていてふっと思い出す曲で。歌詞も美しいものを歌いつつ、色々と考えさせられる部分も好きです。

強く儚い者たち
Cocco​​​​​​​

─ナカヤマさんの選曲はシティポップやファンク、ドラムンベース等、軽く踊らせたりハネるタイプの曲ばかりで。

ナカヤマ:僕、移動中はなるべく眠気を邪魔されたくなくて。あとは8割がたギターの音は聴きたくないんです(笑)。これは曲自体がいい。耳に邪魔にならないし。あと、田舎に行けば行くほど風景に全然合わなくなるところも好きです(笑)。曲が短いんで眠りに入る前に結局全曲聴き終えちゃうんですけど。

SUN
星野 源​​​​​​​

─逆にこちらは同じファンキーな曲ですが、かなり汗が飛び散る感じで。

ナカヤマ:暑苦しいタイプのファンクです。聴いていて説教されている感じですよね。でも、そこがいい。

Cold Sweat
James Brown

─打って変わってエレクトロなドラムンベースです。

ナカヤマ:夜の乗り物にピッタリの曲です。新幹線や飛行機等、ある程度速く景色が流れるものとベストマッチする曲ですね。

The Plan That Cannot Fail
London Elektricity​​​​​​​

─今回の選曲の基準は?

佐藤:自分を見つめ直したり、出自や昔から聴いていたものを聴き直すことが多いんです、僕。

─ポストロックやマスロック、インストの選曲は、このバンドでは初です。

佐藤:わりとインストものもよく聴くんですが、それは頭をリセットさせたい時に聴くことが多くて。夕方や明け方といったマジックアワーに似合う音楽ですよね、これは。

I do still wrong
toe​​​​​​​

─ガツンとしたポストハードコアが飛び出してきました。

佐藤:2000年中盤までは、けっこう激し目のバンドで叩いてたんです。その頃凄く好きでよく聴いてました。テンションが上がりますよね。聴いていて血がたぎります。

And The Hero Will Drown (Live)
Story Of The Year​​​​​​​

─超有名AOR曲です。

佐藤:ついつい鼻歌で出てくる曲です。いい曲ですよね。みなさんも耳馴染があるんじゃないかな。

Honesty
Billy Joel​​​​​​​

─では最後に、Plastic Treeの21年以降の展望をお聞かせ下さい。

有村:この20周年では様々な機会で自分たちのやってきたことを振り返ったり、見つめ直したり、ここまでバンドを続けてこれたことへの歓びを感じれたので、それを糧にまた次へと踏み出していきたいです。ここで感じたこと気づいたことを早くニューアルバムに反映させたいし。そこで次の自分たちを出したり、お見せできたらなと。これからもこのバンドの存在意義を踏まえ活動していたいです。


Plastic Treeが語る20年。これまでの歩みを辿る、移動中に聴く音楽(2)​​​​​​​

 

 

PROFILE

1993年12月、有村竜太朗と長谷川正がPlastic Treeを結成。精力的なLIVE活動で着実にファンを獲得し、1997年6月「割れた窓」でメジャーデビュー。バンドの持つ独特な世界観が注目を集め、作品は攻撃的なギターロックからポップなものと多岐にわたる。その世界観は海を越え海外でも人気を集め、2006年7月にはワールドツアーを敢行。グローバルに活躍できることを証明した。2007年9月、メジャーデビュー10周年の節目に行われた日本武道館公演を大成功に収め、2009年8月30日には2度目となる日本武道館公演も大盛況のうちに終了。ますます勢いに乗るPlastic Treeはネオビジュアル系バンド界のパイオニア的ロックバンドである。


LIVE

■Plastic Treeメジャーデビュー二十周年“樹念” Autumn Tour 2017<雨を観たかい>

日程:2017年09月16日(土)
会場:熊本・熊本B.9 V1
時間:OPEN 17:30/START 18:00
料金:¥5,800

日程:2017年9月17日(日)
会場:福岡・DRUM LOGOS
時間:OPEN 16:00/START 17:00
料金:¥5,800

日程:2017年9月23日(土)
会場:大阪・BIG CAT
時間:OPEN 17:00/START 18:00
料金:¥5,800

日程:2017年9月24日(日)
会場:京都・KYOTO FANJ
時間:OPEN 16:00/START 17:00
料金:¥5,800

日程:2017年9月28日(木)
会場:新潟・新潟LOTS
時間:OPEN 18:30/START 19:00
料金:¥5,800

日程:2017年9月29日(金) 
会場:宮城・Rensa
時間:OPEN 18:30/START 19:00
料金:¥5,800

日程:2017年10月7日(土) 
会場:愛知・名古屋ダイアモンドホール
時間:OPEN 17:30/START 18:00
料金:¥5,800

日程:2017年10月9日(月) 
会場:千葉・千葉県文化会館
時間:OPEN 16:30/START 17:00
料金:¥5,800


詳細はオフィシャルサイトで
http://www.jrock.jp/various/live/2017/08/18/plastic-tree~


Text&Interview:池田スカオ
Photo:Kohichi Ogasahara