木製ギタースタンドを作ってみた【Let’s Do It Yourself!】

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所有ギターが増えてくると、プロのステージで目にするような、何本ものギターが立てられるスタンドが欲しくなりますよね。通販サイトでポチッと購入…するのも良いんですが、ここはひとつ自作にチャレンジしてみよう!ということで、一念発起したDIYビギナーのおじさんが複数立掛け式の木製ギタースタンドを作ってみました。材料はホームセンターなどで調達できるものばかりなので、記事を参考にみなさんもぜひ気軽に取り組んでみてください!
 

【目次】
1.必要な材料と工具をそろえよう
2.いよいよ作業開始!まずは土台を作ります
3.出来上がった土台に「柱」と「梁」接合!
4.完成まであと少し!ネックピローの位置決めと加工~接合

 

はじめに

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写真のギタースタンドは今回、設計や技術的な面でご協力いただいた、ギター工房「Premium Guitar Square」とオリジナルのカスタムギターブランド「Kigoshi Guitar」を主宰する木越孝之さんの手によるもの。高級材を使用している上に、釘などを使わない「ほぞ継ぎ」という木工技術を随所に駆使しているため、仕上がりが美しく、がたつきも起きにくくなっています。今回チャレンジするのは、このギタースタンドを簡略化したものになります。

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設計図/カット図PDFはこちらよりダウンロードできます。
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1.まずは必要な材料と工具をそろえよう


まずは木材を用意します。ノコギリを使って自分で切断する方法もありますが、垂直に真っ直ぐ綺麗に切るのはビギナーには意外と難しいため、今回はよりお手軽に、お店に切断加工をお願いしました。こうした切断加工サービスは、多くのホームセンターや木材通販サイトで行っています。

 

MEMO:材の種類について
今回はリーズナブルなラワン合板を使用しましたが、ワンランク上のシナ合板のほうが強度と見栄えの両面で有利です。特に塗装も行う場合は、より美しい仕上がりを楽しむことができます。
参考:@合板 http://www.gouhan.net
 
MEMO:塗装について
「塗装にもチャレンジしたい!」という方には、安価で、ビギナーでも失敗が少ないオイルフィニッシュをおすすめします。汚れやホコリを拭き取った組み立て前の部材に(400番手くらいの細かいサンドペーパーで表面をなめらかにしておくとなお良し)、オイルを刷毛で塗り乾く前に余分なオイルを拭き取ります。12~24時間置いて、再び塗装&拭き取り。お好みですが、これを3~5回繰り返します。
 
 

■用意する木材

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今回は21mm厚をセレクトしていますので、以降の設計計画は21mm厚がベースになっていますが、それ以外の厚みでも差分を考慮しながら製作することは可能です。

・土台1(縦)「長さ400mm×幅110mm」×2
・土台2(横)「長さ658mm×幅50mm」×2
・柱「長さ700mm×幅65mm」×2
・梁「長さ700mm×幅60mm」×1
・ネックピロー「直径25~30mm×長さ50mm」×3

木材の切断加工

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東急ハンズでは「910mm×450mm×21mm」のラワン合板が2,810円(税別)。ワンランク上のシナ合板は、同サイズで3,530円(税別)。ここに切断工賃がかかります。

ネックピロー用の材

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ネックピローとして使用する円柱形の材は、ちょうど良いサイズの円柱「直径30mm×長さ50mm」が1個80円(税別)で販売されていました。なければ直径25~30mm程度の円柱形材を50mmの長さに3本切断加工します。


■木材以外で用意するもの
・粘着タイプのコルクシート(クッション用)
・木ねじ「太さ3.8mm×長さ55mm」×15本
・木ねじ「太さ3.8mm×長さ32mm」×12本
・木工用ボンド
・ドライバー
・定規

粘着タイプのコルクシート

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ギターが直接触れる「土台2」やネックピローに巻くためのコルクシート。サイズは900mm×600mmで、裏面が粘着タイプになっているものが便利。1,030円(税別)にて購入。

 
MEMO:ラッカー塗装のギターは要注意!
コルクシート以外ではスポンジやゴム製のシートなどでも構いませんが、ラッカー塗装が施されたギターを立てる場合は、ゴム製だとギターの塗装が溶けてしまったり、ゴムがギターに付着してしまう恐れがあるので注意が必要です。


2種類の長さの木ねじを用意

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木ねじは、頭が平らなものを選択。太さは3.8mmがおすすめです。長さは基本的に55mmのものを使用しますが(15本必要)、それだと貫通してしまう箇所も出てくるため(「土台」と「柱」の接合部分)、長さ32mmのものも合わせてご用意ください(12本必要)。

