カベドンにさよなら!思いっきりアコギを鳴らしたい!研究所(ラボ)【Go!Go! GUITAR プレイバック】

ギター1本あれば手軽に演奏が楽しめるのがアコギの魅力。しかし、「ジャカジャカ~♪」というアコギの音は興味のない人にとっては騒音と同じ。いかに周りの迷惑にならずアコギを鳴らすか、それを追求するのがわれら研究所の使命だ!
イラスト/Dobby.
自宅でアコギの練習をする場合、昼間は学校や仕事などがあるのでたいてい夜や休日になるのがほとんどだろう。山奥の一軒家や完全防音の部屋でもない限り、アコギの音は周りの人にも聴こえてしまう。マンションやアパートなどの集合住宅では、ご近所迷惑を考えて思いきりアコギを鳴らすことができないことや、一軒家住まいでも兄弟が受験勉強をしていたり、寝ていたりして大きな音が出せないこともあるハズ。
どうにかしてアコギを思う存分練習する方法はないか、とお悩みのアナタに当研究所が力をお貸ししよう。アコギの音量に関するさまざまな検証を通じてアナタに最適なアコギの練習方法を見つけるお手伝いをするぞ!
同じアコギを使っていても、張ってある弦の太さによって音の大きさは変わるのか? まずはそんな疑問を検証してみよう。
条件
① 検証用ギターは同一の機種を使用
② 弦は交換後すぐの新品で計測(騒音計で測定)
使用機材
ギター:ヤマハ LL6ARE
弦:ブロンズ弦セット各種
▲エレキギターにもあるゲージなので、エレキからの持ち替えでも違和感がない。軽い力で押さえられ、ストロークよりもフィンガーピッキングやフィンガリングを多用するフレーズなどに適している。
測定結果 MAX 81.1dB AVG 78.2dB
▲一般的なセット。ストロークからアルペジオまでオールラウンドに活躍できる。アコギ的なイメージのバランスの良い音が得られる。
測定結果 MAX 81.6dB AVG 78.3dB
▲押さえるのに力が必要だが、その分コシのある太いサウンドが特徴。ストロークはもちろん、リードプレイでも音の存在感が出せる。
測定結果 MAX 82.0dB AVG 78.6dB
考察
弦の太さによって押さえやすさ、力の入れ具合などが違い、細いものは力を入れずに押さえられ、繊細な音質。太いものはある程度押さえるのに力が必要だが、コシのある太い音が得られる。計測値では音量にそれほど違いは出なかったが、数値以上に音質に差が出るため聴感上は太いほうが大きく感じられることも。
アコギにはさまざまなボディの大きさや形がある。音量はそれらの大きさや形に左右されるのか?大きさに比例して音も大きくなるのか? 次はそんな疑問を検証する。
条件
① 弦は同一のゲージを使用(ライトゲージ)
② 計測位置:直線距離3 メートル、高さ1 メートル
使用機材
ギター:ヤマハ Lシリーズ
弦:FS520(ライトゲージ)
▲ボディの大きさは実験した機種の中で最大。低音にズッシリとした量感があり、力強いサウンドが得られる。存在感のあるストロークプレイが得意。
測定結果 MAX 84.1dB AVG 80.3dB
▲実験した中では一番小さなボディ。中音から高音にかけてきらびやかな音色が特徴的。フィンガーピッキングでのアルペジオやソロギターなどが映える。ボディが小さいので抱えやすく小柄な人でも安心。
測定結果 MAX 84.1dB AVG 80.3dB
▲ボディのくびれが特徴的なミディアムジャンボサイズのギター。低音から高音までバランスの良い音が得られる。ストロークからピッキングまで幅広いプレイに対応できる。
測定結果 MAX 83.6dB AVG 80.7dB
考察
ボディの形や大きさによって、得られる音色や得意なプレイは異なる。それぞれの持つ音質によって聴感上の音量感は数値以上の差を感じることができたが、計測値からは際立って大きな音量の差は確認できなかった。形や大きさ以外は3 機種ともほぼ共通のスペックのため、当然と言えば当然の結果ではある。ギターを選ぶときに本当はジャンボタイプにしたかったものの、生音が大きいのではないかという不安からスモールタイプを選んだ人がいるとしたら、次にギターを買うときは大きさにこだわらず、見た目の好みや弾き心地などで選んで問題ないだろう。逆に、同じ大きさや見た目のアコギであっても、使われている材質や内部構造などが異なっていれば出てくる音の大きさも変わる。
どうしても音が出せないならこんな手もある!?
とにかく周りを気にせずアコギを思いきりかき鳴らしたい…。そう本気で思っているなら、次のようなアイテムをチェックしてみてはいかがだろうか。
パッと見た感じはエレキギターだと思う人もいるかもしれないが、ヘッドホンやスピーカーなどにつなぐとそこから出てくるのは紛れもないアコースティックギターサウンド。それでいて共鳴するための胴を持っていないので、どんなに思いきりかき鳴らしたとしても生音がとなり近所に響いて大迷惑…などということは完全に回避できるだろう。非常にコンパクトに収納できるため持ち運びも便利で、出かけるときに持っていけば旅行先などでもアコギを練習することができるぞ!
サイレントギター
ヤマハ SLG200S
ここまでの検証で使う弦の太さやギターの大きさを変えるだけでは音量を下げるのは難しいことが確認できた。次は市販の消音・静音グッズを実際に購入、使ってみてその効果を検証してみよう。
条件
① 使用機材は統一
② 計測位置:直線距離3 メートル、高さ1 メートル
使用機材
ギター:ヤマハ LS6ARE
弦:FS520(ライトゲージ)
▲弱音器を発展させたようなグッズ。一段階上の消音性能が得られる反面、ギター本来の音色からも一歩遠ざかる。
測定結果 MAX 80.8dB AVG 77.9dB
▲消音グッズの草分け的な存在のロングセラー商品。音量優先か音質優先かを着け方によって調整できる。
測定結果 MAX 83.9dB AVG 80.5dB
▲本体を弦にはさむように装着することで、より強力なミュート効果が得られる。
測定結果 MAX 80.0dB AVG 77.0dB
▲非常に薄い素材で作られたピックで、特殊な器具を取り付けることなく音量だけを下げることができる。ストロークプレイ専用。
測定結果 MAX 74.8dB AVG 66.5dB
▲サイレントピックを極限まで薄くし、ささやくような音量でストロークの練習ができるピック。持ち手がついていてプレイアビリティも強化されている。
測定結果 MAX 57.1dB AVG 53.0dB
▲ボディ表板に貼り付けるカバーと、ブリッジサドルに取り付ける重厚なサドルグリップによってアコギの音色を損ねることなく十分な消音効果が得られる。
測定結果 MAX 74.3dB AVG 71.6dB
考察
世の中にある数々の消音グッズを試してみたが、どれもそれぞれ異なる消音効果が確認できた。どのグッズにも言えることだが、本来のアコギの音質からは多少なりとも変化が出てしまうものの、深夜や休日などでもご近所を気にすることなくアコギの練習をすることは十分可能だと言えるだろう。
使いやすさもモノによって違うので、ぜひいろいろなグッズを実際に試してみて自分に合った消音グッズを見つけて思う存分アコギ練習に励んでもらいたい!
(Go!Go! GUITAR 2018年7月号に掲載した内容を再編集したものです)
Edit:溝口元海