AKIKO KIYAMA×SHE TALKS SILENCE 『ぼっちMUSIC的ギター練習のすゝめ』

‘04年にロンドンのレーベルからリリースしたデビュー作がリッチー・ホウティンらシーンを代表するDJたちに高い評価を受け、現在はミニマルテクノというジャンルに留まらず、アンビエント、ブレイクビーツ、変拍子とエレクトロニックミュージック界を自由に回遊するAKIKO KIYAMA。また、‘09年に『Noise & Novels』でデビューし、独特のウィスパーボイス&ギターで宅録インディ・ロック界の旗手として注目されるSHE TALKS SILENCE(山口美波のソロプロジェクト)。一見畑違いの二人は、音楽を通じた友人関係だ。そんな二人に「mysoundプレーヤー」のコード表示機能が楽器の練習、楽曲制作にどう活用できるのか、使用感レビューをお願いした。興味深いギター談義になった模様をお届けする。
テクノとインディ・ロック。ジャンル違いの二人が好むギターサウンドは?
─まったくジャンル違いのお二人ですが、よく一緒にスタジオ入りしているとか。出会いなどどういうきっかけで仲良くなったのですか?
AKIKO KIYAMA(以下A):‘07年から7年半ベルリンで活動していたのですが、帰国する少し前……‘13年くらいにネットでSHE TALKSさんの「walks out from the voice」という楽曲を知って、いきなりメールを送ったのがきっかけです。ギターとボーカルの多重録音だけで作った10分以上ある長いアコースティック・ナンバーで、不協系コードというか、ちょっとずつ微妙にコードがずれていくイメージがすごく好みだったんです。ドイツにいると、割とフランクに知らない人にメールすることに抵抗がなくなっていて……(笑)。何となく気が合いそうな空気を音から感じたんですよね。
SHE TALKS SILENCE(以下S):まったく知らない人からメールが来ることってほとんどないので、ましてベルリン在住の人からでびっくりしました。それからペンフレンド(笑)みたいな感じでやり取りが始まって、KIYAMAさんが帰国してからは、テクノについて教えてもらったり、私がスタジオ入りする時にお誘いしたりしています。
https://twitter.com/shetalkssilence/status/900304721851723776/photo/1
KORGのmonologueによるレッスン風景
A:実際お会いしたら、想像以上に小柄で可愛らしい方だったので驚きました。
S:手が小さいから、ローコードの狭い範囲だけで完結することが多くて、簡単に弾くためのはずのパワーコードも最近やっと押さえられるようになったくらい(笑)。でも、子供でも上手に弾ける子がいるんだから、手が小さいことは言い訳にできないって自分を鼓舞してます。
─今回は、お二人にコードと歌詞が自動で表示されるアプリ「mysoundプレーヤー」を使用して頂き感想を聞かせて欲しいのですが、まず、それぞれのギター歴を伺えれば。KIYAMAさんは以前インタビューをお願いしたように、LUNA SEAのINORANさんにかなり影響を受けているんですよね。
A:はい。INORANさんのギターやアルペジオにはたくさん影響受けました。幼稚園から高校まではわりと本格的にクラシック音楽教育を受けていて、楽器はピアノをやっていました。ずっと綺麗に鳴る音だけを目指していたので、中学1年のときロックのギター音、ディストーションとか歪みのある音に出会った時は本当に新鮮で「すごい楽器だな」と思いましたね。紫レスポールのINORANモデルと『mother』のスコアブックを買ってもらって意気揚々と練習を始めたんですが、他のギタリストを知らないからすごく下の方にギターを持って「どうしてこんなに弾きにくいんだろう……」って、3ヶ月くらい悩んだり、INORANはよくステージ上でクルクル回るので、それも真似して「有線じゃなくてワイヤレスを使ってるんだ……」ってことを身をもって知ったり(笑)。
「GENESIS OF MIND~夢の彼方へ~」は間奏部分のコードが割と簡単だったので、弾いた気になれてよく練習していました。あとは、少しギターに挫折していた時に「gravity」のサビ部分はコードが4つくらいしかないので、「この曲なら弾ける!」と、希望をもらいましたね。今は楽曲としてギターを弾くよりも、単音や不協和音を録って素材として使うことが多いのですが、デスク作業中につまびくのは大好きで、気がつくと「RA-SE-N」を弾いてたりします……。
「GENESIS OF MIND~夢の彼方へ~」解析結果
