名曲「デイドリーム」とリンクする新曲も搭載した、新作『soon』で見せるreGretGirlの進化。


かつて彼女にフラれた時に“いつか有名になって、フッたことを後悔させてやる”とVo./G.平部が思ったというところから名付けられた3ピースロックバンド、reGretGirl。初の全国流通盤『my』収録の「ホワイトアウト」のMVが1,300万回を超える再生数(※2019年9月現在)を記録するなど、その切なくも女々しい歌詞とキャッチーなメロディが、若者を中心に幅広い層へと浸透し続けている。今回リリースされる3rdミニアルバム『soon』でも軸にある想いは変わらない一方で、その表現は進化を見せ始めているようだ。次なるステップへと飛躍寸前のreGretGirlに迫る、最新インタビュー。さらに文末にはメンバー3人が選ぶ“失恋した時に聴きたくなる1曲”のプレイリストも掲載してあるので、そちらもぜひチェックして欲しい。

「やっぱり、男は“名前を付けて保存”なので…。結局そのフォルダを開いてしまうと、(いつまで経っても)色褪せずに書けてしまうのかな」

 


ーこれまでも別れた彼女についての想いを主に歌ってきたわけですが、3枚目のミニアルバムとなる今作『soon』も全曲がそういう内容で…。ここまで同じテーマで曲を作り続けられるのも、それだけ想いが強いからこそでは?

平部:
そうですね(笑)。でも1枚目を出してから、もう2年くらい経っているというのもあって。同じような内容を歌ってはいるんですけど、歌詞の書き方や視点は変わってきているんです。そういうところは、自分でも成長できているなと思います。

ー変化しつつも同じテーマについて書けるのは、その子への想いが色褪せていないから?

平部:
やっぱり、男は“名前を付けて保存”なので…。結局そのフォルダを開いてしまうと、(いつまで経っても)色褪せずに書けてしまうのかなとは思います。

ー男は“名前を付けて保存”、女は“上書き保存”とよく言われますからね。意図的にそのテーマを選んでいるわけではないと。

平部:
そういうつもりではないんですけど、書けてしまうというか。いや…、でも意図的に書いている部分もありますね。意図的に書けるようになってきたというところも、1つの成長かなと思います。

ーそんな中で今作のM-5「ブロッサム」は、過去に出した自主制作盤EPに収録されていた楽曲ですよね。それ以外は新曲なんでしょうか?

平部:
そうです。その曲以外は、新たに作りました。

ー「ブロッサム」は過去に出したバージョンから、特に変えていない?

平部:
歌詞もアレンジも、大きくは変えていないです。「ブロッサム」を書いたのは19~20歳くらいの頃なんですけど、その時にしか書けない曲になっているなと思っていて。だからあまり手は加えず、その当時に作ったままの形で録り直しています。

ーこのタイミングで再録しようと思った理由とは?

平部:
過去に出した自主音源が、ネット上では高額で転売されていたりするんです。それを買ってしまう人がいるという現実はちょっと悲しいので、そういうことをなくしていきたいという想いがあって。あと、今作に足りない部分を補えるところもあったので、「ブロッサム」を入れました。

ー今作に足りない部分というのは?

平部:
今回はテンポの速い曲が多いんですけど、「ブロッサム」はミドル寄りのアップテンポというか。ちょっとアンニュイなところがあるので、この並びの中で5曲目に入るとアクセントになって、聴きやすくなるなと思ったんです。

ー聴きやすさも意識して、曲調的なバランスで選んだんですね。

平部:
「ブロッサム」はreGretGirlの曲の中ではあまり歌詞がエグくないほうやと思っていて、そういう意味でも聴きやすいのかなと。今まで自分が作ってきた曲の中でも「ブロッサム」の歌詞はあまり具体的じゃなくて、抽象的に書かれているほうなんですよ。最近のreGretGirlにはなかった部分を、昔の曲から掘り起こしてきたというところもありますね。

ーあまりに具体的すぎると、共感できる人の幅を狭める可能性もありますからね。抽象的な歌詞にすることで、解釈の自由さも生まれるというか。

平部:
やっぱり自分の(ことを歌った)曲も大事やし、これからも歌っていきたいとは思うんですけどね。でも今後もっとファンを増やしていくためには、誰が聴いてもスッと入ってこられる曲というところも目指していかないといけないなと思っています。

 

「“今まで言っていなかったことも言っちゃおう”という感じですね」

 


ー「ブロッサム」とは逆に、M-1「12月29日」はすごく具体的な内容を歌っていますよね?

平部:
これはもう…対極にありますね(笑)。

ー“12月29日”は平部くんの誕生日?