木工用ボンド/ドライバー/定規

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木工用ボンドは接合面に使用することで、より強度を高めます。写真のコニシ製のものもおなじみですが、米国フランクリン社製の「タイトボンド」という製品もポピュラー。工具はプラスドライバーが最低限必要ですが、今回のような合板材ではなく無垢材を使用する場合は下穴をあけるためのハンドドリルやキリも必須(合板材の場合もあったほうがスムーズに作業できます)。

 

MEMO:その他にあると良いもの
今回は室内での作業のため、ビニールシートも用意しました(100円ショップにて購入)。また、できれば作業用の手袋や軍手も用意したほうが良いでしょう。今回の撮影では使用しなかったため、見事にマメができました(涙)。ケガ防止のためにも着用をおすすめします。
 
 

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2.いよいよ作業開始!まずは土台を作ります


【「土台1」と「土台2」の接合】

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最初の工程は「土台1」と「土台2」の接合ですが、まずは接合部とねじ穴の位置を計測します。ギターを置く「土台2」の材の間隔を229mmとしていますが、立てるギターの種類によってベストな間隔が変わる場合もあるため、各自所有のギターでシミュレーションの上、必要に応じて変更してください。

「土台1」に接合部分とねじ穴を計測して書き込み

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木材の両面を見比べ、美しいほうを外側に。ねじは外側から入れるので「土台1」の表面にはねじ穴の位置を、裏面には「土台2」を接合する位置を記していきましょう。まず表面は、材の両端からそれぞれ75mmのところに縦線を引きます。そして縦50mmの「土台2」を上から15mm、下から15mmの位置に留めますので、ここにねじ穴の印を付けて下穴をあけます。裏面は「土台2」を当てる位置だけでも構いませんが、ねじ穴の位置も記しておくと「土台1」を貫通する際に木ねじが垂直に入っているかを確認できます。

 

MEMO:下穴をあける際の注意点
ハンドドリル(電動ならなお良し!)やキリを使って、ねじ穴の位置に下穴をあけておくと、作業がよりスムーズになります。ドリルを使う場合は、ねじの太さよりも0.5~1mm程度細いドリルを使用しないと、穴が緩くなって強度が下がってしまうためご注意を!
 


木ねじで接合して土台部分が完成

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木ねじを締めていく際、もっとも重要なのは「土台1」の面に対して木ねじを垂直に入れるという点。さらに「土台1」に対して「土台2」を垂直に当てるという点も重要。より強度を高めたい場合は、接合面に木工用ボンドを塗ってから木ねじで固定します。


MEMO:土台のゆがみの解消
土台がゆがんでいると当然がたつきが出るため、できる限りその都度解消していきましょう。土台の左前方または右後方(赤色の部分)の足が浮いている場合は、部材の真ん中あたりを持って、左足を前方に、右足を手前にねじります(赤の矢印)。同じ要領で、青色の部分が浮いている場合は、右足を前方に、左足を手前にねじります(青の矢印)。こうすることで解消する場合も多いので、ぜひ試してみてください。
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ちなみに合板材は、コストパフォーマンス面に加え、無垢材よりも反りが発生しにくいという利点もあります。

 

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3.出来上がった土台に「柱」と「梁」接合!


基本的な作業工程は、先ほどの【「土台1」と「土台2」の接合】と同じ要領ですが、「土台」と「柱」の接合では、使用する木ねじの長さが変わります。「柱」と「梁」の接合は、設計図では「梁」は上から30mmの位置としましたが、お好みで構いません。下げすぎるとギターのボディに当たってしまう恐れがあるので、実際に立てたいギターを置いてみてベストな位置を探ってみると良いでしょう。

【「土台」と「柱」の接合】

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出来上がった土台に「柱」と「梁」接合!(2)出来上がった土台に「柱」と「梁」接合!(3)

「土台1」と「柱」の接合は、この部分のみ短い方の木ねじ(長さ32mm)を使用します。目算でOKですので、写真のような感じで6本のねじを打つ場所を決め、下穴を空けます。ねじを打つ際は6か所を外側から対角線上に締めていく(例:左下→右上→右下→左上→右中→左中など)と、ゆがみ防止につながります。


【「柱」と「梁」の接合】

出来上がった土台に「柱」と「梁」接合!(4)

 

