【レコにまつわるエトセトラ】目で聴く音楽 ~ 魅惑のメモラビリアの世界(ビートルズ編)【第24回】


近年また盛り上がりを見せつつある、レコード/アナログ盤。リアルタイムで再生メディアとしてレコードと接してきた世代だけではなく、CDやカセットすらも馴染みのない若い世代の人たちからも“新鮮”なものとして受け入れられているようです。

そうした流れの中でこの世界の魅力をよりディープにお伝えするべく始まったのが、本連載【レコにまつわるエトセトラ】。ディスクユニオン新宿ロックレコードストア店長の山中明氏を水先案内人に、入り口から底知れぬ深淵に至るまでを旅しましょう。

第24回のテーマは、“目で聴く音楽 ~ 魅惑のメモラビリアの世界(ビートルズ編)”。第17回ではヴィンテージ・ポスターを題材に、“メモラビリア”(=記念品)についての一端をご紹介しましたが、今回は続編ということでより深いところへと誘っていきます。

ポスター以外にも当時作られた関連グッズは、多種多様に及んで存在するもの。一般の人にはなかなか手に入り難いプロモーション用のグッズをはじめ、スタジオ、レーベルの所蔵品から、果てはアーティストの私物まで…。ただの蒐集物に収まらず、音楽そのものにも影響を与えかねない逸品たちの妖しい輝きをご堪能あれ。

「メモラビリア」再び…今回はより風変わりな逸品をご紹介

 

レコにまつわるエトセトラ(1)

レコにまつわるエトセトラ(2)

Apple謹製ポスト・カード。裏面には我らがジョージのサイン入り。

 

少し前に「ヴィンテージ・ポスター」についてお話しした際にも申し上げましたが、「メモラビリア (記念品。ポスター、グッズ、サイン他)」って、ここ日本では知名度・人気共にまだまだシブい状況です。

居住環境であったり、そもそもの市場規模の小ささであったりと、人気が伸び悩む理由はぼんやりと分かりますが、私がメインで取り扱うオールド・ロックなんかは、音楽だけでなくその歴史的背景や、アーティストの生き様なんかも含みで楽しむ、そんな性格の強いジャンルだと思っています。

ちょっと前のハナシなんですが、かのAbbey Road Studioで当時実際に使用されていた、門外不出のスタジオ・モニター用のヘッドフォンで音楽を聴く機会がありました。
まぁこれがハイファイの真逆を行くような、パッサパサな音が飛び出してきたんですが、私はバツーンと心射抜かれて固まっちゃっていました。
こうなんて言うか、死にそうにもなっていないのに走馬灯を見たような感覚だったんです。

もちろんこれって音の良し悪しとはまた別軸の話ですが、私がそのヘッドフォンのバックボーンを知っていたからこそ、あの時代とシンクロし、もっと言えばあの「音楽史」の一部になれたような気がしたんです。
そう、これも立派な音楽の楽しみ方だと思いませんか?

ということで、今回はアナタの音楽の楽しみ方にもうひとつの選択肢を追加する、いわば「目で音楽を聴く」メモラビリアのススメ。
こういうものを傍に音楽を聴くと、音楽をより良く聴くためのマインド・セットにピッタリですよーっていうオススメ話になります。

ちょうど冒頭でAbbey Roadの名前を挙げたので、今回はビートルズのメモラビリア縛りで、かつポスターやマガジン等のいわゆる紙モノは省き、より風変わりな逸品をズラズラとご紹介していきます。
ではお楽しみください!

 

レコにまつわるエトセトラ(3)

レコにまつわるエトセトラ(4)

 

■The Cavern Club Bricks

ビートルズ・ファンにとっては言わずもがなの聖地、1957年開業の英リヴァプールはマシュー・ストリートにあるナイト・クラブ「The Cavern Club」。

長い歴史の中で様々な変遷があったクラブになりますが、一度目の閉業を迎えたのが1973年のこと。次にその所有権を取得した、リヴァプールFCのサッカー選手、トミー・スミス氏は、1984年にクラブの再建を果たしています。

彼は可能な限り当時の姿を再現しようと試みましたが、その際に使用されたのが本品、オリジナルのレンガ(Brick)です。
そしてその際に切り出されたレンガの一部は、Royal Life社によって開催された、チャリティー・オークションにて一般販売がされました。

その時世界に散り散りになったレンガ、その数5,000。
決して少なくない数ということもあって、今現在でも中古市場に時折顔をのぞかせますので、粘り強く探せばいずれ入手するチャンスに恵まれることでしょう。

ビートルズをはじめとする数々のレジェンド・アーティストたちの汗と、あの時の熱狂を目一杯吸い込んだこのレンガ。
ロック史における最重要建造物の一部を自宅のオーディオ部屋に飾り、オリジナル盤のレコードに針を落とせば、たちまち部屋いっぱいに満ちる特濃のリヴァプール・サウンド。
いつもより数倍増しに聴こえても無理はナシ!?

 

眺めて楽しむも良し、実用しちゃうも良し…!?

