共同制作で見えた新境地 ましのみ×sasakure.UKが語る「エスパーとスケルトン」制作秘話

10月14日に、ましのみの新曲「エスパーとスケルトン」が配信リリース! 大学卒業後初のリリースとなる本楽曲は、プロデューサーにsasakure.UK(有形ランペイジ)を迎え、ましのみの新境地を思わせるサウンドに仕上がっています。そして今回は、sasakure.UKとのスペシャル対談が実現。2ndアルバム『ぺっとぼとレセプション』リリース後の心境の変化や「エスパーとスケルトン」制作秘話、制作を通してお互いが受けた刺激など、貴重なエピソードを語っていただきました。
音にももっと踏み込みたいって思いが出てきた中でsasakure.UKさんと出会いました(ましのみ)
――「エスパーとスケルトン」は、エレクトロと有機的なサウンドが融合して、ましのみさんの新境地を思わせる楽曲に仕上がっています。2人の化学反応があってこその仕上がりだと思うのですが、今回sasakure.UKさんに依頼した経緯を教えてください。
ましのみ:今までやってきた中で、自由な音を自由なままで世に出したいって思いが強くなったんです。こだわったりねじったものが綺麗にパッケージされて、コンプレッサーをかけたみたいに平たくなることに不自由を感じて。インディーズのときは生バンドを、デビューしてエレクトロをやって、その中で“いいとこ取りをするほうが音の面白さが活きるんじゃないか”って感覚が出てきて。2ndアルバムを出したあとから強くなりましたね。それで今回は、自由で音楽的かつ余裕のあるサウンドを作りたいなと思いました。
――その想いを叶えてくれるパートナーを探すために、いろんな音楽を聴いたり?
ましのみ:今までは音について掘り下げたいという気持ちがなかったんです。音にももっと踏み込みたいって思いが出てきたからこそ、いろんな方の曲を聴いて、好きな音楽を掘って、sasakure.UKさんと出会って。sasakure.UKさんの音楽はカッコ良さがありつつ、ガチャガチャしすぎない音の遊びをしているから、この方だったら(曲を)カッコ良くしてくださると思いました。
――sasakure.UKさんは、ましのみさんに対してどのような印象を持っていましたか?
sasakure.UK:ましのみさんはセオリーに則らないというか。メロディラインがぶっ飛んだりハチャメチャなところに行くけど、それは歌詞や曲を引き立たせるための効果的なもので、初めて曲を聴いたときに面白いなって思ったんです。テレビで「どうせ夏ならバテてみない?」を聴いたのが最初でしたね。イントロがめちゃくちゃヘン! あ、これ褒め言葉ですよ(笑)?
ましのみ:ありがとうございます!
sasakure.UK:どうしても耳に残るなと思って気になっていたので、(依頼されたとき)“あのましのみさんか!”と思いました。お会いするまでは、音に対して寄り添いたい方、自分の感情に素直な方なのかなと思っていました。でも実際にお会いしたら、自分の目指したいサウンドに向かって進んでいく芯のある人で、いい意味でイメージと違ったなって。やりたいことは決まっていて、プラスで面白いことがしたいという、可能性の幅を広げてくれる方だなというイメージです。
聴感重視でピアノのフレーズを作っちゃったので“弾けるのか!?”って思いました(笑)(sasakure.UK)
――今回の制作はどういった流れで?
ましのみ:はじめにピアノと歌ができていたんですけど、お願いする前から“やりたい曲”はわりと明確でした。声と音とリズムが、全部心地よく入ってくる曲。頑張らないと聴けないというよりは、心地よく横揺れできるような感じですね。あと今までと大きく違うのが“抜け感”で、力を抜いた曲を作りたかったんです。生活に結びついた歌詞を書いているからこそ、日々に馴染む曲を書きたいなというのが強くて。今回は、今までで一番メンドくさいやり取りをしています(笑)。
――どんなオーダーを?
