“ロックンロールレスラー” Ken45°がギターに注目して聴きたい10曲【Premium Playlist】


みちのくプロレスを主戦場に活躍するヒール(悪役)レスラーKen45°。“狂乱のロック野郎”と呼ばれる彼が手がける「ロッキンファイト」は、有名レスラーに加えスタークラブなど日本のパンク界の大御所も出演し、ロックファン、プロレスファンが入り乱れて盛り上がる人気イベントだ。そこで、ギタリストとしても参加するKen45°に、ギターに注目して聴きたいパンク愛溢れるプレイリスト10選、そしてレスラー人生のエモいエピソードを聞いた!

日本パンク界の大御所スタークラブも出演するロック&プロレスのコラボイベント「ロッキンファイト」とは?

「ロッキンファイト」とは?(1)


─まず、レスラーを目指したキッカケを教えてください!

僕が子供の頃って、夕方テレビでプロレスやってたんですけど、小学校1年生の時、たまたま点けたテレビに獣神サンダー・ライガー選手が映ってて、アニメは知ってたんで「ライガーじゃん!?」って。そこからプロレスに興味を持ち始めて、3、4年生の頃にはもうプロレスラーになろうって決めてスクワットも始めるぐらいハマってました。

─小学校からの夢を叶えて、見事プロレスラーに! 現在、主戦場のみちのくプロレスでは、技術の高さから“職人”とも呼ばれています。

まあ良し悪しですよね。信頼してもらって嬉しい半面、ホントはもっとクレイジーにもやりたいんですけど(笑)。職人ゆえの地味さがあるというか、おいしいところはタッグパートナーが持ってくようなところがあって、「ああ、俺が引き立てたんだな」と(笑)。でもパートナーが勝つまでに繋ぐ楽しさはありますよ。僕はボーカリストではない、みたいな。年に数回おいしければいいです(笑)。

─ヒール(悪役)なのに謙虚ですね(笑)。では、年に1回ご自身が主役を張るロックとプロレスのコラボイベント「ロッキンファイト」について教えてください。

仲良くしてる仙台のパンクバンド、STINK GASPERSのIZUMIさんとやってます。IZUMIさんもプロレスが大好きで、ずっとロックとプロレスのイベントをやりたいねって構想は話してたんですよ。それでようやくハコを見つけて、2012年、ちょうど僕の10周年、STINK GASPERSの15周年が重なったタイミングで始めました。

「ロッキンファイト」とは?(2)「ロッキンファイト」とは?(3)

初回と2回目の「ロッキンファイト」フライヤー


─ロッキンファイトはライブハウスでプロレスとライブの両方をやってしまうというイベントですが、ステージ構成はどうなっているんですか?

ステージの反対側に、振り向けばリングがあるって感じで。試合終わったらライブがあって、それが終わったらまた試合があってと交互にどんどん進んでいって、それこそトイレに行くヒマもタバコ吸いに行くヒマもない無駄のない進行です(笑)。で、プロレスのメインで僕が試合して、そのままステージに行くっていう。


「ロッキンファイト」とは?(4)


─プロレスの試合をした直後にギターを弾くんですか!?

これがまあ、ビックリするぐらいシンドくて(笑)。試合直後だと指も動かないし、頭を打つんで「あれ、この曲ってどうやって弾くんだっけ!?」ってコードとか進行を忘れちゃうんですよ! トチりまくってる時は「相当、頭を打ったな…」って、温かく見守ってください(笑)。

─自分で始めたこととはいえ、プロレスとギタープレイの両立は難しいと(笑)。

でも楽しくてしょうがないですけどね。好きなことやって1日が終わるんで。

「ロッキンファイト」とは?(5)


─ゲストも豪華で、スタークラブをはじめ日本パンク界の大御所が出演しています。

はい、1、2年目はスタークラブ、続いてラフィンノーズ、ケンヂ &ザ・トリップス、ザ・ストリート・ビーツも出てくれて。まさかガキの頃からのスターに自分のイベントに出てもらって、しかも同じ卓で飲む日が来るとは! スタークラブのHIKAGEさんと最初に飲んだ時は、緊張しすぎて僕、瓶ビール倒したりしましたね(笑)。ビーツのOKIさんやスタークラブのHIROSHIさんはプロレス好きで、試合もけっこう観に来てくれるんですよ。

