【レコードジャンキー富和】第10話「トミカズ怒りのカットづら!」

mysoundマガジン読者の皆さまにはもうお馴染み、レコードの深遠なる魅力をお伝えする【レコにまつわるエトセトラ】。その著者であるディスクユニオン新宿ロックレコードストア店長の山中明氏が、なんと今度は漫画の連載をスタート!? 得意のイラストを武器に間口はより広く、しかしディープな内容をポップにご紹介していきます。
第10話では、あのジョン・レノンの名作ライヴ盤ジャケットがごとき青空のもと、縁側でのんびり過ごしている富和。思わず気持ちよく昼寝してしまいますが、そんなところに1通のメルマガが届くや、摩訶不思議なアンテナが反応して…。
まるで夢遊病のように、セール中のレコ屋にたどり着いてしまう富和はまさに“レコードジャンキー”のかがみ!? 輸入盤レコードをよく買う人ならご存知のカット盤に怒りを燃え上がらせた結果、レコ断ちデイとはならなかった模様です(笑)。
★今回のレコードMEMO★
レア度:★★☆☆☆☆(2/6)
※カットなしの場合
今回のレコードは、英国いぶし銀シンガー・ソングライター、ラブ・ノークスが1973年にリリースした3rdアルバム『Red Pump Special』です。
米ナッシュビルで録音された本作は、彼の英国特有のウェットでスウィートな歌声と、Area code 615のメンバーを始めとした、米アーティストらによる枯れたバッキングが、レコード好きの魂を揺さぶる名品です。
そんな本作のレコードとしてのポイントは、そのサウンドと同じく、英米ミックス盤というところです。
本作の英初版は変わり種で、ジャケットは当然イギリス製なのですが、盤にイギリス製は存在せず、すべてアメリカ製となっているのです。
アメリカのアーティストがイギリスでアルバムをリリースする際に、盤はイギリスでプレスし、ジャケットはアメリカから輸入する、そんなパターンは少なくないです。
ただその逆、盤がアメリカ、ジャケがイギリスというパターンは、かなり希少なのです。ややこしいですけど。
そんなこともあって現在、中古市場で多く出回っている本作は、イギリスでは本来習慣のないはずのカット盤ばかりとなっているのです。
……って、そもそも「カット盤ってなに?」っていう方も少なくないと思いますので、少し補足しておきましょう。
カット盤と呼ばれるものの多くは、かつて新古品となったものでした。要は、新品で売れ残ったものを中古品として再販売したものなのですが、その際に新品との区別をつけるため、ジャケットに切れ込みを入れたり穴を空けたりしたのです。
また今回、富和くんも図解したように、切れ込みの種類は多種多様なのですが、特にジャケットの見栄えを大きく損なうカットは、あまり好まれません。
さらに、このカットという文化はアメリカを中心としたもので、イギリスでは基本的に行われていませんでした。そのため、今回のようなイギリス盤のカットは、レコード好きにとってはなかなか許し難いものなのです……。
本作もコダワリな方は頑張ってカットなしを探すと思いますが、見つかるかどうかは運とタイミング次第ですかね……健闘を祈ります!
<登場人物 プロフィール>
富和(とみかず)
3度の飯よりレコが好き、ナチュラル・ボーン・レコード・ジャンキー。
好きな音楽はブリティッシュ・ロック。高円寺在住。
フレディのおっちゃん
富和の一番のレコ友。
QUEENに全てを捧げる漢。
ボビー
クールに決めるレコード仕事人。
数少ない富和憧れのディガー。
キューくん
富和の同級生。
顔も趣味も度を越しているが、根は優しい富和の良き友達。基本CD党。
ヴァシュちゃん
レコード初心者なオテンバ娘。
レコ部の紅一点.。
Text&Comic:山中明(ディスクユニオン)
Edit:大浦実千