INORAN 新時代の幕開けを象徴する、ポジティヴな空気に満ちたニューアルバム

平成から令和へと時代が移り変わった2019年、INORANがソロとしては約3年ぶりのオリジナルフルアルバムを完成させた。1997年のソロデビュー以降、最先端の音楽を取り入れて進化しながら、信頼する仲間たちと共に数々の名曲を紡いできたINORAN。今作『2019』に収録された全11曲はハードな楽曲からメロウなバラードまで、その20年以上に及ぶソロ活動を濃縮したような幅広さとクオリティの高さを誇っている。LUNA SEAとしての活動が30周年を迎え、元号も変わるという大きな節目において、まさに新時代の幕開けを象徴するような傑作が誕生した。
「“ノリ”というのは楽しむためであり、自分が好きな方向に行くためのものだから」
―今回のニューアルバム『2019』のジャケットを拝見した時に、INORANさんの愛用する1950年代のアコースティックギターを、最新鋭のレーザーが放射している様が印象的でした。こういうデザインにした経緯とは?
INORAN:M-6「Starlight」のミュージックビデオ(以下MV)に、こういう1シーンがあって。そのシーンを撮っていた時に、“こういうジャケットが良いんじゃない?”とデザイナーさんとも話していたんですよ。
―MVのほうが先だったんですね。ジャケットとMVの両方に出てきたので、全てがリンクしているのかなと思っていました。
INORAN:結果的にそうなったというか。“こうなるべくしてなったんだろうな”と、今は思いますけどね。自分の持っているギターの中でも、愛器の1つではあって。「Starlight」にはアコースティックギターが入っているので、撮影に持っていったんです。
―MVのイメージに、このギターが合うと感じていたんでしょうか?
INORAN:フューチャー感とのギャップというところがあって。1951年製のギターなんですけど、もちろんギターケースもボロボロだし、そういうところとのギャップやコントラストが良いんじゃないかなと思って用意しました。
―ヴィンテージの楽器と、最新の技術を組み合わせることでのギャップを意図していたんですね。それはロックの長い歴史を踏まえつつ、2019年現在の音を鳴らしているということの象徴でもあるのかなと推測していたのですが…。
INORAN:物事全てが、そういうものですからね。自分の経験してきたことや先人の方たちの遺してきたものが地層のようにあって、その上に積むことで未来を作っていく。だから両方の存在があって、自分がいる…というふうに無理矢理こじつけられなくもないですよね(笑)。
―勝手にそんな感じなのかなと想像していました(笑)。今作には、これまでにつながりのある色んな方々が演奏や楽曲制作に関わられていますよね。それも過去の積み重ねがあるからこそでは?
INORAN:そこは雑に言っちゃうと、“ノリ”というか。“ノリ”というのは楽しむためであり、自分が好きな方向に行くためのものだから。そういう意味で、みんなに書いて欲しいと考えたのは、(それによって)“楽しくなるであろう”とか“良くなるはずだ”と思ったからなんですよね。
―この人たちと一緒にやれば楽しいし、きっと良いものになるはずだという信頼もあるのかなと。
INORAN:そうですね。もちろんプロとして仕事は仕事としてやりますけど、やっぱり一緒にやりたくない人とはやりたくないですから(笑)。音楽に嘘をつくのは、嫌なんですよ。だから近くにいる人たちは好きな仲間であり、尊敬している仲間であるという感じに自然となっていますね。
―参加ミュージシャンは、ずっと一緒にやられている方が多いですよね。
INORAN:彼らとはライブやツアーを何度も一緒にやっているし、蓄積してきたものがあるから。そこの“絆(きずな)”は大きいですよね。縁があって繋がって、絆になっているというか。もっともっと一緒に楽しめたり、ツアーをまわれたりすると良いなっていう気持ちはあります。
―今作のサウンドにライブ感をすごく感じるのは、そういう仲間と一緒に作ったからなのかなと思います。
INORAN:それはあると思いますよ。たぶん、みんなもリリース後にあるツアーとかを想像しながらプレイしていると思うから。そもそもアルバムを作ろうとなったのは、ツアーやライブがやりたいからなんですよね。
「みんなが自分の“武器”を提供してくれるというのが、すごく嬉しいんですよ」
―ライブをやりたいという気持ちが、新しい作品を作る原動力にもなっている?
INORAN:そうですね。バンドメンバーもそうですけど、オーディエンスやファン、スタッフも含めて、みんなで一緒に何かを作り上げたり、かけがえのないものを共有したりすることが、音楽をやる上で一番の喜びだと思っているから。他のどこにもないものなので、そこ(※ライブ)はやっぱり大切な場所ですよね。
―1人だけでは作り上げられないものというか。
INORAN:いや、1人だけで作り上げることもできるけど、“みんなでやったら、もっと良いよ”という感じですね。
―ソロ名義とはいえ、バンド形態で活動されているのはそういう理由が大きいんでしょうね。
INORAN:そうですね。あとは、自分の持っていないものを見られるというところもあって。まだまだ見たいものや学びたいことがいっぱいあるので、それを同じ空間で教えてくれる人がいるということはすごく刺激になっています。
―M-8「For Now」は、FeederのTaka Hirose(Ba.)さんが楽曲提供されていますよね。これもセールスポイントにしようという意図ではなく、本当の意味で“仲間”だからこそ実現したことなのかなと…。
INORAN:いや、セールスポイントなんですよ。Takaのためにもそう言っておかないと、怒られちゃう(笑)。
―ハハハ(笑)。この曲は今作のために依頼して、書いてもらったのでしょうか?
