ハイレゾで味わうクラシック vol.5 ~高雅な響き─“楽都”ウィーンの音楽~


ウィーンといえば“音楽の都”と称される芸術の街ですよね。ここにはたくさんの音楽家が集い、またこの国から発信された多くの芸術は世界中に影響を与えています。今回は、この華やかさと優雅さに満ちていながらも、どこか素朴さも失わない不思議な街、ウィーンの魅力的な音楽を皆様にご紹介したいと思います。華やかなワルツたちを楽しめば、現実のわずらわしさを忘れて、華やかな舞踏会にいるような気分になれてしまうかも!?

“ワルツ王”ヨハン・シュトラウスII世のオペレッタとワルツ


“ウィーン”といえばやはりこの作曲家! 最初にご紹介するのは、“ワルツ王”と呼ばれるヨハン・シュトラウスII世です。ヨハン・シュトラウスI世とともに親子で作曲家 / 指揮者として活躍しました。とくにII世は生涯のほとんどをウィンナ・ワルツやポルカなどの作曲に捧げており、彼の作品はいまでもウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤーコンサートでの中心となっています。

そんな彼の作品から、まずはオペレッタ『こうもり』のアリアをお聴きいただきたいと思います。ウィーンの社交界を舞台に、裕福な男アイゼンシュタインが、友人のファルケにあれこれ凝った仕返しをされるというお話です。劇中で歌われるアリア「私の侯爵様」は、若き侯爵オルロフスキーの館で催された舞踏会での一幕。女優オルガに変装していた自家の女中アデーレを見たアイゼンシュタインが「我が家の女中に似ている」と口を滑らせると、アデーレは怒り出してアイゼンシュタインにくってかかり、最後には笑いながらからかいます。ワルツのリズムに乗って、笑い声をイメージさせるようなコロラトゥーラの軽やかさがコケティッシュな魅力を発散している名曲です。

オーケストラで演奏されることの多い「春の声」ですが、当初はコロラトゥーラ・ソプラノのために書かれたオーケストラ伴奏つきの歌曲として発表されました。寒い冬を乗り切り、あたたかさや光に包まれた春がきたことへの喜びが、華麗に舞うような音型で歌われていきます。

これらの2曲は、森麻季さんの声でぜひお聴きください。声の美しさはもちろんですが、ドイツ語の発音も美しいのです。“カタい”というイメージをもたれがちなドイツ語も、森さんの歌唱でイメージが変わるかもしれません。ハイレゾならクリアで柔らかな声の魅力を存分に味わっていただけるはずです。

J.シュトラウス2世:私の侯爵様〜喜歌劇《こうもり》
森 麻季

J.シュトラウス2世:ワルツ《春の声》
森 麻季

 

ウィーンには自然の美しい公園や森が多く残っており、ウィーンに住む人たちはそれを皆誇りに思っています。美しい緑地帯は、今日まで人々にとって憩いの場であり、シュトラウスII世もその自然の美しさに心を動かされていた一人でした。このワルツは、シュトラウスII世のワルツのなかでもいちばん規模の大きい曲のひとつであり、5つのワルツが展開していきます。踊るための作品というよりも、ワルツの形で美しいウィーンの風景を描いた交響詩ともいえる作品です。ハイレゾ・サウンドで聴くことで、ウィーンの美しい風景の想像がもっと広がるかもしれません

 

ワルツ「ウィーンの森の物語」 作品325
ロリン・マゼール(指揮)ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

 

もはやウィーンといえばこれ! といえるほどの有名曲が、「美しき青きドナウ」。ウィーン・フィルのニューイヤーコンサートでは、正式なプログラムとして載ることはありませんが、アンコールとしてかならず演奏されます。オーケストラによるものが有名ですが、もともとはプロシアとの戦いに敗れた祖国を元気づけようと、ウィーン男声合唱協会の依頼を受けて書かれた、男声合唱のための声楽曲でした。“オーストリア第二の国歌”ともいわれています。雄大ながら美しさ、優雅さをたたえたドナウ川、そのまわりの美しい風景を描写した作品は、希望に満ちた力強さも感じさせます。ハイレゾ・サウンドによる、より輝きを増した音色でお楽しみください。
 

