替え歌世界一!アル・ヤンコビックの今だから聴くべき10選


君はアル・ヤンコビックを覚えているか? マイケル・ジャクソンのパロディで有名で、原曲そっくりのPVには青春の1ページに奇妙な爪痕を残された者も少なくない。はずだ。たぶん。そうだといいのだが。実は83年のデビューから35年経った今でもバリバリ現役のコメディ音楽家で、グラミー賞は4度受賞、11度ノミネートの常連。そんなアル・ヤンコビックのメジャーデビュー35周年を勝手に記念し、輝かしい歴史を楽曲とともに振り返ってみよう!!

#1.今夜もイート・イット(84年)

言わずと知れたマイケル・ジャクソン「今夜はビート・イット」のパロディ。来日の際は『オレたちひょうきん族』に出演、「Eat it(食え)!」と連呼するカーリーヘアにちょび髭&メガネの男性には、衝撃を受けた少年も多いのではないだろうか。『ジョジョの奇妙な冒険』第3部で承太郎がジョセフに投げかけた問いでも一部で超有名な曲。本家そっくりのPVも話題を呼び、グラミー賞のベスト・コメディ楽曲部門を受賞した。
この曲を発表するにあたり、当時まだ無名の“おマヌケなコメディ作曲家”を自認していたアルは、既に世界的アーティストだったMJに使用許可を打診!さながらマサ斉藤を彷彿とさせるGo for broke(当たって砕けろ)精神だ。その結果、「彼は我々に電話をかけ直してくれただけでなく、面白いアイデアだねと認めてくれた」と後のインタビューで語っている。このMJの英断が、その後のアルの名声を後押しすることになる。


#2.FAT(88年)

マイケル・ジャクションの「BAD」を「FAT(デブ)」にしたパロディ。ダジャレにしてはPVも凝りすぎで、特殊メイクで巨漢となったアル・ヤンコビックがぽっちゃりバックダンサーを引き連れて披露するキレのあるようなないようなダンスは一見の価値あり! MJならば美しく風に吹かれるシーンも、アルは革ジャンから小さな風車を取り出すなど、随所に散りばめられすぎた小ネタも一つ残らず拾いたいところ。グラミー賞のベスト・コンセプトミュージックビデオ部門を受賞している。もちろんこちらもMJ公認で、実際のセットを提供してくれたのだとか。


#3.ライク・ア・サージン(85年)

マドンナのヒット曲「ライク・ア・ヴァージン」のパロディで、甘く鼻にかかった初期マドンナの歌唱法も完全カバー。PVはサージン(外科医)に扮したアルがマドンナ風に歌いながら無茶な手術をしまくるというナンセンスなものだが、悪フザケもここまで極めると美しい。


#4.Smells Like Nirvana(92年)

時代に寄り添うのがパロディ・アーティスト。グランジ全盛の90年代には時代の寵児ニルヴァーナの「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」に手を出した! 清掃員とチアリーダーはオリジナルPVと同じ出演者という徹底ぶり。激しいドラムとディストーションかけすぎのギターで混沌とした雰囲気まで再現してしまう点は、音楽家の本領発揮といったところか。「何を歌っているのか分からない」という替え歌だが、カート・コバーンは彼を“天才”と絶賛。アルも「カートはユーモアを理解する人で、この曲を愛してくれた」とお互いをリスペクトしており、カートの死後、彼が最後に暮らしたシアトルでライブの際は、カートの残した音楽と彼の人生を讃えてこの曲を演奏した。カバーするならここまでやり通したい。


#5.White & Nerdy(06年)

アル・ヤンコビックの魅力はカバー能力の高さ。面白さの追求のためなら、ロックだけでなくラップもこなしてしまう才人だ。この原曲はグラミー賞受賞経験のあるカミリオネアの「Ridin’」。White & Nerdy(白人でオタク)な男子のドン引きレベルの趣味をライムで奏でるPVは秀逸(ラストの“挨拶”が何か分かれば君も立派なオタク!)。そのラップスキルは、カミリオネアからも“彼は本物だ”とお墨付きをもらったほど。ビルボードTOP100で9位と自身初のトップテン入りを果たすヒットとなった。本気でやれば結果は付いてくる!?


