【後編】泣いた! 笑った! ~吹奏楽コンクール課題曲を語ろう~


新型コロナウイルスの影響で残念ながら中止になった、今年の吹奏楽コンクール。せめて何かコンクールの話で盛り上がれないかと、「思い出の課題曲」アンケートをとったところ、たくさんの回答が寄せられました。後半では、吹奏楽愛あふれる熱いエピソードを、テンポよくご紹介します!

まずは、筆者も高3の時に普門館で演奏したこの課題曲から。

 

「マーチ・エイプリル・メイ」(1993年/矢部政男作曲)

 

「自身が普門館で演奏した課題曲です」(北海道45歳)

北海道在住ということは、札幌白石高校のわたしの同期ですね。誰でしょうか(笑)。

「マーチ・エイプリル・メイ」というタイトルは、「3月4月5月」とよく呼ばれていました。顧問の米谷久男先生から、毎日のように「出だしですべてが決まる」といわれ、最初の4小節に命をかけて練習していたものです。

 

マーチ「潮煙」(1993年/上岡洋一作曲)

 

「中3の時の課題曲、マーチ『潮煙』。本当は『スター・パズル・マーチ』(小長谷宗一作曲)がやりたかったんですが(笑)、恩師の提案にみんながやる気になりました。中学生ながら、昭和の香り漂う雰囲気を楽しみながらも、慣れないビートやリズムにも苦労しました。みんなで部活帰りに「しおけむり~♪」と歌いながら帰ったあの日々は、今でも宝物です」(秋田県 41歳)

1993年は課題曲4曲ともマーチの年で、「潮煙」も「スター・パズル・マーチ」も、そして「ターンブル・マーチ」(川辺真作曲)もすべて練習したのでよく覚えています。「しおけむり~♪」は、日本中の中高生が歌っていたのでしょうね。筆者もよく歌っていました(笑)。わたしは、たしか定期演奏会で聴いた、東海大学第四高校(現・東海大札幌高校)の力強い「潮煙」が大好きです。

誰もが知っている「きらきら星」が原曲で、「スター・ウォーズ」のテーマや「星に願いを」など、星にまつわる複数の曲がアレンジされている「スター・パズル・マーチ」も、とても楽しい曲でした。当時、全国大会で創価学会関西吹奏楽団が演奏したキラッキラのサウンドに衝撃を受け、今でもよく聴いていますが、あまりの輝かしさに、いつ聴いても気分が高まってワクワクします。

 

 

 

「交響的譚詩~吹奏楽のための」(1996年/露木正登作曲)

 

「とにかくかっこいい。演奏したかったが、自分の学校は人数もそこまで多くなく、技術的にも厳しかったので憧れでした」(秋田県 41歳)

 

吹奏楽のための交響詩「波の見える風景」(1985年/真島俊夫作曲)

 

「中学で吹奏楽部に入ったものの、練習をサボってばかりだった私が、高校でも吹奏楽部に入り、初めて真剣に取り組んだ課題曲です。この曲と向き合って私の人生は変わり、今でも細々ですがクラリネットを続けています」(新潟県 50歳)

 

「ディスコ・キッド」(1977年/東海林修作曲)

 

「ブリヂストンタイヤ久留米工場吹奏楽団の『ディスコ・キッド』が、大人! って感じで憧れていました。「ディスコ!」という掛け声がカッコよかったです」(新潟県 50歳)

 

 

掛け声が入る課題曲は珍しく、緊張感あふれるコンクール会場で元気な「ディスコ!」がステージから聴こえていたことを想像すると、自分も全力で叫んでみたかったなあ……と思います。

 

行進曲「マリーン・シティ」(1990年/野村正憲・藤田玄播作曲)

 

「中3の時、憧れの北海道札幌白石高校が演奏していた行進曲「マリーン・シティ」(北海道45歳)

わたしも、母校白石の先輩方の「マリーン・シティ」、大好きです。とてもかっこよかったです!

