山陰発のギターポップバンド“Roomania”が、対照的な音世界を持つ配信シングルを2カ月連続リリース

昨年12月にリリースされたEP「スノウドロップ」以来、約7カ月ぶりに登場するギターポップバンドのRoomania。7月3日に配信された配信「夏空」が、第103回 全国高校野球選手権 神奈川大会「高校野球ニュース」のテーマソングに起用されるなど人気上昇中の彼らに、「雨に唄えば」「夏空」という2作の配信シングルについてと今後の目標について話を聞いた。
多くの人にとっての“雨と夏”を象徴するような曲になったらいいな
ryosukeさんの曲は、歌を入れることで世界が広がる
――mysoundマガジンでは、去年12月にリリースされたシングル「スノウドロップ」の時にインタビューをさせていただきました。コロナ禍で音楽に対する姿勢や意識に変化はありましたか?
andy 以前よりも練習方法をしっかりと考えるようになりました。4人が会った時にちゃんと演奏できるように、基礎練を変えたり、テクニックのバリエーションを増やすなど、よりドラムに向き合った練習をしています。
ryosuke 練習を前よりもきっちりやるようになりました。少しずつ注目されている中で、下手な演奏は見せられないので。ちゃんと練習しなきゃという意識もあるし、前みたいに好き勝手な曲ばかり作っていられないなと。聴かれることを前提で作らないといけないので、ギターのフレージングひとつとっても変化してきているのかなと思います。
fuya 曲作りに関しては考える時間が増えて、自分の中で“これでいいのか?もっと良くなるんじゃないのか?”と作ったものに対して懐疑的になれるようになってきたと考えてます。
――6月12日「雨に唄えば」、7月3日に「夏空」と短いスパンでシングルを配信リリースしましたね。しかも、テーマが“雨と夏”と対照的なテーマであるのが面白いなと。
ryosuke 2曲同時に出すという案もありましたが、せっかくそれぞれの曲に色が出ているし、季節的にも2カ月に分けられるタイミングだったので、ジャケット写真も分けて表現したほうが伝わり方も変わるなと。あと、これは意図的ではないけれど、「夏空」の最初の歌詞が〈いつの間にか雨はやんでた〉なので、あとからそのつながりに気づいて“おお!”と思ったり(笑)。
――「雨に唄えば」はryosukeさんが作詞作曲を担当した曲ですね。
ryosuke はい。去年の今頃かもう少し前にできた曲です。閃きで“これは!”というメロディが浮かんで書きました。前のインタビューでも話しましたが、家でテレビを見ながらギターを弾くことが多くて、ポロンと弾いていたら“これだ”と思って、テレビを消して、歌いながら弾いていたら浮かんできました。不思議な感覚ですけど、ポロンと弾いていたらスッと出てきました。
――それからは作業もスムーズに?
ryosuke ギターのフレーズがなかなか出てこない時もあるけど、これはスムーズに出てきた感じですね。そのあと、他のパートも詰めたんですけどすごく早かった。
――梅雨でジメジメしている季節ですけど、軽やかというか、雨も悪くないかも?と思わせてくれる曲です。
hiro 私はオケが出来上がった段階で聴かせてもらったのですが、ryosukeさんの曲って歌を入れることで全貌が明らかになるというか。最初にデモを聴いた時は、ryosukeさんらしい良い曲だと思って、歌を入れ終わって聴き返すと、自分が最初に想像していたよりも広がりがありましたね。
ryosuke 確かにデモの時とは印象が様変わりしていると思う。hiroさんの歌が入ったことで、かなり聴きやすくというかいわゆるポップになった。デモの段階のものと聴き比べると、“んん!?”と思うくらい変わっていると思います。先ほど、“雨の日も悪くないと思える”とおっしゃっていただきましたが、まさにそれが曲を作った時のイメージで、それが伝わっていたようですごく嬉しいです。雨の日は憂鬱になりがちですが、雨の日に傘を差すのって意外と好きで(笑)。土砂降りは嫌ですけど、しとしと降っている雨の中、音楽を聴きながら歩いているとすごく空気がキレイになったような爽やかな感じで。そういう気持ちをイメージして作ったので、それがベルの音色やhiroさんの声と合わさることですごくイメージが伝わりやすくなったと思います。
――子供の頃は雨の日ってワクワクしたけど、大人になると鬱陶しいものとされがちで。そんな小さい頃の気持ちを思い出させてくれるというか。
ryosuke 出だしの歌詞も好きなんです。〈雨に好かれたこの街で〉では、いろいろな捉え方ができるように書きました。梅雨の時期の街というイメージもあるし、単純に気候的に雨が多いから、雨が好んで居ついている感じにも捉えられる。多くの人にとっての雨を象徴するような曲になったらいいなと思っています。
――演奏面やサウンド面でこだわった部分は?