#6.Perform This Way(08年)

すべての楽曲についてアーティスト本人から許諾を取る姿勢を貫くアル・ヤンコビック。レディ・ガガの「Born this way」のパロディは、一度はNGが出たものの、その後、マネージャーの独断だったことが判明。アルの大ファンを公言するガガ本人はこの曲を賞賛し、ゴーサインが出た。チャリティ活動に熱心なガガへの敬意から、すべての収益は人権団体に寄付された。


#7.Tacky(14年)

ファレル・ウィリアムスの「Happy」のパロディ「Tacky(非常識)」は、コメディアン仲間が次々と登場するPVが見もので、中にはあのジャック・ブラックも出演。既に一流音楽家のアル・ヤンコビックに取り上げられれば一流の証で、ファレル本人からは“光栄だ”と返事をもらったそう。「セレブと友達のふり」「葬式でも自撮り」など非常識でダサい行為をあげつらう替え歌だがハッピーな雰囲気を残す“さじ加減”は見事で、原曲への愛にあふれる仕上がり。この愛こそが、アーティストたちから尊敬されるポイントではないだろうか。収録アルバム『Mandatory Fun』で4度目のグラミー賞を受賞した。


#8.Polka Face(11年)

レディ・ガガの「ポーカー・フェイス」を基調にブリトニー・スピアーズ、ピンク、ケイティ・ペリー、ジャスティン・ビーバーなどのヒット曲メドレーは、まさかのポルカ・アレンジ。実は6歳でポルカ・アコーディオンを始めたアル・ヤンコビックは、アコーディオン奏者としても名手。ほとんどのアルバムにポルカ・アレンジ楽曲が収録されており、このPVでは見事な指運びを確認することができる。確かな演奏技術に裏打ちされた真摯な姿勢が垣間見える曲。


#9.Polkarama!(06年)

フランツ・フェルディナンド、ウィーザー、キラーズなど、この世代のロック好きにはたまらないポルカ・メドレー。ほか、ハイヴス、ホワイト・ストライプス、ストロークス、リンプ、エミネムなどが元ネタの「Angry White Boy Polka」、スパイス・ガールズ、バックストリート・ボーイズ、ビースティ・ボーイズが元ネタの「Polka Power!」、ナイン・インチ・ネイルズ、R.E.M.、グリーン・デイ等が元ネタの「Alternative Polka」など、その時代のヒットソングがまるごと詰まったポルカ・メドレーは、時代の気分を写し取った記録としても貴重!?牧歌的かつ早送り気味なアレンジにすることで原曲のアナザーサイドが見えてしまう極上カバーは、トボけた風味に腹筋崩壊は確実!パーティの必需品であるだけでなく、落ち込んでいる友人へのプレゼントにも最適だ。


#10.マイ・ボローニャ(79年)

メジャーデビュー前に自主制作した、ボローニャソーセージへの愛を執拗に連呼する作品。元ネタはもちろんザ・ナックのヒット曲「マイ・シャローナ」。バンドを志したことのある者、特にベーシストなら一度は弾いたことのある曲ではないだろうか。それをたった一人で、しかもアコーディオンで演奏し切る若き“ウィアード・アル”ヤンコビックの姿には孤高の神々しさすら感じる。どうせカバーするならここまでやりたい。そして笑いとともに楽曲の素晴らしさを伝える、これぞカバーアーティストの鏡!

 

Text:明知真理子


<関連リンク(mysound)>
Eat It
”Weird Al” Yankovic

Fat
”Weird Al” Yankovic

Like a Surgeon
”Weird Al” Yankovic

Smells Like Nirvana
”Weird Al” Yankovic

White & Nerdy (Parody of ”Ridin'” by Chamillionaire feat. Krayzie Bone)
”Weird Al” Yankovic

Perform This Way (Parody of ”Born This Way” by Lady Gaga)
”Weird Al” Yankovic

Tacky
”Weird Al” Yankovic

Polka Face
”Weird Al” Yankovic

Polkarama!
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Angry White Boy Polka
”Weird Al” Yankovic

The Alternative Polka
”Weird Al” Yankovic

Polka Power!
”Weird Al” Yankovic

My Bologna
”Weird Al” Yankovic