ソロ・プロジェクト「弓木トイ」ついに始動!弓木英梨乃×柏井日向(Bigfish Sounds)スタジオ直送対談


今年デビュー10周年を迎える弓木英梨乃のソロ・プロジェクト「弓木トイ」によるファースト・アルバム『みんなおもちゃになりたいのさ』が完成し、その中から2曲「ハッピーバースデーをもう一度」と「CCSC」が先行配信される。

「ハッピーバースデーをもう一度」は、コーラスに吉澤嘉代子、ベースにKIRINJIの千ヶ崎学が参加した全編打ち込みのオーケストラポップ。キリンジのメンバー、サポート・ギタリスト、コンポーザーなど様々な顔を持つ彼女の音楽性が凝縮されたような仕上がりとなっている。また「CCSC」は、CRCK/LCKSの小田朋美と石若駿、リトル・クリーチャーズの鈴木正人という強力な布陣によるアンサンブルと、ゲスト・コーラスにのんを迎えたスウィートなメロディが交差する異色の変拍子ファンク。この2曲を聴いただけでも、来るべきアルバムの振り幅が尋常ではないことは明らかだ。

そこで今回はインタビュー第一弾として、アルバムのレコーディング&ミキシングに携わった「Bigfish Sounds」の柏井日向と、弓木による対談をお届けする。先行配信の2曲を中心に、サウンド・プロダクションなど制作秘話について、たっぷりと話してもらった。

「柏井さんのことは、何年も前からロックオンしてました!」(弓木)


─今回、弓木さんが柏井さんにエンジニアリングをお願いした理由は?

弓木:
まず、ソロアルバムを作ることになった時に、「セルフ・プロデュースでやりたい」ということは決めていました。ただ初めてのことなので、以前からよく知っている柏井さんと一緒に、いろいろ相談させてもらいながら作れたらいいなと思って、最初に電話で直談判したんです。「柏井さんと二人三脚でやりたいんですが、お願いできませんか?」って。

柏井:いつロックオンされてたんだろう(笑)? いや、それを聞いたときは素直に嬉しかったですね。

弓木:もう何年も前からロックオンしてましたよ! ようやく念願が叶ったという感じです。

─弓木さんの曲を聴いて、どんな印象を受けましたか?

柏井:
弓木ちゃんとはキリンジでずっと一緒にレコーディングしていますが、そもそもの出会いは(堀込)高樹さんがプロデュースした、「River」というシングルなんですよね。その時の楽曲のイメージが残っていたので、弓木トイの楽曲を聴いてバラエティの豊かさにびっくりしました。楽曲そのものの振り幅が広がっているし、いい意味でぶっ飛んでいるなと(笑)。

キリンジの活動はもちろん、サポート・ギタリストとして色んなところで演奏しているのを観てきたけど、弓木ちゃんがソロで主役っていうのは「River」以来だったから……あれ何年前?

弓木:2011年にリリースしたから、8年前ですか?

柏井:あの時は「シンガー・ソングライター」として直球のイメージでしたよね。今回は、キリンジっぽい曲もあれば、全編打ち込みでエレポップ然とした曲もあるし、ほんと驚きましたね。​​​​​​​

弓木:嬉しいです。曲は以前から書きためていたんですけど、アルバム全体で考えたときに「全曲バンド・アレンジじゃなくてもいいのかな」って。打ち込みの曲があったり、今回「弓木トイ」という名義にしたので「トイピアノが入っているのもいいな」と思って(笑)、CRCK/LCKSの小田(朋美)さんに弾いてもらったりして。全曲が同時進行で、作りながら考えていたところもありますね。なので、「ハッピーバースデーをもう一度」とか、こんなに色んな音を詰め込んだアレンジになるとは、当初は思っていなかったんです。​​​​​​​

柏井:そもそも僕は、弓木ちゃんが打ち込みをすることも知らなかったから、力強いビートでダンサンブルなアレンジの「ハッピーバースデーをもう一度」はかなり意外だったなあ。​​​​​​​

弓木:今まで打ち込みって、最終的にバンドメンバーの皆さんに演奏してもらうことを前提とした、ラフスケッチみたいなデモ作りでやることぐらいしかなかったんですよ。納得のいく仕上がりになるまで結構大変だった……けど、楽しくもありました!(笑)​​​​​​​。

─レコーディングに入る前に打ち合わせなどしました?

