ハイレゾで味わうクラシック vol.4 ~愛と夢にあふれたロシアの名旋律たち~


前回は思わず妄想の世界に浸ってしまいそうなロマン派の名曲をご紹介しましたが、今回はさらに美しい旋律や豊かな響きがつまった、思わずうっとりとしてしまうロシアの名曲たちをご紹介したいと思います。センチメンタルな気分に浸りたくなる秋、聴いていたら魔法にかけられてしまいそうなほどにロマンティックな楽曲ばかりです。たっぷりと楽しんでいただき、美しい夢の世界に浸ってください。

物語の扉を開けるような期待感


最初にご紹介するのは、繊細なピアノ小品を中心に作曲したリャードフの作品です。“音楽の細密画家”と呼ばれた彼の作品は、雄大なイメージが強いロシア音楽の別の側面を伝えてくれます。オルゴールを模した、かわいらしさと輝きにあふれた音楽は、まるで物語の扉を開けるような期待感に満ちた作品となっています。ハイレゾで聴くことで、思わず胸が高鳴るようなときめきをよりリアルに体験できることでしょう。

リャードフ:音楽の玉手箱
三浦友理枝

 

チャイコフスキー:『眠れる森の美女』より「パ・ダクシオン(バラのアダージョ)」と「ワルツ」(聞き比べ)


チャイコフスキーのバレエ音楽『眠れる森の美女』は、ディズニー映画の『眠れる森の美女』と同じく、ヨーロッパの古い民話・童話をもとにして書かれました。チャイコフスキーが残したバレエ音楽のなかでもっとも演奏時間が長く、多くの名曲が詰まっていますが、今回はその中から2曲ご紹介したいと思います。最初は「パ・ダクシオン」。オーロラ姫が初めて登場する場面で、「バラのアダージョ」として知られています。4人の王子たちに支えられながら優雅に踊る、幻想的かつバレリーナの力量があらわになる重要な場面で、優雅さと華やかさを兼ね備えたオーロラ姫の美しさを見事に表現しています。
続いての「ワルツ」は、「ガーランド(花飾り)・ワルツ」とも呼ばれる、『眠れる森の美女』のなかでいちばん有名な楽曲です。オーロラ姫の16歳の誕生日パーティーのシーンを彩る幸福感に満ちた踊りで、ディズニー映画『眠れる森の美女』のなかでオーロラがフィリップ王子とともに歌う美しい愛の歌のもととなった楽曲です。
今回はこの2曲について、オーケストラ版とピアノ連弾版の音源をご用意しました。ぜひ聞き比べていただき、輝きが強調されたピアノ版とオーケストラの色とりどりの音色、それぞれの魅力をご堪能いただければと思います。​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​


<ピアノ連弾版​​​​​​​>
チャイコフスキー:“眠りの森の美女”より「バラのアダージョ」(ピアノ連弾版)
四月は君の嘘 トゥインクル リトルスター​​​​​​​

チャイコフスキー:“眠りの森の美女”より「ワルツ」(ピアノ連弾版)
四月は君の嘘 僕と君との音楽帳​​​​​​​

<オーケストラ版>

Tchaikovsky: The Sleeping Beauty, Suite, Op.66a - Pas d'action: Rose Adagio
Orchestre de Paris/Seiji Ozawa​​​​​​​

Tchaikovsky: The Sleeping Beauty, Suite, Op.66a - Valse
Orchestre de Paris/Seiji Ozawa​​​​​​​

 

苦難を乗り越えるために


夢やおとぎ話の世界には、思わぬ出来事や強大な敵の登場がつきもの。それは私たちの日常のなかにもやってきます。思わず全部投げ出したくなるほどの苦しみがあるかもしれませんが、それを乗り越えた先には幸せや喜びが待っています。どうしようもない出来事に出会ってしまったとき、苦しいことがでてきたとき、力をくれるようなパワーあふれる作品を聴くのはいかがでしょう。スクリャービンのエチュードやラフマニノフの「楽興の時第4番」は、何かを求めるような激しさ、力強さにあふれた曲。“負けないで!”と背中を押してくれるようなパワーを感じるはずです。ラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番第2楽章」やスクリャービンのワルツは優しく、でもただ甘いだけではない厳しさもはらんだ曲です。だからこそ、疲れきったあなたの心をしっかりと包み込んでくれると思います。鍵盤を押したあと、徐々に音が弱くなっていく“減衰楽器”であるピアノは、奏者の実力さえあれば“うたう”楽器になります。ハイレゾ・サウンドはそれをさらに実感させてくれるはずです。“巨匠”や若手実力派たちの演奏を通して、ピアノによる“うた”にじっくりと耳を傾けてください。

 

●スクリャービン:エチュードOp.42-5
Scriabin: 8 Etudes, Op.42 - No. 5 in C Sharp Minor
Vladimir Ashkenazy​​​​​​​

●ラフマニノフ:楽興の時Op.16より第4番​​​​​​​
ラフマニノフ: 楽興の時 Op.16 - IV. Presto
倉澤杏菜(ピアノ)

●ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番ハ短調作品18より第2楽章
ピアノ協奏曲第2番ハ短調作品18 第2楽章 アダージョ・ソステヌート
河村 尚子​​​​​​​

●スクリャービン:ワルツ第4番Op.38​​​​​​​
Scriabin: Waltz No.4, Op.38
Benjamin Grosvenor​​​​​​​

 

ハッピーエンドを彩る楽曲​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​


さらに幸福感に浸りたい、もっと夢のような世界にうっとりとしたいというあなたには、夢と魔法が詰まったチャイコフスキーのバレエ音楽『くるみ割り人形』からこの1曲を。『くるみ割り人形』といえば「花のワルツ」がもっとも有名ですが、今回はその後に続く、ハッピーエンドを彩るゴージャスな「パ・ド・ドゥ」をご紹介します。金平糖の精が王子に支えられて踊る優雅な舞を彩る愛にあふれたこの楽曲、今回はピアニスト / 指揮者でもあるミハイル・プレトニョフがピアノ用に編曲したヴァージョンでお届けします。演奏者はチャイコフスキー国際コンクールで日本人、そして女性として世界初の優勝を果たした上原彩子。超絶技巧をドラマティックな表現に昇華させた輝かしい演奏を、ハイレゾのゴージャスなサウンドでお楽しみください。​​​​​​​

 

バレエ音楽「くるみ割り人形」作品71より アンダンテ・マエストーソ
上原彩子​​​​​​​

 

今回は、まるで童話の世界に入り込んだような気分にさせてくれる、また日常をより美しく彩ってくれるようなロシアの名旋律たちをご紹介しました。次回は11月2日(木)更新予定で、 “楽都”ウィーンの音楽をテーマに、聴いているだけで優雅な気分へと誘ってくれる音楽をお届けします。ご期待ください。


―ハイレゾ音源とは
ハイレゾとこれまでの音楽データは何が違うの?ハイレゾを聴くメリットって?
mysoundプレーヤー(無料)でのハイレゾ音源の聴き方などもこちらでわかりやすく説明しています。​​​​​​