各種競技で実力診断 ゴゴギンピック2021【Go!Go! GUITAR プレイバック】


4年に一度のオリンピックイヤーに合わせ、本誌でもギタリストによるギタリストのためのギタリストの祭典、“ゴゴギンピック”を開催しちゃうのだ! ギターを始めてまだ間もないという超ビギナーから、腕に自信アリという中級者まで、自分の実力が一体どんなレベルなのか、様々な競技を通して、自己判定してみよう。クリアできたフレーズの数によってメダルの色が決まるので、ピッカピカの金メダルを目標に、チャレンジしてほしい!

解説/浦田泰宏

各種競技で実力診断 ゴゴギンピック2021(1)

 

 ゴゴギンピックは、下のような6種目の競技で実力を自己判定する。各競技の実力判定フレーズである“EX”には、演奏テンポが指定してあるので、そのテンポで正しく弾けたと思ったら、チェックボックスにチェックを入れよう。すぐには無理そうなら、自分で納得できるまで練習してからトライしよう。
 なお、指定されたテンポで演奏するためには、メトロノームが必要だ。スマホのアプリやWEBサイトのメトロノームでもOK。メトロノームはスポーツにおけるストップウォッチと同じような必須アイテムなので、今まで使ったことがなかったという人は、この機会にぜひ使い方を覚えてほしい。

 

各種競技で実力診断 ゴゴギンピック2021(2)
 


各種競技で実力診断 ゴゴギンピック2021(3)

 

 水泳競技の花形である競泳にも自由形、バタフライ、平泳ぎなど、いろいろな種目がある。どれも勝因を握るのが、ムダがなく美しいフォームと、スタートやターンのタイミングだ。ギターを弾く上でも重要になる、フォームの合理性とタイミングの精度を、メカニカルな運指練習フレーズで自己判定してみよう。

 

各種競技で実力診断 ゴゴギンピック2021(4)

 

 解説 
 

 EX-1は「人差指—中指—薬指—小指」と同弦上で1フレットずつ押さえるフィンガリングの基礎練習フレーズのバリエーションで、となり合う弦を1音ずつ交互に押さえて弾く。左手のフィンガリングだけでなく、ピッキングの課題をプラスしたフレーズだ。
 押さえ方のポイントは、図1のように「小指で押さえきるまで、他の指も押さえたままにしておく」ということ。そうしないと、「フレット間隔に合わせて指が開けているかどうか」という正しいフォームの判断ができないのだ。
 人差指から小指まで押さえ終わった時点でいったんリセットして全部の指を弦から離し、次の弦を人差指から順番に押さえていく。6弦からスタートして1弦まで上行したら、6弦まで下行するときは押さえる弦の順番が上行形の逆になる。指を必要以上にバタバタと大きく動かさずに、最小限の指使いで弦を押さえたり離したりしよう。

 

各種競技で実力診断 ゴゴギンピック2021(5)

 

 

各種競技で実力診断 ゴゴギンピック2021(6)

 

 鉄棒、平行棒、つり輪、床など、それぞれ個性的な技を競い合う体操競技だが、どの種目でも重要になるのは、しなやかな体の動きと、姿勢をしっかり支えるための筋力だ。ここではそういった柔軟性と強靱さを併せてチェックするために、ハンマリングとプリングの連続フレーズにチャレンジしてみよう!

 

各種競技で実力診断 ゴゴギンピック2021(7)

 

 解説 

 

 1弦上に3音ずつ配置したCメジャースケールの音を、上行時はハンマリング、下行時はプリングで連結した3連符のフレーズだ。まずは左手で押さえるポジショニングを覚えよう。6弦と5弦、4弦と3弦、2弦と1弦と、弦2本ずつフレット間隔が同じなので、音の位置を覚えるのはラクなはず。気をつけないといけないのが、1〜2弦の“ストレッチフィンガリング(指を広げて離れたフレットを押さえること)”だ。指を弦と平行に近くして、指先をフレットの近くまでしっかり伸ばすようにして、各ポジションをしっかりと押さえよう。
 前半のハンマリングは、指にイキオイをつけるようにして、ピッキングした音に負けない、しっかりした音を出すことが重要。後半のプリングは、あらかじめ3本指で同時に各フレットを押さえてから、1回ずつプリングする。それを3連符のリズムに乗せることが課題だ。指定されたテンポではすぐに弾けない場合は、もっとゆっくりしたテンポから練習を始めよう。

