【前編】吹奏楽部顧問が選ぶ、MY BESTニュー・サウンズ【TALK ABOUT ニュー・サウンズ】


1972年にスタートし、50年近くにわたってポップスの楽しさを伝え続けている吹奏楽の楽譜シリーズ「ニュー・サウンズ・イン・ブラス」。元吹奏楽少年・少女だった吹奏楽部の顧問は、特にどの曲が印象に残っているのだろうか。思い入れのある曲を、エピソードとともに取材した。
前編では、支持の多かった曲、ソロを吹いた思い出の曲、甲子園の常連校が選んだ曲をお届けします。

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中高時代、吹奏楽に青春を費やしてきた筆者も、ニュー・サウンズで育った1人。『アメリカン・グラフィティー』や『ディズニー・メドレー』など、たくさんの作品をコンサートで演奏し、耳なじみのある曲ばかりで、お客さんも手拍子をしながら笑顔で聴いてくれていたことをよく覚えている。

多数のニュー・サウンズを指揮している吹奏楽部の先生方も、特に思い出深い曲はあるのだろうか。ふと思い立ち、全国各地の先生に取材を敢行したところ、皆とても楽しそうにエピソードを話してくれ、悩みながらも「MY BEST」の1曲を挙げてくれた。

 

支持の多かった『カーペンターズ・フォーエバー』

 

それぞれ思い出の曲がある中、4名の先生が選んだのが、『カーペンターズ・フォーエバー』(1990年・第18集)で、「ほとんどのコンサートで演奏している」と、淀川工科高校吹奏楽部顧問・丸谷明夫氏(74歳)。

「ニュー・サウンズはいい曲がたくさんあるけれど、1曲だけ選ぶならやっぱりカーペンターズ。1990年の発売時から、30年演奏し続けています。曲の構成のバランスがよく、親しみやすいメロディが老若男女に受け入れられる。本家のカーペンターズよりも多く演奏してると思います(笑)」

大阪のフェスティバルホールで行われた「グリーンコンサート」で、もはや淀工名物ともいえる同曲を聴いたことがあるが、軽快なメロディに端正な演奏、キビキビとした立ち居振る舞いに、「いい曲は普遍的なのだなあ……」としみじみと感動したのと同時に、子どもの頃から大好きな淀工吹奏楽部の伝統が変わらず受け継がれていることに、思わず胸が熱くなった。

習志野高校吹奏楽部OBで、現在顧問を務める海老澤博氏(41)は、同曲を高校時代に演奏。

「それまでカーペンターズはほとんど知らないに等しかった私が、カーペンターズの曲の素晴らしさに魅了され、のちに原曲を愛聴するきっかけとなった曲です。トランペットを格好よく奏でたかった私は、メドレーの最後の曲『ふたりの誓い』でソロを担当したのですが、スタンドプレーで奏でた後にクラクラして、最後ギリギリ立っていたという思い出があります。ちなみに今でもカーペンターズの楽曲は大好きです」

と、高校時代を振り返る。

拓殖大学紅陵高校吹奏楽部OBで、現在顧問を務める松本瑞希氏(23)も、ニュー・サウンズでカーペンターズを知ったという。

「中学生のときに上手な他校と合同で演奏したのがとても楽しくて、音楽を本気でやるとこんなにいい音で曲が奏でられるんだ! と吹奏楽の楽しさに目覚めるきっかけとなった曲です。カーペンターズを知らない状態から入ったのに、耳に残るし心地がいいしで、『これが名曲というものか……』と感動した記憶があります」

日本大学第三中学校・高校吹奏楽部講師の冨岡哲郎氏(23歳)も、「高校時代の思い出の曲」と、同曲を選んだ。

「高校生の頃にコンサートで何度も演奏した思い出の曲です。私はトランペットが専門なので、『Close to you』のフリューゲル・ホルンのソロ、そしてなんと言っても、曲のクライマックスで高らかに鳴り響くトランペットのパッセージには胸が熱くなります。当時も一生懸命練習したことを覚えています。コンサート本番で得られた感動は忘れられません」

 

顧問が選ぶNSB(1)

 


『カーペンターズ・フォーエバー』の次に多かったのが、『黒いジャガーのテーマ』(1975年 第4集)。3名の顧問がこの曲を挙げた。

「中高校時代に何度も自分が演奏した曲で、短い中にサックスやドラムのかっこいいソロがあって憧れていた曲です」(日本大学第三高校 吹奏楽部顧問 細谷尚央 58歳)

「高校時代映画の主題歌とは知らず、ディスコの曲かと思って聴いていたすごくかっこいい曲。原曲を超えるアレンジで、時代が経っても古さを感じさせません。顧問になってから吹奏楽部のコンサートで演奏しました」(拓大紅陵高校吹奏楽部 野球応援専門顧問 吹田正人 58歳)

