フレーズが美味しくなる!!チョイ足しアコギレシピ【Go!Go! GUITAR プレイバック】


アコギでコードストロークやアルペジオなどを弾いていて、「なんだか少し物足りないなぁ~」と思ったことはないかな? 今回はそんな物足りなさを解消するため、アコギのフレーズにちょっと足すだけで印象をガラッと変えられる、そんなアイデアを紹介するぞ!

解説/松居悠太

フレーズが美味しくなる!! チョイ足しアコギレシピ(1)

 

単純なコードサウンドに深みと広がりを与える


アコギのフレーズにちょい足しと言っても、具体的にどんなことをするの?と疑問に思う人もいるだろう。まずはわかりやすくコードの音のちょい足しレシピを紹介しよう。「ド・ミ・ソ」の3つの音でできているCコードは、ギターではいろいろな押さえ方があるけど、ここでは図(a)のような押さえ方で鳴らしてみよう。基本中の基本なだけに、安定感はあるものの響きがやや単純に感じないだろうか? そんなときは図(b)のように1・2弦を開放にしてみよう。これだけでも印象はずいぶん変わるのがわかるだろう。
同様に、譜例のようなコード進行のときも、1・2弦をずっと開放で弾いてみると、ガラリと印象が変わってサウンドの広がりを感じることができるハズ。
このように、ちょっとしたことでもアコギのフレーズに変化をつけることができるんだ。そういったアイデアを次のページから難易度別にいろいろと紹介していこう。

 

フレーズが美味しくなる!! チョイ足しアコギレシピ(2)

 

フレーズが美味しくなる!! チョイ足しアコギレシピ(3)

 

フレーズが美味しくなる!! チョイ足しアコギレシピ(4)

 

ちょっと変化をつけたストロークでオシャレサウンド


ストロークの弾き始めに、ダウンピッキングで「ジャラララーン」と緩く弾く人は多いかもしれないが、それをあえてアップストロークで行なうと雰囲気が違って鮮やかなサウンドを出すことができる。また、少し早めに弾き出して、フレーズの小節頭で弾き終わるようにするとさらに効果的なので、譜例を参考にして頂きたい。
ただし、曲中でのやり過ぎには注意が必要だ。連発するとしつこい感じがするので、たまにさりげなく使うようにしてみよう。慣れてきたら、ギターのブリッジ近くでもやってみよう。少し硬めのサウンドになりインパクトも出すことができるぞ。

 

フレーズが美味しくなる!! チョイ足しアコギレシピ(5)

 

フレーズが美味しくなる!! チョイ足しアコギレシピ(6)

 

抑え気味のストロークでメリハリをつける


ミュートバッキングは、名前のとおり音をミュートしながら弾く奏法で、左手はコードなどを押さえ、右手の側面をブリッジ付近の弦上に触れる「ブリッジミュート」を使って弾くことで、“ズンズン”というサウンドが得られる。
まずはミュートする弦を6弦から4弦の3本を目途に狙って弾いてみよう。ただし、これはあくまで目安なので、6弦と5弦だけでもいいし6弦から3弦でも良い。曲ごと、あるいは好みなどによって使い分けよう。また、CコードやDコードのような6弦を使わず5弦から弾くコードの際は、5弦から弾く本数を同じように絞って弾いてみよう。
一定の8ビート等をずっとミュートバッキングで弾いたり、ストロークと混ぜて弾くのが定番の使い方だが、譜例のような細かいストロークをあえて全部ミュートしながら弾くと新しい雰囲気と発見があるかもしれないので、是非試してみてほしい。ここではアップピッキングが難しくなるが、右手が力まないようにしよう。
ミュートバッキングの練習として、まずは弦を押さえながら弾いても若干サスティーン(音の伸び)が残るように弾いてみよう。サスティーンがあまり残らない場合は、さらにブリッジ側に右手を寄せて試してみよう。

 

フレーズが美味しくなる!! チョイ足しアコギレシピ(7)

 

フレーズが美味しくなる!! チョイ足しアコギレシピ(8)
 

フレーズが美味しくなる!! チョイ足しアコギレシピ(9)


アルペジオをより繊細でテクニカルに奏でる


ハンマリングオン(記号:H)は、1本の弦上で連続した音を弾く際に、2音目以降をピッキングせず弦を叩くように押さえて音を出す。プリングオフ(記号:P)も同じように、2音目以降をピッキングせず指先で弦をひっかくように離して音を出す奏法だ。これらをアルペジオのフレーズに混ぜることで、16分音符の速い動きや細かい音使いのフレーズを、あまりピッキングせずに左手だけの動きで簡単に加えることが可能だ。また、ピッキングを強めにしたあとハンマリングやプリングをすると、よりそのフレーズが強調され目立たせることができる。譜例は、各コードでフォームを動かさなくても演奏可能なフレーズだ。1小節4拍目では、1弦開放をピッキング後、ハンマリングとプリングを連続して行なう。また2小節3拍目では、それを2本の弦同時に行なっているので、よりトリッキーに聴こえる。最初は両方ともしっかり音が出せるように練習しよう。慣れてくると左手の力が脱力した状態でも簡単にできるようになるぞ。