平部:
僕の誕生日です。その日に当時付き合っていた彼女から、別れ話をされたことがあって。結果的には後でヨリは戻せたんですけど、その日に一度フラれてしまって。そこで打ちひしがれている気持ちを歌ったものが、この「12月29日」という曲になりました。

ー前作(2ndミニアルバム『take』)収録の「Shunari」に“誕生日にフラれかけた事も”という歌詞もありましたが、そのエピソードとつながっている?

平部:
そうなんです。僕は伏線を張るのが好きなので、この曲では「Shunari」の歌詞を引用してみた感じですね。自分のやり方の1つとして、昔作った曲の歌詞の一部を抜粋してきて、そこから掘り下げていくという方法があって。「12月29日」は、まさにそういう形で作りました。

ー誕生日にフラれるって、やっぱりショックですよね…?

平部:
それはそうですよ。しかもその日、彼女はそんな素振りも見せずに僕の家に来て。出かける準備をするために僕がいったん部屋を出て、少し経ってから戻ってきたら、“別れたいんだけど…”という話を急に切り出されたんです。“もう(彼女が)何を考えているのかわからない…!”という感じでした(笑)。

ーまさに歌詞のとおりの出来事が起きたと(笑)。M-2「白昼夢から覚めて」も具体的な描写が多いですが、この曲は「デイドリーム」(1stミニアルバム『my』収録)とつながっているように感じたのですが。

平部:
この曲は「デイドリーム “2”」みたいなものを作りたくて。「デイドリーム」はフラれたショックをそのまま出したんですけど、そこから時間が経って自分がどういうふうに変化していったかを描いたのが「白昼夢から覚めて」なんです。だから、予想は的中していると思います。

ーこの曲と「デイドリーム」は、ラスト部分の歌詞がリンクしているように感じたんです。

平部:
そこはリンクさせています。昔の曲は自分のつらい想いや落ち込んでいる気持ちをガーッと歌うことが多かったんですけど、今回の作品では一歩引いて歌っているというか。“僕は(あの頃から)変わっているけど、君はどうだい? それでも良いですか?”みたいな表現をできる曲が増えてきて。そうやって新しい表現ができるようになったのも、同じテーマを歌い続けてきた結果かなと思います。

ーM-4「soak」の“こうやっていつまでも自分の事 歌われる気分はどう?”という、別れた彼女に対して直接的に問いかけるような表現も新しいなと思いました。

平部:
これはもう衝動に任せて作ったところがあって。メンバー3人で一斉に音を鳴らしながら作り始めたので、こういう歌詞になったのかなと思います。“今まで言っていなかったことも言っちゃおう”という感じですね。でも曲調はキャッチーなので、あまりエグくは聞こえないと思うんですよ。

ー曲名の「soak」は“浸す”という意味ですが、これも歌詞の内容から?

平部:
これは“いつまでも僕は、君に浸っているんだぞ”という意味合いからですね。これまでの作品に入っていた「after」(『my』収録)や「replay」(『take』収録)も英単語1ワードのタイトルなんですけど、どれも軽快な曲になっていて。「soak」もそれに続くものという感じで、そこもアルバム同士でリンクする部分の1つになっているんです。

 

「“フラれる”ことに関しては、男も女も同じというか。フラれて傷つくのは、どちらも同じやと思うんです」

 


ー過去にアップされた曲も含めてYouTubeのコメント欄を見ていると、女性からの共感の声も多いですよね。reGretGirlの曲は男性目線の歌詞が多いので、ちょっと意外な気もします。

平部:
たぶん“フラれる”ことに関しては、男も女も同じというか。フラれて傷つくのは、どちらも同じやと思うんです。男と女の差は、それを引きずるか引きずらないかの違いしかなくて。もちろん女の子も、人によっては引きずるのかもしれないですけどね。あとは“今その瞬間に失恋している”という人だけじゃなくて、“私もこういう経験をしたな”という感じで共感を得られているのかなと思います。

ー今作ラストのM-7「おわりではじまり」も、聴いた人が自分を重ねられそうな内容になっていて。

平部:
これは前の彼女と2年ぶりくらいに再会した時のことを元に作った曲ですね。酔っていたのもあるんですけど、積もる想いがありすぎて、泣いちゃうという事件があって…(笑)。

ー今でもそうなってしまうくらい、想いが強いんですね…。

平部:
あの子のおかげでここまで来られたし、バンドも有名になったわけだから。個人的な想いというよりは、その子のおかげで自分たちの生活もどんどん変わっていっているというところが大きいですね。そういうことってたぶん他の人にはないやろうし、僕が特殊なんやと思います。

ーその積み重ねがまた曲になって、新たな作品を生み出したわけですが。

平部:
意識したわけじゃないんですけど、作った曲がそういうものばかりになって。でも歌詞の内容として、ちょっと俯瞰で見るようになったり、(過去の楽曲の)アンサーソングになっていたりという変化はあるので、自分でも満足はしています。

ーそんな今作に『soon』というタイトルを付けた理由とは?

