動画でわかりやすい!ギタリストのための演奏記号辞典【Go!Go! GUITAR プレイバック】

楽譜に書かれた「H」や「C」などの文字を見て“これは何だろう?”“どういう意味?”“どうやって弾くの?”と困った経験は誰にでもあるはず。今回はバンドスコアに登場するさまざまな記号のうち、演奏方法に関するものをピックアップして意味をわかりやすく解説するよ!
■基礎編
まずは、ギター演奏の中でもベーシックな演奏テクニックを表す記号の意味や弾き方を紹介しよう。
●チョーキング
登場頻度計 エレキ5 アコギ5
レア度1
弦を押し上げたり引き下げたりして音の高さを変化させるのがチョーキングだ。変化させる音程や弾き方の違いで呼び方や表記方法が変わる。基本となるのが「C」という記号で表され、1音分(2フレット分)音を高くする1音チョーキング。単にチョーキングと言う場合はこれを指すことも多い。
「h.c」は半音分(1フレット分)音を高くする奏法で、半音チョーキングまたはハーフチョーキングなどと呼ばれる。
「1h.c」は1音半(3フレット分)音を高くする1音半チョーキング。アコギではここまで音を上げるのは難しいので、主にエレキで使われる弾き方になる。
「q.c」はクォーターチョーキングと呼ばれる奏法。クォーター=4分の1だが、厳密に半音の半分の高さというよりは半音よりも低いくらい微妙に音程を変化させ、フレーズにブルージーなフィーリングを加える場合などに使われることが多い。
1音チョーキングを、通常よりもゆっくり緩やかに音程を変化させるのが「Port.C」で表されるポルタメントチョーキングだ。
「w.c」は隣り合う2本の弦を押さえて同時に鳴らし、低いほうの弦だけを押し上げて高いほうと同じ高さにする奏法で、ダブルチョーキングまたはユニゾンチョーキングなどと呼ばれる。
同様に2本の弦を使ったチョーキングで同じフレットを押さえて低いほうの弦を押し上げて音をハモらせるのがハーモナイズドチョーキング。記号は1音チョーキングと同じく「C」で表される。
▲3弦7フレットを薬指で押さえて弦をはじき、
▲手首をひねるようにして弦を押し上げる。
▲低音弦は弦を引き下げるようにチョーキングする。
●チョークアップ
登場頻度計 エレキ6 アコギ4
レア度2
あらかじめ弦を1音分高くした状態でピッキングして音を鳴らすのがチョークアップで、「U」という記号で表される。同様に半音分高く押し上げた状態で音を鳴らすのが「h.U」で記号される半音チョークアップだ。
●チョークダウン
登場頻度計 エレキ6 アコギ4
レア度2
高くした音を元の高さに戻すのが「D」という記号で表されるチョークダウンで、チョーキングの「C」やチョークアップの「U」などと組み合わせて使われることが多い。
▲弦を押し上げた状態から、
▲音を切らずに完全に元の高さに戻す。
●グリッサンド
登場頻度計 エレキ7 アコギ3
レア度2
A(図)やB(図)などの記号で表記されるのがグリッサンドだ。弦を押さえた状態で指を滑らせるように移動させて音程を変化させる奏法で、変化する音の前か後、もしくはその両方があいまいなもの。目的の音に向かって低い音もしくは高い音から移動させる、または特定の音から低い音もしくは高い音に向かって移動させるようなフレーズに絡めたパターンと、どちらもあいまいな効果音的なパターンがある。動かす幅や速さでさまざまなニュアンスが表現でき、歪んだエレキギターでは特によく使われる奏法。
●スライド
登場頻度計 エレキ5 アコギ5
レア度1
グリッサンドと同じく、音を鳴らした状態で指を弦上で滑らせるように移動させて音程変化をさせる奏法で、任意の音同士をつなぐものをスライド呼び「S」という記号で表す。低い音から高い音へ移動するものがスライドアップ、反対に高い音から低い音へ移動するものをスライドダウンと言う。