S:音楽的な目覚めは、小学5年生のときに塾の先生が貸してくれたフリッパーズ・ギターでした。子供の頃、ピアノを習ってはいましたが、ギターに関しては大人になって、音楽活動を始めようと思ってから。最初に買ったのはエピフォンのSGだったのですが、なんと一ヶ月後にはライブをやらなきゃいけない状況だったので、まずD、A、Gくらいを必死で練習して臨みました。オリジナルを作り始めてからも、C→F→C→Fだけで終わっちゃう曲とか(笑)。最初に練習したのはザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンドとかですね。日本のアーティストだとSalon Musicさんが好きで、「If You Wanna Take My Shoes」をよく耳コピしていました。
─そういえば、昨年は『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ』のリリース50周年で、ジョン・ケイルが来日(http://www.bluenote.co.jp/jp/artists/john-cale/)していましたね。それにしても、ギターを始めて1ヶ月でライブは大変じゃ……。
A:でも、必要に迫られると本気になりますよね。私も大学生の時、一緒にやるはずだった人が急に辞めちゃって、「3週間で、ひとりで人前でやれるところまで持っていかねば!」ということがありました(笑)。無理矢理でも人前で演奏する経験が上達の早道かもしれない。中高生だと、それが文化祭みたいな。
S:私は未だにその状態でライブに臨んでます(笑)。ただ、やっぱり家にいる間はテレビを観るにしても何をするにしても、弾かないまでもギターを持つようにしようと思っています。体に慣らすというか。あとは「今週の課題曲」みたいなものを作って、自分の曲以外で好きな曲を練習しています。ちなみに先週の自主練習課題曲は、The Cureの「Boys Don’t Cry」でした。
ただ、ネットでタブ譜を探すと、特に洋楽は膨大な量のスコアが出て来て、どれが良いのか検証しながら選ぶのがかなり手間なんですよね……。逆にSalon Musicさんみたいにコアなアーティストはネット上にもなくて、耳コピせざるを得ない。
「mysoundプレーヤー」アプリを使ってショーン・レノンに挑戦!
─そんなSHE TALKSさんに「mysoundプレーヤー」はぴったりかもしれません! この無料アプリ、仕組みとしては音声信号を読み取ってリアルタイムで解析、コード譜を表示してくれます。ギター、ウクレレ、鍵盤でのコードの押さえ方、五線譜でのコード構成音の表示もできるので、知らないコードでも弾き方がすぐ分かるんです。
─試しにSHE TALKSさんの「Walk Away」を解析してみましょうか。
「Walk Away」解析結果
A:音声信号を読み取って解析って、すごい技術ですね。リアルタイムなのに思ったよりサクサクいって優秀~。
S:十数秒、あっという間に終わりました。あ、うん。合ってると思う! って、なんか新鮮な感動がありますね(笑)。ちょっと他の曲でもやってみよう。
A:ちなみにこの曲、私は疲れたときに癒されたくてよく聴きますよ。
S:“疲れ声”ってよく言われます(笑)。このアプリは、スマホで聴いてる音源ならなんでも対応してくれるんですか?
─スマホ内に音源データがあれば、現代音楽でもクラシックでもヒップホップでも基本的にはどんな楽曲でも可能です。
A:私を含め、ダウンロード派は世間的にちょっと古典派に分類され始めてますけど(笑)、マニアックな音源でも解析してくれるというのは、練習意欲が湧きますね!
S:あと、スマホですべて完結できるのが良いですよね。ネットで探したものをプリントアウトして……って手間がないのは嬉しい。
A:確かに。中学生の頃はネットもスマホもなかったから……。今ならギターをあんなに下に持つこともなく、もう少し楽に始められたのかも。
S:そこ(笑)? KIYAMAさん、何か弾いてみたい曲ってありますか?
A:そうですね……私はギターだと、ショーン・レノンのコード感がすごく好きなんですけど。「Dead Meat」は聴いたことあります?
S:『Friendly Fire』の1曲目ですよね! あのアルバム私も大好きで今もよく聴きます。2曲目の「Wait For Me」も良いですよね~。
A:それ~! 丁度、ベルリンに行く前にアコースティック・バージョンを聴いて、コードがキレイで感動しつつ、でも自分はこれからエレクトロニックミュージックをやるんだよなって飛行機の中で聴きながらさめざめとしたのを思い出しました。練習もしようとしたんですけど、ネットで探しても複雑なものばかりで、あとカポを使用してる譜面が多くて諦めたような……。
─では、お二人が出会う前にすでに共通で好きだった「Dead Meat」を解析してみましょう。
「Dead Meat」解析結果
A:なるほど、こういう感じなんだ~。あ、dim(ディミニッシュ)も結構出ますね。
S:dimって、私なんとなくしか分かってないんですが、ショーンは多用しているんですか?