 

「交響的舞曲」(1988年/小林徹作曲)

 

「中1で途中入部だったので、演奏できなかった」(静岡県 47歳)

札幌の中学校時代に姉が普門館で演奏した曲で、子ども心にとてもよく覚えています。いまはなかなかないタイプの課題曲かもしれませんね。冒頭のシリアスな雰囲気のクラリネットが印象的でした。

 

第1行進曲「ジャンダルム」(1995年/高島豊作曲)

 

「全国大会で中央大学学友会文化連盟音楽研究会吹奏楽部が演奏した、第1行進曲「ジャンダルム」。柔らかなサウンド、緻密にアナリーゼされた組み立て。一級品です」(静岡県 47歳)

 

「オーバーチュア・5リングス」(1985年/三枝成章作曲)

 

「自分たちには絶対吹けないので、参考音源や中央大学の演奏を聴いて、すごいすごいと感動していました。(新潟県 50歳)

 

「音楽祭のプレリュード」(1970年/A・リード作曲)

 

「あのリードが書いた曲というだけで、とても吹いてみたいと思いながら聴いていた曲でした。もう『リードの曲だから』というだけで決まりです」(宮城県  51歳)

今でこそ、課題曲はすべて書き下ろしの作品ですが、既存の曲を使っていた時代もありました。アルフレッド・リードの作品は大人気で、課題曲でこの曲を演奏したかった学校も多かったのではないでしょうか。

 

課題曲も楽しい「吹奏楽ポップスの父」

シンコペーテッド・マーチ「明日に向かって」(1972年/岩井直溥作曲)

 

「中学を卒業後、翌年からポップス系の課題曲が採用されるようになりました。シンコペーテッド・マーチ『明日に向かって』が好きで、演奏してみたかったです」(福島県 64歳)

 

ポップス・マーチ「すてきな日々」(1989年/岩井直溥作曲)

 

「高校から吹奏楽を始めた私が、初めて出たコンクールで演奏した課題曲です。まだ初心者だったため難しくて苦労しましたが、本番では楽しく演奏できました。コンクールの緊張感にすっかりハマった思い出の曲です」(千葉県 47歳)

 

 

筆者もこの曲を演奏したことがありますが、 “ザ・岩井サウンド”といったメロディーで、「こんなに楽しい課題曲があるのか……!」と驚いたことを思い出します。

 

復興への序曲「夢の明日に」(2013年/岩井直溥作曲)

 

「自分の出身中学校が、この曲で念願の県大会出場し、地元の神戸市立本庄中学校が3回目の全国大会出場を決めた……という、Wで思い出がある曲です。母校へはコンクール前日に中学校に手紙とお菓子を差し入れに行き、県大会に聴きに行きました。本庄中学校は、名古屋の全国大会を聴きに行きました。後半の部2番という早い順番の中、見事金賞。曲名通り、夢の1日になりました。作曲者の岩井さんは、残念ながら翌年5月に亡くなって遺作となってしまいました。岩井作品はどれも好きですが、この曲が1番好きです』(兵庫県 30歳)

「吹奏楽ポップスの父」と、多くの吹奏楽愛好家から親しまれていた岩井直溥氏。編曲を手がけていた「ニュー・サウンズ・イン・ブラス」シリーズだけではなく、コンクールの課題曲からも、吹奏楽の楽しさやみんなで演奏する喜びを教わりました。

 

「平和への行列」(2001年/戸田顕作曲)

 

「中学1年生で初めて吹奏楽コンクールに出た時の課題曲。合奏する楽しみを実感しました」(東京都 31歳)

 

行進曲「輝く銀嶺」(1970年/斎藤高順作曲)

 

「中学3の時に演奏した曲です。打楽器、大太鼓、スネアドラム担当でした。前奏が打楽器から始まる曲でした。(福島県 64歳)

 

「シンフォニック・ファンファーレとマーチ」(1985年/仲本政国作曲)

 

「中1の時、初めて演奏した『シンフォニック・ファンファーレとマーチ』です。この曲で吹奏楽にはまりました。まだまだ初心者レベルの1年生だった自分を、一生懸命引っ張ってくれた先輩方。曲とともに全部覚えています! パートはホルンでした」(東京都 48歳)

