大森南朋(月に吠える。)が選ぶ「ギターが弾きたくなる10曲 」 【Premium Playlist】

俳優だけにとどまらず、バンド・月に吠える。のギター・ボーカルとして音源制作とライブ活動も行っている大森南朋。実は「ガキの頃の夢はギタリストだった」と語るほどのギターフリークだ。そんな大森がギターとの出会いから、ギターが弾きたくなる10曲を選びながらギターの魅力を語ってくれた。
最初のギターヒーローはキース・リチャーズ!
─役者だけではなく、月に吠える。というバンドを4年前に結成して積極的に活動していますね。
大森:役者が音楽活動をすると“片手間にやっている”と思われてしまいますが、役者になる前、ずっとバンド活動をしていたので、月に吠える。は長年の夢がかなった感じなんです。しかも、子供の頃の夢はギタリストになることだったので、役者になった時、『役者になっちゃった』みたいな感じで。この記事、他の役者が読まないといいんですけど(笑)。
─(笑)。では、ギターに目覚めたきっかけは?
大森:兄の影響です。大森立嗣という映画監督なんですけど…
─もちろん知ってます。
大森:その兄は小さい頃、ハードロック好きで、オジー・オズボーンとかアイアンメイデンとかを聴いていて、部屋からはいつもハードロックが流れてきてたんです。でも、兄貴のことが嫌いだったから、ハードロックも好きになれなくて(笑)。とは言っても、中学ぐらいになるとみんなロックを聴くわけじゃないですか?当時、邦楽だとレベッカとかハウンド・ドッグとかレッドウォリアーズとかがリアルタイムで、その辺を聴いてたんです。あとは、中央線沿線の阿佐ヶ谷に住んでいたので、サブカル系の雑誌も読んでいて、ラフィン・ノーズが新宿のスタジオアルタ前でソノシートを無料で配った記事とかで盛り上がってました。
─洋楽は?
大森:同世代の方々はわかると思いますけど、洋楽だと『ベストヒットUSA』というテレビ番組がリアルタイムでして、マイケル・ジャクソン、マドンナ、U2、デュラン・デュラン辺りを聴いてましたが、どれを聴いていても、ビートルズと(ザ・ローリング)ストーンズがその奥にあることを知って、直ぐにビートルズとストーンズを聴くようになって。それでギター始めました。なので、最初のギターヒーローはキース・リチャーズです。
─なるほど。ちなみに、最初にカバーした曲って覚えてます?
大森:本当は言いたくないですけど、ラフィン・ノーズの「SOS」のイントロと「ソング・フォー・USA」という曲のイントロです。今でも弾けると思います。
─何故その曲を?
大森:大した理由はなくて、目の前にスコアがあったからです (笑)。
ギターリフはどこからパクったがバレないようにするのがポイント!?
─(笑)。で、今日は、ギターを始めて30年程経過している大森さんに『今ギターを弾きたくなる曲10選』というお題で、曲をチョイスして頂こうと! 選曲理由もちゃんと付けてください。
大森:(笑)。では先ずは、エアロスミスの「Mama Kin」。この曲のフレーズはロック好きなら誰もが弾きたいんじゃないかなと思いまして。この曲を月に吠える。でカバーすることはないけど、今でも思い出したようにリフは弾いてみたりはしてます。
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Aerosmith
─1曲目はエアロスミス! いい立ち上がりですね。
大森:2曲目はT・レックスの「20センチュリー・ボーイ」。これも間違いなく弾きたくなるリフです。しかも浦沢直樹さんの『20世紀少年』で、主人公が中学生の時に、ほうきをギター代わりにしてこの曲を弾いたので、あれでダメ押しになったと思います。でも、若い世代は曲も浦沢さんの漫画も知らないんですかね? 曲を知らない人はmysoundでチェックして欲しいです。本当に弾きたくなります。
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T. Rex
─この曲はカバーしたことはありますか?
大森:あります。役者になる前にやっていたバンドでカバーして、ライブハウスで演奏してました。あと、去年の月に吠える。のツアーのときも「20センチュリー・ボーイ」のイントロから僕らの曲に入るというアレンジをしてました。なので、思い入れの強い曲です。
─大森さんは月に吠える。で作曲もしているわけですが、「20センチュリー・ボーイ」のように耳に残るリフとそうじゃないリフの違いって何だと思います?
