百花繚乱!ポストアイドル時代のガールズバンド


2010年代以降に始まった空前のアイドルブームも拡散期を経て安定期に突入。現在、それとクロスするように注目を集めているのがガールズバンドだ。

才色兼備のガールズロックバンド


ここ数年、人気ミュージシャンが楽曲を提供するなどバンドのように音楽性豊かなアイドルが出現する一方、アイドルのように華やかなルックスで派手なパフォーマンスを見せるガールズバンドが出現。フェスやイベントで同じステージに立つことも急増するなど、二つの距離はかつてなく縮まってきている。

今やパソコンひとつで簡単に音楽が作れる時代にも関わらず、若い女の子たちが、なぜバンド演奏に向かうのか−−。DTMで思う存分楽曲を練り上げる楽しさもある一方、楽器は練習すればするほど、自分の出したい音に近づいていく喜びがある。またバンドで他の人と呼吸を合わせ、ひとつの音楽を鳴らす気持ちよさは格別だ。SNSでのコミュニケーションがデフォルトの世代が、アイドルブームによって定着した、直接会って話し、行動する“フィジカルでのコミュニケーション”に目覚め、より本質的な音楽の楽しさへと原点回帰をし始めた……と見るのは、時期尚早か。しかし、実力とビジュアルを兼ね備えた彼女達の活躍は、間違いなく時代の空気感を反映した新たなガールズカルチャーと言えるだろう。

それでは、アイドルブーム以降、今、是非とも注目しておきたいガールズバンドを厳選して紹介していこう。
 

才色兼備のガールズロックバンド	(1)

才色兼備のガールズロックバンド(2)

まずは〝サイサイ〟の愛称で知られるSILENT SIREN。2010年夏に結成され、2012年にメジャーデビューを果たした彼女たち。メンバー4人が読モ出身ということもあり、女子力抜群。それでいて骨太なバンドサウンドを見事に奏でる。ビジュアルと実力を兼ね備えた、今の時代のガールズバンドのアイコンと言っていいだろう。2015年には、ガールズバンド史上最速で日本武道館ワンマンライブを成功させ、昨年はアジアアメリカを回るワールドツアーも敢行するなど、まだまだ成長を続けている。


才色兼備のガールズロックバンド(3)

才色兼備のガールズロックバンド(4)

大阪出身のティーンズバンドЯeaLは、2012年に結成の4人組。裏表ないリアルな自分を見せたいと思いつけられたバンド名通り、ヒリヒリするようなむき出しの気持ちをコケティッシュな歌とエモーショナルかつダイナミックなサウンドで聞かせる。モデル並みのルックスからは想像できないほど演奏も激しい。地元大阪を拠点に人気を高め、昨年メジャーデビュー。今年3月に発表したサードシングル「カゲロウ」がアニメ『銀魂』のオープニングテーマに採用されるなど、勢いみなぎるグループだ。
 

メイドの衣装に身を包み、ハードなサウンドを響かせる5人組BAND-MAID。リアルにメイド喫茶で働いていたMIKUが中心となって2013年に結成。メイドの萌えキュンな世界観をコンセプトにしながらリードボーカル、ツインギター、5弦ベース、ドラムという編成でぶ厚くヘヴィなサウンドを演奏する。そのギャップは圧倒的だ。昨年、メジャーデビューし、さらに本格的なハードロック、ヘヴィメタルな音楽を追求中だ。


 

才色兼備のガールズロックバンド(5)

才色兼備のガールズロックバンド(6)

大阪出身のGIRLFRIENDは平均年齢16歳。SCANDALを輩出したキャレスボーカル&ダンススクール出身の4人によって2015年に結成され、昨年11月にメジャーデビュー。年齢を含め、アイドルと見間違えんばかりキュートなバンドだ。メンバー全員が作詞作曲を手掛けており、ミドルティーンの胸の奥にある感情をストレートに訴える。ボーカル、ギター担当のSAKIKAの歌声がクールで、サウンドはソリッドというのがとても印象的だ。

 

才色兼備のガールズロックバンド(7)

写真撮影 Yoshihito KOBA

才色兼備のガールズロックバンド(8)

