【レコにまつわるエトセトラ】第4回 海外買付解体新書 ~ディガー夢の国、世界最大のレコード・フェアへ行こう!編


近年また盛り上がりを見せつつある、レコード/アナログ盤。リアルタイムで再生メディアとしてレコードと接してきた世代だけではなく、CDやカセットすらも知らないくらいの若い世代の人たちからも“新鮮”なものとして受け入れられているようです。
そうした流れの中でこの世界の魅力をよりディープにお伝えするべく始まったのが、本連載【レコにまつわるエトセトラ】。ディスクユニオン・新宿プログレッシヴ・ロック館店長の山中明氏を水先案内人に、入り口から底知れぬ深淵に至るまでを旅しましょう。
第4回のテーマは、“海外買付解体新書 ~ディガー夢の国、世界最大のレコード・フェアへ行こう!編”。日本でも近年は広がりを見せつつあるレコード・フェアですが、本場とも言える海外では規模感がもう桁違い。そんな“世界4大フェア”と呼ばれるものの中から、今回はオランダ・ユトレヒトの“ARC Record Planet Mega Record & CD Fair”を中心にご紹介します。実際に現地で撮影されてきた写真と共に本文を読めば、あなたもユトレヒトに旅立ちたくなること間違いなし…!?

レコード好きはテンション上がりっぱなし必至な最高のパビリオン、それがレコード・フェア。

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“ARC Record Planet Mega Record & CD Fair”

 

近年ここ日本でも広がりを見せつつあるレコード・フェア、皆さん行かれたことはありますでしょうか?

長年思い描いていたあの1枚が出てくるかも…間違ってレア盤が激安で転がってないかな…お! これ持ってるけどこっちはシュリンクかかってるし押さえておこう…なんていう感じに色んなことに思いを馳せながら大量のレコードを思う存分掘り尽くす、レコード好きはテンション上がりっぱなし必至な最高のパビリオン、それがレコード・フェア。

日本国内では東京浅草を始め全国7都市で行われている国内最大規模のレコード・フェア“全日本レコード・CDサマーカーニバル”を筆頭に、レコードだけではなくアパレルや飲食、そして有名DJのプレイも楽しめる野外フェア“TOKYO RECORD MARKET”等々、大小様々なフェアが開催されています。私たちディスクユニオンも不定期ではありますが、東京や大阪でフェアを開催しています。

では、本場とも言える海外でのレコード・フェア事情はどうでしょう?
最大のマーケットでもある英米を中心に、各国でも様々なフェアが開催されていますが、やっぱり日本に比べると規模や濃密度がハンパじゃありません。
イギリスなんかでは、地元のおじいちゃんおばあちゃんの寄り合い的なほのぼの木漏れ日フェアから、生き馬の目を抜くような百戦錬磨のプロだけが集う鉄火場フェアまで、“毎週末”必ずどこかでフェアが開催されているものです。

 

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2017年11月に終了した英国最大のフェア、オリンピア。なんだか寂しかったので最後の姿をパシャリ。

 

そんな各国各地域で開催されているレコード・フェア、その中でもとりわけ大きな“世界4大フェア”と呼ばれるものをご存知でしょうか?
米テキサス州オースティン開催“The Austin Record Convention”、米N.Y.ブルックリン開催“WFMU Record Fair”、英ロンドン開催“London Musicmania (Olympia Record Fair)”(※2017年に終了)、そしてオランダはユトレヒトで開催されている“ARC Record Planet Mega Record & CD Fair”の計4つのフェアです。

ということで、今回はその中でもブッチギリの最大規模を誇る=この地球最大のレコード・フェアである、ユトレヒトのフェアをご紹介しましょう。

 

レコードにまつわるありとあらゆるものが並ぶ様は、まさにレコード・パラダイス。

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夜景 at アムステルダム駅前。

 

ユトレヒトは、アムステルダムやロッテルダムに続くオランダ第4の都市。有名なものと言えばミッフィーぐらいで、アムステルダムほど観光地感はありません。
ただ、かのフェアの存在により、私たちディガーにとってはレコード版・某なんちゃらランドっていうぐらい夢に満ち溢れた街なのです。

開催は4月と11月の年2回、いずれも週末2日間の開催となっています。
また、この期間に合わせて駅周辺等でもレコード・マーケットが開催されたりもしますし、もちろんアムステルダムにはレコード屋も数多くありますので、そちらも合わせて周るのも良いでしょう。
でも、本丸のフェアはそんな気を起こさせないぐらいに巨大です。いやホント。