大森:その違いをきちんと説明できたら、作曲で苦労しないです(笑)。ギターのリフを考える時は難しいです。やっぱり、耳に残るリフは使い古されているので。だから、どこからパクったのかがバレないようにするかの工夫が大切です(笑)。でも、ロックはそれでもいいじゃないかと思うんです。ロックは別に学問ではなく、ある種の衝動なので。
─確かに。次は3曲目です。
大森:ここでひとつ日本のロックを。ストリートスライダーズの「バック・トゥ・バック」という曲です。これは蘭丸(土屋公平)さんのギターが強烈にカッコいいです。活動休止前の武道館も観に行ったんです。あまりにギターがカッコよくて漏らすかと思ったぐらいです(笑)。
♪Back To Back (Special Extended Version)
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THE STREET SLIDERS
─蘭丸さんは根っからのブルース好きな方なので、あのプレイをコピーしたくてもかなり難しいですよね?
大森:蘭丸さんのギターはブルージーなだけじゃなくて、ファンキーなので、コピーは本当に難しいです。それで、一生懸命練習しました。この「バック・トゥ・バック」なんか本当にずっと弾いてましたから。そのスライダースが結成35年を記念して、ハリーさんと蘭丸さんとでJOY-POPSというユニットで活動していて、そのライブに行ったんです。そしたら「バック・トゥ・バック」を演奏してくれたんで、弾き方をガン見しておきました。
─蘭丸さんと演奏した経験は?
大森:ないです!ないです! 僕には10年早いです!
─JOY POPSと月に吠える。との対バンとかはどうなんですか?
大森:やらせてもらえるならJOY-POPSの前座をやりたいです。ちなみに、6月末に配信した月に吠える。の「さよならブギー」という曲のサビの『せめて~♪』ってところをハリーさんにコーラスお願いできないかなと思ったんです。実はエンジニアさんが同じ人なので、『お願いできないですかね?』と言ったら軽く笑って流されました。─(笑)。では、4曲目!
大森:レッド・ツェッペリンの「ブラック・ドック」。これは弾きたくなりますし、指の練習にもなります。もちろん、リアルタイムではないけど、若い頃、レッド・ツェッペリンはストーンズとかビートルズよりもマニアックなロックに思えてました。それで、ジミー・ペイジにもすごく憧れました。少し前ですけど、代々木体育館にカヴァーデール・ペイジが来た時に観に行きました。ただ、僕はレッド・ツェッペリンが好きで行ったので、デイヴィッド・カヴァーデルに興味がなくて。だいたいレッド・ツェッペリンの曲やったなと思って、途中で帰りました(笑)。生で聴いたジミー・ペイジのギター、めっちゃカッコよかったです。-
Led Zeppelin
─さて次は5曲目です。
大森:「クロスロード」です。魂を売ったロバート・ジョンソンのではなくて、クリームの「クロスロード」です。僕はイントロくらいしか弾けないけど、これはコピーすべきです。-
Cream
─その感じですと、バンドでカバーはしてないですか?
大森:クリームはカバーしてないです。僕たちには重すぎました。その対極にラモーンズがいて、そっちじゃん? みたいな(笑)。─わかります。なんか自分たちでもできそうな感じ(笑)。
大森:そう!『できそうでは?』と思わせてくれるバンドは必要です。でも、一人だと「クロスロード」が弾いてみたいです。みなさんも、ライブで披露する前提とかではなく、一人で家で弾いてみるといいと思います。
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吉祥寺でジミヘンと出逢う!?