▲3弦5フレットを押さえてピッキングして音を鳴らし、
▲音を途切れさせず指を滑らせるように7フレットまで移動させる(スライドアップ)。
●ハンマリング(オン)
登場頻度計 エレキ5 アコギ5
レア度1
「H」という記号で表されるのが、左手の指で弦を叩くように押さえて音を高くするハンマリングという奏法だ。開放弦から押弦音へのハンマリングと押弦音同士のハンマリングがある。歪ませたエレキでは比較的簡単に鳴らすことができるが、アコギでハッキリ音を出すには指板に対して指を垂直に立て、フレットの近くを叩くように意識することが大切だ。
▲3弦5フレットを人差指で押さえて弦をはじいて鳴らし、
▲7フレットのきわを指を立てて叩くように押さえる。
●ビブラート
登場頻度計 エレキ6 アコギ4
レア度2
弦を揺らして音を細かく上下させるのがビブラートだ。楽譜上では波線のみで表される。チョーキングとチョークダウンを細かく繰り返す縦方向のビブラートと、押弦した指を左右に動かす横方向のビブラートがあり、チョーキングした状態で縦方向に動かすチョーキングビブラートや、フレットをまたいで左右に動かすジャックオフビブラートなどのバリエーションもある。
●プリング(オフ)
登場頻度計 エレキ5 アコギ5
レア度1
左手の指で弦をはじくように離して音を低くする奏法をプリングと言い、「P」という記号で表記する。ハンマリングと同じく、押弦同士のプリングと押弦音から開放弦へのプリングがある。ただ指を離すのではなく、指で弦をひっかくように動かしてはじくように離すのがしっかりと音を鳴らすのためのポイントだ。
▲3弦5フレットを人差指、7フレットを薬指で押さえた状態でピッキングし、
▲薬指で弦をひっかくように離して5フレットへプリングする。
■応用編
ここからは、ギターフレーズの表現力を豊かにできる、特徴的な演奏テクニックの表記方法をピックアップして解説!
●アーミング(アーム)
登場頻度計 エレキ10 アコギ0
レア度3
ストラトキャスターをはじめとするトレモロユニットを搭載したギターで演奏可能な奏法がアーミングで「Arm.」という記号で表記される。比較的ハードな音楽やインストのようにギターが主メロを演奏するジャンルで頻繁に使われる。アームをボディ方向に押して弦を緩めて音を下げるアームダウン、音を元に戻すアームリターン、アームを細かく動かして音を揺らすアーミングビブラートなどの種類がある。
●アルペジオ
登場頻度計 エレキ5 アコギ5
レア度1
「Arp.」という記号で表され、主に和音(コード)を押さえて別々に鳴らした音を重ねるようにする奏法がアルペジオだ。ピックを使って弾く場合と指弾き、もしくは両方を併用する場合がある。
●オクターブ奏法
登場頻度計 エレキ7 アコギ3
レア度2
1オクターブ違いの2音を同時に鳴らすのがオクターブ奏法。もともとはジャズで使われることが多かったが、最近ではロックなどでもよく用いられている。押さえる弦の組み合わせによって2種類のフォームがある。どちらの場合も不要弦(弾かない弦)のミュートがポイントだ。
▲低音弦寄りのオクターブ奏法のフォーム。
▲高音弦寄りのオクターブ奏法のフォーム。
●スタッカート
登場頻度計 エレキ5 アコギ5
レア度2
「・」が付いた音を鳴らした直後に短く切って止め、歯切れ良く演奏するのがスタッカートだ。音を止める方法は、押さえている左手を浮かせる場合と、左手を押さえたまま右手または左手の指で弦に触れる場合がある。
▲3弦7フレットを薬指で押さえて弦をはじいて鳴らし、