レコにまつわるエトセトラ(5)

レコにまつわるエトセトラ(6)

 

■HÖR ZU Promotional Coaster

『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』のリリースに際して、ドイツで制作されたプロモーション用コースター。
表面にはお馴染みのドラム、裏面にはドイツ盤をリリースしたレーベル、「HÖR ZU」のロゴがあしらわれています。

飾るのも悪くないですが、これは思い切って実用するのがオススメです。だって何気なく置いてあるコースターが当時モノって、中々にシブくないですか?
ただ紙製なので、そのまま使うのはちょっと厳しいです。もちろん貴重でそれなりの値段がしますし。
アクリル製のコースターとかで挟んでから、お使いになってみてはいかがでしょうか?

 

レコにまつわるエトセトラ(7)

レコにまつわるエトセトラ(8)

レコにまつわるエトセトラ(9)

 

■Apple Films Canister

1967年制作の『Magical Mystery Tour』を皮切りにスタートさせた、Apple Corpsの映像部門、「Apple Films」で実際に使用されたフィルム用キャニスター。
キャニスターとはフィルムを納める金属製の缶のことを指しますが、要は本品に中身(=フィルム)は入っていないということです。

表面にはお馴染みの「Appleロゴ」があしらわれた紙が貼り付けられており、実に威風堂々としたビートルズ・メモラビリアとしての装いを醸しています。
そしてその紙には「T.REX IN CONCERT」との記載があることからも、この缶にはリンゴ・スター、エルトン・ジョンが客演し、1972年5月にAbbey Road Studioで撮影された、T.REX史に燦然と輝く伝説的フィルム『Born to Boogie』のフィルムが納められていたのでしょう。

また、紙の下部には住所に加えて「Directors: J.O.Lennon G.Harrison」とのクレジットがされていますが、この「ジョン・オノ・レノン」という珍しい表記に心惹かれます。

まぁただの小汚い缶って言われちゃえばそれまでですが、眺めて楽しむも良し、レコード周りのグッズなんかを入れたりして実用しちゃうも良し。
メモラビリアの可能性は無限大です。たぶん…。

 

レコにまつわるエトセトラ(10)

レコにまつわるエトセトラ(11)

レコにまつわるエトセトラ(12)

 

■Yellow Submarine Cel

言わずと知れた、1968年7月公開のアニメ映画『Yellow Submarine』の制作に際して、実際に使用されセル画。

もちろん通常ルートで市場に出回るような類のものではないため、すこぶる高いレアリティーを誇りますが、その絵面によって市場価格が大きく変動するのがミソです。

もちろんコマの分だけ存在するこのセル画(他にも設定画なんかも存在します)、実に多くの種類が存在していますが、やはりシンボライズな「潜水艦」、そしてビートルズのメンバーが描かれたカットが人気を集めます。
そしてその2つの合わせ技こそが、最も高値を呼ぶパターンの1つとなります。

なお、上記掲載の画像のものは、市場価格順で並べています。なんとなく分かりますよね?

 

音楽をより良く聴くためのマインド・セットの1つにしてみては?

レコにまつわるエトセトラ(13)

レコにまつわるエトセトラ(14)

レコにまつわるエトセトラ(15)

レコにまつわるエトセトラ(16)

 

※注意※ 真偽のほどは全く不明ですので、ここから先は半分シャレとしてお楽しみください。

最後にオチ(?)としてご紹介するのは、イレギュラーが過ぎる究極のビートルズ・メモラビリアです。

アナタはこの画像を見てお分かりいただけただろうか…。
この一見なんてことのない『Rubber Soul』の英MONO、実はとんでもない方が元オーナーだったのです。

裏ジャケとラベルに書き込まれた「N.R.DRAKE」の文字。これこそが英国が誇る夭折のシンガーソングライター、ニコラス・ロドニー・ドレイク、そう、ニック・ドレイクのサインです。
彼は(たぶん)ハイスクール時代にこの一枚に針を落として耳を育み、後の珠玉の音楽の数々が生まれていったと思うと…この一枚がいつもと全く違うサウンドに聴こえるのもムリはありませんよね!?

実際これを聴いた私、イギリスの片田舎の人の家の中で、ただただぼーっと恍惚とした表情で立ち尽くしていました。
ホント貴重な体験でしたよ! って言いたいところなんですが、このサインが本物じゃなかったらただの思い込みが過ぎるヤバい奴ですけど。
まぁこういうのって、そういうもんですよ…悪しからず。

 

レコにまつわるエトセトラ(17)

レコにまつわるエトセトラ(18)

ついでにレアな逸品も掲載しておきます。Apple公式のクリップとボックスです。Hard to Find!!

 

音楽って、人が聴くもの。
たとえ数値や波形で音の良し悪しが保証されたとて、実際の聴こえ方はその時の自分の気分や状況に驚くほど影響を受けるものです。

レコードでより良い音質を追求したりなんかして、サウンドだけにストイックに向き合うのももちろん最高なんですが、もっと色々な観点から音楽を楽しむっていうのもオツなものではないでしょうか?
そしてそんなオツを欲するアナタには、音楽をより良く聴くためのマインド・セットの1つとして、きっとメモラビリアが役に立ってくれるはずです。
ぜひお試しあれ!

 

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Text&Photo:山中明(ディスクユニオン)
Edit:大浦実千