mol-74の叙情的な楽曲はどうやって生まれた?Vo. 武市和希に影響を与えた2バンドを探る


mysoundイチ押しのアーティストにテーマに合わせた楽曲をピックアップしてもらい、その曲にまつわるエピソードから本質を掘り下げていくプレイリスト企画。今回は1月17日にニューミニアルバム『▷(Saisei)』をリリースするmol-74から、全ての作詞を手掛ける武市和希(Vo、Gt)が登場して、彼らのそもそもの持ち味である伸びやかなメロディと、北欧や海外の極寒の地を想起させるサウンドのルーツを、テーマもズバリ「mol-74のルーツ」と題してセレクトしてくれました。

 

mol-74(1)

武市和希“叙情的だったり、いかに風景が浮かぶか?というところがmol-74にとってはすごく大事”


―今回の『▷(Saisei)』は、元々のmol-74特徴である冬の情景を思い起こさせる作風になりましたね。

話が前々作の『kanki』まで遡るんですが、mol-74にとってのポップさってものをいかに広げるかに挑戦したんですね。ただ、元々もっていたmol-74の本質的な部分が薄れる感覚もあって。そうなった時にバンドの原点をもう一度見つめ直した方がいいんじゃないか?っていうのがありまして。

一番最初に『越冬のマーチ』ってミニアルバムを出した頃は、当時そんなにこんな音楽やってるバンドいないなっていう感じの作品ができてて。作品っていうものに対して、次が最後になっても後悔しない作品が作れたらいいなと思って。自分たちがほんとにやりたいことってなんなんだろう?って、原点を見つめ直すことが今作の始まりだったんです。

―曲タイトルが全部記号なのも面白いですね。

『▷(Saisei)』っていうのは今からの再生っていうのも込められてて、それプラスアルファ、当初の尖った気持ちも再生させようっていうので繋げたら面白いんじゃないかな?と。そこからじゃあ全部記号でちょっと行ってみる?っていうので探したら、音楽再生機器に関するマークは6つしかなかったんですけど(笑)。

―今回はmol-74のルーツになってるバンドとしてASIAN KUNG-FU GENARATION(以降、アジカン)とシガーロスの2つを挙げていただきましたが、この2バンドに絞った理由はなんなんですか?

mol-74のバランスって完全な邦ロックではないし、洋楽かぶれのバンドでもないし、それを説明できる機会かなと思ったんです。今は信じてもらえないんですが、昔はアジカンみたいなバンドだったんですよ。オーディションの二次審査とかでも“もう君らのやってることはアジカンがやってるからいいんじゃない?”みたいな感じで(笑)。それじゃいけないなと思って、ちょうどそう思い始めた時に聴いたのがシガーロスの「Inni mer syngur vitleysingur」で、衝撃的だったんですよ。そこから影響受けて、掘り起こして行きましたね。

―では1曲ずつ武市さんにとってどんな影響があるの教えてください。まずアジカンの「月光」。

叙情的なものが多くて、それがすごい好きなんですね。この曲はイントロにピアノが入ってるんですけど、オーソドックスなボーカル、ギター、ベース、ドラムっていう中にすごくドラマチックな展開があったり、一人の主人公を描いた時にすごいストーリー性が感じられるんですよね。それはmol-74も影響されてる部分です。

月光
ASIAN KUNG-FU GENERATION

 

―続いて冷たい空気感もあり「或る街の群青」は?

MVの印象も強いんですけど、朝が来た感じがすごく表現されてるんですよね。街の雑踏の音が入ってるのもそういう世界への入らせ方とか、当時、高校2年生の僕にとっては“ヤバい!”と思わせるに十分でした。

或る街の群青
ASIAN KUNG-FU GENERATION

―「ネオテニー」はポストロック的でもありますね。

『ワールドワールドワールド』は1曲目から最後の曲までストーリーがあって、時系列で綺麗に作られてるんですよ。その中でも「ネオテニー」は、mol-74の風景描写やこういうシチュエーションで聴いてほしいっていう部分に大きく影響しましたね。アジカンの中で一番好きな曲でもあります。

ネオテニー
ASIAN KUNG-FU GENERATION

 

―時代が遡って「無限グライダー」はどんなところから影響を?

“あ、このシチュエーションが合うんだろうな”とか、その世界をすぐ想像させてくれる曲ですね。<答えないあの日の木陰>っていう歌詞から始まるんですけど、その時点で入って行かせてもらえる感がある。

無限グライダー
ASIAN KUNG-FU GENERATION

 

―最後は「真夜中と真昼の夢」です。

『ソルファ』の収録曲ですけど、『映像作品集第6巻~Tour 2009ワールド ワールド ワールド』でストリングス・アレンジの演奏を見て抜群に良くて。アコースティックギター1本とボーカルの音色で作られてて、プラスアルファ、ストリングスが入ったらこんなにもまた景色が違って聴こえる、そういう意味で興味をそそられた曲ですね​​​​​​​。

真夜中と真昼の夢
ASIAN KUNG-FU GENERATION

 

―そしてシガーロスの1曲目はプリミティブなリズムで知られる曲です。

確か3月の終わりとかちょっと暖かくなって来た頃に外で聴いてたんですけど、春感というか、“何この歓喜な感じ?”と、まずそこにびっくりして。そこからシガーロスってなんなんだろ?って調べて。自分の中にあったロックバンドの概念やフォーマットみたいなものを全て取っ払ってくれた存在です。日本で王道と言われるところにはこういうバンドはいなかったと思うので、自分たちに取り入れてみたら面白いんじゃないのかな?ってきっかけをくれたのがまさにこの曲なんです​​​​​​​。