ましのみ:多幸感は欲しいけど、盛り上がりすぎて頑張らないと聴けない音楽にはしたくない。おもちゃ箱をひっくり返した感じじゃなくて、数あるおもちゃの中からセンスよく選んだものを作りたい…みたいな話をしました(笑)。
sasakure.UK:されました(笑)。
ましのみ:なんでこんなお願いの仕方になったかというと、知識がないから、どうしたらいいかわからない状態で。やり取りをたくさんする中で、私も“こうすればやりたいことに近づくのか”って見えてきたという。わがままばかりでいつキレられてもおかしくなかったのでsasakure.UKさんはなんて優しいんだ!と思って。(笑)。
sasakure.UK:あはは(笑)。自分も行きたい方向性や感性に近いところがあったんでしょうね。ましのみさんのリファレンスを落とし込んだときに“こうしたほうがいいのかな”というのが見えやすかったというか、自分の中で判断しやすかったです。「エスパーとスケルトン」は、ましのみさんに戻してもらって作り直してを繰り返したので、3~4パターンありますね。
ましのみ:sasakure.UKさんは、より知識を深めたいなって思うキッカケを与えてくださったんです。今までは、感性がつぶれちゃう気がしていて。知識をたくさん持っている人は“音楽はこうしなきゃいけない”って捉えているような印象を受けていました。
sasakure.UK:その通り…(小声)。
ましのみ:あはは(笑)。
sasakure.UK:それはそれでいいんですけどね。ひとつのあり方。
ましのみ:型から外れることをカッコいいと思わない文化もあると思ってて、私はそっちにはなりたくないから、勉強することに対して気乗りしなかったんです。でもsasakure.UKさんみたいな人に出会って、知識に対してプラスに考えられるようになったので、今まさに勉強しています。
sasakure.UK:いいと思います。ましのみさんは他の人にはない独特のセンスを持っているので、そのセンスはずっと持ち続けてほしいなって思います。
ましのみ:先生、ありがとうございます!
「エスパーとスケルトン」はアレンジャーとして奮い立たせてくれる曲。お世辞抜きにいい曲だなって(sasakure.UK)
――バックの演奏もカッコいいのですが、ピアノは弾くのが難しいのでは…。
ましのみ:超ムズイです(笑)!
sasakure.UK:確かに、フレーズそのものが難しい。ピアノの文脈や演奏のことを完全に無視して、聴感重視でフレーズを作っちゃったんですけど、生で弾いたほうが良いって話になった時に“ん!? 弾けるのか!?”って(笑)。
ましのみ:それこそ私はピアノで弾きやすいところで作っちゃうので、そこらへんをある程度無視してアレンジしてくださるのは気持ち良くて。ピアノの何かを広げてくれる感じがあるし、何にも縛られないで作ってるってことだし、結局弾けないこともないし。そこも、この曲の“キュン”ポイントですね。
――では、レコーディングも苦労した?
ましのみ:ピアノは物理的に指が足りないところだけを重ねていて、ほかはなるべく1本で弾くようにしたので難しかったです。あと、工夫したことでいうと、今までにないくらいキーとテンポを考えました。声の聴こえ方でも余裕感を出したくて、はじめに作った段階よりも(キーは)2個くらい下げてるんですよね。テンポも、横揺れできるような心地よいものにしたくてBPMは120にしています。あと歌い方もよりライブっぽく、大げさに歌いました。マスタリングでコンプレッサーをかけられちゃうから、それに歯向かいたくて(笑)。そもそも、エンジニアの方に“なるべくコンプをかけないでください”ってお願いしました。
sasakure.UK:コンプ感はこだわりましたね。“Aメロはもっとかけないように”とか。
ましのみ:sasakure.UKさんが、そこに理解があって! エレクトロのトラックメーカーの方って、よりコンプ感を出したい方が多い気がしていたんです。
sasakure.UK:すごくわかります。
ましのみ:でもsasakure.UKさんは、私が言う前に“コンプを…”と言ってくれたので“マジか!!!”って感動しましたね(笑)。
sasakure.UK:歌声を一番大切にしたいというのはありますね。自分も男声合唱の経験があるので、ダイナミクスとかメリハリに気を配りながら作っているところがあって。今回はいつもよりも歌声に寄り添えるようなアレンジを心がけました。
ましのみ:“味”をそのままの形で届けるにはどうしたらいいんだろうと思っていて。今まではフツーにやったら届くと思っていたんですけど、いろんな工程でどんどん削られて丸くなっちゃうんだってわかったので、それをいかにそのまま出すかというのは勝負でもありました。
――サウンドに自由さを感じたので、お互いが好きにやって、ぶつかりながら制作したのかと思っていました。
ましのみ:フツーはそうなんですよ! sasakure.UKさんは優しすぎておかしい(笑)。
sasakure.UK:そんなに(笑)!?
