Vol.1 8cmシングルの誕生と、歴史と、記録と【8cmシングル時代のJ-POP ~短冊CDが起こしたムーブメント~】


ミリオンセラーといわれる、売上枚数が100万枚を超えたCDが連発していた1990年代、シングルCDのほぼすべてが「8cmシングル」としてリリースされていました。
今回スタートするこの連載では、今も8cmシングルを約4,500枚所有し、フジテレビ系列で放送されたクイズ番組『超逆境クイズバトル!! 99人の壁』のジャンル「90年代J-POP」でグランドスラムを達成した、イントロマエストロの藤田太郎が当時の時代背景や曲について、イントロなど様々な切り口で紹介していきます。
第1回目は、8cmシングルの誕生から、ムーブメントを起こしてきた歴史や記録をお届けします。どうぞ、よろしくお願いします。

そもそも「8cmシングル」って何?

 

皆さんは8cmシングルと言われて、どんな「モノ」なのか思い浮かべることができますか?8cmシングルは、「CD」と言われて思い浮かぶモノよりもコンパクトでかわいい大きさの直径8cmのCDです。ケースが長方形だったのでその形から「短冊シングル」とも呼ばれていました。この説明を聞いて「モノ」を想像できる人は、30代より上の世代に限定されると思います。

私は、8cmシングルを見た時の反応が世代によって大きく異なる光景をリアルに目撃したことがあります。20代の芸人さんがMCを務めるラジオ番組で8cmシングルのヒット曲を紹介する企画があり、その番組に出演したことがありました。8cmシングルを持って行った方が懐かしがってもらえると思い、50~60枚ピックアップしてラジオ局へ行ったのですが、打ち合わせで8cmシングルを見た20代の芸人さんから出た言葉は

「はじめて見ました!これCDなんですか!?」

このリアクションは、全くもって正しい。何も間違っていないと思います。その後、私(1979年生まれの42歳)よりも年が10才くらい上の50代スタッフの方が8cmシングルを見ておっしゃったのが

「この曲が発売された時、ラジオで宣伝を手伝ったんだよな~」

温度感でいうと、盛り上がってはいるのですが、テンションの上がり度は若干低目な感じ。このリアクションも正しいと思います。そして最後に、私とほぼ同世代のスタッフの方が言ったのが

「懐かしい!この曲、自分も発売日に買いましたよ!」
「真ん中でパキッと割るの意味わかんなかったですよね!」
「長方形のプラスチックケースを購入して、それにハメて保管してました!」
「縦型デスクトップパソコンで聴こうとして、中で詰まらせたこと何度もありました!」

と、あるあるネタがとめどなく出てきて、番組そっちのけでビックリするほどの大盛り上がり!それもそのはず、8cmシングルが世の中に登場してから見かけなくなるまでの期間は1988年から2001年までの13年間。その後、全く無くなってしまったわけではないのですが、13年という短い期間に8cmシングルを購入していた人しか「懐かしい」という感覚にならない「モノ」なのです。しかし、この13年間にはミリオンセラーといわれる、売上枚数100万枚を超えるヒット曲が連発していた、いわゆるCDメガヒット時代の10年間がすべて詰め込まれています。

みんなが水曜日にCDショップへ行き、長方形の8㎝シングルでリリースされた新曲を購入し、バッグに入れたポータブルCDや、録音したカセットテープ、MDが再生できるプレーヤーで聴いて、覚えた曲をカラオケで歌うという文化が根付いていた頃。今よりも音楽がエンターテイメントの中心にいたといっても過言ではないと思います。毎週、シングルチャートの上位にランクインする曲をチェックすることが「当たり前」で、それがとても面白かった!世の中がヒット曲に熱狂していた時代に8cmシングルは登場し、13年という短い期間で過ぎ去っていったのです。

 

8cmシングル時代のJ-POP(1)

短冊といわれた8cmシングルはこれ!
左:CD盤面、プラスチック部分が半分に割れるような仕様になっていました。
右:外側のジャケット写真。

 

 

なぜ「8cmシングル」は誕生したのか?

