新・改造してギターを良くする研Q所 【改ギ研Q】 第4話


研究所の朝……もとい、研Q所の朝は早い。もちろん挨拶はいつだって「オハヨーゴザイマス」だ。私たち研Q員は今日もまた、どこかに埋もれた“磨けば光るギター”を探しだし、そして……「改造」をする。すなわち当コンテンツは、DIY心満載の「ギター改造コーナー」なのでR!

第4話 「食いねえ食いねえ 寿司食いねえ」の巻

 

改ギ研Q、心得

1、安きギターを手に入れるべし
1、お金かけずに手間かけるべし
1、ギターを知り、ギターを愛すべし
1、ダメ、ゼッタイ、不良改造
1、安全第一、改造大好きなのじゃ



皆さん、オハヨーゴザイマス。あらためまして「改造してギターをよくする研Q所」、略して「改ギ研Q」であります。

本日のQは
「初号機Q-3 合体! 木工の謎!」


さてわれらは集まった。今日も今日とて、早朝の三鷹駅近くの「改ギ研Q本部」………ではないぃぃ! 今回はなんと! 関東平野の端っこも端っこ。もうすぐその先が関東平野のおしまい! そんな田園風景広がるのどかすぎる場所。

 

改ギ研究4(1)

ここが、栃木が誇るエッジ・オブ・関東平野だ!!!

 

「栃木県で改造してギターを良くする研Q所」略して「栃ギ研Q所」のすぐそばに来ているのだぁ! 研Q員たちの元気いっぱいな朝のあいさつが、人の姿もまばらな田園地帯に響きわたる……。

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オハヨーゴザイマス! 来たぞ、関東平野の最果ての地

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オハヨーゴザイマス!

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ということで、M本! ……あれ? M本がいない! M本? どこ? 
K井! おれのM本がいなーーい!

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いやいや、だから。そのM本研究員に会いに来たんでしょ? かっぱ橋で僕らが見つけたギターのボディに代わるものを、届けに来たんでしょ! ジャンクギターと合体させて新しいギターを作ってもらうんでしょ? (前回リンク参照) しっかりしてくださいよ!

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そ、そうだった。よーし、さっそくM本呼び出そうぜ! 呼び鈴押せ!

ピンポーーーーーーン

 

改ギ研究4(3)

 

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は、はーーーい?(え? 何この人)

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俺だ! M本! 来たぞ! お前、栃木っ子だってねえ! 食いねえ食いねえ寿司食いねえ!

 

改ギ研究4(4)

 

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な、な、なんなんですかっ! 

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すし桶ですよ。かっぱ橋で見つけたすし桶です。あと、まな板も! お寿司付けてきました。三鷹の研Q所で僕らで握って、車で2時間かけて運んできたんですよ。カピカピのお寿司! お待ち!

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いらないですよ。ナマモノはダメって言ってるでしょ? ボディにするんでしょ? ギター生臭くなっちゃうじゃないですか。

 

改ギ研究4(5)

 

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まあ、とりあえず、現物を見せてください。で、ちゃんと33センチはあるんですよね?(前回リンク参照

 

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※注:お寿司はこのあと、所長が美味しくいただきました

 

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あるよ、 33センチ。 ネックの固定スペースからブリッジの大きさを考慮してこの長さなんだろ? 前回のお前の豆Qでよーくわかったよ。

しかしだな、そんなチマチマした話じゃなくてさ。俺がこだわりたいのはだな、そもそもすし桶、まな板という、ジャパニーズソウルな部分でだな、気持ちの部分だよ。お前に圧倒的に足りないのは! なっ? ギターという素材を……つまりだな、和洋折衷というか、魂の部分で……

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ちょっと待ってください! こ、これは! スプルースじゃないですか!

 

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改ギ研究4(8)

 

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ん? スプーン?

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え? スプーンおばさん?

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スプルースですよ!
この桶も、まな板も、スプルースでできているみたいですね。スプルースという木は、古くからバイオリン等の弦楽器に使われてきた由緒正しい木の種類なんです。アコースティックギターの表板も、スプルースで作られる事が多いんですよ。へー、すし桶って、スプルースなんですねえ〜! へえ、へえ、へえぇ〜!

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M本のコーフンっぷりが、まったく理解できんが、それはこの改造にとってプラスと考えていいのか?

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ええ。今回の改造(ボディ交換)は、「スプルースの桶」を使う事で音響的な変化にも期待できると思いますよ。なかなか面白いですね。すし桶を使いましょう! ……所長が余計なことして生臭いけど。

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うぬぬ。

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もうすこし、木材について詳しく言うと、板の切り出し方で、「板目」と「柾目」があるんです。柾目の板は狂いが出にくいんですよ。残念ながら、このすし桶の底板は4割くらい板目ですけど。本当は「柾目」のやつがいいんですよ。惜しかった。アコースティックギターの表面は「柾目」で作られているんです。

 

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ウンチクはもういい! さっさと作業にかかれ!

