史上初のオンライン開催!“文化部のインターハイ”全国高等学校総合文化祭


新型コロナウイルスの影響で、インターハイ(全国高校総合体育大会)の中止が4月にいち早く決定したが、吹奏楽も、コンクールやマーチングなど、多くの大会が中止に。そんな中、全国高等学校総合文化祭が、中止にせずに史上初のオンライン開催に挑戦。現場の声を取材した。

 昭和52年から、毎年8月上旬に開催されている全国高等学校総合文化祭(略称:総文祭)。“文化部のインターハイ”とも呼ばれ、吹奏楽や演劇、書道、小倉百人一首かるたなど、文科系部活の部員が目指す大規模な祭典で、毎年各都道府県が持ち回りで開催している。今年は「こうち総文」という名称で、高知県で開催されるはずだった。

 ところが、新型コロナウイルスの影響で現地での開催は中止が決定。緊急事態宣言下の5月12日に、主催する文化庁や全国高校文化連盟などが開催方法の変更を発表し、今年は「WEB SOUBUN」として、史上初のオンライン開催を決めた。全国の高校から集まった演奏や演劇の動画、書道や美術作品の画像などを、特設サイトで順次アップし、10月末まで公開されるというもので、文科部生徒達の発表の場がどんどんなくなっていくなか、一筋の光になったに違いない。

 前例のない試みだけに、開催までに多くの苦労があったことは想像に難くない。今回の高知大会吹奏楽部門委員会で代表委員を務める、高知県立安芸中・高等学校の服部牧人氏に話を聞いた。 

−−コロナ禍で休校が続くなか、「こうち総文を完全に中止にする」という案もあったのでしょうか。

「完全に中止にしたほうが良いという意見も当然ありましたが、部門それぞれで考えるのではなく、決定権はこうち総文推進室にありましたので、最終的には推進室の決定に従いました」

−−今回は38都道府県から各1団体、合同バンドも入れると全85校の学校が参加することになっていましたが、このうち何校が「WEB SOUBUN」にエントリーしたのでしょうか。

「オンライン開催への参加は、希望される学校のみでしたが、38団体すべてがエントリーしてくれました。これは想像していなかったことで、とてもありがたく思っています」

−−全国各地のコロナ感染状況や学校・部活の再開状況が異なるため、「WEB SOUBUN 」の開催にあたってもさまざまなご苦労があったことと思います。具体的に、どのような点に苦労したでしょうか。

「全国の先生方とのやり取りの中で、部活再開の見通しが立たない学校も多く、締め切りに弾力性を持たせて、なるべくたくさんの団体に参加していただけるように工夫をしました。合奏して収録するのが難しい学校もあると思いますので、過去の演奏動画もOKとしました。動画の締め切りにつきましては、用意ができたときに送ってもらい、順次公開しています。最終締め切りは9月30日です。大変なことは、とにかく前例がないことをやろうとしているので、代々引き継がれてきた、知恵の詰まった書類やファイルが一切ないことです。それと、すべてを手探りで作っていかなければいけないところでしょうか。ある意味、楽しい作業でもあります」

−−参加団体の演奏動画のほかに、特別企画「吹奏楽でつながろう~SPECIAL WEB SOUBUN BAND」として、吹奏楽で人気の楽曲『宝島』(原曲はTHE SQUAREの『TAKARAJIMA』)をみんなで演奏する、という企画がとても今の時代っぽく、素晴らしいアイデアだと感じました。

「この特別企画には25校がエントリーしてくださり、ただいま編集中です。個性的な演奏・演出ばかりで出来上がりが楽しみです。また、編集前の宝島の元動画もWEB SOUBUNのページからリンクを貼って見ることができるようにしますので、そちらも是非ご覧いただきたいと思います。100人を超える人数の演奏から、10人に満たない演奏、個性的なソロ・ソリの数々……。これだけでも楽しめること間違いありません。」

−−「オンラインだからできること」「オンラインならではのメリット」はどういったところでしょうか。

「オンライン開催のメリットは、日本中・世界中の人に見てもらえることです。全国高等学校総合文化祭の吹奏楽部門は、コンクールとは違いますので、全国の高校生が心から楽しんでいる演奏を視聴することができます。会場に足を運んでのライブでの演奏ももちろん素晴らしいですが、世界中どこにいても高校生たちの熱演に触れることができるのは、とても有意義なことだと思います。今年のオンライン開催を視聴して、興味を持っていただければ総文祭が近くで行われているときに、ぜひ顔を出していただければと思います。入場無料です!」

 今回の準備作業で、服部氏は全国の吹奏楽部顧問とやりとりする中で、「励ましやお礼の言葉を必ずといっていいほどいただいた」という。兵庫県代表の尼崎市立尼崎高校吹奏楽部顧問・岩山悦志氏も、実行委員会への感謝の思いをこのように語る。

「久々に全国大会出場が決まっていた3月のアンサンブルコンテストにはじまり、吹奏楽コンクールとマーチングコンテストまで中止になってしまいました。『高知には行けるだろう』と思っていたら、それも中止になり、生徒たちもがっくりしていましたが、webでの開催が決まり、『宝島』をみんなで演奏できることになってやる気になりました。うちは部員数が多いため、今回は3年生60人で間隔をあけながら合奏。3年生に少しでも楽しい思い出を作ってあげたかったので、実行委員会のみなさまにはとても感謝しています」
 


 北海道代表の、北海道札幌白石高校吹奏楽部は、昨年10月に帯広市民文化ホールで開催された高文連北海道大会で演奏した『復興』(作曲:保科洋)の動画と、6月中旬に部活が再開し、ようやく入部できた新入生たちも加わり、3学年全員で『海を越える握手』(作曲:J.P.スーザ)を体育館で演奏した動画を送った。顧問の鈴木恭輔氏も、撮影の苦労をこのように語る。

「音質を考えるとほんとうはホールで撮影したかったのですが、希望する日に空いていなかったり、ステージの人数制限があり、全員で演奏することができませんでした。体育館も、普段は体育系の部活で連日埋まっているため、唯一使うことができた日曜日の夜に合奏し、撮影しました。田舎なので夜は交通機関が少ないため、子どもを迎えにきてもらうなど、保護者の方にもご協力いただきました。実行委員会の方は、準備がほんとうに大変だったと思います。中止にせずにオンライン開催を実現してくださって、大変ありがたく思っています」

同校の動画を見ると、指揮の鈴木氏も演奏する生徒たちも、皆フェイスシールドつけている。これまでにはなかった光景だが、これも今年ならではといえるだろう。
 


38団体の素晴らしい演奏および、みんなでつながる『宝島』動画による“新様式の総文祭”、筆者も自宅で存分に楽しませてもらっている。パワーあふれる高校生の熱演を、ぜひ体感してみてほしい。
 


■WEB SOUBUNトップページ

https://www.websoubun.com/index.html


■WEB SOUBUN吹奏楽部門トップページ

https://www.websoubun.com/dept/wind/index.html

 


 

【INFORMATION】
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Text:梅津有希子
写真提供:北海道札幌白石高校吹奏楽部