弓木:
柏井さんにはデモの段階から全て聴いてもらって、「ここのアレンジはこうしよう」「ここのキックはもっと太くしよう」とか、本当に細かい部分まで一緒に考えて頂きました。​​​​​​​​​​​​​​

柏井:弓木ちゃんはとても心配性だから(笑)、かなり細かく打ち合わせましたね。「これで大丈夫!」って判子を押すだけの曲もあれば、「ここはもう少し音数を減らしてみよう」とか、「サビはもっとポップに聴かせた方がいいから、アルペジオを入れてみよう」という感じで、アレンジにサジェスチョンした曲もあります。​​​​​​​

 

「柏井さんのことは、何年も前からロックオンしてました!」(弓木)

 

─今回、「ハッピーバースデー」と一緒に先行配信されたのが「CCSC」で、こちらはCRCK/LCKSの小田朋美さんと石若駿さん、リトル・クリーチャーズの鈴木正人さんによる鉄壁のアンサンブルが聴きどころになっています。

柏井:
そうなんですよ。変拍子にトリッキーなリフが入ったインスト部分と、ポップなサビの部分のギャップがものすごい。​​​​​​​

─小田さんにレコーディングの感想を聞いたところ、「変拍子や混合拍子の難しさとコードの移り変わりに“そっちへ行くんだ!”という嬉しい驚きがあった」とおっしゃっていました。「デモが送られてきた時点で興奮した」と。柏井さんから見て、レコーディングの様子はどんな感じでした?​​​​​​​

柏井:
いや、楽しかったですね。みなさん腕利きのプレイヤーばかりですし、弓木ちゃんもそこをよく分かった上でオファーしているわけですから、演奏に関しては弓木ちゃんのリクエストをみなさんにお伝えして、それ以上はあまり細かく言わない方が上手くいくだろうと。​​​​​​​

「CCSC」は、おっしゃるようにサビがポップだから、変拍子のところを「ちょっとやり過ぎですかね?」ってプレイヤーの皆さん心配してたんですけど、弓木ちゃんからは「もっとぶっ飛んでください!」みたいな指示が(笑)。さらに過剰にすることで、また違った世界が見えてきたんですよ。あ〜なるほど、と感心しつつ「この人、キテるな〜」って思いましたね。​​​​​​​

弓木:(笑)。弓木トイは基本的に「J-Pop」ではあるんですけど、この曲は特にミュージシャンシップを活かしたものにしたいなと思っていて。ずっと憧れていた方々にせっかくオファーしたのだから「出し尽くしてもらいたい!」って。

─「弓木さんって、いい意味で色んなものをあげたくなっちゃう素敵な方だ」と小田さんもおっしゃっていました。「最初はピアノだけで参加の予定だったのが、弓木さんとアイデアを出し合っていくうちにピアノだけでなく、オルガンやシンセ、ハーモニウム、カリンバ、トイピアノなど、色んな楽器を演奏して楽しかった」と。

弓木:
そうなんです! 楽しかったし、そんなふうに言っていただけるのは本当に嬉しい……。​​​​​​​

─サウンド・プロダクションに関しては、どんなことを心がけました?​​​​​​​

弓木:
音に関しては、私自身は専門的なことがよく分からないので、柏井さんにお任せしました。特にドラムの音にはこだわってくださいましたね。石若さんと、「ドラムをもっとラウドにしてもいいですか?」みたいな打ち合わせをしてくださったり、楠(均)さんともキックの音についてずっと話してくださったり、「うう、柏井さんものすごく考えてくださってる……」ってずっと感動していました。​​​​​​​

