バンドでオリジナル曲を作ろう!【後編】【Go!Go! GUITAR プレイバック】


「バンドでオリジナル曲なんてまだ無理だよね…」と諦めているアナタ! そんなことはないのだ! 特にバンドをやっているなら、ちょっとした手順とコツを覚えるだけでオリジナル曲作りをはじめられるのだ!

解説/安保 亮

オリジナル曲を作ろう前編(1)

EX-3は、様々な有名曲/ヒット曲で使われている定番コード進行だ。これらのコード進行は、1種類のコード進行につき洋邦問わず数曲の有名曲を挙げられるほど活用されている。恐らく幾つかのコード進行は、プレイしているうちに「あ! あの曲だ!」と思いつくことだろう。

その活用されている曲は、1種類のコード進行でもバラードだったりポップス調だったり、ロック系だったりアップテンポだったりと、あらゆるジャンルと曲調に渡っている。つまり、コード進行そのものと同時に「バンドでどんな風にプレイするか?」も重要なのだ。ビギナーバンドは、まず自分達の得意なテンポ&リズムで全部のコード進行をプレイしてみよう。演奏経験豊富なバンドは、これまでにプレイしてきた曲の中から、テンポ/リズムの異なるパターンでも演奏してみて欲しい。恐らくそれだけで「お! この感じ良いね!」「このまま曲を作ろう!」という候補が幾つも上がってくるはずだ。

EX-3も含めて、ここで紹介する例は全てキー=Cに統一している。実際に作曲を行う時には、ボーカリストが最も歌いやすく、音域・声質が活かせるように、これらのコード進行を自由なキーに平行移動(移調)して作曲しよう。もちろん、先にメロディーを作ってから移調しても構わないが、少なくとも1度はこのままキー=Cでプレイして欲しい。すると、「G はCに行く」「FもCに」などコード進行から音楽の法則を身に付けられるのだ。

 

オリジナル曲を作ろう前編(2)

 

オリジナル曲を作ろう前編(3)
 

「音域は狭いし歌は苦手で…」という人も少なくないが、実はそんな人にこそバンド作曲法の才能を秘めているのだ。まず歌が苦手な人は、正しい音程の取り方をチェックしよう。高めの音程を声に出したい時は、コードを弾いた後に狙う音程をギターで弾いてコードと狙う音程を確認しよう。そして音程が外れても気にしないで適当に「アー」と声を長く延ばし、狙う音程に向かってあげていこう(図1)。高くない音程を狙うときは、声の高さを適当に上げ下げしながら目的の音程を探そう(図2)。そこそこ音程を取れるなら、1つのコードに対していろいろな音程を歌ってみよう(図3)。この時、多少ズレて「ヘタクソ」な感じになっても、メンバーが「大体、その音程だよね」とわかる範囲なら作曲作業には全く支障がない。歌が苦手な人が作曲するメリットは「音楽的に間違った音程が歌えない」こと。コードにあっていない音程が取れず、逆に、間違って出した音程がたまたま音楽的に正解になるケースもある。これぞ「歌が苦手=才能」なのだ。

 オリジナル曲を作ろう前編(5)

 


オリジナル曲を作ろう前編(6)
 

定番コード進行はEX-3以外にも、バンドや個人で過去に演奏したことのある曲のコード進行を参考にバリエーションを増やすと良いだろう。ただこの時もコード進行のキーを一旦Cメジャー(またはAマイナー)に移調して、他のコード進行と比べてみることが大切だ。