 

80年代中盤まで、音楽メディアはアナログレコードが主流でしたが、82年に発売された「CD」の需要が徐々に高まっていき、1986年には販売枚数でCDがレコードを上回り、よりCDへの移行が加速していきます。そんな中、消費者がパッと見た一瞬でシングルとアルバムを区別がつき、置き場所を取らないという理由から(※諸説あります)1988年2月21日に、8cmシングルが誕生します。レコード店がシングルレコードを販売するために並べていた棚に、8cmシングルはちょうど2枚並べて置くことができる形だったことは計算されていたことかもしれません。レコード店は、陳列で面倒くさい作業が加わることが一切なく2倍の枚数を置くことができ、アルバムとの見た目の違いも一目瞭然。
良いこと尽くめの8cmシングルは、販売開始から3か月後にはシングルレコードの生産枚数を超え、急速に世の中に浸透していきます。1992年には年間生産枚数1億枚を突破、ピークは97年の1億6782万枚。8cmシングルの成長が90年代J-POPそのものだったといっても過言ではないことが数字からも読み取れます。

 

8cmシングル時代のJ-POP(2)

左:とんねるず「雨の西麻布」シングルレコード 右:「がじゃいも」と「一番偉い人へ」8cmCDシングル。
8cmCD2枚とシングルレコードが、ほぼ同じ形のため一緒の棚に並べることができた。

 

最初に発売された「8cmシングル」

 

これが第一号!という決定的な1枚があるわけではないのですが、各レコード会社からリリースされた日付が1988年2月21日だった8cmシングルが最初といわれています。わかりやすい曲を1曲ピックアップするならば、ビクター音楽産業株式会社(現在はビクターエンタテインメント)から発売された桑田佳祐の「悲しい気持ち(JUST A MAN IN LOVE)」。
「悲しい気持ち(JUST A MAN IN LOVE)」は、先にレコードとして1987年10月6日に発売された曲。新曲ではなく、すでに発売から4か月経っていた桑田佳祐の楽曲を8㎝シングルの初リリース曲としたことは、8㎝シングルが新しい音楽メディアとして期待されていたからだと思います。イントロから美しくポップで、何年経っても色褪せないエヴァーグリーンなサウンドで彩られるこの曲が、語り継がれていく最初の8cmシングルで発売されたことは、必然だったのかもしれません。ビクターエンタテインメントは2019年にサカナクションが「忘れられないの/モス」を8cmシングルとして発売。この曲は、2021年現在で一番新しく発売された8cmシングル。一つの時代を作った音楽メディアは、現在も最初に発売したレコード会社に愛され、受け継がれています。


8cmシングル時代のJ-POP(3)

 

日本で一番売れた「8cmシングル」は?

 

日本で一番売れた8cmシングル、それは1999年3月3日発売の「だんご3兄弟」です。「だんご3兄弟」は、NHK教育テレビ『おかあさんといっしょ』のコーナー「今月の歌」に起用され、イントロからピアノとアコーディオンが鋭いスタッカートで重なり合うタンゴアレンジが印象的なこの曲は、番組オンエア後、すぐに子供たちの間で人気となり、ピーク時にはNHKに1日250本の問い合わせ電話が殺到したとのこと。この反響を踏まえ、発売元のポニーキャニオンは、3、4万枚が一般的な生産数といわれていたキッズ向けCDの常識を打ち破り、破格の初回80万枚生産で発売。結果は大成功。「だんご3兄弟」は、発売後すぐに売上枚数291万のダブルミリオンを記録。累計売上枚数453万枚という記録は今も破られていません。日本で一番売れたレコード「およげ!たいやきくん」も『ひらけ!ポンキッキ』から誕生した曲ですし、日本で一番売れた8cmシングルも、奇しくも日本で一番売れたレコードと同じく、キッズ向け番組から生まれた曲でした。

 

8cmシングル時代のJ-POP(4)

 

ここまで読んでいただきありがとうございました。第1回目は8cmシングルの誕生と歴史と記録を紹介しました。もっと砕けた感じで進めようと思っていたのですが、1回目くらいはしっかりと(笑)。8cmシングルとは何なのかを伝えるべきと判断し、参考資料や数字で説明しました。2回目以降はイントロという切り口で、ジャケ写やカルチャーに触れながら「曲」にフォーカスし8cmシングルを紹介していきます。「8cmシングルって音楽メディアがあったことを忘れないで」という気持ちではなく、「8cmシングルって音楽メディアでこんな素敵な曲があったこと、知っていた方が面白いよ!」を伝えていきますので、次回以降もよろしくお願いします!

 


 

Text&Photo:藤田太郎
※画像は全て著者私物