弦の上げ下げで感情を表現せよ!個性を出す!チョーキング入門書(講師:GLIM SPANKY 亀本寛貴)【Go!Go! GUITAR プレイバック】


弦を押し上げたり下げたりすることで、音程をコントロールする“チョーキング”。ギタリストとしての表現力が問われ、重要かつ奥深いテクニックとして知られるチョーキングを、GLIM SPANKYの亀本寛貴に伝授してもらった!

亀本寛貴によるデモ演奏はコチラ >>

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「16歳でギターを始めて、譜面に“Cho”と書いてあったのがチョーキングとの出会い。“チョ”って何だと(笑)。あ、これがチョーキングなのかと。動画を観たり教則本を読みながら練習しましたね。1音チョーキングであれば、2つ先のフレットと同じ音(2フレット分)になれば良しとしていたのでそんなに深く考えずに。ただ僕はスポーツをやっていたので、上手く弾くためには“ 見てくれ”、つまりフォームが大事だと思っていたんです。当時はGLAYのHISASHIさんの演奏をよく観ていたんだけど、彼はネックを握り込んで弾いていたので、自然とこういう動きで弾くものだと思って。指の力だけで弦を持ち上げる人がいるけど、無理でしょそれ!って(笑)」(亀本)

 

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ギタリストとしての表現力が問われる!まずは狙った音程を出せるように!
ロック/ブルースギターにおいて、もっとも感情表現に適したテクニックと言えば、チョーキングをおいて他にはない。代表的な1音チョーキングであれば、音程を1音分(指板上で2フレット分)高くする。半音チョーキングはその半分で、音程を半音分(指板上で1フレット分)高くする。まずはしっかりと狙った音程を出せるように意識することが大事。弦を上げ下げする加減によって音程もさまざまで、さらに音程変化の速さや、緩急のカーブなどによっても無数の表情を生み出すことが可能だ。


音程を2フレット分上げる(1音チョーキングの場合)

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▲3弦14フレットを1音チョーキングする場合、チョーキング時の音程と3弦16フレットの音程は同じになる。


 

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薬指で3弦14フレットを1音チョーキングした時のフォーム

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手首をヒネるようにして弦を持ち上げる
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▲弦を押さえている指の力ではなく、ドアノブを回す要領で、手首のヒネリを使って弦を押し上げるのがポイント。指の形は固定したまま、手首をヒネる感覚だ。

他の指も添えることで弦の押し上げがラクに

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▲弦を押し上げるためにはある程度の力が必要なため、人差指以外の指でチョーキングする場合は、中指や人差指も添えると弦を押し上げやすい。親指は基本的にネックに引っ掛けるスタイルでOK!

 

 

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「動作で意識していることは、あえて言うなら見た目(笑)。チョーキングする手がダサいと嫌じゃないですか。僕は薬指でチョーキングすると小指がピンと立ってしまいがちなんですけど、GLAYのHISASHIさんは常に小指がキレイに揃っている。とにかく、チョーキングで一番大事なのはピッチだと思います。ピッチが外れてたら最悪じゃないですか(笑)。それは練習量と比例するものだと思うので、数をこなすしかない!」(亀本)
 

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他の弦に触れておくことでチョーキング時のノイズを防止!
チョーキングする指の指先で上の弦に触れたり、使っていない指を弾かない弦に触れておくことで(=ミュート)、意図せぬノイズを防ぐことができる。ミュートを怠るとせっかくのプレイが台無しに。


人差指で低音弦をミュート

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▲人差指の指先で、チョーキングする弦よりも低い弦(写真は4弦と5弦)に触れることでチョーキング時のノイズを防ぐ。


親指で6弦をミュート

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▲親指をネックに掛けることで、チョーキング時のフォームや動作が安定するだけでなく、6弦のミュートにもつながる。

 

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「弦を持ち上げたとき、上の弦が鳴ってしまうのでミュートします。あと、チョップ奏法を多用するので左手の人差指でがっつりミュートしないとノイズが鳴ってしまいます」(亀本)

 

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種類豊富なチョーキングファミリー!
ぜひ覚えて1ランク上の表現方法を手に入れよう

1音チョーキングに加え、音程を半音(1フレット分)高くする半音チョーキング、約1/4音(1/2フレット分)高くするクォーターチョーキングなど種類は豊富だが、ここで紹介するもの以外にも、音程を1音半(3フレット分)高くする1音半チョーキング、音程を2音(4フレット分)高くする2音チョーキング、音程変化の音を入れずに弦を持ち上げた状態でピッキングするチョークアップなどが存在する。


