Vol.2 横ジャケ8cmシングル売上TOP10【8cmシングル時代のJ-POP ~短冊CDが起こしたムーブメント~】


ミリオンセラーといわれる、売上枚数が100万枚を超えたCDが連発していた1990年代、シングルCDのほぼすべてが「8cmシングル」としてリリースされていました。今回スタートするこの連載では、今も8cmシングルを約4,500枚所有し、フジテレビ系列で放送されたクイズ番組『超逆境クイズバトル!! 99人の壁』のジャンル「90年代J-POP」でグランドスラムを達成した、イントロマエストロの藤田太郎が当時の時代背景や曲について、イントロなど様々な切り口で紹介していきます。
第2回目は、横ジャケシングルのヒットソングを紹介していきます。どうぞ、よろしくお願いします。

「横ジャケ」は、8cmシングルにしか無い大きな武器!

 

レコードやマキシシングルと違い8cmシングルは、わかりやすく長方形型です。パノラマサイズのような、縦8.5cm、横16.5cmという形は8cmシングルの大きな特徴。
今回はこの大きな特徴を縦型ではなく横型デザインとしてジャケットが制作され、ヒットした8cmシングルの売上枚数TOP10をカウントダウンしてきます。長方形の横ジャケという、特殊なデザインでヒットした曲に共通点はあるのか!?楽曲のイントロ秒数も一緒に紹介しながら進めていきます。まずは10位から、カウントダウン!

 


第10位、サザンオールスターズ「涙のキッス」(売上枚数:154.9万枚 イントロ秒数:18秒)
 

 

8cmシングル時代のJ-POP(1)

 

第10位は、ドラマ『ずっとあなたが好きだった』の主題歌に起用されたサザンオールスターズ1992年7月18日リリースのシングル「涙のキッス」

ドラマ『ずっとあなたが好きだった』は、佐野史郎演じる「冬彦さん」の過剰な行動と、それにおびえる賀来千香子の演技が話題となり最終回の視聴率は34.1%を記録。「マザコン」、「冬彦さん」は、この年の流行語に選ばれるほどの社会現象を巻き起こしました。「涙のキッス」は意外にも、サザンオールスターズとして初のドラマ書き下ろし作品。ドラマのプロデューサー貴島誠一郎は「ドラマの結末は俳優さんも知らない。知っているのは僕と脚本家、それに桑田さんだけ、桑田さんには“平成版いとしのエリー”を、と変な注文をしてしまった」とおっしゃっていますが、その期待に見事に応え154.9万枚のミリオンヒットを記録。横ジャケのデザインは、バラを敷き詰めたメッセージカードのようなシンプルなものですが、「冬彦さん」の異常な愛情を想像させるにはピッタリ。サザンオールスターズとメンバーと小林武史が手掛けた18秒のイントロかららせつない雰囲気を感じさせてくれるミディアム・バラードナンバーが第10位でした。

 

 

第9位、trf「CRAZY GONNA CRAZY」(売上枚数:158.9万枚 イントロ秒数:46秒)


 

8cmシングル時代のJ-POP(2)

 

第9位は、小室哲哉がプロデュースしたダンス&ボーカルグループtrfの1995年1月1日元旦リリースのシングル「CRAZY GONNA CRAZY」

前作「BOY MEETS GIRL」までのシングルは縦型で、上部に『trf』のロゴが入る統一感があったのですが、このシングルで初の横ジャケ。横ジャケシングルの大きな特徴として、3人以上いるグループのメンバーが映っている写真の大きさに均一感を持たせられるという点があります。trfは「CRAZY GONNA CRAZY」の横ジャケで、メンバーが5人ということがはっきりわかるように色分けし分けられているデザインを採用。2作品前の「survival dAnce~no no cry more~」からミリオンヒットを連発していたtrfが曲はもちろん、メンバーも覚えていってください!という一つ上のレイヤーへのチャレンジを感じることができる横ジャケです。実際に「CRAZY GONNA CRAZY」は、ドラマ『我慢できない!』の主題歌に起用されたことも相乗効果となりtrfのシングルで最大の158.9万枚を記録。柔らかく暖かいデジタルサウンドが響く46秒のイントロからも自信と余裕を感じられる1曲です。

 

 

第8位、GLAY「Winter,again」(売上枚数:164.2万枚 イントロ秒数:40秒)
 

 

8cmシングル時代のJ-POP(3)

 

第8位は、R東日本「JR SKI SKI」キャンペーンソングに起用されたGLAYの1999年2月3日リリースのシングル「Winter,again」

GLAYのリーダーTAKUROは、この曲に関して「GLAYがGLAYであることの証明みたいな曲。イントロのイメージは初雪が降って、雪虫がチラチラして、あんな感じって言ったら、そういうことかって。イントロの寒い感とかが…。バンドってじゃあ何をもってしてバンドかっていうのは譜面に起こせないことを演奏できるのがバンド。と思った最初の曲」とおっしゃっています。横ジャケには雪山に横たわるメンバー4人が登場。北海道の景色を大切な人にも見せたい、という想いを伝える曲は164万枚のミリオンヒットを記録し、この年の第41回日本レコード大賞を受賞。たくさんの人に届き寒い季節になると聴きたくなる冬のスタンダードソングとなりました。