INORAN:そうですね。ノリで“Taka、書いてよ”と言ったら、“良いよ”と言ってくれて(笑)。届いたのが、こういう曲でした。
―どんな曲にして欲しいと、オーダーしたわけではない?
INORAN:そういうわけではないですね。僕は基本的に、人に対して“こうしてよ”と言うことがないんです。それはLUNA SEAのメンバーに対しても同じで、自分が原曲を作ったものに関しても“こうしてよ”と言うことはなくて。…相手が心配になるくらい(笑)。
―Takaさんに任せた結果、「For Now」ができたと。
INORAN:カッコ良いですよね。やっぱり、このノリは彼にしか出せないものだと思うから。
―参加メンバー個々が、その人にしか出せないものを出しているというか。
INORAN:そういうところもあるでしょうね。みんなが自分の“武器”を提供してくれるというのが、すごく嬉しいんですよ。今回はそういう武器の1つ1つを、みんなからもらった気がしています。
―みんなの武器を提供してもらっている感覚なんですね。
INORAN:だから、“みんなで作ったアルバム”ということは感じられると思います。“INORAN”というのはただの名前(※名義)であって。極端な話をすれば、僕がギターを弾かなくても良いし、歌わなくても良いわけなんですよ。みんなで集まって、何かをする(ことが大事)というか。
「ポジティヴなムードを感じたというか。そこが自分の今やっていることと合致したんですよね」
―そんなアルバムに『2019』というタイトルを付けた理由とは?
INORAN:いつもはアルバムを作っている中で、タイトルになるようなワードが自然と出てくるんですよ。でも今回は出てくるのが遅くて、どうしようかと思っていたんです。そんな中で今年はLUNA SEAの30周年という節目でもあり、平成から令和に変わるという節目もあって、色々あるなと。
―色んな節目が重なる年だと気付いた。
INORAN:令和に変わった瞬間から、ムードがすごく良くなって。みんな色々と不満や不安はあるけれど、何か未来へと向かっていくようなムードを感じたというか。“この年はすごく良い年になるんだろうな。みんなの心に残る年になるんだろうな”と思ったんです。
―“2019年”に特別なムードを感じたわけですね。
INORAN:自分の中で、ポジティヴなムードを感じたというか。そこが自分の今やっていることと合致したんですよね。だから良いかなと思って、このタイトルを付けました。
―今作のM-10「Long Time Comin」からラストのM-11「Made Of Fire」へと続く流れを聴いている時に、1つの何かが終わって、また新しい何かが始まっていくような感覚を覚えたんです。今おっしゃられたようなムードが、曲順にもまさに出ているのかなと…。
INORAN:いや、曲順は最後の最後に考えたら、こうなったというだけです(笑)。でも何かに突き動かされたのかもしれないですね。作っていくうちに、最初に考えていたものとは全然違う曲順になったから。
―当初考えていた曲順とは違うものになったんですね。
INORAN:やっぱり曲順に関しても、悪い言い方をすれば自分の中で凝り固まっている部分があって。“こういうものだ”というセオリーや美学みたいなものができちゃっているんですよね。だから、そこは崩したい時もあります。
―いつもの自分ならこうするだろうというセオリーを、あえて裏切りたい時がある。
INORAN:そういう時はバンドのメンバーに訊いたり、一緒に考えてもらったりしますね。
―そこも誰かと一緒にやる良さですよね。今作を持って、仲間たちとツアーに行くのが本当に楽しみなのでは?
INORAN:めっちゃ楽しみですよ。それをするために、このアルバムを作ったんですから。(ツアーをやらないのは)料理を作っておいて、出さないようなものですよ(笑)。あとは、ちゃんとみんなで“美味しい”って言いながら、楽しまなきゃっていう感じですね。
―“美味しいものを作った”という自信はあるわけですよね?
INORAN:自信…というか、実感はあります。なぜならば、試聴会をやった時にみんながすごく喜んでくれたということもあって。ファンだけじゃなくて、スタッフもそういう反応だったんですよ。“何か良いよね”というムードって、意外と何枚かに1回くらいしかないもので。そういう空気を感じるので、これは良いんじゃないかなという実感はありますね。
【Release】
New Album
『2019』
2019/8/7 Release
KING RECORDS
<完全生産限定盤-PERFECT BOX->
(CD+DVD+LP)
NKCD-6868
¥10,000+税
<通常盤>
(CD Only)
KICS-3829
¥3,000+税
【LIVE】
INORAN TOUR 2019「COWBOY PUNI-SHIT」
8/21(水) 新宿BLAZE<FC限定>
8/24(土) 神戸VARIT.<FC限定>
8/25(日) LIVE ROXY静岡
8/31(土) 金沢AZ
9/01(日) 長野CLUB JUNK BOX
9/13(金) 広島SECOND CRUTCH
9/14(土) 岡山CRAZYMAMA KINGDOM
9/16(月祝) 福岡DRUM Be-1
9/20(金) 仙台darwin
9/22(日) 名古屋ElectricLadyLand
9/23(月祝) OSAKA MUSE
「B-DAY LIVE CODE929/2019」
9/29(日) 渋谷TSUTAYA O-EAST
[料金]立見¥6,300(税込)/DRINK代別
[一般発売日]2019年7月20日(土)
※3歳以上チケット必要
【WEB】
http://inoran.org/
Interview:大浦実千
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