─では、6曲目。
大森:ジミ・ヘンドリックスの「パープル・ヘイズ」。ジミヘンの存在に出逢った時は、僕もバンドを始めてた頃です。それで、ジミヘンってすごい! 半端ない! と周りから聞いていたんです。でも、ジミヘンに関しては見て見ぬふりしてました。でもある時、吉祥寺のあるお店でずっとビデオを流していて、そこで延々ジミヘンのビデオが流れてたんです。それを見て、本当にダメだと思い。僕が弾いてるのはギターじゃないと。色々萎えました(笑)。
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The Jimi Hendrix Experience
─(笑)。
大森:ギタリストはこういうことなんだと思い知らされました。ギタリストはチョーキング出来ればいいと思ってたもので(笑)
─7曲目、お願いします。あと4曲です。
大森:日本のロックにもどってRCサクセションの「あふれる熱い涙」。この曲は泣けます。アコースティックギターが弾きたくなります。-
RCサクセション
─隠れた名曲ですよね。では8曲目です。
大森:もう1曲RCを入れておきます。ベタですけど、「雨あがりの夜空に」。このイントロ聴いたら、みんな反応しちゃいますよね? この曲はRCサクセションの「ジャンピンジャックフラッシュ」です。1つ注意しておくと、RCはキーが高いので、原キーで歌うと火傷します。でも、カバーすると鉄板で盛り上がります。-
RCサクセション
─さて、残り2曲です。
大森:ローリングストーンズを入れてなかったので、あえての「Honky Tonk Women」。僕はこの曲でオープンGを覚えたんです。『オープンGってなんだ?』と思ってたのをこの曲のキースのギターで知ることができました。今でもキースはオープンGですし。しかもキースは6弦外してますから。いやぁこの曲、すごい練習しました。-
The Rolling Stones
─バンドでカバーはしてないんですか?
大森:してないです。文化祭とかだと、その頃のバンドはBOØWYしかできない空気でした。だから「ストーンズやろう」と言っても、みんな苦笑い。なので、家で勝手に一人で練習してました。
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「俺のギターは気にするな(笑)」
─では、ラス1です。
大森:僭越ながら月に吠える。の「さよならブギー」。この曲にはロックンロールの基本が詰まってます。佐藤タイジさんとラジオでこの曲を演奏したんですけど、タイジさんも「この曲気持ちいい!」って言ってくれてました。まぁ今時こんなフレーズを思い切ってやるバンドあんまりいないと思いますし。
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月に吠える。
─いないですね。
大森:そう! いないんです(笑)。でも、それでいいと思ってるんです。みんな曲もコードもオシャレですし。でもシンプルなロックがやりたかったので、この曲を作ったんです。そうしたら、一番おいしいフレーズはギタリストの塚本史朗が弾くことになり、僕は弾いてないんです。でも、ロック好きな方、ギター好きな方、「さよならブギー」を是非ご賞味ください。ただし、「俺のギターは気にするな!」で(笑)。
─お話を聞いていたらギターを弾きたくなってきますが、最後にギター・キッズ、あるいは、かつてギターを弾いていてしばらく遠ざかっている人に何かメッセージを!
大森:かつて弾いていた人は、もう一回ギター触ってみてください。夢が広がると思います。それからこれからギターをはじめようと思っている子は、すぐにヤマハギタースクールへ(笑)。本当の話、きちんと教えてもらうと、その先が違いますから。僕はまったく教えてくれる人がいなくて、弾けるようになるまでに時間がかかってしまったので、先生に教えてもらうのは大事だと思います!
<PROFILE>
月に吠える。
日本を代表する俳優の大森南朋(Vo,Gt)と、プロギタリストとして数多くのアーティストをサポートしてきた塚本史朗(Gt)。古くからの友人でもある二人に、長野典二(Ba)と、山崎潤(Dr)が加わりバンド結成。バンド名「月に吠える。」は、大森南朋の何気ない一言から。塚本を中心に繰り出すパワフルでドライブするバンドサウンドに、大森の描き出す唯一無二の歌詞、圧倒的表現力を備えたボーカルが絶妙に絡み合い、新たな世界観を突きつける。真の大人のロックバンド。
<LIVE INFORMATION>
UNCERTAIN × TSUKINHOERU Presents
“ALL MIDDLE AGE ROCK’N ROLL UNION”
《B JIRUSHI YOSHIDA》発足から15周年を記念して、古くからの親交の深い俳優大森南朋氏と原田裕章氏(CHOP)が手掛けるブランドのポップアップショップを開催。月に吠える。とのコラボレーションアイテムも店舗限定販売される。
大森南朋と塚本史朗による
トーク&アコーステイックライブが開催!
日時:9月28日(金)
場所:代官山 B印YOSHIDA
以降
9月29日(土) 広島 SECOND CRUTCH
9月30日(日) 米子 AZTiC laughs
10月4日(木) 大阪 JANUS
10月8日(月・祝) 福岡 『風音 2018』
11月18日(日) 新宿 BLAZE
ほか、オフィシャルWEBにて
http://tsukinihoeru.com
Text: ジョー横溝
Photo:TAWARA
Edit:仲田 舞衣