ほとばしる想いを歌とギターにぶつけよう!大石昌良のシンガーソングライター実践塾 vol.1 実践的“作曲方法”【前編】【Go!Go! GUITAR プレイバック】

バンドSound Schedule の他、アニメ主題歌やアーティストへの楽曲提供など、音楽クリエイターとしても大活躍中の大石昌良による連載! シンガーソングライターに必要なノウハウを伝授します!
シンガーソングライターは、1人ですべてを完結させる我慢強さや忍耐が必要な立場だと思います。1人で何でも完結させるということは、つまり1人で何でもできるスキルを持っている“孤独なスーパーマン”なんじゃないかなと思っていて。職業作家だと作詞家と作曲家が分かれていたり、なんならアレンジャーも分かれているけど、3人でやることを1人でできてしまう強みがあります。よく後輩のシンガーソングライターに言うんですけど、もし仮に音楽でご飯を食べていきたいのであれば、作詞/作曲/編曲、そのすべてのスキルをいつでも切り売りできるようにしておきなって。その中でもDTMはできるように!って言ってます。僕は完全に独学で、幸いにもデビューしたのが早かったのでエンジニアさんと会話する機会が早く持てたのは非常にアドバンテージだったなと。今やネット上に何でも情報が転がっているので、DTMを会得する努力はしたほうがいいと思います。(大石)
最近は先にメロを作って、そこにコードを当て込んで、歌詞を入れてDTMの作業に入るのがお決まりのパターンです。メロディーは、道を歩いているときとか、車を運転しているとき、シャワーを浴びているときなどにふと浮かぶので、それをボイスメモに入れて家に帰ってコードとメロに起こす作業を日々やっています。だから、メロが浮かんだらすぐにボイスメモに吹き込みます。僕は、メロの鮮度は10秒間だと思っています。すぐに忘れちゃうし、さっきも忘れちゃったから悔しい思いをすることは多いですね(笑)。でも、常に時間と脳みそって流れているものですから、その瞬間を捉えたり残したりするのがひとつの歌になっていくのかなと思ったり。そういった閃きをつなぎ合わせたり、散らばったメロディーを接着していく作業が作曲だと思います。(大石)
▲録音日時を見る限り、いかに彼がいつもメロディーのことを考えているかがわかる。日頃から意識を持つことが大事。

僕はコードの組み合わせでもメロでも、言葉(歌詞)でもそうなんですけど、自分の中で新しい発見がないとその曲を提出しないようにしていて。作曲を始めた頃は埋められていないマップ(知識)がたくさんあるけど、ある程度曲が書けるようになると細部までマップが埋まって、新しいことを見つけるのが難しくなってきます。1曲作るごとにダンジョンに潜り込む感じがあるので、自分への褒美として、新しいお宝を持ち帰りたいなと思いながら作曲をしていますね。(大石)
バンド時代に培ってきたセンチメンタルロックが源流
バンド“Sound Schedule”時代に培ってきたセンチメンタルロックなニュアンスは、自分の源流だと思っています。バンドって面白くて、スタジオミュージシャンと違ってできることばかりではないところが面白い。逆説的な捉え方ですけど、できないことがあるからこそ創意工夫をするし、その工夫ひとつひとつがバンドの呼吸になったりクセになります。漢字名義(大石昌良)はよりドキュメントな自分というか、実生活の中で思ったことやメッセージ、体験したことを言葉にすることが多いですね。カタカナ名義(オーイシマサヨシ)はアニソンなので、お客さんやクライアントさんが気持ち良くなることが第一。つまり、エンタメイズムが一番強い名義かなと。皆さんを楽しませることに終始しています。そういう意味で、バンドはドキュメントに近いですね。(大石)
大好きな曲のコード進行に別のメロディーを当ててみる
基本的には鼻歌まじりに歌が浮かぶことが多いです。そういう歌のほうが、長く愛されたりヒット曲になっているような気がします。作曲の第一歩は、アコギを持ってコードを弾きながら、コードが持っている旋律の中で自分が思うメロディーをラララで歌ってみること。僕もそうだったんですけど、最初は自分が大好きな曲のコード進行に別のメロディーを当ててみる。多少似ていてもいいから、それっぽいメロディーを当てるんです。まずは先人たちの匠の技を体の中に入れて、真似するのが一番わかりやすい作曲方法かもしれないですね。
そのときに、私、“何か作ってしまったかもしれない”って高揚すると思うんですよ。僕は中1から作曲しているので、その高揚感は13歳の頃からずっと失われずにあります。いまだに曲ができたときの高揚感って、何物にも代え難い高鳴りがあるんです。曲を書くこと自体は簡単です。ただ、いい曲を書くのは難しい。そこで少しだけお勉強が必要になってきます。(大石)
Aメロ/Bメロ/サビの頭をすべて同じコードにしない
古き良きJ-POPの伝統だと、Aメロが起で、Bメロが承で、Dメロが転で、サビが結です。要はサビに一番言いたいことや伝えたいメロが存在して、それに向かって説明するようにAメロがあってBメロで補足して、サビで展開するという考え方。僕が気をつけているのは、Aメロ/Bメロ/サビとすべての頭を同じコードにしない。極力バラつかせることで、Aメロ/Bメロ/サビの色味をキャンパスに書き足す感じでメロの展開をわかりやすくする。それがいわゆるキャッチーさだと思うんです。Aメロとサビはあえて同じコードにすることもあるけど、Bメロは別の色(コード)を塗るようにしていますね。(大石)
■それぞれの働きは“起承転結”で表せる
■頭のコードを変えて色付けしよう
▲︎Aメロ/Bメロ/サビの頭のコードが同じであればあるほど、展開力が失われサビの盛り上がりに欠けてしまう。頭のコードを変えることでサビとの“高低差”が生まれ、キャッチーさにつながる。
※後編は3月に公開予定です。お楽しみに♪
【PROFILE】
おおいしまさよし/80年、愛媛県生まれ。01年、Sound Scheduleのボーカル&ギターとしてデビュー。08年よりソロ活動を展開し、アニメ主題歌やアーティストへの楽曲提供を行う。“オーイシマサヨシ”名義ではアニソンシンガーとして活動し、Tom-H@ckとのユニット“OxT(オクト)”としても活動。
http://014014.jp
【INFORMATION】
OxT
NEWEST ALBUM
『REUNION』
ポニーキャニオン
2020年9月10日リリース
■初回限定盤(CD + DVD)
PCCG.01917
¥4,500+税
※三方背スリーブケース仕様
■通常盤
PCCG.01918
¥3,000+税
(Go!Go!GUITAR 2018年12月号に掲載した内容を再編集したものです)
Edit:溝口元海
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