出来上がった土台に「柱」と「梁」接合!(5)出来上がった土台に「柱」と「梁」接合!(6)出来上がった土台に「柱」と「梁」接合!(7)

 

「梁」の材は幅60mmということで、ねじ穴の位置は上下から各20mmとします。木ねじ4本で固定したら、これで骨組みとなる部分の接合は完了です。

 

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4.完成まであと少し!ネックピローの位置決めと加工~接合

今回のギタースタンドは3本用ということで、どんなギターを立てるか、また左向きに立てるか右向きに立てるかによって、ネックピローの位置は変わります。特にアコースティックギターとエレキはボディ厚にかなり差があるので、実際に置いてみた上で位置を決めると良いでしょう。

ネックピローの位置決め

完成まであと少し!ネックピローの位置決めと加工~接合(1)

 

完成まであと少し!ネックピローの位置決めと加工~接合(2)完成まであと少し!ネックピローの位置決めと加工~接合(3)完成まであと少し!ネックピローの位置決めと加工~接合(4)

実際に立てるギターを置いて、ネックピローの位置をシミュレーション。今回はアコースティックギター3本を右向きでも左向きでも立てられる万能型ということで、梁の長さ700mmを均等に割った175mm間隔、上下はセンター(上下から各30mmの位置)としました。

 

コルクシートを計測~裁断

完成まであと少し!ネックピローの位置決めと加工~接合(5)完成まであと少し!ネックピローの位置決めと加工~接合(6)完成まであと少し!ネックピローの位置決めと加工~接合(7)

ネックピローに巻くコルクシートの面積は、約94mm×50mmを3枚。そして、のちほど「土台2」に貼るコルクシートも、このタイミングで計測しておきます。サイズは「660mm×121mm」×2枚。計測を終えたら、カッターで裁断。


コルクシートをネックピローに巻く

完成まであと少し!ネックピローの位置決めと加工~接合(8)完成まであと少し!ネックピローの位置決めと加工~接合(9)

裏面が粘着タイプになっているコルクシートなので、作業はスムーズ。何だか海苔巻きを作っているような気分になります(笑)。


ネックピローを梁に接合

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ネックピローの接合面には、センターの位置を記しておきましょう。梁との接合を終えたら、コルクシートの切れ目の部分が下側に来るように調整すると見栄えが良くなります。


「土台2」にコルクシートを貼って完成!
最後に、先ほど裁断しておいたコルクシートを「土台2」に貼って、作業は完了となります。ギターの保護という点では、コルクシートは「土台2」の上面と内側をカバーしていれば問題ないのですが、外側もカバーしたほうが見栄え良く仕上がります。
 

MEMO
より見栄えと安全面を向上させたい場合は、「土台1」と「柱」の手前上部の角や左側面と右側面の角をヤスリやカンナで丸く仕上げたり、あるいはコルクシートなどのクッション材を貼ると良いでしょう。
 

「土台2」にコルクシートを貼る

完成まであと少し!ネックピローの位置決めと加工~接合(12)完成まであと少し!ネックピローの位置決めと加工~接合(13)

コルクシートを貼る際、きれいに貼るのは折り返しのほうが難しいので、手前に来る面を先に貼ったほうが無難。


がたつきなどをチェックして完成!

完成まであと少し!ネックピローの位置決めと加工~接合(14)完成まであと少し!ネックピローの位置決めと加工~接合(15)

 

逆方向にねじるなどの対処をしてもゆがみが直らない場合、もっとも簡単な応急処置は突板(つきいた=薄く切った材)などをかませて調整するという方法。作業中に出た端材を必要な厚さにカットしたものでOKです。ワンランク上の処置として、「土台1」の手前部分を左右ともかさ上げする形で突板をかませて、あえて角度をつけているように見せるという方法もあります。


いかがでしたでしょうか。トータル5,000円程度で(それなりに)立派なギタースタンドができてしまいました。「やっぱり通販で買ったほうが早いやんけ!」という声も聞こえてきそうですが、世界に一点しかないアイテムは我が子のように愛おしいものです。ぜひみなさんの“作ってみたレポート”をお寄せくださいね。それでは、充実のDIYライフを!

 

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協力
Premium Guitar Square

Premium Guitar Square


神奈川県小田原市に工房を構え、ギターやスピーカーキャビネット、家具の製作を行う。多くの有名プロギタリストも絶賛愛用中のカスタムギターブランド「Kigoshi Guitar」を展開し、『2016楽器フェア』に続き『2018楽器フェア』にも出店予定。
http://www.guitar-square.com
http://www.kigoshi-guitar.com