水野しずの「柔軟になりたい時に聴く」プレイリスト

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mysoundイチ押しのアーティストにテーマに合わせた楽曲をピックアップしてもらい、その曲にまつわるエピソードから本質を掘り下げていくプレイリスト企画。今回は、<ミスiD 2015>のグランプリを獲得し、モデルやイラストレーター、企画展のディレクションなど多方面での活躍で注目が集まっている水野しずさんがキュレーターとして登場です。今回作っていただいたプレイリストのテーマは“柔軟になりたいときに聴く”プレイリスト。普段の音楽の楽しみ方を交えつつ、配信されていることに驚くほどマニアックな曲を含む全10曲を紹介。音楽を軸に、水野しずという存在の根幹を少しだけのぞくことができました。

INTERVIEW

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―さまざまな分野で活動されていますが、なにをしている人ってひとことでは説明しづらいですね。

水野:絵を描く人って受け取ってもらうことが多いんですけど、自分では「みなし無職」って呼んでます。なにをするにしても、すごくインナーなものとポップなものをつなげたいっていうのは一貫しているんですけど。

―今回はキュレーターとしてプレイリストを作成していただきました。普段は、どんなふうに音楽と付き合っていますか?

水野:動画を観たりCD店で最新の曲をチェックしたりするよりは、ラジオで聴こえてきた曲の歌詞を検索したりして聴いたりしてます。あとは、コンピレーションアルバムを無数にレンタルしてみたり。30曲に1曲はズバッと突き刺さるものがあったりするんですよ。自分の感覚に刺さるものをいろいろ漁るのが好きです。自分で聴く用にプレイリストを作ることもありますね。今回、テーマを設けるっていうのを知らずに好きな曲を選んじゃったんですけど、しいてテーマをつけるとしたら・・・“気持ちを柔軟にしたいとき”のプレイリスト。考えすぎたりしたときに、マイルドさを取り戻してくれる曲たちです。

―早速、曲ごとの解説をお願いします。1曲目は、電気グルーヴ「タランチュラ」。

水野:電気グルーヴ、共感する部分が多かったりするし好きですね。意味とか別に関係なくてグルーヴじゃないですか。自分の絵も、電気グルーヴの曲を聴いているみたいな感覚で見てほしいなって思うところがあって。この曲は、私の好きな映像作家さんが作っていらっしゃるんですけど、MVもすごくカッコ良いんです。

 

タランチュラ
電気グルーヴ

 

―2曲目は、ヒカシュー「プヨプヨ」。1980年の渋谷公会堂でのライブ音源ですね。

水野:代表曲なのでライブでも毎回やっていた曲だと思うんですけど、これは本当にすごい名演なんですよ。曲の頭からラストの後方垂直ブッ倒れまでの一連の流れが素晴らしくて。狂気的なんだけど、それもちゃんとエンターテインメントとして受け入れられていて。エネルギーですね、この時代の。それがライブ版であることによって伝わってくるので、いいなと思います。

 

プヨプヨ (1980 At 渋谷公会堂)
ヒカシュー

 

――3曲目は、ラップユニットchelmicoの「night camel Feat.FBI」。

水野:MC Rachelとは一緒に遊んだりするんですけど、ラップはギャグで始めたって言っていて。なんで?って聞いたら人生にはギャグが必要だって。すごいわかるし、この曲調とスタンスのコントラストがカッコいいなあと。ヒップホップはたまに聴くんですけど、すごく早口のヒップホップを聴いていると、昔通っていた右脳開発アカデミーで10倍速の英語を聴かされていたときの気分になりますね。

 

Night Camel Feat. FBI
chelmico

 

―4曲目は、アニメ『学園ハンサム』のキャラクターソング「Legend of Sexy(美剣咲夜/CV:キンキン)」。

水野:もともとは東北の美大の方が作っていらっしゃるゲームなんですけど、これもエネルギーですね。「プヨプヨ」が流れていた時代にあったようなデタラメなエネルギーを放出している人って、今の時代あまりいないんです。なぜなら、現代は情報が多過ぎて受け取りやすく加工されたものしか入ってってくれないみたいなところがあるから。『学園ハンサム』は、それすら越える勢いがあっておもしろいです。

 

Legend of Sexy(TVアニメ「学園ハンサム」より)
美剣咲夜(CV:キンキン)

 

―5曲目は、TM NETWORK「Children of the New Century -FINAL MISSION- (Instrumental)」。

水野:「GET WILD」がすごく好きなんですけど、あれってライブで毎年リミックスして演奏されていて年々長くなって、今では15分ぐらいあるんですよ(笑)。前奏だけでも7分くらいあって、全然違う曲かと思ったらイントロが始まるっていう(笑)。この曲は、その「GET WILD」の蛇足とされる部分だけを集めたような曲です。蛇足といっても、めちゃくちゃカッコいいんですけどね。

 

Children of the New Century -FINAL MISSION- (Instrumental)
TM NETWORK

 

―6曲目は、Pink Floyd「Echose」。浮遊感が心地いいですね。

水野:いいですよね。歌詞で、急に“アルバトロスが俺の頭の上を飛んでいる”とか言っているところとか、ぐっときます。

 

Echoes
Pink Floyd

 

―40年以上前に発表された曲ですが、こういった昔の曲によく親しんでいるのは、親からの影響もあったりするんでしょうか?

