CASIOPEA 3rd 野呂一生と共演できる!?「バーチャルセッションコンテスト」開催!
12月13日より、mysoundにて「バーチャルセッションコンテスト」のエントリーが始まった。
このコンテストは、日本を代表するフュージョンバンド、CASIOPEA 3rdの野呂一生さんによる監修のもと、CASIOPEA 3rdの代表曲「DAYS OF FUTURE」をまるで野呂さんと掛け合いでセッションしているかのように楽しむことができ、さらにその腕を競い合えるという新しい動画投稿型企画となっている。
そこで今回は、コンテスト用オリジナル音源のレコーディング現場を訪問し、インタビューを敢行!
コンテスト参加者へのアドバイスから、新しい機材について、また10代の頃の話や作曲方法についてなど、濃い話を伺うことができた。
「DAYS OF FUTURE」はメロディをいかに自分らしく聴かせるか工夫していただきたい。
─コンテスト課題曲となっている「DAYS OF FUTURE」は、どういったイメージで作られたのでしょうか?
これはCASIOPEA 3rdになって初めて出したオリジナルアルバム(2013年『TA・MA・TE・BOX』)の1曲目なんです。“これから新しい日々が始まる”、そんなイメージで作りましたね。イントロの最初のフレーズがメインになっていて、それをだんだん脚色していくという手法をとっています。このイントロができたときは、もうこの曲できたと思いましたね(笑)。
─今回のレコーディング含め、どのような気持ちで演奏されていますか?
やはり“未来の日々”というタイトルなので、未来はまたどんどん作っていけるんだよっていうニュアンスが強いと思います。そういうイメージで聴いてもらえたら嬉しいですね。
「DAYS OF FUTURE」バーチャルセッションコンテスト用音源レコーディングの様子
─コンテストに参加される方にアドバイスをお願いします。
TAB譜は僕が書いたんですけど、そのまま弾いてもいいのですが、たとえば左手のフィンガリングに関して、その音を出すときに1フレット低いポジションからスライドさせたりだとか、ベンディング…日本ではチョーキングと言われていますけど、弦を押し上げてその音程を出すとか、そういった工夫が随所にあると聴きやすくなるかなと思います。それと、ビブラートですね。ビブラートがあるかないかでも随分ニュアンスが違いますので、そのあたりは気を付けてやっていただきたいです。あとは、鳴らしている弦以外を必ずどこかの手でミュートしてあげると、綺麗な音になりますね。
─必ずしも忠実に弾くのが良いというわけではなく、弾き手の個性が前面に出てもOKと。
えぇ、もう何でもありだと思いますね(笑)。そのメロディをいかに自分らしく聴かせるかというところで、工夫していただきたいと思います。
Line 6のHelix Floorは、これまでに開発されてきたものの総決算という感じがします。
─機材についてお伺いします。以前は、アンプモデル内蔵のマルチエフェクトとしてLine 6のPOD HD PRO Xを使用されていましたが、今日は同じくLine 6のHelix Floorを使用されていました。
そうですね。Helix Floorを導入して、(以前と同じく)アンプ内蔵のパワードスピーカーを2台ステレオで鳴らしています。ラックタイプのものがなくなったので、以前はその上にピックとかいろんなものを置いたりしていたんですけど(笑)、置き場がないので今は小さな台を作ってもらって、そこに置いています。
─今回のレコーディングでもワイヤレスを使用されていて驚いたのですが、ワイヤレスシステムもラックタイプのRELAY G90からRELAY G70に変更されましたね?
小型のものになりました。面白いのが、“ケーブルトーン”というギターケーブルの特性を再現する機能があって、もちろんバーチャルなんですけどケーブルの長さが設定できるんです。ケーブルの長さをどんどん長くしていくと、音が甘くなっていく感じですね。痩せるというのとは違って、こもる感じというか。逆に、ケーブルを極端に短くすると、ハイ(高音域)がカチッとした感じになります。僕は7メートルぐらいのケーブルを使っているという設定でやっていますね。
─Helix Floorを導入する決め手となった点は、どのあたりでしょうか?
前のセットでLine 6の歪み方や他の部分にも慣れていたというのもあって、新しい機種が出たのでどうだろうってことで試してみたら、やっぱりさらに良くなっていたんですね。ラックで組むシステムと比べると結線もないので、ものすごくダイレクトな音が作れる。そういう部分での心地良さもありますね。昔は、ラックにたくさんのエフェクターとかアンプを積んで、それをケーブルでつないでやっていたものが、全部この中に内蔵されている感じです。スナップショットというモードがあって、一つのプリセットの中で、使用している各エフェクターのオン/オフや設定の状態を複数記憶させて1番2番…という感じで切り替えて使えるんですね。今まではMIDIで制御していた部分が、この中で全部できてしまうという感じです。
─ベーシックなサウンドの方向性が変わったわけではないですよね?
そうですね。曲によっては踏み替えるのがすごく大変な曲もあったのですが、1個踏めば瞬時に切り替わるので、その使い勝手がすごくいいんです。
─「DAYS OF FUTURE」のセッティングに関して、以前との違いはありますか?