 

各種競技で実力診断 ゴゴギンピック2021(8)

 

 いろいろな球技の中でも、もっともスピード感とダイナミックな躍動感に満ちている種目がサッカーだ。針の目を通すようなキラーパスからの弾丸シュートに心を震わせた経験を持つKIDS達も少なくないだろう。というわけでここでは、サッカーでもたいせつなポジションチェンジを駆使したスピーディーな音使いを課題に、実力をチェックしてみよう。

 

各種競技で実力診断 ゴゴギンピック2021(9)

 

 解説 

 

 EX-3は、ペンタトニックスケールをポジション移動しながら弾く、定番的な音使いのフレーズだ。1〜2小節目は図2(a)、と3〜4小節目は図2(b)のポジションを使用。どちらも弦2本ずつに分けて捉えると、音の場所がわかりやすいはずだ。ポジション移動のポイントとなるスライドは、音が消えない程度に左手の力を抜き、ヒジから先をネックに沿って移動させるのがコツ。16分音符のリズムに乗せた正確なプレイをこころがけよう。

 

各種競技で実力診断 ゴゴギンピック2021(10)

 

各種競技で実力診断 ゴゴギンピック2021(11)


 

 サッカーと並ぶ球技の花形がバレーボールだ。サーブ、レシーブ、スパイクなど、いずれも俊敏な動作と並んで繊細なボールコントロールの技術がモノを言う。そのワザをバレーコードのカッティングに応用! コードとブラッシングを的確に使い分ける俊敏性と、ノイズを出さない繊細なミュートのタッチをチェックしよう。

 

各種競技で実力診断 ゴゴギンピック2021(12)

 

 解説 

 

 バレーコードの基本形4タイプを16分音符のリズムでストロークしながら、拍内の4個の16分音符のうちの1個分だけコードを押さえ、それ以外の音はミュートした状態でストロークする(ブラッシングになる)。ポイントは1小節ずつコードチェンジするのと同時に、コードを押さえるタイミングが16分音符1個分後ろにずれるということだ。つまり1小節目は「ズチャチャチャ」(「ズ」がコードを押さえた音で「チャ」がブラッシング)だとすると、2小節目は「チャズチャチャ」、3小節目は「チャチャズチャ」、4小節目は「チャチャチャズ」となる。右手はずっと16分音符のストロークを保ちながら、それに合わせて弦を押さえたりミュートしたりする、左手のタイミングをつかもう。

 

各種競技で実力診断 ゴゴギンピック2021(13)


 

 陸上競技のなかでも特に注目を集めるのが、「世界最速のスプリンター」を決定する100メートル走だ。スタートからゴールまでいっきに駆け抜けるその瞬発力をギターに置き換たのが、ギタリストなら誰でも憧れる「速弾き」である。というわけでここでは、ハンマリング、プリングやエコノミーピッキングを駆使した、速弾きフレーズにトライしてもらおう。

 

各種競技で実力診断 ゴゴギンピック2021(14)

 

 解説 

 

 EX-5は“Eフリジアンドミナントスケール”という、ビギナーには耳慣れないだろうけど、メタル系ジャンルでは超定番なスケールの使用フレーズだ。楽譜だけ見てもイマイチどんな音使いなのかわからない人も、「あたたたずっきゅん!」な感じのフレーズだと言えばわかってもらえることと思うw あくまでフンイキとして。
 奏法のポイントは、まずハンマリング&プリングを正確にすること。次に1〜2小節目の「3弦ダウン→2弦ダウン」というエコノミー(スウィープ)ピッキングのタイミングを16分音符のリズムに合わせるという点。ピックを降ろすスピードを調節して、弾いた音をテンポに乗せよう。
 3小節目は、1拍目のスライドと、2拍目での3弦への移動という2段階のタイミングで左手を移動させる。1〜2小節目は1拍半フレーズ(16分音符6個単位の音使いのくり返し)にもなっているので、3小節目へ進むタイミングをしっかり把握して弾こう。

