ハイレゾで味わうクラシック vol.11 ~5月病を吹き飛ばす、スッキリサウンド~


新年度スタートのあわただしさが落ち着いたころにやってくる待望のゴールデンウィーク。皆様思い思いのご予定をお過ごしになることと思います。最近のゴールデンウィークは祝日や土日がうまく続いて拡大傾向にありますが、さらに有給休暇をプラスして、“超大型連休”にされるかたも多いはず。しかし、楽しいお休みの後にはふたたび忙しい日々が……!! 憂鬱になってしまうかたもいらっしゃるのではないでしょうか。でも大丈夫! 素敵な音楽があなたの気持ちをスッキリと切り替えてくれるはずです。今回ご紹介する楽曲や演奏は、華麗なものから浄化されるような美しいものまで、幅広くそろえてみました。気持ちを切り替えて五月病を吹き飛ばしてくださいね!

美しい水の姿を描いた楽曲でリフレッシュ 


♪リスト:『巡礼の年 第3年』より「エステ荘の噴水」

タイトルの“エステ荘”とは、イタリアのティヴォリにある貴族エステ家による別邸のことです。2001年に世界遺産に登録されています。大小500の噴水が存在し、さまざまな姿を見せる水の美しさは多くの人々を魅了しています。リストはこの情景を軽やかな音型とキラキラとした高音を駆使し、見事に描写。エレーヌ・グリモーの繊細なタッチが引き出す作品の魅力、ハイレゾで聴くといっそう輝きを増しています。旅行気分で気持ちをリフレッシュしてみてはいかがでしょう?

巡礼の年 第3年 第4曲: エステ荘の噴水 (Live)

 

♪リスト:『巡礼の年 第1年』より「泉のほとりで」

「エステ荘の噴水」を含む『巡礼の年 第3年』よりも前に書かれた曲集で、リストが恋人のマリー・ダグーとともに愛の逃避行(!)をしたスイスで書かれたものです。こちらも美しい水の姿を描写していますが、どこかリストが大好きな人との旅にウキウキしているような心も見えてきます。なんだか気分がアガらない、やらなきゃいけないことがたくさんあるのにやる気が起きない……というときでもなんだか楽しい気持ちになるかもしれません。ハイレゾ・サウンドを通したラザール・ベルマンの華麗な演奏は、より“喜び”を感じさせてくれます。 

第1年《スイス》 S160:泉のほとりで

 

モヤモヤとした気分に発破をかけ、エンジン全開に! ​​​​​​​​​​​​​​


♪プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番ハ長調第1楽章

クラリネットのソロやアンサンブルに弦楽器、オーケストラの全楽器が加わって徐々に盛り上がっていくと、ピアノが“どうだ!”と言わんばかりに華麗に登場します。モヤモヤとした気分でボーッとしている時に“ほら、しっかりして!”と気合をいれてくれるようです。打楽器が活躍するのも特徴で、疾走するように展開していく楽曲は、高速をドライヴしているような爽快感があります。ラン・ランの圧倒的な超絶技巧と、快活な音楽づくりが魅力的なサイモン・ラトルのコンビがこの曲の魅力を最大限に引き出しています。ぜひハイレゾ・サウンドでこの極上のコンビの演奏をお楽しみください。 ​​​​​​​

ピアノ協奏曲第3番ハ長調作品26 第1楽章 アンダンテ-アレグロ
ラン・ラン​​​​​​​

 

♪ワックスマン:カルメンファンタジー​​​​​​​

多くの映画音楽も書いたワックスマンが、ビゼーのオペラ『カルメン』の名場面をもとに編曲した作品です。全篇にわたってヴァイオリンの超絶技巧が駆使され、多くの男性を魅了するカルメンの華麗さ、妖艶さ、危険さといったものをさらに力強く、輝かしく表現しています。オトナの魅力あふれる旋律に施された華やかな音型の嵐(!)を聴いていると、不思議な興奮状態になって、元気の出ない状態を忘れさせてくれますよ。服部百音さんの豊かな表現力、変化にとんだ音色がハイレゾで存分に堪能できます。ふだんいろいろなことをガマンしたり、モヤモヤがたまっているかたも、自由奔放なヒロインのカルメンになった気分になれば、やる気が増すかもしれません。​​​​​​​

ワックスマン:カルメンファンタジー​​​​​​​
服部百音​​​​​​​

 

♪バッジーニ:妖精の踊り​​​​​​​

ヴァイオリニスト / 作曲家のバッジーニの唯一知られているといってもいい作品で、テクニックに自信のあるヴァイオリニストたちの重要なレパートリーになっています。とにかくこの曲は“技巧を見せつける”ことを目的にしているので、聴く側も深く考えることなく、ひたすら鮮やかな技巧を楽しむことができます。あっという間に終わってしまうので、“これ聴いたら起きよう”とか“ちょっとした気分転換に”という時に最適です。神尾真由子さんの情熱的な演奏は、ただの妖精ではなく、“妖精の女王”といった風格があります。これを聴いたら“頑張らなきゃ!”とダラけた気分を奮い立たせてくれるはずです​​​​​​​。

妖精の踊り 作品25​​​​​​​
神尾真由子​​​​​​​

 

楽しい音楽に身を委ね、自分を解放してみる ​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​


♪『ティレジアスの乳房』より「いいえ旦那様」​​​​​​​

ジャズやポピュラー音楽の要素も巧みに取り入れたフランスの作曲家、プーランクが書いたオペラのなかでヒロインのテレーズが歌うアリアです。彼女が“男の言いなりの人生はもうたくさん!”と男女同権宣言をするとヒゲが生え、胸は風船になって飛んでいき、やがてティレジアスという名の男性に変身してしまうのです。たくさんの理不尽やイヤなことがたくさんある日々、それにガマンするだけでなく“もうイヤ!”とハッキリ伝えることも大切です。コロコロと変わっていく楽しい音楽に身を委ねて、自分を解放してみてはいかがでしょう? ジュリー・フックスのチャーミングな歌唱をハイレゾ・サウンドでぜひお楽しみください。それこそストレスが風船のように飛んでいってしまうかも!?​​​​​​​

Poulenc: Les mamelles de Tiresias / Act 1 - Scene 1 ”Non, Monsieur mon mari”​​​​​​​
Julie Fuchs/Stanislas De Barbeyrac/Orchestre National De Lille/Samuel Jean ​​​​​​​

 

いかがでしたでしょうか。美しい旋律やおだやかな音楽に浸って自分を癒してあげたり、華やかで力強い音楽を聞いて気分を盛り上げたり……、さまざまなタイプの音楽を楽しんでいただき、GW明けのなんだか盛り上がらない気持ちを切り替えていただけたら嬉しいです。
次回は6月1日(金)更新予定で、「梅雨を楽しむしっとりサウンド」(仮)をご紹介します。​​​​​​​