Special Session Report ~Buffalo DaughterのNEWプロジェクト~


1993年の結成以来、先鋭的かつフィジカルなオルタナティブサウンドをプレイし、国内外問わず高い評価を集め続けるロックバンド、Buffalo Daughter。

Beastie Boys主宰のレーベルGrand Royalからアルバムをリリースした数少ない日本人アーティストとしても知られる彼女たちが、このたび新たなスタイルで楽曲制作と合わせて“月刊バッファロー”と銘打ち、制作風景を配信していくことが明らかとなった。毎月、スタジオでライブレコーディングを行い、ときに応じてフィーチャリングゲストを迎え、ジャムセッションしていくというのだ。その初回となる4月末のレコーディングでは、ex暴力温泉芸者/Hair Stylisticsの中原昌也とのコラボが実現。キャリア25年となるBuffalo Daughterが新しい音を紡ぎ出すレコーディング現場の模様を、ST-ROBOスタジオからお届けしよう。

ヴィヴィッドな音楽の会話が、ノンストップで繰り広げられる空間

ST-ROBOスタジオ

シュガー吉永

大野由美子

松下敦

中原昌也

ライブレコーディングというと、つい張り詰めた緊張感といったものを想像しがちだが、シュガー吉永(g, vo)、大野由美子(b, vo, electronics)、松下敦(dr:ZAZEN BOYS)の3人に中原昌也が加わってのセッションは、それとは違う和やかな空気感の中で行われていた。中原は、モジュラーシンセを複雑につなぎ合わせ、エレクトロニックサウンド、ノイズ、サンプリング音を鳴らす。そこに、松下のパワフルなドラミング、大野のムーグサウンド、シュガーのキレの良いギターが重なり合って、セッションが繰り広げられていく。

https://www.instagram.com/p/BTWC5otjXtZ/
instagramに掲載された“月刊バッファロー”vol.1。トピックは「シンバルとオシレーター」

zAk

ひとりのプレイヤーのフレーズに、別のプレイヤーが呼応していく様子は、まさにヴィヴィッドな音楽の会話といった雰囲気だ。ときにスリリングでときに穏やかに、瞬間瞬間のフィーリングで次々と音で場面が展開していく。4人の放つ音をリアルタイムでミックスしていくのは、フィッシュマンズなどを手がけたことでも知られるエンジニアのzAk。彼の手が加わることで、楽曲はさらに有機的な音楽として高められていった。ひとつの曲が終わると、また誰かが音を出し、次の曲が生まれていく。数時間の間に、絶妙なグルーヴ感、セッションの醍醐味を存分に味わうことができた。

そんなレコーディングの合間に、4人のインタビューを敢行。まずは、Buffalo Daughterがセッションでのライブレコーディングを行うきっかけから。


大野:前のアルバム『Konjac-tion』を出してから3年も経っているし、新しいことをやろうといろいろ考えていく中で、セッションで曲を作っていくのもいいんじゃないかと思ったんです。ムーグさんは今日もスタジオには来てなくて、まだ長期休暇中なんですけど。

Konjac-tion
バッファロー・ドーター

 

吉永:アルバムのレコーディングをしたかったけど、なかなかみんながまとまって録る時間ができなくて。じゃあ、月に1回ずつスタジオでセッションしていくっていうのは現実的だし面白いだろうなって思ったんです。“月刊バッファロー”って感じで、基本何も決めないで、そのときどきのみんなのバイヴスでやったものを、日記的に残そうか、というのがスタートでした。せっかくだから動画も撮ったりして。

 

今回、中原昌也をゲストにむかえてのコラボレーションによって、Buffalo Daughterの新たな姿が垣間見れたのは間違いない。

吉永:
今年の2月、DOMMUNEの村松くん(村松誉啓、マジアレ太カヒRAW:スマーフ男組、ADS)の追悼番組(http://www.dommune.com/reserve/2017/0228/)のときに、初めて中原くんと一緒に演奏したんです。それが楽しくて、第1弾のレコーディングゲストは中原くんしかいないなって、呼んだんです。

大野:これまで同じメンバーでずっとやってきて、ある程度できるものに予測がつくなっていうのは正直あったんです。去年の末に大阪のビルボードライブでASA-CHANGとやったり、LEO今井くんとコラボしたりして毎回面白かったし、じゃあ中原くんともセッションでレコーディングするのは面白そうだなと思いましたね。
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松下:実際セッションして、相当楽しかった。中原さん……こんなにいろんな音を頭の中で鳴らしてるんだなって。驚きました。

 


中原:いや~、僕はまだ戸惑ってます。どうしたら良いのか、オロオロしてます。いろんなバンドと一緒にライブではやってるけど、スタジオ入るのは滅多にないので……緊張してます!

大野:いや、してないでしょ(笑)。始まる前、がっつりお弁当食べてたし(笑)。

吉永:唐揚げとかメンチカツとかガツガツ食べてたじゃん(笑)!
 


