史上初のリモート応援にも挑戦!花咲徳栄高校吹奏楽部の感染症対策


新型コロナウイルスの収束が見えず、コンクールやマーチングなど多くの大会が中止になってしまった全国の吹奏楽部だが、部活動も再開し、日々練習に励んでいる。現場では、どのような点に気をつけながら活動しているのだろうか。

  依然として収まる気配のない、新型コロナウイルス感染症。海外では、第2波、第3波などの影響で、再開した学校が再び休校になるケースも少なくなく、日本でもいつ同じことが起きてもおかしくない。さらに、インフルエンザの同時流行が懸念される秋冬に向け、引き続き、感染症対策は欠かせない。

  密になりがちな吹奏楽部も、各校工夫して練習に励んでいる。ウイルスは飛沫感染することが知られているが、楽器演奏時の飛沫の飛散状況については、ヤマハミュージックジャパンが新日本空調株式会社の協力のもと実験しており、演奏による飛沫距離と左右への広がりにおいては、くしゃみ、発声と同等以下であることがわかっている。詳しくは以下の実験結果を見ていただきたい。

▼管楽器・教育楽器の飛沫可視化実験

https://jp.yamaha.com/products/contents/winds/visualization_experiment/index.html


 それでは現在、吹奏楽部の現場では実際にどのような対策を行っているのだろうか。8月中旬、埼玉県の花咲徳栄高校吹奏楽部を訪ねた。

 

史上初のリモート応援

 

 甲子園常連の野球強豪校でもある花咲徳栄。8月に無観客で開催された「2020年甲子園高校野球交流試合」に出場した際には、吹奏楽部は学校の練習場から甲子園史上初となるリモート応援に挑戦。スクリーンに映し出したテレビ中継を観戦しながら応援曲を演奏し、その様子をYouTube LIVEで生配信し、大きな話題になった。同時に、「野球応援の新様式」という可能性を広めてくれたといえるだろう。
 

 

一斗缶の除菌液をシェア

 

 動画でも、吹奏楽部はテレビ観戦中はマスクをつけているが、このほかにもさまざまな感染対策が行われていた。練習場でまず目についたのが、一斗缶のエタノール除菌液。「みんなで使えるように、一斗缶で購入しました。小分けの容器に移し替えて、生徒たちに配布しています」と、顧問の川口智子氏。このオリジナル除菌スプレー以外にも、いたるところに除菌スプレーやジビニール手袋などが置かれている。

 

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 合奏では、通常よりも前後左右の距離を空けて演奏。気になる楽器の水抜きも工夫している。雑巾は、生徒が自宅から持参し、自分専用として使用。帰宅後は即洗っているという。唾受け容器を使用している生徒は、ビニール袋をセットして使用。たまった水分は水飲み場には流さず、新聞紙やペットシートに染み込ませて自宅に持ち帰る。ヤマハの「金管ウォーターシート」を使用している生徒もいた。

 

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100均の材料で口元ガードを自作

 

 楽器やマレットなど、複数で共有するものが多いパーカッションパートは、手洗いまたは手指の消毒後にビニールの手袋をはめ、マスクをして演奏。

 

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 フルートパートは、飛沫が飛ぶのを防ぐ口元ガードを手作り。材料はすべて100円ショップで揃え、かかった費用は合計400円ほどだそう。

 

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 このほか、フルートを吹く姿勢にも気をつけている。通常は、足部管を若干下げ気味にして吹くが、床に落ちる水分を減らすため、あまり下げずに吹くように心がけているという。

  クラリネットとオーボエは、ベルの部分に自作のつばキャッチャーを装着。ベルから出る水分をペットシートや布などでキャッチするというアイデアグッズで、床につばや水分が落ちるのを防いでいる。

 

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 合奏終了後は、椅子と譜面台を消毒。

 

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 「万が一吹奏楽部から感染者が出たとしたら、『ほら、吹奏楽部はやっぱり危ないんだ』と、吹奏楽界全体の印象が悪くなってしまいかねません。考えつく対策は、何でもやるようにしています」(吹奏楽部顧問/川口智子氏)

 クラシック音楽公演運営推進協議会と日本管打・吹奏楽学会が主催する「#コロナ下の音楽文化を前に進めるプロジェクト」でも、新日本空調研究所内の高性能クリーンルームにおいて科学的検証を行い、演奏会や練習における感染リスクの洗い出しや対策法、アマチュア、学校の吹奏楽部向けの提言をまとめた報告書を公開している。

▼「#コロナ下の音楽文化を前に進めるプロジェクト」
クラシック⾳楽演奏・鑑賞にともなう ⾶沫感染リスク検証実験報告書報告書

https://www.classic.or.jp/2020/08/blog-post.html


 ヤマハのサイトでは、管打楽器やリコーダーなどのお手入れに関して、相談窓口に寄せられるよくある問い合わせとその回答についてまとめている。こちらもぜひ参考にしてほしい。

▼管・打楽器を安心して楽しむために

https://jp.yamaha.com/products/contents/winds/faq/index.html


▼学校用教育楽器・機器を安心して楽しむために

https://jp.yamaha.com/products/contents/educational_equipments/faq/index.html


▼ヤマハのリペア職人が指南。今すぐ出来る楽器の感染症対策とは?

https://mag.mysound.jp/post/600

 

 先が見えない新型コロナウイルスおよび、秋冬のインフルエンザに備えて、音楽を愛する皆さんには、万全の体制で日々の練習や演奏会の準備を行ってほしい。

 


 

Text&Photo:梅津有希子

 

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