▲直後に指を軽く浮かせて音を切る。指は完全に離さないこと。
●トリル
登場頻度計 エレキ8 アコギ2
レア度3
A(図)という記号と波線で表されるのがトリルと呼ばれる奏法で、タブ譜に書かれた2つのフレットでハンマリングとプリングを繰り返し、連続して音を上下させる。ある程度の速さで素早く一定の間隔を保って弾くためには、手に余分な力を入れないここと指の動きをコンパクトにすることが大切。また、隣の弦に指が触れて余計な音が鳴らないように気をつけることもポイントだ。
●ハーモニクス
登場頻度計 エレキ7 アコギ3
レア度2
さまざまな手法で倍音(=ハーモニクス)を強調して鳴らすのがハーモニクス奏法だ。普通に弦をはじいて実音を鳴らした時と比べて、効果音的な音色が得られる。「Harm.」は特定ポジションに指を軽く触れて弦をはじくナチュラルハーモニクス、P.hはピックで弦をはじいた直後に右手親指側面を軽く触れさせるピッキングハーモニクス。タッチハーモニクスは、左手で押さえたポジションの12フレット上のフレット真上で、右手人差指などを触れさせた状態でピッキングして音を鳴らす。
▲ナチュラルハーモニクスは左手の指をフレットの真上など特定のポジションに触れさせて弦をはじいた直後に指を離す。
▲ピッキングハーモニクスはピッキングと親指側面をほぼ同時に弦に当てる。
▲タッチハーモニクスのフォーム。このまま親指やピックなどで弦をはじく。
●ピックスクラッチ
登場頻度計 エレキ10 アコギ0
レア度3
×印と波線、または「Pick Scratch」などで表記される奏法がピックスクラッチ。基本的に歪んだ音のエレキギターで用いられる奏法で、ピックの側面を指板のハイポジションで低音弦(主に5〜6弦)に対して垂直に当て、そのままヘッド方向に向かって滑らせるように動かしていく。ピックの持ち方や途中で左手のグリッサンドにつなぐなど、やり方は人によっていろいろあるので、自分に合った方法を見つけよう。
▲ピック側面を弦に対して垂直に当てる。このままヘッド方向へ動かそう。
●ブラッシング
登場頻度計 エレキ5 アコギ5
レア度1
「×」という記号で表されるのがブラッシング。左手の指を寝かせて弦に触れさせたり、コードフォームを保ったまま指の力を抜いて弦を浮かせたりした状態でストロークすることで「ジャッ」「チャッ」という歯切れの良い音を鳴らす。実音とブラッシング音を組み合わせた弾き方を「カッティング」などと呼ぶ。
▲ブラッシング時の左手。指を寝かせて弦に触れた状態でストロークする。
●ブリッジミュート
登場頻度計 エレキ5 アコギ5
レア度1
右手のひら側面をブリッジ付近の弦上に触れた状態でピッキングすることで「ズンズン」という伸びのない音を出すのがブリッジミュートという奏法で、「M」という記号を用いて表記される。右手であまり強く弦を押さえると、音の歯切れが悪くなってしまうことがあるので、ちょうど良い力加減になるように調節しよう。
▲ブリッジミュートしたところ。
●ライトハンドタッピング
登場頻度計 エレキ8 アコギ2
レア度3
右手の指で指板上の弦を直接叩いて音を鳴らすのがライトハンドタッピング、または単にライトハンドと呼ばれる奏法。ロックやメタルといったエレキギターだけでなく、「叩き系」と言われるアコギプレイでも使われることがある。記号は「↓」のほか「R」、「Right Hand」「Tapping」などの表記が使われることもある。
▲右手中指で1弦12フレットを叩くように押さえて音を出す。フレットのなるべく近い位置を押さえるのがキレイに鳴らすコツだ。
(Go!Go! GUITAR 2017年7月号に掲載した内容を再編集したものです)
Edit:溝口元海