 

 

第7位、槇原敬之「どんなときも。」(売上枚数:167万枚 イントロ秒数:33秒)
 

 

8cmシングル時代のJ-POP(4)

 

第7位は、映画『就職戦線異状なし』の主題歌に起用され1991年6月10日にリリースされた槇原敬之の3枚目シングル「どんなときも。」

デビューアルバム『君が笑うとき君の胸が痛まないように』のアートワークを担当したのは信藤三雄。そのデザインをキープしつつ、横ジャケを映画のフィルムのように見せるジャケットがとてもオシャレ。せつなさが残るシーンや笑顔のシーンでも、まさに「どんなときも、僕が僕らしくあるために 「好きなものは好き!」と言える気持ち抱きしめてたい」という歌詞を思い出すことができる素晴らしいジャケットです。槇原敬之は、この曲のサビフレーズが頭に浮かんだ時『うーわ、だっさい』って思ったそうです。しかし寝ても起きてもずっとフレーズが頭の中で鳴り続け、曲を作らないと消えないんだと思いこの曲を完成。イントロから、背中を押してくれる優しいメロディのこの曲が世に出ることは必然だったのかもしれません。

 

 

第6位、中山美穂&WANDS「世界中の誰よりきっと」(売上枚数:183.3万枚 イントロ秒数:9秒)

 


8cmシングル時代のJ-POP(5)

 

第6位は、中山美穂主演のドラマ『誰かが彼女を愛してる』の主題歌に起用された1992年10月28日リリースのWANDSとのコラボレーションシングル「世界中の誰よりきっと」

中山美穂は90年代に入ると女優として話題のドラマに主演し、その作品が軒並み高視聴率を記録。演じた役のイメージにピッタリなドラマの主題歌を歌い、シングル売上では80年代のセールスを上回るヒット曲を数多く生み出しましたが、本人は「次はこういう歌を歌いたいとか思っていても、ドラマに合わせた主題歌を歌うことが多く、どうしてもそのストーリーに沿ったものになってしまった。どこかで自分の本当の気持ちを削りながら歌ってきた。それがまたヒットしてしまうと、また納得いかなくて…。ぜい沢な悩みですが」という気持ちで主題歌を歌っていたそうです。その中山美穂が全く白紙の思いで詞を書き、歌うことができたのがこの曲。はじめはバラードだった曲調を、ザ・ロネッツの「ビー・マイ・ベイビー」を彷彿とさせるドラムのリズムから8ビートで聴かせてくれるパーティーチューンへと変化したことも大成功。横ジャケで、キュートにはにかむ顔をセーターで隠す中山美穂の表情からもこの曲を楽しんでいることが読み取れます。

 

 

第5位、SPEED「White Love」(売上枚数:184.5万枚 イントロ秒数:7秒)
 

 

8cmシングル時代のJ-POP(6)

 

第5位は、メンバーも出演していた資生堂「ティセラ エンジェルドロップ」のCMソングに起用された1997年10月15日リリースのSPEED5枚目のシングル「White Love」

SPEEDは横ジャケシングルを多くリリースしているグループ。4枚目の「Wake Me Up!」を除くすべての8cmシングルが横ジャケ。第9位のtrf同様、メンバーが映っている写真の大きさに無理のない構図で均一感を持たせられることを活かした結果だと思います。SPEEDのシングル最大のヒットを記録した「White Love」ですが、横ジャケデザインとしては個人的にはちょっと「??」。7秒のイントロから、メロウな海外のR&Bを意識したサウンドとコーラスで「あなたの為に生きていきたい」と歌う、冬のラブソングをイメージするジャケとしてはちょっとファンシーすぎる気がしないでもない横ジャケです。

 

 

第4位、B'z「愛のままにわがままに僕は君だけを傷つけない」(売上枚数:202.1万枚 イントロ秒数:40秒)
 

 

8cmシングル時代のJ-POP(7)

 

第4位は、日本テレビ開局40周年記念ドラマ『西遊記』の主題歌に起用された1993年3月17日リリースのB'z 12枚目のシングル「愛のままにわがままに僕は君だけを傷つけない」

B'zとして初の横ジャケでリリースされたシングル。お二人のポーズもビジュアルもカッコイイ!背景のデザインはタイアップのドラマ『西遊記』に合わせてか古代中国の雰囲気を感じる、ちょっと怪しげなオリエンタル風。サウンドもイントロからその雰囲気を感じるアレンジで、40秒で幻想的な雰囲気に連れて行ってくれます。back numberが2013年にリリースしたシングル「高嶺の花子さん」がこの曲とイントロの雰囲気に似ていると言わますが、どちらの曲もイントロ秒数は40秒と同じ。リスペクトを込めて近いアレンジのイントロを作られたのではないかと。(いつかご本人に聞いてみたい!)長いタイトルが取り上げられることが多い曲ですが、横ジャケもイントロもサウンドも、これぞB‘z!という個性をしっかと味わうことができる曲です。



さあ、いよいよTOP3です!カウントダウン!!!
 