「初期のニュー・サウンズ・イン・ブラスの曲です。曲自体は短いですが、『かっこいい』の一言に尽きます」(智辯学園和歌山中学・高校吹奏楽部顧問 酒越光覺 55歳)

筆者は、生まれる前に発売された『黒いジャガーのテーマ』を知らず、さっそく聴いてみたところ、あまりのかっこよさに衝撃を受けた。そして即座に、「こんな曲に中高時代に出会ったら、ものすごい刺激を受けるだろうなあ……」と感じた。

 

顧問が選ぶNSB(2)

 

複数が挙げた『カーペンターズ・フォーエバー』『黒いジャガーのテーマ』以外は、実に多種多様な曲が寄せられた。エピソードとともに、順に紹介していきたいと思う。

 

高校時代にソロを吹いた思い出の曲

 

『ハイ・プレッシャー』(1988年・第16集)


「高校2年生の時にアルトサックスでソロを吹きました。当時はフュージョン全盛時代で私もハマっており、吹奏楽でそれが出来ることに心がときめいたものです」(駒大苫小牧高校吹奏楽局総監督 内本健吾 48歳)

 

顧問が選ぶNSB(3)

 


『トゥルース』(1989年・第17集)
 

「高校生の時に、初めてサックスとウインドシンセのソロを取って 演奏した楽曲です。当時はF1カーレースがものすごい人気で、フジテレビ系列で放映されていた『F1グランプリ』の主題曲でもありました。相模に赴任してからも、みなとみらいホールで開催されたコンサート『東海ウインドフェスティバル』で生徒たちをバックに演奏させてもらいました(笑)」(東海大学付属相模高校吹奏楽部音楽監督 矢島周司 45歳)

 

顧問が選ぶNSB(4)

 


『ガーデン・パーティー』(1989年・第17集)

「この曲がアイスランドのフュージョンバンドの曲であることを知ったのは、随分とあとのことでした。当時私は中学生で、この曲をやりたいと吹奏楽部顧問の先生に訴えたが却下。トランペット担当の私は耳コピをして曲の中に出てくる”High-Eb”が出てくるフレーズに毎日トライしていたが、結局出ないまま終わってしまいました。初めて買ったのがニュー・サウンズのCDがこの第17集。『ガーデン・パーティー』を含め、カシオペアの『太陽風』やT-SQUAREの『トゥルース』などフュージョンの曲が収録されていて、個人的には最近の選曲より、この頃の方が好き。ニュー・サウンズから原曲を知るといったことも多かった気がします」(近江高校吹奏楽部顧問 樋口心 44歳)

筆者と同世代の先生方が挙げる曲は、どれもよく知っている曲ばかりで、「自分が札幌で吹奏楽に夢中になっていたころ、先生方も同じ曲で青春時代を過ごしていたのだなあ……」と感慨深く思った。

 

甲子園の常連校が選んだのは……

 

『アフリカン・シンフォニー』(1977年・第5集)

「新任の頃、野球応援時はカメラ係をしていました。吹奏楽部のあたりで写真を撮っていると、部員から『先生、アフリカンのシンバルお願い! ドラムのシンバルに合わせたらいいから』と頼まれてよく叩いていました。中学生の頃からフルートを遊びで吹いていたのですが、フルートでも参加したことがあります。15年ほど前に吹奏楽部の顧問を引き受けてから、原曲の指揮もしましたし、やはり思い入れのある曲といえばアフリカンですね」(智辯学園高校吹奏楽部顧問 青山浩 63歳)

甲子園の常連校でもある智辯学園は、兄弟校の智辯和歌山とともに『アフリカン・シンフォニー』が名物応援曲の1つ。智辯学園吹奏楽部は小編成につき、生徒からシンバルを頼まれる青山氏の姿を想像するだけで微笑ましく思った。

 

顧問が選ぶNSB(5)

 


『オーメンズ・オブ・ラブ』(1986年・第14集)

「野球応援などで演奏すると、みんなが笑顔になるので」(花咲徳栄高校吹奏楽部顧問 川口智子 50歳)

THE SQUARE(現・T-SQUARE)のヒット曲で、定期演奏会でも人気の『オーメンズ・オブ・ラブ』。野球応援で同曲を使用している花咲徳栄高校は、攻撃の初回にこの曲を演奏するのが定番で、多くの野球ファンにも愛されている。

習志野高校吹奏楽部顧問・織戸弘和氏(51歳)も、お気に入りの1曲として同曲を挙げた。

 

顧問が選ぶNSB(6)

 

後編では演奏会・文化祭を彩ってきたニュー・サウンズ、好きなアレンジャーをお届けします。

 >後編はコチラ! 

 


 

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Text:梅津有希子

 

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