ブルージーな味わいを演出
半音チョーキング

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▲その名の通り音程を半音(1フレット分)上げるチョーキング。写真の場合、3弦15フレットと同じ音程になる。


絶妙な味付けをプラス
クォーターチョーキング​​​​​​​

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▲半音チョーキングの半分、つまり音程を1/4音上げるチョーキング。ニュアンス付けに最適なチョーキングだ。


​​​​​​​押し上げた弦を下げるテク
チョークダウン

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▲チョーキングした弦を下げて元の音に戻すテクニック。チョーキングして押弦したままの状態で、元の位置まで戻す(音程が下がる過程を聴かせる)のがポイントだ。


ゆっくり持ち上げて粘りを演出!
ポルタメントチョーキング

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▲弦を徐々に目的の音まで持ち上げることで、ダイナミックな効果を演出。動作は1音チョーキングと同じ。


2本の弦を同時に上げる!
ダブルチョーキング

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▲2弦と3弦を同時にチョーキング。彼のように2本の指を使う方法と指1本で押し上げる方法がある。2本とも正確な音程でなくてもOK。​​​​​​​​​​​​​​


2本の弦でハーモニーを作る
ハーモナイズチョーキング

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▲チョーキングした弦としていない弦でハーモニーを作る。3弦14フレットをチョーキングしつつ小指で2弦15フレットを押弦。​​​​​​​


2本の弦が同じ音程に
ユニゾンチョーキング

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▲チョーキングした音と、人差指で押さえたポジションの音が同じ音程になるテク。こちらもダブルチョーキングと呼ぶこともある。​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​

 

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「チョーキングのバリエーションは、コピーしたり音楽を聴いていくうちに覚えていきました。自分も曲を作るときにフレーズを考えるじゃないですか。そのとき、音階の動きを考えていくんですけど、どう移動させようかってときにチョーキングだと音程変化のスピードを調整できるので、1音チョーキングでも弦を鳴らしてから上げるとか、鳴らすと同時に上げるとか、弦を上げておいてから鳴らすとか、フレーズを作っていく中で“これはありだな”って自分なりに思いついていった感覚もあります」​​​​​​​

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 チョーキングビブラート 
ビブラートをかけることでより情感豊かな表現が可能に
ビブラートとは、弦を上下に動かすことで音を震わせるテクニック。手首の動かし方など、チョーキングと似通った部分が多いビブラートだが、チョーキングをした状態で音を伸ばしたいとき、ただ伸ばすのではなくビブラートをかけるとより情感豊かな表現が可能になる。

1音チョーキングした状態から…

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▲1音チョーキングで弦を押し上げたあと、そこからさらに弦をタテ方向(上下)に動かすことでビブラートを加える。


弦を上げた場所を中心に

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▲音を伸ばすチョーキングはビブラートとの相性がいい。慣れたら、弦を動かす幅や速さにバリエーションをつけて練習してみよう。

 

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「僕はソロや音を伸ばすときは、だいたいビブラートを入れて弾きます。ロングトーンのときにリズムを見失っちゃうのが嫌なので、リズムに合わせて揺らしているところもありますが、まぁ手癖ですね(笑)。低いポジションだとゆっくり震わせることがあります」(亀本)


 チョップ奏法 
ブラッシング音を一緒に鳴らすことでアタック音を獲得!
チョップ奏法(チョーキング+ブラッシング)とは、目的の音とその他の弦のブラッシング音を一緒に鳴らすことで、強烈なアタック音を得るテクニック。目的の音(弾く弦)以外は右手側面を弦に当ててミュートしつつ、全弦を勢い良くピッキングするのがポイントだ。このミュートから弦を弾く動作までの移行が難しいので、ミュートをオフにするタイミングは何度も繰り返し練習してコツをつかもう。ロックはもちろんブルースで多用される、玄人感が出るテクニックだ。

右手側面を弦に当てる​​​​​​​

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▲まずは右手の側面をブリッジ手前付近に当てて弦をミュート。​​​​​​​


6弦から…

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1弦まで一気に弾く!​​​​​​​​​​​​​​

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▲6弦から1弦に向かって全弦をピッキング。3弦を弾く場合、3弦まできたら右手側面を弦から離してミュートをオフに。

 

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「チョップ奏法もいろんな人の映像を観るうちに覚えました。ジョー・ボナマッサとかスタイルは違いますけどデレク・トラックスも弾くときにブワー!っとチョップする感じがカッコいいなと思って、ひたすら研究して手グセになりました(笑)」(亀本)


注目度MAX! チョーキングを使った必殺フレーズ

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▲ビブラートは小刻みかつダイナミックに震わせるのが亀本流。

 

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「本当に一瞬ですが(笑)、チョップ奏法は絶対にできたほうがいい! 最後のビブラートはフレットに擦れる音が大事です」(亀本)

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「リフ編」低音弦チョーキングで色気を演出!

