【レコにまつわるエトセトラ】エイジレス・レコード ~ レコードの美を保つアクセサリーのススメ【第22回】

 

近年また盛り上がりを見せつつある、レコード/アナログ盤。リアルタイムで再生メディアとしてレコードと接してきた世代だけではなく、CDやカセットすらも馴染みのない若い世代の人たちからも“新鮮”なものとして受け入れられているようです。

そうした流れの中でこの世界の魅力をよりディープにお伝えするべく始まったのが、本連載【レコにまつわるエトセトラ】。ディスクユニオン新宿ロックレコードストア店長の山中明氏を水先案内人に、入り口から底知れぬ深淵に至るまでを旅しましょう。

第22回のテーマは、“エイジレス・レコード ~ レコードの美を保つアクセサリーのススメ”。どんなものでも何のケアもせず、雑な扱いをしたり放置したりすれば、劣化してしまうのは避け難いことです。ましてや、発売されてから何十年も経ったヴィンテージのレコードともなれば、なおのこと。

自分が大事にするのはもちろん、その品を後世までいかに受け継いでいくか…と考えた時に、ちょっとした気配りや取り扱いの仕方が大事になってくるのです。今回はレコードをコレクトするだけではなく、“守り受け継ぐ”という観点でもためになる「アクセサリー」についてご紹介していきます。

一度失われてしまったコンディションは取り戻せない。

 

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大事なコイツをどう仕上げるか、それが問題です。

 

レコードの生産数が右肩上がりに増えている、今日この頃。こんなにITでデジタル全盛な時代に、アナログの復権が声高に叫ばれています。

アナログ・メディアを愛し、なんならそれで商いもさせてもらっている私としては、言うまでもなくウェルカムなこの状況ではありますが、中古品、特に数十年の時を経た、ヴィンテージなレコードをメインに取り扱っている私としては、どーしても気になることがあるのです。

そう、それはレコードの取り扱われ方です。

私もこの業界の20年選手、本当に色々な取り扱われ方をしたレコードたちを見てきました。
盤でフリスビーしたのかっていうぐらい擦れ擦れのレコードとか、盤を取り出すと一緒に黒い悪魔がコンチワするもの(普通に「ワッ」って声出ます)とか、まぁそんなの日常茶飯事です。

やっぱりレコードってアナログでフィジカルが故、最大の天敵は経年劣化。
60年代や70年代に生まれたレコードたちを皆が今こうして目一杯享受できているのも、過去の(意識の高い)先人たちが大事に取り扱ってきてくれたからでしょう。

そんなサバイヴしてきたヴィンテージはもちろんのこと、今の流れに乗ってリリースされている新品レコードも、「俺が買ったものだし」的に雑な扱い方をしてしまえば、ちゃんとした形で後世に受け継いでいくことは叶いません。
当たり前ですが、一度失われてしまったコンディションは取り戻せないのです。

だからこそ私は、皆さんが常日頃どんなレコードの扱い方をしているか、気になって仕方がないんです。
特に最近は、新しく買い始めた方も多いと思います。後世のためにも微力ながらお役に立てれば…とそんな気持ちになったので、今回はレコードのケアには欠かせない、「レコード・アクセサリー」をご紹介します。

どんなことでもそうですが、ちょっとした心掛けで全然違うものなんです。
末永く状態を保てるのはもちろん、なんなら状態イマイチなヤツでもビシッと見た目も整って、なんとも愛せる一枚に早変わりしちゃうかもです。

では、ご一読ください!

 

大事なレコを守るためには、塩ビが必要なんです。

 

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帯が付いている国内盤には塩ビがマスト。余談ですが、この「E」の部分見てくださいよ…。

 

そもそもレコード・アクセサリーって、ご存じでしょうか?