 

フレーズが美味しくなる!! チョイ足しアコギレシピ(10)

 

 

フレーズが美味しくなる!! チョイ足しアコギレシピ(11)


バレーコードとローコードでブラッシングを使い分ける


ブラッシングとは、左手で全ての弦に軽く触れてミュートした状態でストロークし、“チャカチャカ”というリズミカルな音を出す奏法だ。①のように弦をまとめて押さえることの多いバレーコードと混ぜて使う場合は、押さえている左手の力を抜いて弦に触れたまま浮かせた状態にするだけでミュートをすることができるのでお手軽に使いやすい。
それにくらべて②のようなローコードの場合は、押弦と開放弦(どこも押さえない)の組み合わせなので、そこから一瞬で全弦をミュート状態にするのは慣れないと難しい。そこで、ローコードにオススメなのが右手でブラッシングする方法だ。左手はコードを押さえたままにして、ピッキングする瞬間に右手の側面を同時に弦に当ててミュートする。このとき、さらに弦を強く押さえつけるようにすると、弦がフレットにぶつかり“カチャ”というパーカッシブなサウンドにもなるので試してみよう。押さえつける位置をネック側にするとより鳴らしやすくなる。連続して使うのは難しいが譜例のようにリズミカルに定期的に使うことができる。


フレーズが美味しくなる!! チョイ足しアコギレシピ(12)

 

フレーズが美味しくなる!! チョイ足しアコギレシピ(13)

 

フレーズが美味しくなる!! チョイ足しアコギレシピ(14)

 

弦を叩いて見た目もサウンドも派手に


ナチュラルハーモニクスは、左手でハーモニクスポイント(5、7、12フレット等)のフレット真上で弦に軽く触れ、右手でピッキングすることで鳴らすが、タッピングハーモニクスは、ハーモニクスポイントを右手中指、もしくは人差指で素早く叩いて鳴らす奏法。フレット真上をしっかり叩くことと、叩いた瞬間に極力弦から素早く離すことに気をつけよう。
最初はどうしても強く叩きすぎてしまって指が痛くなることがあるので注意して練習しないといけないが、慣れてくると力を抜いても鳴らせるようになるので、脱力してできるようになるまで練習してみよう。
ここではローコードを押さえた状態で叩くので、実際ハーモニクスが鳴っているのは左手で押さえていない開放弦(例:CM7の場合、1~3弦)で、押さえている弦はハーモニクスではなく、叩いて通常の音を出している状態になっている。つまり、開放弦を多く含むコードほど威力を発揮しやすい奏法だ。この奏法は押尾コータロー氏がよく使用していることでも有名なので、是非チャレンジしてみよう。
今回はよく使われる12フレットと19フレットの練習で、特に19フレットは、サウンドホールに近くアルペジオ等との併用時に叩きやすいのでオススメだ。

 

フレーズが美味しくなる!! チョイ足しアコギレシピ(15)

 

フレーズが美味しくなる!! チョイ足しアコギレシピ(16)

 

パンチのあるアタック音でフレーズにインパクトを


奏法名が通称「デコピン」というなんとも微妙(?)な名前だが、見た目のインパクトはハンパない! 弦に向かってデコピンをすることで、爪の表面が弦に当たるときに“パチン”という音を出すことによってフレーズを印象付けることができる奏法だ。
デコピンの仕方は人差指の場合と中指でする場合とがあるので、どちらも試してみて好みで選ぼう。今回は2~3弦あたりの場合と、4~5弦付近を狙うフレーズで紹介しているが、デコピンする弦によって音の印象もかなり変わるので、他の弦でも試してみよう。もし、あまり“パチン”という音が鳴らない場合や鈍い音しか出ないときは、デコピンした瞬間に爪の表面を弦から素早く離すように意識しよう。
主にフィンガーピッキングでアルペジオのフレーズに混ぜると効果的。慣れればいろんなフレーズに盛り込めるのと、やはりテクニカルに聴こえるのがオイシイところだ。

 

フレーズが美味しくなる!! チョイ足しアコギレシピ(17)

 

 


 

■INFORMATION

絶対にわかる!弾けるハイテクアコギプレイ(動画対応版)
 

フレーズが美味しくなる!! チョイ足しアコギレシピ(18)


 著者プロフィール 

松居悠太 (まつい・ゆうた)

15歳からエレキギターを始め、メタル、フュージョンからPOPSまでさまざまなジャンルをこなし、アコースティックギターでは特殊奏法を身に付ける。教則本、サポート、講師、デモンストレーターとして活動中。

 

(Go!Go! GUITAR 2018年10月号に掲載した内容を再編集したものです)

 


 

Edit:溝口元海