 

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“Jaarbeurs”

 

会場の名前は“Jaarbeurs(ヤーバース)”。ユトレヒト中央駅の目の前です。広さはちょうど日本でいうところの幕張メッセのような感じですが、さらに巨大。そしてその中の大ホール2つ分を使用してフェアが開催されています。

ちなみに同期間で他全てのホール(レコフェアの約3倍)を使用したメガ・サイズのアンティーク市が開かれていますので、そちらも覗いてみると良いかもしれません。
貴族が使ってそうな銀製スプーンから、高さ5mはあろうかという部族の木製彫像まで、もうなんでもありです。ただ、ちょっと覗くなんていうサイズじゃありませんが…。

 

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広さが分かりやすい写真がありませんでした。すいません。

 

ちなみにレコード・フェアの規模を表現する時には、“ストール(テーブル)”を単位にするのが一般的です。
いわゆる長机ひとつを単位にしているわけですが、ヨーロッパの中規模フェアで50~60ストール、英国最大のフェアだったオリンピアで200ストールといった塩梅ですが、ユトレヒトはおそらくその数1,000ストールover。過去は公称600なんて言ってたこともありましたが、年々巨大化して今に至ります。

 

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ストールの基本はエサ箱と吊るし壁がセット。

 

会場はざっくりとゾーン分けされていて、ロック~プログレ~サイケをメイン・ジャンルとして、ソウル~ジャズ、メタル等がまとまって展開されています。
とはいえ、王道以外にもノイズからタイ・ファンクまで、幅広いジャンルの専門ディーラーも出店。さらにはビンテージ・ポスター、各種専門書、レコード・クリーナー、アクセサリー、なんならシングル用の“リプロ”カンパニー・スリーヴまで、レコードにまつわるありとあらゆるものが並んでいるんです。
まさにレコード・パラダイス。

 

これだけのためにオランダへ行く、レコード好きであれば大正解。

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レジェンドだってレコードが好きなら、足を使ってフェアに行く。にしても自分で自分のレコードを掘るって、ある意味シュール。

 

そしてその膨大なレコードたちの肝心の内容といえば、もう頭がクラクラするほどのレア盤の雨あられ。
ここに至っては、伝説とか幻なんていう枕詞が陳腐に聞こえるほどに、世界のトップ・レア盤が一堂に集結。ただ眺めるだけでも目の保養(もしくは度が過ぎた刺激)になるでしょう。

さらにユトレヒトが他フェアと大きく異なるのは、レコードだけではなく同じ会場内で色々なイベントが開催されているところです。
特設ステージではSUPERSISTERがライヴを行い、ステージ脇でCOSMIC DEALERがサイン会をして、その向かいでハンス・ポコラが本の手売りをする、そんな感じです。分かる人には分かる、ヤバすぎなヤツです。

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サイン会 by ピーター・フック。

 

さらにオークション・ルームも設置されています。今やオークションといえばヤフオクやらebayやらのインターネット・オークションが主流ですが、こちらはハンマー・プライスな本物スタイル。
会場内でバチバチの一騎打ちがあったり、高額落札があると自然に拍手が湧き起こったり、リアルな現場でのみ体感できる血湧き肉躍る最高のイベントです。

 

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JOY DIVISION『An Ideal For Living』のメンバー“全員”サイン入り。Amazing!!

 

競売にかけられるものもSEX PISTOLSのA&M版『God Save The Queen』やら、デビッド・ボウイ『Scary Monsters』のパープル・ヴィニールやら、目ん玉飛び出すクラスの廃盤が飛び交います。
昨年はピーター・フック氏のJOY DIVISIONコレクションが一斉に競売にかけられ、話題を呼んだりもしました。

もちろん飲食も充実。ご当地飯定番のコロッケ、めちゃ甘いベルギー・ワッフル、そしてやっぱり飲みたいビール、色々ご用意あります。
でもへべれけになると色んな意味でヤバいんで、ご注意あれ。

 

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オランダのお隣はベルギー、ということでワッフル。

 

この規模だからこそ実現し得る、これぞまるごとディガー夢の国、ユトレヒト・フェア。どうでしたか? 行きたくなりましたか?

これだけのためにオランダへ行く、レコード好きであれば大正解。
ただ調子に乗って買いすぎて、帰国してから奥様にめちゃくちゃ怒られても責任持ちません。あしからず。

 

 


 

Text:山中明(ディスクユニオン)
Edit:大浦実千