レコードの盤を入れて保護するための半透明のビニールとか、無地のジャケットの代わりみたいなヤツとか、レコード周りの便利グッズのことなんですが、レコードを内から外から守ってくれるなんとも頼もしい存在なんです。

まぁアクセサリーと一口に言っても、ものすごく色々なタイプの商品がありますので、今回はジャケット関連のアクセサリーにスポットを当ててご紹介させていただきます。

そしてそんな中でもとにかく一番重要で、「まずはコレ!」っていうのが「塩ビ」でしょう。

塩ビは「ポリ塩化ビニール(PVC)」の略語なんですが、細かいことはさておき、レコード業界的にはいわゆる「ビニール・カバー」のことを指します。

ただ塩ビ自体も俗称(業界用語?)ではありますので、ビニール・カバーはもとより、「外袋」とか「保護袋」とか色々な呼ばれ方をされているとは思います。

あと一応細かいハナシもしておくと、「塩ビ」と呼ばれるだけあって素材はPVC製もありますが、現在ではPP(ポリプロピレン)やOPP(オリエンテッドポリプロピレン)が主流です。
ちなみにPVCは、レコードそのものの素材でもありますね。

 

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買ったレコードを裸のまま棚に入れる、そんなワイルドな方もいますが、ロックとかジャズとかがお好きな方はこの塩ビにレコードを入れて保管するのが定番です。

ジャケットを擦れや汚れ(今は少ないかもしれないヤニ汚れ等)から守ってくれたり、ピシッと綺麗に並んでいるとやはり精神衛生上もよろしいワケです。

そしてもちろん塩ビと一口に言っても色々と種類がありますので、実物の写真を交えながらご紹介していきましょう。

今回は、上の画像に並ぶ4種の塩ビを比較してみます。

 

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ちなみに今回着せ替えのモデルとなるのは、 The Soft Machineの記念碑的デビュー・アルバム『The Soft Machine』です。
リリースは1968年。この後「カンタベリー」というシーンを生み出す、丸ごとレジェンドなアルバムです。未聴の方はぜひ。

ちなみになんでこのアルバムを選んだかというと、「ギミック・ジャケット」と呼ばれる特殊な作りになっているからです。
本作はLed Zeppelin『III』と似たタイプなんですが、取り出し口付近の丸い部分を回すと、ギア部分がグルグルと回る遊び心が効いた仕様となっています。

こういう手の込んだジャケってレコードの醍醐味のひとつなんですが、裸で棚に直入れすると、いかにも引っ掛けちゃいそうな感じですよね?
やっぱり大事なレコを守るためには、塩ビが必要なんです。

 

さまざまな種類の塩ビを比較検討してみよう。

 

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■LP用ビニール・カバー

ということでまずはこちら、王道中の王道にして、THE普通。
これを基準にして語っていきましょう。

 

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■LP用ビニール・カバー(縁なし)

似たようで結構違う、「縁」のないヴァージョンです。
急に「縁」とか言われてもワケわからないと思いますが、普通のものは底部分を圧着して止めてカットしているため、ちょっとしたハンパができているんです。
それを「縁」と呼んでいるんですが、ピンと来ないと思うので下の画像をご覧ください。

 

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1​​​​​の画像が「縁あり」、2の画像が「縁なし」です。
ね、違うでしょ?

「で、これがなんなのよ?」っていう感じかもしれませんが、実際に棚に入れると違いが丸わかりです。

 

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「縁あり」は縁が邪魔して、どうしても底部分がもたつきます。
それに比べて「縁なし」は実にスマート。まとまって並ぶと、さらに際立つと思います。

また縁だけじゃなくて、他にも細かく違う点があります。

 

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ちょっと画像だと分かりづらいかもしれませんが、「縁なし」の方が若干厚みがあって、少しリッチな感じがします。

とここまでくれば完全に「縁なし」の圧勝感がありますが、「縁あり」にも長所はあります。

まずはお値段です。
せっかくなんで当社ディスクユニオン製での比較ですが、「縁あり」が330円(税込)、対して「縁なし」は385円(税込)。共に10枚セットの値段です。
ちょっとした差かもしれませんが、こういうのってボディー・ブローのように効いてくるものです。

あと、サイズ感も少し異なります。
「縁なし」は若干タイト目な作りになっているため、そのフィット感がさらなるビジュアルUPに貢献しているとも言えるのですが、2枚組のレコードの中でも特にゴッツリと肉厚ジャケ仕様なものとかは、入り切らないこともあります。
無理して入れようとすると、横の部分がピピーッと切れちゃいます。