 

「風紋』」(1987年/保科洋作曲)

 

「課題曲で一番好きなのは『風紋』です! 風景が浮かび、ドラマチック。演奏したかったのに、一度も演奏する機会がなかったです」(東京都 48歳)

 

「管楽器のためのソナタ」(1996年/伊藤康英作曲)

 

「全国大会で薔薇崇師ウィンドシンフォニーの演奏を聴き、『この課題曲で正直こんなに感動すると思わなかった』というくらい、すごく洗練された演奏だったと記憶しています」(東京都 48歳)

 

「をどり唄」(2000年/柏崎真一作曲)

 

「イントロの旋律がたまらなかった」(群馬県 32歳)

 

「祈りの旅」(2004年/北爪道夫作曲)

 

「全国大会で習志野高校が演奏した『祈りの旅』。先輩たちの努力の結晶を、あの普門館で観られた最後の演奏だったから」(群馬県 32歳)

 

「マーチ・シャイニング・ロード」(2017年/木内涼作曲)

 

「中1の時の課題曲。ほとんど吹かせてもらえませんでしたが、先輩からいろいろなことを教えていただき、思い出に残っています」(神奈川県 16歳)

 

マーチ「エイプリル・リーフ」(2019年/近藤悠介作曲)

 

「全国大会の明誠学院高校の演奏は、とにかく爽やかな音で、聴いていてとても気持ちよかったです。また聴きたくなる演奏でした」(神奈川県 16歳)

前述の「マーチ・エイプリル・メイ」や「エイプリル・リーフ」、マーチ「春風」(2005年/南俊明作曲)、マーチ「春の道を歩こう」(2015年/佐藤邦宏作曲)、行進曲「春」(2019年/福島弘和作曲)など、春をテーマにした課題曲は比較的多いですが、春つながりでエピソードをひとつ。筆者は高校野球の応援を取材するのがライフワークで、球場によく吹奏楽の応援を観に行っています。3年前、夏の埼玉県大会の開会式で、浦和学院高校吹奏楽部が入場曲の演奏を担当し、いくつかのマーチを演奏するなか、同年の課題曲、マーチ「春風の通り道」(2017年/西山知宏作曲)もレパートリーにありました。この明るくさわやかな課題曲で、坊主頭の高校球児たちが「イッチニー! イッチニー!」とキビキビと行進しながら入場する姿を見て、「課題曲のマーチって、やっぱり行進できるんだ……! マーチだから、そりゃそうか!」と、妙に納得したことを思い出します(笑)。

 

「ウィナーズ-吹奏楽のための行進曲」(2003年/諏訪雅彦作曲)

 

「吹奏楽でよく演奏される行進曲とは違ったオーケストレーションや楽曲展開が好きで、今でも時々聴いています。個人の技量も求められる課題曲ですが、いつか演奏してみたい憧れの曲です」(東京都 30歳)

 

「そよ風のマーチ」(1991年/松尾善雄作曲)

 

「1年後輩の世代が演奏していた曲でした。穏やかで何となく優しいメロディーで、演奏できるのをうらやましく感じた曲です。(千葉県 45歳)

 

「ランドスケイプ-吹奏楽のために」(1990年/池辺晋一郎作曲)

 

「中学生になり、吹奏楽部に入って初めて課題曲でした」(東京都 43歳)

 

『はるか、大地へ』(1996年/上岡洋一作曲)

 

「中学3年の時、コンクールでのちに私の母校となる高校が演奏するこの曲のサウンドに衝撃を受け、学区外で遠方の学校でしたが、受験を決めました。吹奏楽漬けの高校生活で得た出会いと経験は私の大きな糧となり、この課題曲が私の人生のターニングポイントとの1つとなりました」(神奈川県 38歳)

 

「アップル・マーチ」(1995年/野村正憲作曲)

 

「全国大会で野庭高校が演奏した『アップル・マーチ』。とにかくサウンドが素晴らしい! 自由曲の『シバの女王ベルキス』とともに、吹奏楽をやっている人なら一度は聴くべき名演! 生で聴いた時に鳥肌が止まりませんでした」(神奈川県 38歳)