美しき青きドナウ(オーケストラ版)
An der schonen blauen Donau, Walzer, Op. 314
Mariss Jansons & Wiener Philharmoniker

 

マーラーの綴った“愛の楽章”


“愛の楽章”ともいわれているこの曲は、作曲者のグスタフ・マーラーが愛する女性アルマと結婚した、という出来事と関連があります。弦合奏とハープのみという簡潔な編成で、穏やかながらも静かな情熱をたたえており、愛する人をやさしい眼差しで見つめながら抱きしめているようなあたたかさを感じさせます。ハイレゾ・サウンドは弦楽器の音色を非常に細かくとらえることができるので、作品にある“温度”のようなものもリアルに感じていただくことができるでしょう。

 

マーラー:交響曲第5番第4楽章 アダージェット
SYMPHONY No.5 IV- Adagietto. Sehr langsam
エリアフ・インバル指揮、フランクフルト放送交響楽団

 

ドイツ語の美しい響きが凝らされた、レハールの『メリー・ウィドウ』より「ヴィリアの歌」​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​


美しい旋律によるオペレッタの分野で活躍したレハールの『メリー・ウィドウ』。作品の舞台はパリですが、ドイツ語の美しい響きが前面に凝らされた作品となっています。

結婚後、わずか8日でなくなってしまった老富豪の夫の莫大な遺産を手にした美しい主人公ハンナ。その莫大な遺産と、男性を虜にする彼女の美しさが騒動を巻き起こします。多数の来賓を前に、ハンナが故郷レティンイエの風景を再現すると言って歌うのがこの「ヴィリアの歌」です。幸田浩子さんのゴージャスかつ豊かな声で歌われる美しい情景が、ハイレゾ・サウンドで色鮮やかに描き出されます。​​​​​​​

 

オペレッタ《メリー・ウィドウ》より ヴィリアの歌
幸田浩子​​​​​​​

 

“歌曲王”シューベルト、晩年のピアノ曲​​​​​​​


最後にお送りするのは“歌曲王”シューベルトが晩年に書いたピアノ曲。彼の作品は歌曲同様、歌心にあふれた美しいメロディが特徴的です。それまでの時代の作品には見られないような長いフレーズの旋律、その後ろで刻々と移り変わる和声の妙が魅力となっています。

「即興曲D935 第3番」は、主題の後に5つの変奏が続き、優しく語り掛けるようなメロディがキラキラと細かいパッセージで飾られたり、時にはジャズを思わせるような力強いリズムを伴ったりと、さまざまに変化していきます。変奏ごとに次々と音色が変わっていく小山実稚恵さんのピアニズムも、ハイレゾ・サウンドであればよりご堪能いただけるはずです。​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​

 

即興曲D935 第3番変ロ長調
小山 実稚恵​​​​​​​

 

いかがでしたでしょうか? ちょうど11月からウィーンは舞踏会シーズンに入ります。華麗で優雅なワルツをはじめとしたウィーンの音楽に浸って気持ちを高めたら、思い切って実際の舞踏会にドレスアップして参加するのも素敵かもしれません! 美しい姿勢を保ち、軽やかに舞うためにかなり筋力を使う社交ダンスは、あなたの美しさをさらに磨き、ストレス解消にもなりますよ。次回は12月1日(金)の更新で、“おしゃれな色彩で描かれるフランスの音楽”をテーマに魅力的な楽曲をお届けします。ご期待ください。


―ハイレゾ音源とは
ハイレゾとこれまでの音楽データは何が違うの?ハイレゾを聴くメリットって?
mysoundプレーヤー(無料)でのハイレゾ音源の聴き方などもこちらでわかりやすく説明しています。​​​​​​​