─ロック好きにはプロレスファンも意外と多いですよね。

そうなんです。だからロッキンファイトはロックファンがすごくいい反応で試合を盛り上げてくれるし、ロックに興味がなかったプロレスファンも、ライブを見てバンドのファンになる人も出てきて。最後はもうバンドサイドもプロレスサイドも一緒になって、オーディエンスがステージにどんどん上がってダイブしてって感じですね。1回だけのつもりだったけど6回まで続けて来られましたし、楽しんでもらえてるのかなと!

 

ブライアン・セッツァーのギターは“魔法使い”

─ではここで、自身もギタリストであるKen45°さんの「ギターに着目して聴きたいプレイリスト10選」を教えてください!

#1. BRIAN SETZER – 「 ‘59」


ブライアン・セッツァーって、ストレイ・キャッツ、ブライアン・セッツァー・オーケストラといろいろありますけど、僕はこの『Ignition!』ってアルバムが人生でベスト3に入るぐらい大好きで。ブライアン・セッツァーって魔法使いみたいなギター弾くじゃないですか! だからシンプルにギターとウッドベースっていうネオ・ロカビリー・スタイルがいちばん好きですね。
特に「’59」はドライブする時に最高の曲! 僕はアメ車が好きで、ロッキンファイトのTシャツは毎年アメ車モチーフで作ってるし、毎年のようにアメ車に乗るためにアメリカに行ってるんですけど、このアルバム聴いてたら何千キロでも走れます。でも2012年式のシボレーのカマロSSを借りた時、アリゾナの砂漠の中の一本道をこんなロックを聴きながら運転してたら、スピード違反でおまわりさんに追いかけられまして。

ブライアン・セッツァーのギターは“魔法使い”(1)

問題のカマロ


捕まって窓を開けた瞬間、おまわりさんに「WILD SPEED!!」って言われて。その場面はそのまま曲とTシャツにできたんで、まあ収穫ですね(笑)。
去年は76年式のキャデラック・エルドラドで駐禁切られて。いや、ちゃんと道のパーキングに停めてコインも入れたんですよ。でもスタバでコーヒー飲んで出てきたら、ワイパーにお手紙が挟んであって(笑)。白線内に入ってなかったからなんですけど、車体がクソ馬鹿デカくてそもそも入んねえよって! なかなかきれいな体で帰って来られないです(笑)。

ブライアン・セッツァーのギターは“魔法使い”(2)

問題のキャデラック

ブライアン・セッツァーのギターは“魔法使い”(3)
ロッキンファイトのイベント記念Tシャツは毎年、アメ車がモチーフ。よく見るとトランザムのトレードマークの鳥(ファイヤーバード)がモヒカンに!


'59
ブライアン・セッツァー '68 カムバック・スペシャル


#2. CHUCK BERRY –「Roll Over Beethoven」

僕はギターリフが大好きなんですけど、リフの重要性ってプロレスの入場曲と通じるものがあって、「いかにオーディエンスの心を掴むか」で。そこで「チャック・ベリーといえば」というものを持つ凄さが、彼にはありますよね。このリフから展開して何曲作っても、チャック・ベリーならではの曲になるし、エフェクターなんて使わなくて現代みたいな凝った音じゃないけど、聴くとそれは間違いなくロックンロールだし。「Johnny B. Goode」も大好きだけど、やっぱ先に生まれたという意味でこの曲ですね。

Roll Over Beethoven
Chuck Berry
 

#3. RAMONES – 「Somebody Put Something In My Drink」

ギタリストの凄さって、テクニックよりもいかに人の心に残るかってことだと思うんですよ。ジョニー・ラモーンって天才だと思うし、どの曲を聴いてもラモーンズって分かる。簡単なコード進行でも頭に入ってくる「Do You Remember Rock’n Roll Radio」なんて、もうパンクの教科書みたいなもので、ギターでも練習しまくりましたね。暗い気持ちがポジティブになる曲なので、目覚ましのアラームにも最適です(笑)。
この「Somebody Put Something In My Drink」は、ラモーンズらしからぬヘヴィーなギターでめずらしくギターソロがあったり、ジョーイのあのキャッチーな声がこの曲ではぐっと重さを増していて、ちょっと毛色が違うナンバーで好きなんですよね。