 

「カーニバルのマーチ」(1988年/杉本幸一・小長谷宗一作曲)

 

「中学に入って吹奏楽部の先輩の演奏を初めて聴いた時、強烈なサンバホイッスルと、初めて聴いたトロンボーンのグリッサンド奏法に強烈な印象を受けた曲です」(千葉県 45歳)

この曲はわたしも中学生のときに演奏しましたが、とにかく明るい! たしかに、「グリッサンド」という奏法を知ったのはこの作品だったと思います。

 

「ゆかいな仲間の行進曲」(1992年/坂本智作曲)

 

「全国大会でヤマハ吹奏楽団浜松が演奏した『ゆかいな仲間の行進曲』。“ゆかいな仲間”というよりも、“上品な優等生”の行進曲といった演奏に聴こえ、自分たちが演奏していたのとかなりイメージの異なる演奏をされていたことに驚きました」(千葉県 45歳)

 

テレビや映画に登場した課題曲

「天国の島』(2011年/佐藤博昭作曲)

 

「普門館で聴いた幕張総合高校の演奏は素晴らしかった」(和歌山県 44歳)

「天国の島」といえば、「ザ!鉄腕!DASH!!」(日本テレビ)の人気コーナー「DASH島」のBGMとしても知られていますが、テレビを見ていて突然課題曲が流れてきて驚いた人も多いのではないでしょうか。作曲者の佐藤博昭氏も、最初聴いた時は驚いたそうです。

 

 

「自分の曲が番組で使われていることに気づき、最初に教えてくれたのは祖母で、親戚一同で喜びました。コンクールの後も、これをきっかけに演奏してくださる団体が増えて、ありがたい限りです。『ザ!鉄腕!DASH!!』は。『DASH島』の他にも興味深い企画が多くて、以前から好きな番組でした。頼もしいTOKIOの皆さんのVTRのバックにこの曲が流れると、最初は照れくささも混じりつつ見ていましたが、聴き慣れた今でもやっぱり嬉しいです」(佐藤博昭氏)

 

マーチ「ブルースカイ」(2007年/高木登古作曲)

 

「疾走感が好きでした」(東京都 31歳)

 

 

普門館を目指す吹奏楽部女子と、甲子園を目指す野球部男子の青春恋愛漫画「青空エール」(作・河原和音)にも、この曲が登場します。モデルとなった学校は、北海道札幌白石高校。同校吹奏楽部出身の筆者は、ご縁があって同作品の監修を担当しましたが、作者の河原和音さんが白石高校吹奏楽部の取材を始めた年の課題曲でした。土屋太鳳と竹内涼真が主演を務める映画版でも、三木孝浩監督が明るく爽やかなこの曲を気に入り、劇中でも演奏されました。

最後に、このような質問も届いていたのでご紹介します。

「課題曲、卒業後は吹奏楽から離れたのでよくわかりません。『宝島』は課題曲ですか? 今の世代がよく知っているなと驚きました」(兵庫県 55歳)

「宝島」は、課題曲ではありませんね……(笑)。T-SQUAREの楽曲で、「ニュー・サウンズ・イン・ブラス」などの楽譜シリーズから広まったポップス曲ですが、たしかに、課題曲なのかと思ってしまうくらい、ほんとうに多くの学校が演奏会でやりますよね。それくらい、たくさんの吹奏楽愛好家の心を捉えた名曲なのだと思います。

語りつくせないくらいさまざまなエピソードが寄せられた、吹奏楽コンクールの課題曲。回答を読んでいても、とても楽しかったです。

世の中をがらりと変えてしまった新型コロナウイルスですが、来年こそは収束して日常が戻り、吹奏楽コンクールが無事開催されることを心から願っています!

全日本吹奏楽コンクール課題曲一覧表(全日本吹奏楽連盟公式サイトより)
http://www.ajba.or.jp/oita/kadaikyoku.html

 

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Text:梅津有希子

 

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