たんこぶちんは、2007年に小学校時代に組まれた佐賀出身のバンド。元気でキュートなパフォーマンスでファンを沸かせる。アルバムではポップなナンバーから、ハードかつソリッドなナンバーまで幅広い。なおヴォーカル、ギターのMADOKAは、今年秋に公開の映画『二度めの夏、二度と会えない君』のヒロイン役に抜擢。映画の音楽は、たんこぶちんが担当する。

 

アイドルとバンドの鮮やかなクロスオーバー


アイドルとバンドのクロスオーバーをリアルに感じさせるグループもいくつかいる。


アイドルとバンドの鮮やかなクロスオーバー(1)

LoVendoЯ(ラベンダー)は、元モーニング娘。の田中れいなが率いるガールズバンド。田中と岡田万里奈がツインリードボーカル、メタリックなギターをプレイする宮澤茉凜が務める。2012年、田中がモーニング娘。在籍時代に結成し、翌年、田中がモーニング娘。を卒業すると活動を本格化。ライブではベースとドラムもサポートで加わり、パワフルなサウンドを聴かせる。ハードなサウンドからキャッチーなナンバーまで、カラフルな音楽性は、田中だけでなくメンバーそれぞれの個性が発揮されたもの。田中と岡田が作詞、宮澤が作曲を担当したりと、楽曲制作にも積極的に参加している。

 


アイドルとバンドの鮮やかなクロスオーバー(2)

佐賀県出身のがんばれ!Victoryは、バンドとアイドルの垣根を超えたバンドルとして、2007年に小学校時代の同級生で結成された5人組。生演奏重視の「絶対生音主義」、70's~80'sロックを今の感性でプレイする「平成オールドロック」をコンセプトに活動している。メンバーが幼馴染でローティーンからバンドをやっているだけに息の合った演奏は圧巻。ライブでアイドルを思わせる自己紹介をするなど愛らしさが際立つが最近は本格的なバンドとしてシフトしている最中といったところ。ちなみにギターのみなみはたんこぶちんのMADOKAと従姉妹の関係だ。

 

アイドルとバンドの鮮やかなクロスオーバー(3)

写真撮影 Hiroyuki Fujiki

アイドルとバンドの鮮やかなクロスオーバー(4)

ガールズバンドシーンで活躍してきたメンバーが、2009年に結成したバンドGacharic Spin(ガチャリック スピン)。中心メンバーでベーシストのF チョッパー KOGAを始め、メンバー全員バンド界で名だたるテクニシャンが揃う。2012年にAKB48が「GIVE ME FIVE」でバンドに挑戦した時、彼女に楽器指導し話題を呼んだ。2013年からはアイドル的なダンサー2人を加え、よりエンターテイメント性の高いスタイルへとシフトチェンジ。破壊力抜群のパワフルなサウンドを武器にコアなバンドだけでなくアイドルと対バンも積極的に行い、熱さみなぎるオンリーワンなパフォーマンスで、活動の幅を広げている。海外人気も高い。

 

アイドルとバンドの鮮やかなクロスオーバー(5)

PASSPO☆は、2009年から活動を続ける、純粋なアイドルグループ。歌って踊るステージをやりながら、2014年からは、BAND PASSPO☆を始動。ライブ時ではバンド編成でのアメリカンガールズロックを奏でる。昨年にはBAND PASSPO☆でのワンマンライブも開催し、歌もダンスもバンドもできる、他に例のないオールラウンダーなグループとして、さらに進化を遂げている。BAND PASSPO☆としてのCDリリースも是非期待したい。

 

女性の感性が光る実力派バンド


またガールズバンドには、ただひたすらにオリジナリティあふれるサウンドを追求するグループも多々いる。そんな中で気になるバンドを紹介しよう。

3人組SHISHAMOは、2010年に結成され、2012年には初音源がヒットしティーンズバンドとして注目を集める。何と言っても元マンガ家志望だったというヴォーカル&ギターの宮崎麻子の書く情感あふれる歌詞が魅力。キャッチーなメロディとタイトなサウンドとで、人気は急上昇し、昨年1月には日本武道館ワンマンライブを大成功。全国区で支持されるバンドとなっている。

 

2010年に結成された京都出身の3ピースtricot。変拍子を取り入れたスリリングなナンバーからスローチューンなど、ポストロック的なサウンドを鳴らす。国内での活躍だけでなく、海外での評価も高い。インディーズ界で活躍する実力派バンドとの対バンも多い。