甲子園でも大人気!「パワプロ」曲はどのようにして作られているのか?


人気野球ゲーム『実況パワフルプロ野球』、通称「パワプロ」の楽曲が、高校野球応援でも人気だ。球場で聴いていても応援しやすく、球児たちや吹奏楽部顧問からの支持も高い。どのようにして楽曲が作られているのか、制作メンバーにこだわりを聞いた。

新型コロナウイルスの影響で、センバツに続き中止となった夏の甲子園。現在すべての都道府県で独自大会が開催され、8月も今春センバツに出場予定だった32校を招く「2020年甲子園高校野球交流試合」の開催が決定している。

これらの大会は無観客で開催されるため、吹奏楽部による応援もないが、近年多くの学校が応援に取り入れているのが、野球ゲーム『実況パワフルプロ野球』の楽曲だ。以下の通り、パワプロ楽曲を使用した学校が甲子園を6連覇中という縁起のよさだ。

2017年
春 大阪桐蔭(大阪)
夏 花咲徳栄(埼玉)

2018年
春 大阪桐蔭(大阪)
夏 大阪桐蔭(大阪)

2019年
春 東邦(愛知・大阪桐蔭吹奏楽部が友情応援)
夏 履正社(大阪)

 

「根尾の曲」として全国に拡散

 

パワプロ楽曲のなかでも、特に人気の高い『かっせー!パワプロ』は、大阪桐蔭が2017年春から、根尾昂(現・中日ドラゴンズ)選手の応援曲として使用。強豪校の応援曲を各校の球児たちが吹奏楽部にリクエストし、全国に広まっていくというケースはこれまでにも多々あるが、同曲も同様に「根尾の曲」として多くの球児たちに愛されている。この曲を使うことになったきっかけを、大阪桐蔭高校吹奏楽部総監督の梅田隆司氏に聞いた。

 

「KONAMIさんからの依頼で録音する機会があり、いくつかの楽曲の中で一番気に入ったのが『かっせー!パワプロ』でした。根尾はうちの注目選手だったこともあり、何か新しい曲を使いたかった。吹奏楽部の生徒にもパワプロのゲームをやっている子もいて、『先生、この曲かっこいいですよ』といわれていたりと、いくつかの要素が重なって根尾の応援曲に使うことにしたんです」(梅田氏)

 

根尾選手は、1年夏からベンチ入りし、2年春から主力選手の1人に。4季連続で甲子園に出場し、2年春、3年春、3年夏に見事優勝。史上初・二度目の春夏連覇に大きく貢献した。

 

「『先生、パワプロいいですね』と本人も気に入っていました。野球ゲームの曲だけあって、曲調が応援向きだし、耳当たりもいいですよね」(梅田氏)

 

根尾の活躍で、多くの学校に広まっていった『かっせー!パワプロ』。パワプロの楽曲を手がけるKONAMIのサウンドクリエイター・渡邊紀如氏も、同様に「根尾くんの曲として使われて広まった」と話す。

 

「ファンの方から『根尾のテーマ』といわれたりしていますね。中日ドラゴンズ入りした後も、応援団から『この曲を使っていいでしょうか』と問い合わせがありました。使いたいといってくださるのはとてもうれしいですね。野球ゲームの曲として作っているので、実際に野球をやっている方や応援をしている方に響いて、曲まで使いたいといってもらえるのは、サウンドクリエイター冥利に尽きます」(渡邊氏)

 

大切にしている“パワプロ感”

パワプロ(1)

パワプロの楽曲を手がけるKONAMIのサウンドクリエイター・渡邊紀如氏
 

実際に球場でパワプロ楽曲を聴いていると、明るく勢いのある曲調が試合とスタンドを盛り上げていることを実感する。作曲するときは、どのようなことを心がけているのだろうか。

 

「パワプロの曲は、選手の背中を押してあげたり、元気が出るようなポジティブな曲調が多い。そのような楽曲の場合、応援してあげられるような、テンションが上がる曲をというコンセプトのもとで作っています。そういった点も、高校野球とのマッチングがよかったのかなとも思いますね。具体的には、メロディをキャッチーに作ることが命題です。またケースバイケースではありますが、前向きで明るい曲が多く、あまりシリアスになりすぎないように作っていることもパワプロらしさのポイントだと思っています」(渡邊氏)