平部:
僕の中で『my』『take』『soon』は三部作やと思っていて。どの作品に関しても“自分のものがみんなのものでもあって欲しい”という願いを込めているんです。『my』は“自分のものだと思えるもの”、『take』は“すぐ手にとってもらえるもの”、そして『soon』は“すぐ近くにいるよ”みたいな感じというか。ライブのMCでもよく言うんですけど、reGretGirlの音楽は“みんなを応援するもの”じゃなくて、“隣で寄り添ってあげられるもの”でありたいなと思っていて。そういう意味で今回は『soon』がピッタリかなと思いました。

ーそういう想いを込めていたんですね。

平部:
あと、『soon』には“僕たちはもう次のステージに行くよ”という意味合いもあって。“comig soon”的な意味も込めています。

ーそれが今回のツアータイトルにもつながっているわけですね。

平部:
“僕らは次のステージに行くよ”っていう。ちゃんと止まることなくステップアップしていけているのでありがたいんですけど、そのぶんプレッシャーも感じていて。やっぱりお金を払ってライブに来てくれる人の前でやるという責任が僕たちにはあるので、ちゃんとそれに対して返せるように今回のワンマンツアーでもっとステップアップしていきたいですね。

 

reGretGirlインタビュー(1)

 

さて、ここまで3rdミニアルバム『soon』を題材にしてVo./G.平部雅洋にじっくり語ってもらったわけだが、楽曲の裏側にあるエピソードもつまびらかにされたことで、彼らの歌をもっと近く感じられるようになったのではないかと思う。

そんなreGretGirlのメンバー自身が失恋した時、隣で寄り添ってくれるのは一体どんな楽曲なのだろうか?

“失恋した時に聴きたくなる1曲”というテーマで、メンバー3人それぞれにセレクトしてもらった。
音楽的ルーツも垣間見えるような下記プレイリストをチェックした上で聴けば、reGretGirlの楽曲がより深く心に響いてくるかもしれない。

 


 

十九川宗裕(Ba.)
光蘚(Album Mix)/Base Ball Bear

失恋して気分が落ちている時に、聴きたくなるこの曲。
気持ち良いシューゲイザーサウンドに「這いつくばって 輝くしかない」と歌うこの曲に、どうしようもなくハマり腑に落ちます。

修復不可能なあの関係、あの場所にはもう戻れないし、あの人との失恋を理由にここまで来たわけだから。
後悔させるために、これからもどんな場所でも光っていたいですね。

mysound

 

平部雅洋(Vo./G.)
春を歌にして/back number

僕がreGretGirlを始めるキッカケになった曲といっても過言ではない。
哀愁漂い情景が浮かぶ歌い出し、サビでは溢れてしまった思いが解き放たれ、泣いているかの様な歌とメロディ。
美しくも儚い。僕が当時抱いた憂いを全て代弁してくれた。
終盤の「会えないとゆう事より何よりも悲しいのは君が僕に会えなくても平気ってゆう事」という歌詞が失恋した心に深く突き刺さり、何度もこの曲で泣いてしまった。

mysound

 

前田将司(Dr.)
卒業/ガガガSP

僕は失恋した時は落ちるところまで落ちたいので、今でも忘れられないといった歌詞の曲を聴きます。
1つでも共感できる歌詞があれば、全部が自分のことを歌っているようで聴きたくなります。
青春パンクは歌詞がストレートなので、心にグッとくるものがあり好きです。

mysound

 


 

【リリース情報】
3rd Mini Album
『soon』
No Big Deal Records

soon_500.jpg

NBPC-0072
¥1,800+税
2019/9/25 Release
mysound

 

【ライブ情報】
“coming soon ツアー”
11/28(木)【東京】渋谷CLUB QUATTRO
12/01(日)【京都】京都GROWLY
12/14(土)【香川】高松TOONICE
12/21(土)【新潟】新潟CLUB RIVERST
12/22(日)【宮城】仙台MACANA
以下2020年
01/13(月)【神奈川】F.A.D YOKOHAMA
01/18(土)【石川】金沢vanvan V4
01/25(土)【福岡】福岡BEAT STATION
01/26(日)【広島】広島SECOND CRUTCH
02/01(土)【北海道】札幌COLONY
02/09(日)【岡山】岡山PEPPERLAND
02/11(火)【愛知】名古屋CLUB QUATTRO
02/15(土)【大阪】梅田CLUB QUATTRO

【WEB】
http://regretgirl.com/

 


 

Interview:大浦実千
Live Photo:ハギワラ ヒカル