以前は、空間系のエフェクトは別のもの(TCエレクトロニックのG-MAJOR)で、それをMIDIで同期させてコントロールしていたんですけど、それがLine 6のHelix Floorだけで行えるようになったというところですね。それに、スナップショットで切り替えたときに音が途切れたりすることが一切ないので、これまでに開発されてきたものの総決算という感じがします。
─ちなみに「DAYS OF FUTURE」では、何種類のサウンドを使い分けていますか?
3種類ですね。バッキング用の、ちょっとレベルを抑えたクリーントーンで、それをピッチコントローラーでステレオに広げたもの。それがイントロで使っているサウンドです。で、モノラルのディストーションの音に空間系のリバーブとディレイをかけたもの。これは単音のメロディとかソロセクションで使っているサウンドです。あと、激しいキメのところですね。そこは2つ目のサウンドをステレオに広げたものです。レベルは変えていますが、アンプなどの根本的なサウンドは同じものですね。
ちゃんとしたプロには太刀打ちできないと思って、1日9時間ぐらい練習していました。
─話は遡りますが、プロになりたいと意識し始めたのは10代の頃ですか?
ひょっとしたら、なれるかもしれないなぁという感じではあったんですけど。高校生の頃は、高田馬場にビクターミュージックプラザっていうところがあって、そこに何回かアマチュアバンドで出演したり、プリレコーディングみたいなことも体験させてもらったりしていたんです。でも、そのときはボーカリストがいるバンドで、そのボーカルに全部おんぶにだっこみたいな感じに思えてきちゃってね。それよりは、まったく違うメンバーで新しいものを始めたいなってことになって、大学に進学するんです。ただ、入学してロック研究会に行ったら、すぐに入ってくれっていうバンドがあって(笑)。そのバンドでは、よく刑事ドラマなんかに出ていた星正人さんという若手俳優さんがいたんですけど、その人の『男組』っていう映画(1975年作品)に出演して。一応デモレコーディングみたいなこともやりました。
そんな中で、当時もうカシオペアっていう名前でセッショングループみたいに自分のバンドをやっていたんです。やっぱり、こっちのほうが本格的にやりたいってことで、そのバンドもリタイヤさせてもらって。でも、そのときにセミプロでやってみないかっていう話が来たんですよ。それがフォークシンガーの中山ラビさんのバンドで、何本かコンサートをやったり、関西にツアー行ったりとか。それが一応セミプロとしてのデビューみたいな感じでしたね。
─ヤマハ主催のコンテスト『EastWest』に出られたのは、それから間もなく? サザンオールスターズも出場していましたよね。
そうですね。『EastWest '77』に出たときはサザンオールスターズと一緒だったんですけど、桑田くんがベストボーカル賞で、僕がベストギタリスト賞だったんですよね(カシオペアとしては優秀グループ賞も獲得。さらに野呂自身は『EastWest '76』から2年連続でのベストギタリスト賞に輝いた)。
─そこからは、とんとん拍子でプロに?
とんとん拍子ではなかったですね(笑)。まだ駆け出しのアマチュアに毛が生えたようなものだったので、ちゃんとプロでやっている人たちの演奏にはかなわないなっていうのが、当時の印象でした。いろんなものを見てみると、その世界のすごさっていうものがどんどんわかってきて、これはちょっとやそっとの練習量じゃ絶対に太刀打ちできないなっていう感じがあったんです。だから当時は、1日9時間ぐらいは練習していました。いろんなことを覚えなきゃいけないっていう頭があって。アルペジオの使い方とかスケールの使い方とか、そういうことを必死に勉強しながら練習しましたね。
─そこからプロとしての長いキャリアを積み重ねていく中で、モチベーションを保つ秘訣というのはあったのでしょうか?
のめり込み過ぎないほうが、長続きすると思います。弾きたくなくなっちゃうと、モチベーションが下がってしまうので。それと年齢を経るとともに、あまり長時間練習すると手とかに障害が起きたりすることもあるので、本当に適度にやる感じですね。弾きたいなぁと思ったときは存分に弾いて。
頭の扉みたいなものが開いちゃえば、どんどんアイディアが出てくるんです。
─曲を作るときのプロセスを教えていただけますか?
絵を描く作業と曲を書く作業っていうのは、ほとんど同じ感じなんですよね。自分でも絵を描くんですけど、頭の中に漠然とあるイメージを無理やり外に出すっていうようなところは、本当に近いなと思います。
─どういった状況だと出てきやすいのでしょうか?
散歩がいいですね。一定のリズムで歩いてると、連想しやすいんですよね。だから、よく歩きます。あとは乗り物ですね、電車とか飛行機とかに乗って、ぼーっとしているとき。“あっ!”と気が付いたらメロディが浮かんでたりとか、そういうときはありますね。
─締め切りに追い詰められることもありますか?