さて、まずはAメロのコード進行を選び、バンド演奏してみる。もちろんこの時同時に「ラララー」と思い浮かんだメロディーを歌ってみるのがベストだが、ボーカリスト以外は困難なことも多い。そこでお勧めなのが、コード進行をバンドでプレイする時に、スマホやハンディレコーダーで録音しておくのだ。それをPAに接続してメンバー全員で聴きながら、各自がメロディーを作ってみる。そしてさらに、その歌っている状態をスマホ/ハンディレコーダーで録音する。これなら「あ! さっきベースが歌ったメロディー良いんじゃない?」「え? どんなメロディーだったっけ?…」という悲しいケースを防止できる。また、常に録音を怠らなければ、メロディーが決まった時にもいちいち五線譜にメロディーを書いたり、また五線譜に書く時に間違った音程/リズムで記入したり…といった手間やトラブルを避けて、効率良くどんどん作曲を進めることができるわけだ。


オリジナル曲を作ろう前編(7)
 

さて、「コード進行に合わせて歌う」時、「目安となる音程が全く見当たらない…」ということはまず無いはず。迷ったときは、1つのコードを鳴らしながら44ページ図1~3の要領で音程を探してみよう。例えばキーCメジャーでコードがCの時に歌で音を伸ばした場合、コードをよく聴けば聴くほど歌の音程が正確になってくる音(=音楽的に正しい)は、概ねC音(ド)>G音>(ソ)>E音(ミ)の順で候補に挙がるはずだ。これらの音はコードを構成するコードトーンなので当然だ。作曲ビギナーはまずはこれらの音からスタートしてメロディーをイメージする練習をはじめよう。

コードトーンからメロディーをイメージするのに慣れたら(または飽きるほどトライしたら)、コードトーン以外に「歌える音程」が無いか? 探してみよう。闇雲に探す方法もあるが、もっと簡単なのは「ドレミファ…」の音階(=Cメジャースケール)の音を順番に試してみるのだ。既に「ドミソ」は試しているので、その他の「レファラシ」が候補となる。これらの音程をコードを聴きながらポンと正確に出すには少々慣れが必要なので、最初は楽器で目的の音を鳴らして、その後声で試してみよう。結果は図4のように、「ファ」以外はOKで、厳密にはさらに2種類の音程も使えるのだ。

オリジナル曲を作ろう前編(8)
 

作曲ビギナーは上記の方法で、まずメロディーのスタート音を決めよう。次に1つのコードの中でどのように音を動かすか? を考えよう。本来はコードをよく聴いて、頭の中にイメージできたメロディーをポンと出すのがベターだが、ビギナーはなかなか上手くいかないものなので「次の音はどこに行くか?」を考えてみよう。その答えは超簡単で「動かないで同じ音か? 上がるか? 下がるか?」選択肢は3つだけだ。しかし実際には「上がる/下がるなら何の音へ?」が問題となる。

その第一候補は「コードトーン」で、第二候補は「Cメジャースケールの音でスタート音の隣の音(前述のようにキーCメジャーに限定している)」だ。この2番目の音に続く3番目の音も選択肢は「同じ/上がる/下がる」の3つで、第一、第二候補も同じだ。もちろん「上がる/下がる」時に「コードトーン/隣の音」以外を使えることもあるが、それは今後の課題としておこう。

できれば各コード毎に1音ではなく「数音のメロディー」をイメージして曲作りを進めるようにしながら、煮詰まったり迷ったりした時のために、このパズル的な方法を覚えておくと良いだろう。オリジナル曲作りでもう1つ大切なのは、「多少気に入らなくても変でもドンドン進める」ことだ。特にバンドでの作曲には作業を淀みなく進めてみると新しい発見があるゾ!


オリジナル曲を作ろう前編(9)

 


 

■INFORMATION
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オリジナル曲を作ろう前編(8)

発行 ヤマハミュージックメディア 
1,800円+税
著・安保 亮

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【目次】
・準備と基礎知識
・練習スタジオでいきなり作曲開始!
・テンポとリズムを進化させよう
・コードのパターンを増やそう
・メロディを広げよう
・さまざまなジャンルの曲を作ろう
・曲の良し悪しはアレンジ次第
 

(Go!Go! GUITAR 2016年10月号に掲載した内容を再編集したものです)

 


 

Edit:溝口元海