長い付き合いのBuffalo Daughterと中原昌也だけに、休憩中はごくナチュラルに雑談を交えながらも、いざスタジオに入ると刺激的なセッションが繰り広げられる。そのあたりの切り替えを含め、何かテーマに沿って音の方向性を決めているのだろうか?

吉永:セッションするにあたって、もちろん最初はテーマ的なものを用意しようと思っていたんだけど、今日はなしでいいかなって。中原くんのアイディアがいっぱいあるので、こっちがインスパイアされて大変でした。

大野:そう。中原くんがいろんな音を出してくるから、こういうのが良いのかな? って、みんなで弾きだしたら止まらないって感じだったよね。

この日のレコーディングで使用した、それぞれの機材についても紹介してもらった。

大野:私は、プレシジョンベースと、ミニムーグのモデルDと、ミニムーグのボイジャーを使いました。比較すると、ボイジャーの方が最近の機材で、音が早くてキュッと詰まってる感じなんです。モデルDはニュワン~って感じで、すごく太い音が出る。音の密度が違うんですよね。この感じは、モデルDでしか出せないから、両方必要なんです。

手前:ミニムーグ・モデルD、奥:ミニムーグ・ボイジャー


吉永:ギターは、フェンダーのストラトキャスター57年モデルを使いました。あと、今日はないけど、ヤマハのCSって白いシンセも使ってますよ。あれ良いんです。


松下:ドラムセットは、ここのスタジオにあるスリンガーランドを使いました。スネアがすごく良いんです。あと、ヤマハのスネアもサブで使いましたね。足元のシークエンサーはノードドラムを鳴らしてます。
 


中原:いろいろありすぎるけど、ほとんどモジュラーシンセばっかりです。EMSも使って、一瞬だけムーグのマザー32を使いました。

ちなみに、シュガー吉永の足元には大量のエフェクターが並んでいるが、今後、新しい機材を導入し「足元周りがスッキリなくなる」予定だという。
 


吉永:フラクタル・オーディオってモンスターマシンがあって、エフェクター、アンプ、スピーカー、シミュレーターとか全部入ってるんですよ。一番有名なアーティストだと、メタリカが使ってますね。スタジアム系や、あとV系のミュージシャンもよく使ってるみたいだけど、自分ら周りで使ってる人はいないので、初めてのオルタナティブ・ミュージシャンとしてブレイクスルーしようと意気込んでます(笑)!

さて、今後も“月刊バッファロー”は様々なスタイルで続いていくという。最後に再び、中原昌也とのコラボが実現した際には、どんなものをやってみたいのかを聞いてみた。すると彼の口から想定外のアイディアが飛び出した。
 


中原:歌ものやりましょうよ! バリー・マニロウの「コパカパーナ」とロッド・スチュワートの「アイム・セクシー」が合体したような曲をやりたいです。カラオケで歌われるような曲を作りたいんですよね。僕が思いっきり歌い上げたいなぁ。
 


大野:え~~~! じゃあ、ラブソングとか、歌詞も書いてくれるんだ(笑)。

吉永:アハハハ。じゃあ次のコラボでは、是非、中原先生に恥ずかしい歌詞を堂々と歌い上げてもらいたいと思います。期待していてください!
 


後日談として。インタビューを行った翌月の“月刊バッファロー”第2弾のスタジオでは、ついにシュガー吉永の側にギターマルチプロセッサー「Fractal Audio Systems Axe-Fx II XL+」が導入されていた! 

「下にあるマーシャルのアンプとか、まだコツコツ設定を入力している段階だから本格始動とまではいかないんだけど。とにかく、私は毎回エフェクターの配置と調整にかなり時間を取られていたんだよね。早くライブで使えるようにしたい。どんな会場でもスピーディーに理想的な音を出せるようになるなんて、楽しみすぎます!!」

と、本人の意気込みはかなりのもの。キャリアを積んだアーティストでも、新しい楽器や機材の導入にはワクワクさせられるという至福の瞬間を垣間みることもできた。今後のBuffalo Daughterのギターサウンド、プレイがどのように進化していくのか……アルバムの完成、そしてその後のライブへの期待がますます高まる報告であった。

 

https://www.instagram.com/p/BUdWbc4je7f/
“月刊バッファロー”vol.2。吉永、大野、松下の3人でのセッションのテーマはUK。トピックは吉永による「cowbell in action!」​​​​​​​


【Buffalo Daughter’s connection】

フィッシュマンズ

ZAZEN BOYS

Metallica

 

【月刊バッファロー・ドーター】
第一弾の新録音源3曲はこちらから!
 

BD vs Hair Stylistics
https://soundcloud.com/buffalo-daughter/sets/monthly-buffalo-daughter-vol1-bd-vs-hair-stylistics/s-LdcOq

 

【オフィシャルサイト&SNS】
http://www.buffalodaughter.com/
https://twitter.com/buffalodaughter
https://www.facebook.com/BuffaloDaughterTokyo/

 

Photo:Great The Kabukicho
Text:土屋 恵介
Edit:仲田 舞衣