Somebody Put Something In My Drink
Ramones

 

ユーロ、TK全盛期にパンクと出会った小学生時代


#4. STINK GASPERS – 「GOODFELLAS」

僕の入場曲で使っているがゆえというのもあるんですけど、いちばん自分の気持ちがアガるナンバー。ライフの中で特に大事にしてる曲です。入場直前に花道の後ろでこのイントロを聴いて、気持ちを高めて覚醒していくっていう、いちばん重要な部分で聴く曲。だからふだんはあまり聴かないですね。ふいに聴いてしまうと、どうでもいい状況なのに自分だけ闘争心で高まってしまっても困るんで(笑)。

ユーロ、TK全盛期にパンクと出会った小学生時代(1)


#5. THE STAR CLUB –「ROCK POWER」

僕がロックに目覚めた頃って、時代はユーロビートとか小室哲哉とかがバリバリ全盛期で、周りの小学生はみんなそんなのを聴いてた時代。その中でこの曲はタイトル通り、時代に流されないロックのパワーを感じさせる曲。流行り廃りに関係なく、好きな人がいればロックは死なないってHIKAGEさんの歌詞も、当時の「でも俺はロックを聴いて生きていく」って気分にマッチしたというか。他にも「The Punk」「Rock’n Roll Rider」「Solid Fist」「Silent Violence」とか、まあとにかくかっこいいんですよ!

ROCK POWER
THE STAR CLUB


#6. THE STREET BEATS – 「CHAOS」

ギターってことで言えば、僕はこの「CHAOS」のギターが壮大でいちばん好きですね。ステージで見ていつも思うんですけど、SEIZIさんのギターって、生きてる感じがするんですよ。魂に火をつけるような迫力があって、SEIZIさんが相棒のように自在に操るブラックレスポールの、その心臓の音が聴こえるような気がする力強いナンバーです。サビでOKIさんの歌とシンクロして同じメロディラインでギターが入るのも、ビーツらしくていいんですよね。

CHAOS
THE STREET BEATS


#7. 布袋寅泰 – 「Poison」

僕と布袋さんとの出会いの曲です。小学生の時「もっと熱くて刺激的なヤツが聴きたい!」というモヤモヤした思いが高まっていた時、偶然点けたテレビに布袋さんが映ってたんですよ。それで一発でハマり、小中学校の時は布袋さんばっか聴いてました。そこから「C’mon Everybody」の元曲はエディ・コクランなんだって知ったり、Charさんとブライアン・セッツァーとが一緒にやったライブに行ってロカビリーも好きになって…って繋がって。
その後、スタークラブやビーツを知り、ラモーンズ、クラッシュ、セックス・ピストルズとかパンクに伸びていくんですけど、少なからず布袋さんから繋がってった部分はあるんですよね。

POISON
布袋寅泰​​​​​​

 

不安な夜、メキシコのハイウェイで心に響いた布袋寅泰の曲とは?


#8. 布袋寅泰 –「MERRY GO ROUND」

布袋さんのライブには毎年必ず行ってるんですけど、CDだとフェードアウトする曲がライブだとどんな終わり方なんだろうというのも楽しみの一つで。この曲はライブだと高速カッティングが入って、世界で一番アウトロのかっこいいナンバーだと思います! ぜひライブ・バージョンを聴いていただきたい!

MERRY-GO-ROUND
布袋寅泰


#9. 布袋寅泰 vs 中村達也 – 「カラス」

ドラマーの中村達也とセッションした曲で、ごまかしのない音が豪快にストレートに入ってくるっていうか、お互いに意地のぶつかり合いで、これでもかってぐらい攻めに攻めるナンバー。聴いていると絵も浮かぶんですよね。この音に色があるとしたら、それはカラスのような漆黒で、大空を翔ぶカラスが滑空して、超高速で翔んで旋回しているような、そんな絵も見えてくるような凄みがあります。こんなスゲー曲は、自分じゃ一生弾けないと思いますけど(笑)!