柏井:そりゃそうですよ!​​​​​​​

─(笑)。今回、レコーディングは柏井さんのスタジオ「Bigfish Sounds」で行ったのですか?​​​​​​​

柏井:
ゲスト・ミュージシャンとのバンド演奏と、弓木ちゃんのギターをそれぞれ1日ずつ使ってここで録りました。あとは、弓木ちゃんが家で自分で録ってきた素材をブラッシュアップして混ぜていく流れですね。例えば、打ち込みメインの曲に関しては、一旦アナログのアウトボードを通して程よい「ひずみ」を加えたり、ギターも弓木ちゃんが家で録ってきたものは、「リアンプ」といって、一旦このスタジオでアンプを鳴らしてから再び取り込んだりしました。​​​​​​​

弓木:ギターは家では大きな音が出せないので、ラインで録ったものをプラグインで加工して。「こんな感じかな」というイメージと、素のギターの音を柏井さんにメールで送りました。「あくまでもイメージですので、柏井さん的にカッコいい音にブラッシュアップしてください!」というメッセージ付きで。​​​​​​​

 

「弓木ちゃんの声には、Neumann U87のマイクが合う!」(柏井)


─ボーカルも弓木さんが自宅で録ったんですか?

柏井:機材も買ってもらって、頑張って自分で録ってもらいましたよ。

弓木:そうなんです。マイクや機材選びから柏井さんに色々相談して。「マイクスタンドを3本買ってください」って言われて、「え、なんでそんなに?」と思ったら、3本に毛布をかけて、簡易のボーカルブースを作るためだったんです。

柏井:部屋でそのままボーカルを録ると「部屋鳴り」が入り込んで響きすぎてしまうんですよ。毛布で周りを囲むことによって、吸音効果を得るんです。その時の様子を写真に撮って送ってくれたんですけど、それがまた可愛くてね(笑)。

 

初公開!これが弓木の毛布ブースだ!!

初公開! これが弓木の毛布ブースだ‼

 

弓木:殺風景だとやる気が出ないので、可愛い毛布をニトリで買ってきたんです(笑)。自分でもボーカルブースの出来に感動しちゃいました。機材に関しては、柏井さんからお借りしたものもありますよね、高級プリアンプとか。

柏井:マイクはNeumann U87が弓木ちゃんの声に合いそうだったので、それを買ってもらって、僕はNeveのビンテージ・プリアンプを貸しました。ツマミの設定など、大まかにしたものをね。

弓木:ツマミを動かさないよう、触らないように気をつけながら持ち借りました(笑)。今までも機材に興味ないことはなかったんですが、家にはDAWソフトやオーディオインターフェイスなど、デモを録るためのごく簡単な環境しかなくて。本格的な宅録を初めてやったら、楽しくて仕方なかったです。

─じゃあ、ボーカルやギター録りに関しては自分でディレクションしたものも多かったわけですね。

弓木:そうなんです。キリンジの時は高樹さんが、「こういう感じで歌って」とか、「歌詞が聞こえないから、ここはもう少しはっきりと」みたいな感じでディレクションしてくれて。そうやって言われないと、自分で気づけないことも多くて、今回そこを全部1人でやるのは、最初のうちはとても不安でした。

でも「こんな時、高樹さんなら何て言うかな?」とか、「こういうアンサンブルでは、柏井さんと一緒にこんなギターを重ねたな」とか、色々思い出しながら作業を進めていくうちに、「そうか、今までの経験が全て引き出しになっているんだな」って思って。そこから先はとっても楽しかったですね。とにかく、高樹さんと柏井さんには感謝の気持ちでいっぱいです。

柏井:アコギとかも、とてもよく録れてたよ。

弓木:本当ですか!嬉しい。マイクがあると、いろんな音を録りたくなっちゃって。「ハッピーバースデーをもう一度」ではハンドクラップ、「CCSC」では泡立て器の音なども録りました​​​​​​​。

柏井:おお、そうだそうだ。いいマイクだし、何の問題もなかった。もう一通りの音は録れる環境になったよね。

 

「弓木ちゃんの声には、Neumann U87のマイクが合う!」(柏井)

 

─すでにアルバムも完成していて、それについてはまた改めてインタビューさせてもらう予定ですが、今の率直な心境を最後に教えてもらえますか?