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はいはい。それじゃ、元々のテレキャス・ボディのネックポケット(ネックを接合する為に掘られた部分)の深さを測定しましょう。

 

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深さは17mmでした。今回は、その深さ分、弦高の関係でブリッジを上げないといけないんです。ということで、じつは事前にブリッジの下駄を作っておきました。

 

改ギ研究4(11)

 

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うふふ、料理番組みたいですね、所長。「そしてできたものがこちらです!」みたいな(笑)。

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うふふ、そうだな。「一晩寝かしたものがこちらです」とかな。キャッキャッキャ(と、二人ではしゃぐ、V山とK井)

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………。

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あっ、続けて続けて。

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下駄の素材はメイプルです。厚さは15㎜。今回2㎜足りませんが、ネックの厚さを測ったところ、ブリッジの調整でなんとかできそうです。この15㎜という規格は、レスポールのトップ板と同じですね。僕の作ってる「オッキオ」というギターもレスポールと同じ規格なので、その端材で作製しておきました。ネックを止めるボディ裏のサポート材も、同様にメイプル端材から作製しました。

 

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おお。

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前回も言いましたが、ギターのネックを何かにつける場合、ブリッジの位置はものすごく大事です。ここはかなり丁寧な作業になります。そして、ネックを止めるビス穴を開けて、ネックを止めるんですが………。

 

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ん? どうした?

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うーん。桶の縁がネックに当たりますねえ。ここは削って合わせないと。

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削る? 大変な作業なのか?

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そんなときのために、こんなひみつ道具があります。電動道具「スピンドルサンダー」です!

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おーー! かっこいい! 名前かっこいい! 喰らえ! スピンドルサンダー!!

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まあ、作業自体は地味ですけど。まず、削る部分をノコギリで下ごしらえして……。

 

改ギ研究4(14)

 

(冷静に)はい、このようにスピンドルサンダーで削ります。

 

改ギ研究4(14)

 

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うん。できた。そしたら……。ここが一番大事。ネックのフレットを基準に、ブリッジの位置を割り出しましょう。正確な位置です。

 

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そして、………ネックとブリッジを固定!

 

改ギ研究4(16)

 

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おおおお!! ギターの形になった!!

  

つづく。


【今回の豆Q知識 by M本研究員】

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いよいよ木工スタート。さて、ギターを改造するにはどんな道具が必要なのでしょう。アメリカのStewMacというサイト(https://www.stewmac.com/)には、ギターに関する専用工具が売られています。見ているだけでも楽しいんですが、「ある作業にしか使えない特殊な道具」です。「趣味」として揃えるのはなかなか難しいですよね。
興味のある方は是非StewMacサイトを覗いてみてください!

様々な道具がありますが、私は、あまり道具にコダワリがありません。「現状がこうならば、手を加え、こういう状態にしよう」という「計画」が重要です。結果、思った通りに達成できれば良いわけです。なので私は、都度、適切な方法と道具を考える、という事にしています。

今回、すし桶の縁がネックに当たってしまうという状況がありました。「削る」という作業ひとつとっても様々なやり方があるわけで、どのやり方がいいか考えることも楽しいわけです。
持っている道具の中で考えて工夫をすれば、高級な専用工具でなくとも、町のホームセンターや100円ショップに適した道具があればそれでもイイと思います。
そんな探索も楽しいですね。

ただ、達人になると「定規は目の延長、道具は手の延長」みたいな感じなんだろうな、と思っていて。そういう奥の深さも、ギターいじりの醍醐味です。
道具を使う時は、ノー怪我ファーストで。安全第一でお願いします。
(ちょっとズレるけど、私のコダワリがあるとしたら、作業場(道具)を綺麗に保つ事くらいですね!)  

みなさんも楽しい改造ライフを!


<次回、7月19日(金)更新予定!>

第3話を見る

 


 

【研Q所メンバー紹介】

V山

V山所長
ギターの知識はあやふやだが、ギター改造へのあくなき探究心は誰にも負けない中年。

 

M本 

M本研Q員(助手)
栃木県在住。ギターへの異常な愛情と、マニアックすぎる知識を持つ中年。

 

K井

K井事務員
ギターへの興味は人並みだが、絵を描くこととお芝居が得意。昨年は朝ドラに出演していたことでも話題の中年。

 

【栃ギ研Q支部】

田園風景広がるのどかな場所に、それはある。普段は、ギター工房として使われている木材加工、塗装、電気関係、すべてが揃っている完璧なラボである。佐野ラーメンの美味しいお店も近所にあるっぺよ!

 


 

Text:ヴィンセント秋山
Illustration:河井克夫 (https://twitter.com/osuwari
監修:ギター工房「ビータギタラーズ」(http://vita-guitala-s.com/
取材協力:株式会社カジワラ キッチンサプライ(https://www.kajiwara.gr.jp/)

 

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