【レコにまつわるエトセトラ】レコ飯 part.2 ~ レコード脳を衝き動かす、ユーロ・ジャンクフードを摂取せよ!【第16回】


近年また盛り上がりを見せつつある、レコード/アナログ盤。リアルタイムで再生メディアとしてレコードと接してきた世代だけではなく、CDやカセットすらも知らないくらいの若い世代の人たちからも“新鮮”なものとして受け入れられているようです。

そうした流れの中でこの世界の魅力をよりディープにお伝えするべく始まったのが、本連載【レコにまつわるエトセトラ】。ディスクユニオン新宿ロックレコードストア店長の山中明氏を水先案内人に、入り口から底知れぬ深淵に至るまでを旅しましょう。

第16回のテーマは、“レコ飯 part.2  ~ レコード脳を衝き動かす、ユーロ・ジャンクフードを摂取せよ!”。第8回でも好評だった企画の続編として、今回はヨーロッパのジャンクフードをご紹介していきます。

日本でおなじみの“あの商品”も海外では…?果たして海外でも人気ラーメン店に行列はできているのか…?これを見れば、町へ出て、レコ屋巡りがしたくなる。そんな魅惑の“レコ飯”をお届けする第2弾!

素晴らしきユーロ・ジャンクフードの世界をご紹介


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いつだって優しく微笑みかけてくれる、我らがコグマ。現地ではグッズも大充実です。

 

今、原稿を書いている2020年9月時点では、世界はまだまだコロナ禍の真っ只中。毎年何度も海外へレコード買付の旅に出る私にとって、すでに時差ボケのタイミングすらも織り込まれた身体のリズムは狂わされっ放しです。

私が特に頻繁に訪れているイギリスでは、政府より6月15日から営業再開の許可が出たということもあって、すでに営業中のレコード屋も多いようですが、営業時間や営業日を絞っての営業となっている店舗もまだまだあるようです。

またレコード・フェアもゼロではないものの、多くは開催が見送られているのが現状。それはヨーロッパもアメリカも、そしてもちろんここ日本も同じ状況で、世界のレコード流通量は大きく減退していっているというワケです。

とにかく肉体的にも精神的にもなかなかどうしてアガらないこの状況、そんな時は気分だけでもということで、今回は海外でのレコード買付の旅を支える「レコ飯」のハナシの第2弾。

以前はイギリスのファストフード事情をご紹介しましたが、今回は時間勝負な買付向きとも言える、パッと食ってガッと脳天と身体が漲る、素晴らしきユーロ・ジャンクフードの世界をチラリとご紹介します。

とりあえず今はこの記事をご一読していただいて、コロナ明けに向けて海外熱を蓄えておきましょう!
 

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ドイツの普通のスーパーにて。写真外にもこの5倍は並んでいました。本場は品揃えが違います。

 

グミが好き。浮気なしにハリボーひと筋40年。
ここ日本も丁寧な仕事が光るハイクラス・グミを次々と送り出す「グミ大国」ではありますが、やっぱりグミの生みの親、ハリボーこそがこの世界のキングと言えるでしょう。

もしかしたらご存知でない方もいるかもしれませんので、改めてご紹介しておきます。
ドイツの製菓会社である「HARIBO(ハリボー)」の創業は、遡ること1920年。世界で初めてグミを開発した創造主にして、今現在では世界最大の販売規模を誇るグミ界の覇者。
可愛らしくてアイコニックなクマ型の容姿、そして少し固めの食感が抜群の安定感を誇る、世界中の誰もが認めるクラシックにして決定版でしょう。

ここ日本でもコンビニで売っていたり割とポピュラーな存在だとは思いますが、本国ドイツや他ヨーロッパ圏でのハリボーの生活への根付き方はハンパじゃありません。
スーパーや駅の売店は言うまでもなく、ガソリンスタンドなんかでも量り売りで売っていたり、ホテルにチェックインすると部屋にウェルカム・グミが置いてあったりと、ありとあらゆる場所でコグマと目が合うのです。