ましのみ:私は伝え方が下手だから、やりたいことも不可能なこともバンバン言っちゃうんです。でも、そこにいかに近づけるか考えてくださったし、そこにはsasakure.UKさんの“こうしたほうがいい”も入っている。それでぶつかっていないのは奇跡みたい。
sasakure.UK:最初に話したときとデモを聴かせてもらったときに、サウンドの方向性のアタリが付いていたからじゃないですかね。アレンジもそれに合わせて音を組んでいきました。8小節目に入る電子音っぽいキュルルルって音はエスパーをイメージしているし、コロコロ…って骨っぽいパーカッションみたいな音も、“スケルトン”という骨を叩いた音をサンプリングした音を入れています。もともとあるやつなんですけど。
ましのみ:あれ、そんな怖い音だったんだ…。衝撃。
sasakure.UK:そのままだとホラーっぽくなっちゃうから、変えてますけどね(笑)。曲のキャラクターに沿った音を使おうと思ったり、そういう擦り合わせが良い感じにできたと思ってます。
ましのみ:何より愛があるというのが大きいです。曲に対する熱量って人それぞれだなって、いろんな方と接していて思うので。
sasakure.UK:すっごくわかります…。
ましのみ:私が作った曲に対して愛情を持ってくださって、曲に対しても私に対しても親身になって作ってくれることが、そもそも感銘を受けたところですね。
sasakure.UK:そもそも、アレンジャーとして奮い立たせてくれる曲だったんだと思います。お世辞抜きにいい曲だなって! 僕がこの歌詞を書きたいくらい(笑)。
私がベートーヴェンくらい有名になって伝記ができたら、sasakure.UKさんは出てきます(ましのみ)
――sasakure.UKさんは今回の制作を通して“音楽はこうあるべきだと思った”と、ライブで語っていたそうですね。
sasakure.UK:歴が長いと、エフェクトとかイコライザとか全部数字を見て安心しちゃいがちだけど、実際はそうじゃなくて、聴感や言葉を聴いた感じで判断していいんじゃないかなって。曲と向き合うためには、意見を出しあいながらそれぞれ良いところを選んでいかなきゃいけないし、ちょっとずつ選択してベストな状況にしていくというか。やっぱり音楽はそうあるべきだと思うし、データじゃなくて、聴いたときの想いが一番だなって改めて認識した機会でしたね。ましのみさんは“○dB上げた”というよりは、聴いて判断するんですよね。
ましのみ:まず、数字を見て安心するって感覚があるんですね!? “2dB上げたから最高だぜ!”みたいな?
sasakure.UK:そうそう。作業を続けていると耳がおかしくなって、最終的な判断ができなくなっちゃって、データに頼ることがあるんです。“このくらい上げれば大丈夫”とか“ここはこの帯域でバランスが取れている”とか。
ましのみ:なるほど…! 私は“感情がどう動くのか”“歌詞がどう響くのか”って聴き方しかできないから、sasakure.UKさんがバランスを取ってくれていたんですね。
sasakure.UK:でも油断すると理屈くさくなっちゃうから、なるべく感覚を大切にするように心がけました。
ましのみ:両方あるのが無敵ですね。
――大学卒業後というタイミングでもありますし、「エスパーとスケルトン」は今後ましのみさんのキャリアを語るに欠かせない曲になるなと、制作の背景を聞いて改めて思いました。
ましのみ:1stアルバムやシングル、2ndアルバムを出して、そこまでが1タームという感覚があって。大学卒業というタイミングもあるかもしれないけど、それらを経たことによって、音や曲、歌っていきたいこと、今後の音楽的な人生、いろんなことについて考えました。ここから新しいステージにいきたいなと思っていて、そのスタートという意味でsasakure.UKさんにお願いしたところもあるし、私の中でこの曲に対する気持ちは“新たなスタート”というのが大きいですね。sasakure.UKさんにお願いして本当に良かった!
sasakure.UK:よっしゃー!
ましのみ:私がベートーヴェンくらい有名になったとして、伝記ができたら、お母さんとか大事な人が出てきて、塾の先生の次にsasakure.UKさんが出てくると思う(笑)。重要人物ですね。
【Release】
Digital Single
「エスパーとスケルトン」
2019.10.14 (Mon)
【LIVE】
ましのみワンマンin東京(仮)
【日程】2019年11月15日(金)
【場所】渋谷TSUTAYA O-WEST
【時間】18:15開場/19:00開演
【料金】\4000(ドリンク代別)
※学生の方は学生証ご提示で\500キャッシュバック
ましのみワンマンin大阪(仮)
【日程】2019年11月20日(水)
【場所】大阪アメリカ村 BEYOND
【時間】18:15開場/19:00開演
【料金】\4000(ドリンク代別)
※学生の方は学生証ご提示で\500キャッシュバック
詳細はましのみオフィシャルサイトへ
https://mashinomi.com/s/y04/?ima=5058
Text&Photo:神保 未来