fuya ゆったりとしたリズムを意識してAメロを弾きました。
andy 曲がゆったりしているので、歩いていくというか進んでいくようなイメージで演奏しました。サビを聴いた時、90年代のような力強さを感じたので、それをイメージした演奏を心がけました。
ryosuke 意図的に同じフレーズの繰り返しにしているんです。それが雨の断続的な感じに合うと思って。明るい雨というか、ノスタルジックな雰囲気を出したいと思っていたので。山陰チームとhiroさんは距離的に離れているので、プリプロを詰める作業が増えて、フレーズを完璧に決めてから山陰チームはレコーディングしました。直接会えないからhiroさんとのコミュニケーションが増えて、どういう歌の表現をはめるのがいいのか、実際は会っていないけど密に連絡を取り合ったというか。そういう経緯があったので、「雨に唄えば」の歌の録りはめちゃくちゃ早くて。時間があるから、現場でコーラスを決めようといって多重的なものにもトライしたんです。
――hiroさんはどのような気持ちでレコーディングに臨みましたか?
hiro 今回、「夏空」と「雨に唄えば」を同じ日にレコーディングしたんです。メンバーとコミュニケーションをとる中で、歌に関しては任せてもらえることが多かったです。今回は対照的な曲だったのでかかった時間も全然違うのですが、「雨に唄えば」は難しいことは考えず、自然体で歌ったのでレコーディングも早く終わりました。
――楽曲自体の構成もシンプルですよね。
ryosuke そうですね。僕はUKロックが好きなので、そういう部分が出ているなと作り終わった後に感じました。サビでギターを歪ませてジャカジャカ弾いているのも、UKロックを少し意識したり。ロンドンも雨が多い街でしょうから。あと、シンプルな展開なんですけど、fuyaさんのベースのグリスがすごくいい味を出していてお気に入りです。
何かわからない期待感というか理由はないけど夏だから何かできそう
――7月に配信された「夏空」ですが、いつ頃に作られた曲でしょうか。
fuya デモを作ったのが今年の2月なので、実は冬に作った曲なんです(笑)。まずはメロディができたのですが、夏の映像に合うメロディというか、カルピスとかポカリスエットのCMのような映像をイメージしながら、それに合うものは何かと考えながら広げていきました。歌詞の面で言うと、実際には具体的なストーリーがあるわけではないんです。それは映像からイメージする言葉を並べていったからで、個人的にはサビの〈夏空を飛び越えたい〉が出てきたことで他の歌詞がすべて出てきました。
――聴いた瞬間、海に続く草原を駆けているような映像をイメージしました。
fuya まさにそのイメージですね。レコーディングをしているスタジオが鳥取県の大山(だいせん)という山の麓にあるのですが、その周辺の風景をイメージしました。草原ではないのですが、田んぼと海みたいな(笑)。以前、Roomaniaで夏の時期にそこでレコーディングをしたことがあって、その時の風景や気持ちを思い浮かべながら作ったという感じです。
ryosuke 大人になってからの夏というよりも、高校生の時の夏って感じ。いわゆる青春の夏というか、みんなで海に行ったなとか、そういう光景を思い出すような曲だなと。MVもそういう感じで作っていただいて、イメージを共有できたかなと思っています。
fuya 2番Aメロに〈水しぶきに染まったシャツが 風でなびくから 何にでもなれる気がする〉という歌詞があって、個人的に夏の素晴らしさってそこに込められているなと思っていて。何かわからない期待感というか、理由はないけど夏だから何かできそうとか。この歌詞も脈絡はないけれど、夏ってそういうことだなと思っていて。全体的な歌詞としても、そのあたりを詰め込みたかったという思いはあります。
――この一節はfuyaさんらしい表現ですよね。
andy 夏の曲で勢いがあるので、ドラムは勢いを殺さないように叩きました。あとサビでは、夏空みたいに広がる感じをイメージしながら叩きました。
ryosuke 明るくてポップな曲なんですけど、ロングトーンのフレーズはかなり歪ませてます。そのロングトーンをイントロとアウトロとサビ裏にも入れました。そこは自分の家でめちゃくちゃ考えたというか、この曲のギターのフレーズは作り込んだ気がします。