水野:いえ、親はクラシックしか聴かないので。私の音楽の趣味は、いろんなものを借りて聴き漁っていくうちに確立されたものですね。ジャンル的なものというより、“ずんどこ”いってる曲が好きです。それは実際にサウンドが“ずんどこ”いってるものじゃなくても自分が“ずんどこ”していれば、静かな曲でもそう聴こえるというか。音楽って音としてアウトプットされなくても含んでいる空気があると思うので、そういうものが“ずんどこ”なのかも。

―7曲目は、Thom Yorkeのソロアルバムから「THE ERASER」。

水野:学生のときに発売されて、めちゃくちゃ聴いていました。RADIOHEADも好きですけど、トム・ヨーク1人っていうのが、よりピーキーな感じがして。この曲はアルバムの1曲目にして、めちゃくちゃ突き抜けちゃっていて。結構ショックを受けましたね。

 

THE ERASER
Thom Yorke

 

―学生の頃、周りが聴く流行の音楽とかには触れなかったですか?

水野:よくわかんなくて・・・Mr.Childrenしかわかんないです。周りが聴いてるものも知りたいんですけど、あまり入ってこなくて。カラオケでもアニソンか歌謡曲を歌っていました。あとMr.Childrenも(笑)。

―8曲目は、マドンナ「Hung Up」。MVも最高なんですよね。

水野:ですよね。女性を性的に見るきっかけになったMVです(笑)。エッチで可愛いのに、面白くて。そのバランスが最高です。学生の頃、当時まだ珍しかったロリータファッションの子を取り上げたりするおもしろい番組のテーマ曲がこれだったんですよね。岐阜県でワクワクしながら観ていて。中高生のときって見えている世界がすごく狭いから、その時期に視野を広げてくれるものってめちゃくちゃ刺激的じゃないですか。この曲にはそういう印象があります。

 

Hung Up
マドンナ

 

―打って変わって9曲目は、ゆらゆら帝国「スイートスポット」。

水野:私の勝手な感想ですけど、ゆらゆら帝国っていろんなタイプの世界の果てをうろうろした結果、ニュートラルな位置に落ち着いたのかなと思うんですけど、これはあるひとつの極端な果てなのかなと。桜とか見ているときに聴きたくなる曲ですね。

 

スイートスポット
ゆらゆら帝国

 

―ラストは、『FINAL FANTASY VIII』の戦闘時BGM「The Man with the Machine Gun」。かなりマニアックですね。

水野:この曲があるmysoundって、すごいですよね(笑)。『FINAL FANTASY VIII』自体、めちゃくちゃいいんですよ。ゲームといえば、昔のゲームボーイって、デカイ弁当箱みたいだったじゃないですか。あれって中が複雑だからか音にノイズが入ったりして。それがいいのにCDだと音がキレイだから心に刺さるものじゃなくなってるんです。小学校のときはあんまり友達もいなかったんで、時代的にもう壊れた弁当箱を耳に当ててトイレで音を聴いたりしていました。

 

The Man with the Machine Gun FFRK Ver. arrange from FFVIII
増本直樹

 

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ORIGINAL PLAYLIST

水野しずの「柔軟になりたい時に聴く」プレイリスト

 

タランチュラ
電気グルーヴ

 

プヨプヨ (1980 At 渋谷公会堂)
ヒカシュー

 

Night Camel Feat. FBI
chelmico

 

Legend of Sexy(TVアニメ「学園ハンサム」より)
美剣咲夜(CV:キンキン)

 

Children of the New Century -FINAL MISSION- (Instrumental)
TM NETWORK

 

Echoes
Pink Floyd

 

THE ERASER
Thom Yorke

 

THE ERASER
Thom Yorke

 

スイートスポット
ゆらゆら帝国

 

The Man with the Machine Gun FFRK Ver. arrange from FFVIII
増本直樹

 

PROFILE

1988年12月19日生まれ、岐阜県多治見市出身、東京都在住。2007年に美大進学のため上京。大学時代は自主制作アニメーションと演劇に没頭。その後、<ミスiD2015>グランプリを受賞し話題に。以降、イラストレーターとしての活動を中心に、漫画家やモデルなど幅広いジャンルで活躍している。

ホームページ
https://mizuno-shizu.jimdo.com/ 
Twitter
https://twitter.com/320_42?lang=ja


Interview&Text:野中 ミサキ
Photo:山口 真由子
取材協力:il MATTO

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