 

ゲーム音楽を作る上で、参考にしているものは何かあるのだろうか。

 

「勢いが必要な試合曲の場合は、気合が入りやすい曲の資料を集めます。映画の戦闘シーンだったり、鬼気迫っているときにどんな音楽が使われているかをリサーチしたりしますね。その上でさらに、“パワプロ感”をプラスしてどう表現するか。どんな場面においても、パワプロらしさのエッセンスを忘れないように心がけています」(渡邊氏)

 

野球ゲームの楽曲を作るにあたり、高校野球やプロ野球の応援も相当研究しているという。

 

「甲子園期間中は、いつもテレビ中継をつけています。仕事しながら応援曲のチェックは欠かせません。アルプススタンドからパワプロの曲が聴こえてくると、社内のチャットで「今、きてます!」「かっせーきてます!」と盛り上がっています(笑)。制作メンバーも「やってくれてるー!」とみんな感動していますね。プロ野球は、選手ごとの応援曲やチャンステーマなど、毎年資料を作っています」(渡邊氏)

 

パワプロ(2)パワプロ(3)

パワプロ(4)

 

吹奏楽版は「簡単で鳴りがいいこと」が重要

 

吹奏楽版のアレンジは、特に尺の長さを意識したそう。

 

「ブラバンアレンジ尺は、長すぎても短すぎてもダメ。プロ野球応援の傾向や、応援しやすい曲調を加味しながら楽譜に落とし込みました」(渡邊氏)

 

アレンジは、高校野球の応援曲を集めたCD『ブラバン!甲子園』シリーズを手がける、作編曲家の山田雅彦氏に依頼。山田氏に、アレンジする上で心がけた点を聞いた。

 

「まずは、マイクを通したレコーディングの音と球場での生音になるべく差が出ないように気をつけました。球場でよく鳴るためにも、トランペット、トロンボーン、チューバの金管楽器を軸にすえて、一般的な吹奏楽ポップスアレンジとはすこし違うオーケストレーションをしています」(山田氏)

 

実際に野球応援曲として使ってもらうために、細かい点にも配慮されている。

 

「球場での打楽器は大太鼓がメインとなるため、基本リズムはなるべく簡単にして、ノレるように意識しています。これは、メガホンで一緒に応援する人に難しいリズムを強要しないためにです。また、小編成の吹奏楽部も多いため、譜面が難しくならないようにという点も気をつけました」(山田氏)

 

たしかに、複雑な指回しなど、難しい譜面は少人数の吹奏楽部だと演奏出来ないことも多い。より多くの学校に演奏してもらうには、演奏しやすい譜面であることも大切だ。

 

「メロディはユニゾンが多く、ハモッても2声という箇所も多いです。また、原曲の和音を簡略化して鳴りやすいように組み替えたりもしています。極端な話、トランペット1、トロンボーン1、チューバ1の金管楽器3人と打楽器がいれば成り立ってしまうようなアレンジです。もちろん、実際に3~4人で演奏した場合は迫力には欠けますが……(笑)。多くの学校に演奏してもらえるように、『パッと鳴らせてしっかり響く』アレンジを心がけました」(山田氏)

 

さすが多数の野球応援曲のアレンジを手がけているだけあり、細部までよく考えられていることに感動すら覚えた。

パワプロ楽曲を気に入り、野球応援でも使用している日大三高吹奏楽部顧問の細谷尚央氏も、曲の魅力をこのように語る。

 

「歌いやすく覚えやすく、ノリやすい。スタンドには一般のお客さんも多いので、彼らが一度聞いて覚えやすく、掛け声を入れやすいところがとてもいいと思います。昨年の秋季大会では『Brand New Sky』を攻撃の最初、回の頭にやりました。野球部も気に入っていて、吹奏楽部にリクエストしてきますよ。『Tomorrow』も人気です」(細谷氏)

 

細谷氏の話を聞いて、パワプロスタッフの野球愛が、多くの高校球児たちや応援する吹奏楽部にもしっかりと伝わっていることを、あらためてと感じた。これからも、多くの野球ファンに響く応援曲を期待したい。

 


 

「かっせー!パワプロ」

 

「Brand New Sky」

 

「Tomorrow 〜未来への翼〜」

 


 

Text&Photo:梅津有希子