で結局どっちが良いの?っていうハナシなんですが、個人的には「縁なし」をオススメします。やっぱりバチッと収まり良いですし。
ただ、どちらにしてもレコードを守る防御力は変わらないのでご安心を。

 

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次にご紹介するのは、日本では馴染みこそ薄けれど、ヨーロッパ圏ではポピュラーな2種類の塩ビです。

正式名称は知らない、というか元々特にないと思いますが、1の画像が「(ヨーロッパ式)ふにゃビ」、2の画像が「(イギリス式)硬ビ」です。
お察しの通り、この呼び方はただ私が言っているだけの俗称中の俗称ですので、他の人に言っても通じませんよ…あしからず。

 

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■ (ヨーロッパ式)ふにゃビ

「ふにゃビ」はその名の通りふにゃふにゃで最も柔らか仕様な塩ビで、素材も白濁とした(日本人からすると)変わり種です。
ヨーロッパ圏で人気の理由としては、まずレコードにとことん優しい柔らかさと、透明度が低いからこそのメリットです。

白く濁っていると多少のジャケのスレや傷みは覆い隠され、気のせいか高級感も漂いっちゃいます。個人的にも結構お気に入り!

ちなみに、この画像のものはペラペラですが、もっと厚みのあるタイプもあります。

 

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■(イギリス式)硬ビ

そして最後に紹介するのが、もっともハードな素材で作られた「硬ビ」。
シンプルに硬いんで、擦れや傷にはめっぽう強く、角打ちもシャットダウンしてくれる心強い仕様となっています。

ただデメリットとして、硬すぎるが故に、いざレコードを入れる時に硬ビのエッジがジャケの角をエグる時があります…メリッと。
あと、レコードの扱いにこなれた方であれば共感していただけると思いますが、いかにも「塩ビ焼け」が発生しそうな素材感でもあります。
実際にはそんなでもありません(ゼロとは言えません…)が、イギリスらしいコーティング仕様のジャケットが、へばり付いているのはよく見かけます。ちょい不安…。

またイギリスの多くのレコード屋で採用されているこの硬ビ、パタパタしてるとまぁー手が痛いのなんのって。
硬ビ特有のナイフ・エッジが手を痛めつけてくるんです。家で使ってる分にはもちろん大丈夫ですけど。

ちなみにこの硬ビもマイナー・チェンジされて色々と種類があるんですが、他の塩ビにはないゲートフォールド・スリーヴ(見開きジャケット)用もあります。
開いても硬ビに包まれたままっていう気の利いた仕様です。

 

これから先も素晴らしい文化を繋いでいくために。

 

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あと最後になりますが、私が自分のコレクションの中でも、特に可愛いヤツはこうしてるっていう、オススメのアクセ使いをご紹介しておきましょう。

ここで活躍するのが「LP用保護プレート」、通称「プラ板」です。

こいつをジャケの上に重ねてから、セロパック(糊が付いているビニール・カバー)で一度完全パック。

 

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そして盤はダイカット・スリーヴに分けて入れてあげて、最後の仕上げにジャケとダイカットをニコイチにして「縁なし」塩ビに入れて、出来上がりです。

もし手が滑って落としたところで、どうにもならない鉄壁仕様です。まぁ結構な重量感になりますが、それもまた調子良し!

 

 

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これがセロパック。塩ビとは異なる密閉式です。
ちなみに横がけ派と縦がけ派がいますが、私は横がけ派。

 

どんなにアナログ・メディアが好きな方でも、いやかえって好きだからこそ、ジャケがスレスレだったり、音がバチバチだったりするのって気になるもの。

「別に自分のレコードぐらい好きにするわ! 大きなお世話だ!」なんていう方もいるかもしれませんが、チョット待ってくださいよ。
冒頭にも書きましたが、レコードって、買ったら100%自分のもので、何したって自由っていうワケでもないと思います。

いつか自分の棚から巣立っていき、人から人へと聴き継がれ、誰かの人生を丸ごと変えてしまうかもしれません。そう、自分だってそうだったように。
これから先また数十年と、この素晴らしい文化を脈々と繋いでいこうではありませんか!

合言葉は「STOP THE 経年劣化」!

 

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Text&Photo:山中明(ディスクユニオン)
Edit:大浦実千

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