人間、疲れている時は甘いものが大事。十分な食事の時間もない海外でのレコード買付においても、この可愛いコグマが大活躍をしてくれるのです。チョコとかでも甘みの補充はできるかもしれませんが、固めのグミをよく噛むことによって脳は刺激され、胃袋の中では水分で膨張(が故に食べ過ぎ注意!)し空腹を満たしてくれるのです。

ちなみにレコード・フェアなんかでも、でかいタッパーみたいなのにハリボーをどっさり入れてるディーラーがいて、レコ掘り中に「甘いもの取った方がいいぜ」とか言ってつまませてくれたりもします。コグマが取り持つ助け合いの精神ですね!

 

ハリボーへの献身的な愛が生んだ奇跡…!


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そこら辺の個人商店でもこの品揃え。量り売りって目移りしちゃいますよね!

 

かくいう私は小学生時代をハリボーの国ドイツで過ごした、生粋のハリボー原理主義者。ということで、そんな私がもう一歩踏み込んでハリボーの素晴らしさをご紹介しましょう。

写真を見てもらえれば分かるように、ハリボーって一口に言っても色んな種類があるもので、コグマ型でお馴染みの大定番「ゴールドベア(GOLDBÄREN)」の他にもたくさんの名作がリリースされています。

みんな大好きコーラ味から、レモン味をサワー・パウダーでコーティングした通称ポンフリ・グミ(和訳:フライドポテト・グミ)、色々入っているアソート系の頂点「STAR MIX」(個人的な見解です)、ヘルシーな方にも配慮したゼラチン不使用のビーガン・グミ、そして黒光りするタイヤのビジュアルと「味」を再現(?)し、エッジが効き過ぎたグミとして愛好家の間では踏み絵的存在として君臨する「SCHNECKEN」(シュネッケン。俗称「ただのタイヤ」)等々、もう挙げ出せばキリがありません。

あと、食べ方にもバリエーションがあって、しっかり凍らせて冷たさと異なる食感を楽しむ「冷凍グミ」、シンプルに水に浸して放置、気付いた時にはコグマがツキノワグマへと数倍の大きさに成長している「欲張りグミ」なんていうのもあります。ちなみに後者はただデカくなるだけで、比例して味も落っこちます。あしからず。

 

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久々にシュネッケンを食べてみようと思い店を回りましたが、日本ではなかなかどうして売ってない…
ということで普通に食べたくて買ったポンフリ・グミ。ウマイ。

 

3年ほど前の話になりますが、海外買付から戻り束の間の休みを取っている時のことでした。店から電話が鳴り、開口一番「送った荷物にトラブルがあったらしい」との恐怖電話…。

私たち買付担当者が最も恐れているのは、やっぱり荷物のトラブル。やれ現地で集荷ができていなかっただの、やれダンボールが濡れて届いただの、あんなに苦労して探したあのレア盤も、数十年の時を耐え凌いでくれたあの美品も、すべてを一発で台なしにしてくれるのです。

とはいってもそんなことは滅多にないだけに、その悲報に心震わせながら足早に店に向かった私は、荷物に起きたその惨劇を目の当たりにして、思わず膝から崩れ落ちそうになりました。

レコ箱一箱分だけではありましたが、側面にぶっとい何かが刺さったような大穴が空いていたんです。しかも良く見ると、よりによってレア盤を固めて入れた目印付きの箱…終わった…。

もうすでに心は折れかけていましたが、とにかく被害状況を確認して、配送会社への補償を…なんて考えながら箱を開けようとすると、なんだか甘~い香りが漂って来たんです。

フタを開けてハッとしました。あ、そうだ、店へのお土産用に大袋のハリボーを一緒に入れてたんだっけ?
私の長きに渡るハリボーへの献身的な愛が通じたのでしょうか、補強されたダンボールを突き破るほどの力で突き刺さった何かは、コグマたちの手によってレコードの手前で止められていたんです。まさに奇跡。

ただ可愛くて美味しいだけじゃない、ここまで来たら最早自分にとっては立派な守り神。こうして全然予想だにしなかったハリボーとの深い絆に触れた私は、もう一生コグマに付いていくと心に誓ったのでした。めでたしめでたし。

 

美味しいものを食べれば、レコード脳は100%フル回転!