Inni mer syngur vitleysingur
Sigur Ros​​​​​​​

 

―続いて「Valtari」。遠くで鳴っているピアノがいいですね。

この曲は富山県に一人旅した時、立山連峰ってすごく美しい山があるじゃないですか。2月ぐらいに行ってすごい雪が積もってて、ただただその中でアルバム『Valtari』を再生したらすごく似合ったってだけの話なんですけど(笑)。透明感がマッチしていました​​​​​​​。

Valtari
Sigur Ros​​​​​​​

 

―そして「Glosoli」は『Takk』収録曲です。

これはライブで見て好きになった曲。先日見に行ったライブは3人でやってて、全曲で同期を使ってたんですけど、それに違和感のないライブをしてるなと思いました。​​​​​​​

Glosoli
Sigur Ros

 

―そして「Vaka」のライブバージョン。この曲はおなじみですね。

『アフター・ウェディング』って映画で使われてたりもする曲ですけど、映画に曲が入った瞬間、そのシーンが映えて見えるというか。自分らもいつか映画に関わりたいので、そういう風に思わせてくれる曲ですね。​​​​​​​

Vaka (Live)
Sigur Ros

 

―最後は再び『Valtari』から「Ekki Mukk」です。

冬の遠くの方で聴こえる音みたいな。なんか冬って音速が変わるらしいですね。それも勝手なイメージですけど、そういうのも伝わってくるアルバムですし。mol-74も結構、冬、テーマにしてることが多いので影響をもらった曲ですね。​​​​​​​

Ekki mukk
Sigur Ros

 

―アジカンの叙情性、シガーロスの自由度がmol-74のルーツになっていることがよくわかりました。

音楽性は全然違いますけど、叙情的だったり、いかに風景が浮かぶか?というところがmol-74にとってはすごく大事だということが、この選曲をしてみて分かりましたね。

日本のシーンで生き残るためには絶対個性が必要だというのは、結成当時の自分たちの目標でもあったので。例えば僕のファルセットボイスだったり、今作ならギターのボウイング奏法だったり、シガーロスからの直接的な影響は少なくないです。

でも完全に洋楽みたいなのは自分には合ってなくて、いかに今の邦楽ロックの中で、ちょっとでも自分たちは違う切り口で行ってみたいなという気持ちがありますね。

 

mol-74(2)

 

ORIGINAL PLAYLIST

mol-74のルーツになった楽曲
武市和希(Vo、Gt)

月光
ASIAN KUNG-FU GENERATION​​​​​​​

或る街の群青
ASIAN KUNG-FU GENERATION

ネオテニー
ASIAN KUNG-FU GENERATION

無限グライダー
ASIAN KUNG-FU GENERATION

真夜中と真昼の夢
ASIAN KUNG-FU GENERATION

Inni mer syngur vitleysingur
Sigur Ros​​​​​​​

Valtari
Sigur Ros​​​​​​​

Glosoli
Sigur Ros

Vaka (Live)
Sigur Ros

Ekki mukk
Sigur Ros

 

NEW RELEASE

『▷ (Saisei)』
mol-74
2018.01.17(水)Release
LADR-013/ Ladder Records / ¥2,052(tax incl.)
♪mysoundで試聴

 

PROFILE​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​

武市和希(Vo,Gt,Key)、井上雄斗(Gt,Cho)、髙橋涼馬(Ba,Cho)、坂東志洋(Dr)
京都にて結成。日常にある身近な感情を武市の透き通るようなファルセット・ヴォイスを軸に、北欧のバンドにも通じる冷たく透明でありながら、心の奥底に暖かな火を灯すような楽曲で表現している。

mysound mol-74アーティストページへ

 

LIVE​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​

■mol-74「▷ (Saisei)」release tour [対バン]
日程:2018年1月26日(金)
会場:京都MUSE
時間:OPEN 18:30/START 19:00
料金:ADV ¥2,800
w/Halo at 四畳半

日程:2018年01月27日(土)
会場:徳島club GRINDHOUSE
間:OPEN 18:00 /START 18:30
料金:ADV ¥2,800
w/Halo at 四畳半

■mol-74「▷ (Saisei)」release tour [ワンマン]
日程:2018年03月24日(土)
会場:仙台LIVE HOUSE enn 3rd
間:OPEN 18:00 /START 18:30
料金:ADV ¥3,200

日程:2018年03月25日(日)
会場:新潟CLUB RIVERST
間:OPEN 17:30 /START 18:00
料金:ADV ¥3,200

日程:2018年03月31日(土)
会場:札幌SOUND CRUE
間:OPEN 17:30 /START 18:00
料金:ADV ¥3,200

日程:2018年04月06日(金)
会場:福岡the voodoo lounge
間:OPEN 19:00 /START 19:30
料金:ADV ¥3,200

日程:2018年04月08日(日)
会場:高松TOONICE
間:OPEN 17:30 /START 18:00
料金:ADV ¥3,200

日程:2018年04月15日(日)
会場:大阪Music Club JANUS
間:OPEN 17:30 /START 18:00
料金:ADV ¥3,200
日程:2018年04月22日(日)
会場:名古屋APOLLO BASE 
間:OPEN 17:30 /START 18:00
料金:ADV ¥3,200

日程:2018年05月13日(日)
会場:恵比寿LIQUIDROOM
時間:OPEN 17:17 /START 18:00
料金:ADV ¥3,500/DOOR ¥4,000

詳細はオフィシャルサイトで
http://mol-74.jp/


Text&Interview:石角 友香
Photo:山口 真由子