ほとばしる想いを歌とギターにぶつけよう!大石昌良のシンガーソングライター実践塾 vol.3 実践的“作詞方法”【前編】【Go!Go! GUITAR プレイバック】

バンドSound Schedule の他、アニメ主題歌やアーティストへの楽曲提供など、音楽クリエイターとしても大活躍中の大石昌良による連載! シンガーソングライターに必要なノウハウを伝授します!
パズル的に言葉を埋めていくとメロディーと言葉の親和性が高い楽曲ができる
作詞も作曲と同様、街を歩いているときや車を運転しているとき、シャワーを浴びているとき、ご飯を食べているときに浮かぶことが多いです。僕はメロディーを先に作ることがほとんどなんですけど、メロディーが浮かんだときにデタラメ英語だったりデタラメ日本語だったり、メロと一緒に言葉が出てくる箇所が1曲の中に絶対に数箇所あるんです。
その言葉自体は1フレーズだったりするんですけど、それをヒントに構想を膨らませていくことが多いです。クロスワードパズルに近くて、要は決まっているワードがいくつかあって、そこにパズル的に言葉を埋めていくような作詞作業をすると、メロディーと言葉の親和性や親密性がより高い楽曲が出来上がるんです。
浮かんでくる言葉にも“手グセ”みたいなものがあって、僕は“メイク・ミー”とか“ホールド・ユー”とかが多いですね(笑)。“ユー・メイク・ミー”だったら“夢に”のように日本語に置き換えることはよくやります。(大石)
メロディーにデタラメ言葉を乗せる
▲鼻歌でメロディーを歌うと同時に、日本語でもデタラメ英語でもいいので言葉を紡ぐ。その言葉を頼りに歌詞を膨らませていくのが大石流だ。
モチーフがしっかりしている歌詞は聴き応えや発見がある
面白い詞とか心に残る歌詞のほとんどにはモチーフが存在します。それは人の考え方だったり、カメラのようなアイテムだったり、そういうモチーフがしっかりしている歌詞は非常に聴き応えとか発見があると思っていて。だから僕もそういうテーマ性を持って歌詞を書くことが多いです。その中でも僕は精神性とか心情描写じゃなくて、アイテムとか地域が多いですね。そのほうがブレないし、他人とは違う面白いものができます。
そういうテーマを設けて歌詞を書くことの何がいいかというと、アニソンが作りやすくなるんです。アニソンはテーマの応酬なので、自分が掘り下げようと思ったテーマについて調べたり現地調査することって、自分の世界を歌で広げていくという意味でも大切だったりします。歌詞を書く上で嘘をついたらダメだと思っているので、テーマについて紐解いたり自分の言葉にしていくことはすごく大事だと思いますね。(大石)
歌詞のテーマは日常に転がっている
▲︎カメラでもメガネでも時計でも、歌詞のテーマになるアイテムは日常に溢れているので、積極的にトライしつつテーマについて深く掘り下げる習慣をつけよう。
そのときの熱い気持ちで作っても結果的にいいものにつながらないことが多い
シンガーソングライターで一番武器になるものとかテーマになるものって、その人のリアリティだと思うんです。たとえば、お母さんとケンカして投げた目覚まし時計が壊れた、その時計について歌うことで家族愛についての物語が展開しそうです。私生活の中で常にアンテナを張っておいて、なおかつそれをメモることは非常に大事。ここで誤解してほしくないのは、そのことを曲に書きたい!と熱く思ったときに作るとだいたい失敗するんです(笑)。
自分の例ですけど、大好きなおじいちゃんが15年くらい前に亡くなって。当時は天国に行ったおじいちゃんについて歌にしようと思ったんですけど、全然書けなくて。大好きなおじいちゃんフォルダは心の奥のほうに一旦閉まっておいたんです。5年後くらいにメロディーが浮かんだとき、そう言えばおじいちゃんの曲を書きたかったなと思ってそのフォルダを出したらいい歌になったんです。それが僕のソロデビュー曲「ほのかてらす」。“鉄は熱いうちに打て”ですけど、歌詞は冷えてから打ったほうがすごくいい歌ができるような気がします。
失恋したときも曲はできるんですけど、いい歌ができるかというと別問題。ただ、そういうひとつの失恋がもとで、5〜10年後にアルバムの曲数分くらいの曲ができることは往々にしてあります。だから、傷を負ったり悲しい出来事があったりしたときは、5年後くらいに自分の歌にリカバリーできると思ってちゃんと残しておくことが大事。(大石)
恥ずかしいですけどね、ドキュメントなものを書くと(笑)
“大石昌良”名義では実際にあった出来事を歌詞にすることが多いですね。何年も生きていたらいろんな出来事があるので、ちゃんと心の奥底にしまいこんでおいて、その出来事をうつわ(楽曲)やメロディーに入れることができるかなっていうので引っ張り出してくることが多いです。
たとえば、「耳の聞こえなくなった恋人とそのうたうたい」という曲があるんですけど、それは事実に基づいてというかドキュメントならではの楽曲。特にサビ頭は自分でもよく書けたなって思うんですけど、“聞こえないことは悪いことじゃないよ 伝えきれない僕が悪いよ”って歌詞がすべてだなと思っていて。突発性難聴で耳が聞こえなくなってしまった恋人がいたんですけど、そのときの音楽家としての自分の立ち居振る舞いはいかがなものだったんだろう?というところからこの楽曲は始まっていて。音という表面的なものじゃなくて、心を伝えるべきだったなっていうのがそのまま歌になっているんですけど、なかなかサビ頭にしないような言葉だと思います。自分の非を認めるようなことを歌っているので。それって勇気がいるんですけど、紛れもなく自分のドキュメントだったりするので、そういう曲が隠れた名曲としてファンの方に浸透しているのは非常に嬉しいなと。これから先、何年も歌っていくんだろうなと思います。昔のアルバムを開くみたいに。でも恥ずかしいですけどね、ドキュメントなものを書くと(笑)。(大石)
※後編は5月に公開予定です。お楽しみに♪
【PROFILE】
おおいしまさよし/80年、愛媛県生まれ。01年、Sound Scheduleのボーカル&ギターとしてデビュー。08年よりソロ活動を展開し、アニメ主題歌やアーティストへの楽曲提供を行う。“オーイシマサヨシ”名義ではアニソンシンガーとして活動し、Tom-H@ckとのユニット“OxT(オクト)”としても活動。
http://014014.jp
【INFORMATION】
DIGITAL SINGLE
「神或アルゴリズム(feat.りりあ。)」
2021年2月26日リリース
(Go!Go!GUITAR 2019年1月号に掲載した内容を再編集したものです)
Edit:溝口元海
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