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▲低音弦を使ったロックなフレーズ。ソロだけではなく、このようなシンプルなリフでも低音弦にチョーキングを入れることで色気のあるリフへと変貌する。


 POINT  低音弦のチョーキングは下方向へ!

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▲5・6弦など(場合によっては4弦も)の低音弦でのチョーキングは、弦を押し上げるのではなく反対に引き下げる。


「ソロ編」感情を表現する多彩なチョーキング!

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▲亀本の音楽的ルーツが垣間見れるブルージーなソロを自由に弾いてもらった。「h.c」は半音チョーキング、「D」はチョークダウン、「q.c」はクォーターチョーキングを指している。​​​​​​​


 POINT  表現の幅が広がる“激シブ”なチョーキング​​​​​​​​​​​​​​
上の譜例では多彩なチョーキングが用いられているが、その中でもピックアップしたいのが2弦8フレットのクォーターチョーキングと15フレットのチョークアップ。クォーターチョーキングは弦を押し上げてもいいが、引き下げることで粘りのあるチョーキングが可能に。

下方向へのチョーキング

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▲下方向と上方向でニュアンスが変わるので試してみよう。​​​​​​​​​​​​​​


弦を上げた状態でピッキング

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▲弦を押し上げる過程の音程変化は入れず、弦を上げた状態で鳴らすのがチョークアップ。弦を上げるときは、音程変化の音が入らないよう右手で弦をミュートする。

 

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「チョーキングとかビブラートはギターの良さなので、弦は基本的に揺らす!みたいなところはありますね(笑)。もはやコードでも揺らしますから。ソロでチョーキングを使わないものはないくらいです。リフでは低音弦でのチョーキングを入れますし、ニュアンス付けでクォーターチョーキングを入れたりします。ポルタメントチョーキングはシンセでは出せないニュアンスだし、せっかくギターを弾くんだったらギターらしさを出したほうがいいという考えです。人差指でマイナー3度をチョーキングするときは、ブルース感が出るので下方向にチョーキングしますね」(亀本)

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ジョー・ボナマッサのスタイルはソロで多用しています
「GLAYのHISASHIさんはリードプレイも多いですし、チョーキングとかビブラートを多用するきっかけになりました。あとは、ブルースギタリストのジョー・ボナマッサ。パン!と弦をチョーキングして、上げたポジションで大胆に震わせるスタイルはソロで多用してます。彼はエリック・ジョンソンを意識していると思うんですけど、ギターが違うじゃないないですか。ボナマッサはレスポールらしいトーンというか、ソロのニュアンスも好きで意識していますね」(亀本)


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チョーキングはしゃべる感覚で弾くのが大事
「しゃべるときに“あのー”とか言うじゃないですか。僕にとってチョーキングってそういうニュアンスなんですよね。人間味があるテクニックなんです。それをギターに置き換えているだけっていう意識を持つと、ギターがより表現豊かになる。しゃべっている感覚で弾くのが大事なのかなと。音程を1音上げるとか紹介しましたが、もっと感覚的な問題というか、喋り方が人それぞれ違うようにチョーキングも違うので、自分だけの喋り方を見つけるように練習してください。いろんな楽器があるけど、やっぱりギターが一番声や歌に近いと思っていて。それが一番活きるのがチョーキングだと思います。自分が解放されて曲の中で脇役だったのがその瞬間だけ主役になれるので、たくさんチョーキングをしたほうがいいと思います」(亀本)
 

【プロフィール】
PROFILE  GLIM SPANKY/松尾レミ(Vo,Gt)と亀本寛貴(Gt)による男女2人組ロックユニット。ロック、ブルースを基調にしながらも、新しい時代を感じさせるサウンドを鳴らす。アートや文学やファッション等、カルチャーとともにロックはあることを提示している。ハスキーで圧倒的存在感のボーカルと、ブルージーで感情豊かなギターが特徴。ライブではサポートメンバーを加え活動中。http://www.glimspanky.com

【リリース】
NEWEST SINGLE
ストーリーの先に

ジャケ.jpg

【通常盤(CD)】¥1,300+税
【初回限定盤(CD ※ライブ音源収録)】¥1,800+税
【完全数量限定盤(CD+グッズ)】¥3,600+税
ユニバーサルミュージック
19年11月20日リリース
 


(Go!Go!GUITAR 2018年6月号に掲載した内容を再編集したものです)

 


 

Edit:溝口元海