 

各種競技で実力診断 ゴゴギンピック2021(15)

 

 ゴゴギンピックの最後を飾るのは、陸上競技の中でももっとも強い精神力を必要とするマラソンだ。自分との戦いでもあるこの競技では、安定した音を長く続けることを目標とする“トリル”のフレーズにトライしてもらおう。音が消えてしまったりすることがないように、しっかりとしたフィンガリングを一定時間持続できるかどうかが判定課題だ。

 

各種競技で実力診断 ゴゴギンピック2021(16)

 

 解説 

 

 1〜2小節目は3弦、3〜4小節目は4弦上で1フレットずつ離れた音と開放弦とを、ハンマリング&プリングのくり返しで持続させるフレーズだ。ただし1〜2小節目と3〜4小節目では、フィンガリングのタイミングが違うので要注意。1小節目冒頭は、人差指で3弦4フレットを押さえた状態でピッキングし、16分音符のリズムで開放にプリングするのに対して、3小節目はまず開放弦をピッキングした後、16分音符のリズムで4フレットをハンマリングする。つまり弦を押さえた音と開放の音とが、16分音符1個分逆になっているのだ。1〜2小節目は「オモテ」で弦を押さえ、3〜4小節目は「ウラ」で弦を押さえることになる。このタイミングの違いがきちんと把握できていないと、正しく弾けないので注意すること。
 指定されたテンポに合わせて2小節ずつ音を持続させるには、指のムダな動きをなくすことが不可欠だ。ハンマリングとプリングそれぞれの動作を必要最小限にして、一定のスピードを保とう。左手にムダな力が入っていると途中で疲れてしまうので、スタミナを温存しながら、1音1音しっかりした音を鳴らすことも重要。そのためには、ハンマリングを強めにすることと、プリングの際の「弦を引っかく」ような動作を、必要以上に大きくしないことがコツになる。ふつうにプリングするときよりも、若干水平に近い角度で指を離すことで、時間とエネルギーのロスを最小限に止めよう(図3)。


各種競技で実力診断 ゴゴギンピック2021(17)

 

各種競技で実力診断 ゴゴギンピック2021(18)

 

 これで今年のゴゴギンピックは全種目終了だ。各種目がクリアできたかどうかのチェック数を確かめよう。メダルを獲得できた人も、獲れなかった人も、今後一層の努力を期待したい。4年後にみんながどれだけ上達しているか、楽しみにしているぞ。それでは次回のゴゴギンピックで、また会おう!

 

各種競技で実力診断 ゴゴギンピック2021(19)

 

各種競技で実力診断 ゴゴギンピック2021(20)

 

 いろいろな奏法がバランスよくマスターできている、オールラウンドな実力の持ち主だ。こちらから提示するような課題は特にないので、自分なりの個性を磨きながら、世界基準のギタリストをめざして、さらなる進歩をめざしてほしい。

 

各種競技で実力診断 ゴゴギンピック2021(21)

 

 ベーシックなテクニックはすでに身についているので、応用力をどう伸ばしていくかが今後の課題になるはずだ。特定のテクニックで不得意なものがあるという人は、逆にその部分を集中してトレーニングすることで、苦手意識をなくしていくと、一層の成長が見込める。

 

各種競技で実力診断 ゴゴギンピック2021(22)

 

 脱ビギナーが現時点での目標だ。基本ができている部分と、まだ不確かな部分とが混在しているはずなので、自分の演奏を録音するなどして客観的に聴きながら、できていないところを見極めながら、課題をひとつひとつクリアしていこう。

 

 

(Go!Go! GUITAR 2016年10月号に掲載した内容を再編集したものです)

 


 

Edit:溝口元海