それほどまでに追い詰められることはないのですが(笑)、作るときは集中して作ったほうがすごく効率がいいので。というのは、頭の扉みたいなものがあって、それが開いちゃえばどんどんアイディアが出てくるんですけど、それを開けるまでにすごく時間がかかるんですよ(笑)。“うーん、こういうのはどうだろう”とか、もう暗中模索みたいなところから、やっと答えが出始めると、うわーっと書けるんです。だから1曲ずつに絞って作るというよりも、3曲ぐらいずつ考えながら同時に作っていく形が多いですね。絶えず2~3曲、まとめて書いてます。
やりたいなと思ったことを吸収して、自分なりの音を作っていってほしいですね。
─現在でも刺激を与えてくれるようなアーティストはいますか?
すごい人は本当にたくさんいますからね。最近はYouTubeとかで、いろんなものが見れるじゃないですか。中でも一番のお気に入りは、レス・ポールさんですね。特に若い頃のプレイは素晴らしいです。ハッピーな気持ちになるんですよね。ギター弾いてるだけなのに、ものすごく楽しそうなんですよ(笑)。他にも往年のジャズプレイヤーの若い頃の映像とか、そういうのはよく見たりしています。その人の最盛期みたいなときって、やっぱりみんな抱えてる感じがあるんですよね。そんなところが、いいなぁと。そういう素晴らしいプレイを見たり聴いたりするほど、もっと頑張らなくちゃなって気持ちになりますね。今の自分より随分と年下だったりするので(笑)。
─では、今あらためて感じるギターの魅力とは、どんなところでしょうか?
ひとことでギターと言っても、本当にいろんなジャンルがあるんですよね。で、そのジャンルごとに理論的背景が全然違うものもある。クラシックギターであったり、フラメンコギターであったり、ジャズギターであったり、メタルのギターであったりとか。それぞれずっと、そのジャンルで培われてきた理論がある。もう知れば知るほど深いものだなって思います。同じ楽器とは思えないくらいですね、そのジャンルごとに。
そこで、自分が使っている理論形態はジャズに近いものが多いですから、やっぱりジャズプレイに関しては今でも“おぉ、すごいな!”とか思いながら聴いている感じですね。深遠さを感じます。本当に、その人なりのメソッドで独自の世界を築いてる人たちが多いので。だから、そういう部分での個人的なパワーみたいなものを感じてしまいますよね。
─ご自分では、そういったものを確立できたという感覚は…?
全然思ってないですね(笑)。ギターのプレイに関しては、まぁゆっくりやってる感じです。“あ、こういうことがやっとできるようになった”みたいなね(笑)。そんな感じで、ずっと続いています。
─では最後に、これを読んでいるギタリストの皆さんにメッセージをお願いします。
これができなきゃダメだ、なんていうものはまったく何もないので、とにかく自分がやりたいなと思ったことを吸収して、自分なりの音を作っていってほしいと思いますね。
<使用機材>
Yamaha IN-DX
▲2016年3月頃から使用している最新のメインギター。
トレモロユニットはフロイドローズで、コントロールは各ピックアップのボリュームとマスターボリューム、フロントトーン、リアトーン。
センターボリュームはオン/オフスイッチ兼用で、トーンは各ハムバッキングピックアップのコイルタップスイッチ兼用。
今回のレコーディングでは、フロントのハムバッキングとセンターのシングルコイルのハーフトーンで弾いている。
Yamaha SG-Mellow
▲2007年に登場し、ISSEI NORO INSPIRITSでは2009年の2ndアルバム『MOMENTS』以降、メインで使用。
セミアコ的な響きと軽さが気に入っている。
今回のレコーディングでは、参加者が演奏するパートのレコーディングで使用。
ピックアップセレクターはセンターで、フロントはハムバッキング、リアはコイルタップでシングルコイルにしている。
EFFECTOR & WIRELESS SYSTEM
▲Line 6のHelix Floorを使用。
マルチエフェクトフロアボードシステムのフラッグシップモデルで、モデリングアンプの先駆者と言えるLine 6ならではの高品位なアンプモデルも内蔵しているため、野呂本人はギターアンプを使用していない。
右上は、同じくLine 6のRELAY G70ギターワイヤレスシステム(レシーバー)。
右下は、TCエレクトロニックのMIDIコントローラーG-MINOR。
ちなみに、初めて「DAYS OF FUTURE」をレコーディングしたとき(2013年)は、ヤマハのデジタルアンプDGシリーズ(生産完了品)を使用していたとのこと。
▲Line 6のRELAY G70ギターワイヤレスシステム(トランスミッター)。
野呂は今回のレコーディングでも、ライブさながらに立って演奏するだけでなく、ワイヤレスシステムも使用。
ORIGINAL PICK “東京 日本”MODEL
▲2年掛かりで完成したというオリジナルピックで、通称“東京 日本”モデル。
素材はシェルプラスチックで、厚さは0.99ミリ。
角のカーブの具合にこだわりがあり、最終的には野呂自身の手作業で削って丸みを作ったという。
Interview&Text:森 泰一(FAMiLIES)
Photo:溝口 元海