カラス
布袋寅泰 vs 中村達也​​​​​​​


#10. 布袋寅泰 –「Run Baby Run」

布袋さんのギターのハートフルな部分、ロマンチストな部分、攻めの部分、いろんな要素が展開ごとにすべて詰まってるナンバーです。ずっとイイ曲だなと何気なく聴いてたんですけど、改めて強烈に気持ちを後押ししてくれた思い出があって。
僕はメキシコでデビューしてて、その3年弱の修行時代ってやっぱムチャクチャなことも多くて、試合相手も当日分かるぐらいで、僕らはデビューしたてで70キロちょっとしかないのに、行ってみたらすごいヘビー級のヤツだったり、今だったら断るレベルかもしれないですね(笑)。でも当時は怖いもの知らずだったし、日本式もメキシコ式も基礎からガッチリ教えられてたので、誰とでもできる自信はあった。
とは言え、試合で疲れて長距離バスに10何時間も乗っていると、さすがに「俺はこれからどうなるんだ」って弱気にもなるんですよ。メキシコの高速道路って、岩山の間にサボテンがポツンと立っているような荒野の一本道で、真夜中にそんなだだっ広い景色の中を行くバスの中で、クタクタになってこの曲を聴いた時、そのシチュエーションにガツンとハマってしまって。
もう眠れなくなるぐらい前へ、前へと後押しされた気持ちになれて、「そうだ、俺はここで迷ってなんかいられない」って。この曲を聴いてなかったら、心が折れてたかもしれないし、プロレスラーKen45°もいなかったかもしれない。だから布袋さんには恩があるんですよ!

RUN BABY RUN
布袋寅泰


─魂の込められたプレイリストありがとうございます! では最後に、レスラーサイドとロックンロールサイド、それぞれの野望を教えてください!

レスラーとしては、そろそろみちのくプロレスのトップの証であるベルトにも挑戦したいなと。今年15周年を迎えて、次の20周年までの5年間をどう生きるかで、自分のレスラーとしての価値が決まると思うので、勝負の5年かなと思ってます。あと究極の野望は、ロッキンファイトに布袋さんを呼ぶことです!
ロッキンファイトって、僕の大好きなバンドたちが出てくれて最高のイベントになってるし、レスラーとしてこうして15年もやれてるし、僕の人生は幸せの方が多いですけど、死ぬ時に後悔しそうなことがあるとしたら、布袋さんがロッキンファイトにまだ出てないことで(笑)。

─人生のただひとつの心残りが、布袋さんがゲストで来ていないことだと!

はい。もし生まれ変わるなら、次の人生は酒もタバコもやらずにホントに質素に生きるんで、この人生だけはとにかく全部やらしてくれ、みたいな感じで生きてるんで(笑)。とにかくこの人生だけは、とことん追い求めたいです! ということで、布袋さん、待ってます!
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不安な夜、メキシコのハイウェイで心に響いた布袋寅泰の曲とは?(1)

 


【PROFILE】
Ken45°(ケン・フォーティーファイブ)

1982年5月25日生まれ。172cm、80kg。2002年12月にメキシコでデビューし、2017年にレスラー生活15周年を迎えた。現在はみちのくプロレスを中心に活躍。毎年8月にロックとプロレスのコラボイベント「ロッキンファイト」を開催している。

■参戦情報
2017年12月15日(金)18:30試合開始 東京・後楽園ホール
2018年 1月12日(金)18:30試合開始 青森・八戸市八食センター厨ホール
2018年 1月13日(土)18:30試合開始 岩手・矢巾町民総合体育館
2018年 1月14日(日)13:00試合開始 宮城・仙台市泉区・仙台ヒルズホテルみちのくホール ほか

公式ブログ 
http://blog.livedoor.jp/pineappleli/


Photo:Great The Kabukicho
Text:明知 真理子