 

第3位、H Jungle With t「WOW WAR TONIGHT~時には起こせよムーヴメント~」(売上枚数:213.5万枚 イントロ秒数:13秒)


 

8cmシングル時代のJ-POP(8)

 

第3位は、お笑い芸人ダウンタウンの浜田雅功と小室哲哉による音楽ユニット、H Jungle with t。1995年3月15日リリースのシングル「WOW WAR TONIGHT~時には起こせよムーヴメント~」

1994年にバラエティ番組『ダウンタウンのごっつええ感じ』にレギュラー出演していた篠原涼子の「恋しさと せつなさと 心強さと」がダブルミリオンを記録し『HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP』に小室哲哉がゲスト出演した際、冗談で浜田雅功が「小室さんが曲を出したら売れるんやから、僕にも曲を作ってくださいよ」と言ったことがきっかけでリリースが決定したこの曲のジャケットは、レコ―ディング中の二人とtrfのDJ KOOのオフショットのような写真。「ノリ」でリリースされた雰囲気が伝わる横ジャケですが、歌詞は「どんな時代背景でも、誰の心境にも寄り添って『何かを起こしたい』という気持ちを奮い立たせる普遍的な歌にする」というコンセプトで書かれた背中を押してくれる応援歌。
この歌詞が幅広い層にハマり、213.5万枚のダブルミリオンを記録。90年代、音楽とお笑いの頂点に君臨していた二人のコラボユニットは、笑顔で映る横ジャケの楽しい雰囲気をそのまま楽曲に詰め込み本当にJ-POPにムーブメントを起こしました。

 

 

第2位、globe「DEPARTURES」(売上枚数:228.8万枚 イントロ秒数:0秒)
 

 

8cmシングル時代のJ-POP(9)

 

第2位は、JR東日本「JR SKI SKI」キャンペーンソングに起用されたglobe 1996年1月1日元旦リリースの4枚目シングル「DEPARTURES」

JR東日本「JR SKI SKI」キャンペーンソングがGLAYに続いて2曲目のランクイン。globeは、デビュー曲の「Feel Like dance」から「Joy to the love (globe)」「SWEET PAIN」まで、3枚の8㎝シングルはメンバーが登場しないジャケットでしたが「DEPARTURES」で初めてメンバー全員が登場。アメリカのカリフォルニア州ロサンゼルスにあるアンバサダーホテルで撮影した物憂げな表情の3人が映る横ジャケは、儚く美しい。意外にも1996年のリリースタイミングでミュージックビデオは制作されず、20年後の2016年に制作。そのミュージックビデオで舞台となっているのも雪山。儚く美しい写真の横ジャケシングルは、20年の時が経っても降り積もる雪とあなたへの想いを聴き手に届けてくれる冬のバラードとして愛され続けています。

 

 

第1位、DREAMS COME TRUE「LOVE LOVE LOVE」(売上枚数:248.9万枚 イントロ秒数:23秒)


 

8cmシングル時代のJ-POP(10)

 

第1位は、ドラマ『愛していると言ってくれ』の主題歌に起用された1995年7月24日リリースのDREAMS COME TRUE 18枚目のシングル「LOVE LOVE LOVE」

この曲は、DREAMS COME TRUEのリーダーでベーシストの中村正人が、デビュー前に付き合っていた彼女からバレンタインデーにシャツをもらったお返しに、贈り物として作った「ホワイトデー」という曲がベースで、ドラマの音楽制作の依頼を受けた際に中村正人は、吉田美和に「主人公に付ける曲に「ホワイトデー」どうかな」と相談したところ、「…コレ主題歌だ」と反応。歌詞を書き換える形で制作。ラストの「LOVE LOVE 愛を叫ぼう 愛を呼ぼう」というフレーズは当初無かったのですが、物足りなさを感じていた中村が「美和ちゃん、何かのってこないかな」と相談し“降りてきた”フレーズを急きょレコーディングして新たに加え完成させた楽曲。
横ジャケは、篠山紀信が撮影した当時のメンバー3人が均一に映っている耽美な写真を起用。23秒のイントロで響く、バロック音楽の要素を取り入れたチェンバロの響きがとても美しいです。横ジャケシングル売上枚数ナンバーワンは、好きな人へ心を込めて贈った曲を多くの人に届く形へと進化させた歌詞と、その愛情が色濃く映し出されているイントロや横ジャケで彩った、いつまでも聴き続けたい不朽のラブソングでした。

 

ここまで読んでいただきありがとうございました。第2回目は「横ジャケ」という8㎝シングル特有の形に注目した、売上ランキングTOP10を紹介しました。
これからも「8cmシングルって音楽メディアがあったことを忘れないで」という気持ちではなく「8cmシングルって音楽メディアでこんな素敵な曲があったこと、知っていた方が面白いよ!」を伝えていきますので、次回もよろしくお願いします!

 

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Text&Photo:藤田太郎
※画像は全て著者私物