hiro この曲はこれまでで一番苦戦しましたね。何回も“fuyaさん!何て曲を書いてくれるんだ!”と思う瞬間がありました(笑)。fuyaさん節が炸裂していて、キーも普段より高いのと、こういうアップテンポの曲をバンドで歌うのが初めてだったので、リズム感の取り方からすべてが難しかったです。初めてレコーディング前日に一人でスタジオに入って練習して、スタジオで半泣きになりながらディレクターに電話して、“歌えないかもしれないです”って(笑)。fuyaさんにも連絡したんですよ。そしたら他人事みたいに“頑張ってね”って感じで(笑)。でも、最終的にはレコーディングをする中で答えが見つかりました。本当に数をこなして、何回も歌って“良かった部分”を繰り返して覚えていきました。
fuya ベースに関しては裏方に徹するような形で、シンプルに調整してみました。楽器はryosukeも頑張ってくれました。特にサビ裏のギターがすごくいいんです。疾走感のポイントになっています。
――高校野球神奈川県大会のニュースのテーマソングにも選ばれました。多くの人に聴いてもらいたい楽曲ですね。
fuya そうですね。本当にいいきっかけを与えてくださって大変光栄です。
今は全員が作家になって曲を作り強い曲を作ることに焦点を当てている
――さて、Roomaniaとしてのバンドとしての目標は何でしょう。
andy 毎回、レコーディングをする中で叩いてて楽しくなっちゃうんです。レコーディングするたびにどんどんライブをしたい気持ちも高まって、今回の「夏空」で勢いのある曲を叩く中、これを4人で合わせたらどんなに楽しいのかなって、ワクワクがすごく溢れ出てしまって。なかなか難しい状況下ですが、いつかそれを実現したいです。それが今の目標です。
ryosuke 10月からリリースをしてMVを出してメディアに取り上げていただいて、リリースをするたびに聴いてくれる人が増えているなと実感していて続けてきて良かったなと。もっとたくさんのお客さんに届いたらいいなと思っています。
fuya 聴いてくれる人が増えている中、自分に何ができるのかを考えるのが、答えが中々出ず苦しいこともあるけど楽しいので、もっと精進していけたらなと日々思っています。これからも、おごらず焦らずやっていきたいです。
hiro 「神奈川大会高校野球ニュース」が大きなきっかけとなって、たくさんの方に見つけてもらえるのが一番近い目標かな。オンライン上でやりとりしてオンライン上で発表(配信)をしているので、ファンの方って何がいいと思って聴いてくれているんだろうとか、それが自然と私たちの目や耳に入ってくるくらい広まればいいなと思っています。
ryosuke 『雨に唄えば』と『夏空』で、これまでと比べて楽曲もレベルアップできたように思います。
どう表現すれば聞いてくれる方に伝わりやすくなるのか、Roomaniaとして発信する強みって何だろう?と最近はメンバーでよく話し合いながら制作しています。
新曲も完成しつつあるので期待していただけると嬉しいです。
【プロフィール】
小・中学校の同級生であるryosuke(Gt)とandy (Dr) 、ryosukeの大学の先輩であったfuya(Ba)を中心に、2018年12月に結成された山陰発のギターポップバンド。2020年3月、FM山陰主催の第14回「あまばん」にて準グランプリを獲得。2020年3月、1st EP「エントランス」をリリース。2020年6月、新ボーカルとしてhiroが加入。2020年10月に「akaneiro EP」を配信リリース。andyと大学時代に同じサークルだった、Official髭男dismの楢崎誠のラジオ番組で「ガーデニア」がオンエアされ注目が集まる。
Roomania HP:https://roomania-official.themedia.jp/
【Information】
DIGITAL RELEASE
『雨に唄えば』 2021.6.12配信開始
『夏空』 2021.7.3 配信開始
Interview:溝口元海
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