 

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まぁ多くは語りませんが、私たちが親しんだ味とは大分違うものです。

 

次にご紹介するのは、ここ日本でジャンク・フードを超越し世界に誇る一大食文化へと成長を遂げた、「ラーメン」です。

ヨーロッパ圏でも大人気のラーメン。もちろんカップラーメンもポピュラーな存在です。
日本では馴染みのない会社の商品もありますが、「辛ラーメン」でお馴染みの韓国企業「農心」なんかも多くの商品を並べる中、やっぱり私たちの心を和ませるのは、我らが「日清」のカップラーメンでしょう。

(たぶん)日本未発売の「Soba」とか、同じ「CUP NOODLES(海外版は末尾にSが付きます)」でも、その多くは海外向けにモディファイされた商品となっています。肝心の味もだいぶ違いますので、機会があれば試してみてはいかがでしょうか。

あと一応、注意点としては、普通のスーパーとかでカップラーメンを買った時に、割り箸とかフォークとかは基本もらえないっていうことです。私もよく分かっていなかった頃は、途方に暮れて歯ブラシ2本を箸代わりにしたこともありました…。なんかもっと良い方法があった気もしますが。

 

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もちろんラーメン店も盛況です。いずれの国でも都心部では寿司を中心とした和食は人気で、いつ見ても店内は賑わいを見せています。価格帯は私たち日本人にしてみると割高で、ラーメンにしても日本でいうところのちょっとしたレストランに行くような価格設定が多いかもしれません。

また、店は日本人経営が多いと思いますので、味的には馴染みのあるものも多いのですが、いきなり死ぬほどマッシュルームが入ってたりと、妙に海外ナイズドされたタイプもありますので、無策だと地雷を踏むかも知れません。ご留意を。

ちなみに余談ですが、ここ日本ではラーメン屋に限らず人気の飲食店には行列がつきもの。「なんで日本人は並ぶのか」とか「外国人は並んでまで食べない」とか、そんな行列を揶揄する言葉をよく耳にしますが…いやいやちょっと待ってください、海外でも人気店は普通に並んでますから。

ちなみに上と下の写真は、ドイツの人気ラーメン屋の行列風景ですが、近くにあるタピオカ屋にも普通に行列ができていました。程度の差こそあると思いますが、人気あるものに行列ができる、それは万国共通じゃないでしょうか?

 

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皆さんも自分だけの定番「レコ飯」ってあると思います。
一昔前、世界一レコ屋が多い街と言われていた渋谷では、シスコ坂のとこの吉牛(正確には吉野家宇田川店)こそがB-BOYたちのソウルフードにして、彼らにとって欠かせない「レコ飯」だったと思います。

日本でもレコ屋巡りって、意外と体力勝負。引きが良い時なんかは「ディガーズ・ハイ」ってな感じでマヒしていますが、見れど探せど収穫なしっていう時は異様に疲れを感じます。ではそんな時はさっき通りかかった時に気になった、アンコたっぷりのたい焼きでも食べて甘いものを補充してみてはどうでしょう?

昼頃に家を出て自分だけの鉄板ルートでレコ屋巡りをして、お気に入りの喫茶店で戦利品を眺めながら、オムライスを食べてコーヒーを飲む、なかなか調子の良い休日じゃないですか?

レコ屋に行くっていっても直行直帰じゃつまらない、せっかくならその街で自分だけの「レコ飯」も探しませんか?
美味しいものを食べてレコード脳は100%フル回転、そしてまた新しいレコードとの出会いを楽しみましょう!

 

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Text&Photo:山中明(ディスクユニオン)
Edit:大浦実千

 

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