弓木:
半年間かけてこのアルバムづくりをしてきましたが、長かったですね。「アルバム作りって、こ〜んなに大変なんだ!」って、びっくりしました。キリンジだと高樹さんが全部やってくださるけど、こんなことをやっていらしたのか……って。もちろん、バンドでのレコーディングなど楽しい瞬間もたくさんあったし、自分でとことん把握してやりたいという気持ちもさらに強くなっています。​​​​​​​

柏井:これからは、もう高樹さんのお手伝いできるんじゃない?​​​​​​​

弓木:そんな、そんな。絶対に「(手伝わなくて)いいよ」って言われちゃうと思います(笑)。​​​​​​​

柏井:弓木トイは、弓木ちゃんの持つ独特のポップ感……一聴すると可愛い声に、可愛らしい歌詞だなって思うんだけど、よく聞くとちょっとずつ「イビツ」だったり、過剰だったりして。そういうガチャガチャとした、おもちゃ箱を引っ繰り返したような世界観が、まさに「弓木トイ」という感じ。本当に魅力的なアルバムが出来たので、たくさんの人に聴いてもらいたいですね。​​​​​​​


【Profile】

弓木トイ

弓木トイアーティスト写真

2019年にデビュー10周年を迎える弓木英梨乃(KIRINJI)が始動させるソロ・プロジェクト。
バラエティに富んだ音楽ジャンルを、おもちゃ箱をひっくり返したようなサウンドに昇華、幾多のステージで磨かれた
弓木のギターテクニックやキュートな声音を乗せた、“弓木トイ・サウンド”を展開。

*弓木英梨乃
2009年シンガーソングライターとしてメジャーデビュー。
2013年夏、新生KIRINJIに正式メンバーとして加入。個人としても著名アーティストのライブやレコーディングサポート、楽曲提供、
アレンジ制作を行うなど、活動の幅を広げている。

ギターサポート経歴/相川七瀬、井上苑子、カノエラナ、柴咲コウ、土岐麻子、のん、秦 基博、Base Ball Bear、吉澤嘉代子…他多数(五十音順)

▼ 弓木トイ OFFICIAL SITE
https://www.yumikitoy.com/
 

【Release】

弓木トイ『みんなおもちゃになりたいのさ』

『みんなおもちゃになりたいのさ』J写

2019年3月21日(木・祝) RELEASE
※「弓木流vol.4」会場(東京キネマ倶楽部)にて

品番:YMPCD-45
価格:¥2,000(税別)
収録:6曲入りアルバム
発売元:株式会社ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス
全国流通:2019年春予定

 

<先行配信情報>
『みんなおもちゃになりたいのさ』収録曲より「CCSC」、「ハッピーバースデーをもう一度」を2/13よりmysoundで先行配信中!
さらに、「CCSC」「ハッピーバースデーをもう一度」いずれか1点をmysoundでダウンロード頂いた方の中から抽選で1名様に「弓木トイからのメッセージ付き、スペシャルギフト」をプレゼント!(応募期間:2019/02/13(水)00:00~2019/2/21(木)23:59)

詳しくはmysound 弓木トイ特設ページをチェック!


【Live】

​​​​​弓木英梨乃主催イベント
『弓木流 vol.4 〜悩める乙女は岩隠れ。
神様、わたしたち桜が見たいです〜』開催!

2019年3月21日(木・祝)

今年で4年目を迎える、弓木英梨乃 主催ライブ「弓木流vol.4」開催!
◎会場 :東京キネマ倶楽部
◎開場/開演:17:30/18:30
◎チケット:前売/¥4,850- 当日/¥5,350- [ SOLD OUT! ]
◎出演 :弓木英梨乃(Vo&Gt)、真船勝博(Ba)、渡辺シュンスケ(Key)、楠 均(Dr)
◎ゲスト:土岐麻子、のん
◎問い :ネクストロード 03-5114-7444

 

Text:黒田 隆憲
Photo:井上 満嘉