A:比較的多い気がしますね。なんか和音間隔が狭くなって不安定な響きになるんですよね。私も結構好きなんですが、波形が特徴的なのかな?このアプリはdimを捉えるのが得意っぽいです(笑)。
しばし練習に没頭する二人
S:リアルタイムで追いつくのが大変だから、ある程度スルーしながらでも、これは確実に練習のモチベーションが上がりますね!
─特定部分だけであれば、A地点とB地点を繰り返し再生するループ機能もあります。
S:あぁ、それも嬉しい。なんとなくコードを覚えたら、歌詞を追いかける余裕も出てきますね。
A:実際弾いてみると改めて良い曲ですね~。ショーンに限らずですけど、複雑なコード進行をしてそうで、蓋を開けてみたらコード自体は難しくなくて、コード進行やコンビネーションの良さなんだな……とか、そういう発見があるのも面白い。コード感だったらTimber Timbreの「creep on creepin on」もシンプルだけどおしゃれですよね。あと、The Whitest Boy Aliveとか。
S:私も「Burning」は一回練習してみたことがあるんですが…、挫折したのでもう一回やってみようかな。
─この企画をやった甲斐があります! ちなみにSHE TALKSさんは、ギタリストとしては誰が好きなんですか?
S:ジョニー・マーが好きなので、THE SMITHSの「Bigmouth Strikes Again」とか弾けたら人生楽しいんですけどね。練習あるのみか。あと、Sonic Youthはチューニングが変だから、解析したらどうなるのか気になるかも。
A:サイモンとガーファンクルも良さそう。泣きっぽいコードがSHE TALKSさんに向いてません?
S:好きですね。すこし前に、小山田圭吾さんに弾き方のクセを指摘されて、そのとき効果的なミュートの仕方を教わったんですけど、ギターってやれどもやれども課題が出てきますよね……そこがおもしろいんですけど。
A:そのミュートの仕方、あとで教えてください……。私もSHE TALKSさんも、楽曲制作からライブまで基本的にはひとりで全部やるタイプじゃないですか。バンドならその都度指摘しあったり、先輩に教わったりできるんでしょうけど……自分のマインドを他者と共有するのが難しいであろう“ぼっち音楽家”、“ぼっちスタイル”というか(笑)。
https://www.instagram.com/p/BalDAlpjtqp/
Akiko Kiyamaの制作環境。スピーカーはヤマハMSPを使用
S:“ぼっちMUSIC”(笑)。でも、特に私たちみたいに自分ひとりで表現を完結したいタイプの人には、「mysoundプレーヤー」は最適ですよね。人に聞かないでもアプリが教えてくれるなんて、ギターを始めた10年前には考えられなかったですもん。
A:自分の曲は基本的にコード感のないものを目指しているんですが、こうやって見ているとこのコードラインで曲作ってみようかなって気にもなりますね。
こういうスマホを支えるスタンド的なものがあると、より使いやすそうだなぁ……。
S:まずそれ買いに行きません? 電気屋さんにあるのかな…意外とドンキとか? で、各自練習した暁にはショーンのコピーバンドやりましょうか。
A:え!? まさかの“ぼっちMUSIC”からの脱出。ちょっと考えさせて下さい(笑)。
S:ふふふ。冗談です(ジャ~ン)。
【PROFILE】
●AKIKO KIYAMA
カセットテープ主体のレーベル「Kebko Music」主宰。トロントで開催された「Redbull Music Academy」への招聘、バルセロナの「Sonar Festival」への出演など世界を舞台に活躍。別名義「Aalko」での、偽りのないオーガニックサウンドにも注目だ。
2018年1月19日(金) カセットテープアルバム&シングルカットバイナルAalko 『No Man Is An Island』が同時発売。また、春にはYoshirotten とのコラボ作品JABARAをリリース予定。
http://akikokiyama.com/
●SHE TALKS SILENCE
“MELLOW NOISE MUSIC” “BEDROOM NEW WAVE”をコンセプトに、‘08年手探りで宅録による制作を開始。TOWA TEIとのスプリット・シングルなども話題に。今年7月に発売した最新デジタル・アルバム『Sorry,I Am Not』は、近年のコンプリート盤的内容。
【LIVE】
■ART OF NOISE Vol.4
日程:2018年2月10日(土)
会場:大阪 environment 0g
Twitter
https://twitter.com/shetalkssilence
Photo:Great The Kabukicho
Edit&Text:仲田 舞衣
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