弾き語りがグングン上達する!! ボーカルレッスンノート VOL.1 歌う身体の基礎を作る! ウォーミングアップ(前編)【Go!Go! GUITAR プレイバック】


解説/石田匠

ボーカルレッスンノート VOL.1(1)
 

 僕がボーカルレッスンを初めて受けたのは18歳の時。広島から上京したての僕は若かったのもあったし、自分の歌に対してヘンなプライドもあって、ものの一回でやめてしまいました。典型的な若気の至りです(笑)。その後レッスンを受けることなく、幸運にもデビューができてたくさんのライブ、レコーディングをするように。ただ歌い続ければ続けるほど、ノドが痛くなるし、カラダも支障をきたしヘルニアなどで悩まされるようになっていきました。歌うことが苦痛に変わってしまっていました。
 僕は生まれつきハスキーな声で、変わった声だとよく人から言われます。それは声帯溝症(※)だからだと病院で知ることになります。ノドの痛みも受け入れて歌っていくしかないのか、いっそ歌うことをやめるべきかとも考えるようになりました。
 そんな中、ミュージシャンでボーカルトレーナーでもある古屋chibi恵子さんに出会いました。それまで高い音を力技で出すような歌い方をしていた僕に、「もっと気持ち良く歌えるはずだよ、まだまだ伸びしろはあるよ」と勇気づけていただきました。
 それ以来、自分なりに“いい”と思っていたやり方を一から見直すようになりました。いまもって完璧とは言えないかもしれませんが、日々気持ち良く歌うには? ということを考えています。その中で取り入れていることがひとつでも皆さんに良い効果が生まれるよう願っています。
(※声帯に溝ができることで声門閉鎖不全をきたし声がかすれる症状)

 

■正しい姿勢の作り方

 

 まずは正しい姿勢=気持ち良い姿勢で呼吸する方法を探していこうと思います。もちろんギターの弾き語りをする時にはこの姿勢のままではいられませんが、気持ち良い姿勢を知っているのとそうでないのとでは歌に大きく差が出ますよね。
 最初に骨盤を立てて、そこに頭を乗せていきます。僕は昔は猫背で肩に力が入っていたから、ノドを閉めたような声になってしまっていた。そういう人は非常に多いと思います。さらに頭のてっぺんから吊られている感覚も持てるといいですね。もちろん、腰や首や肩を回して体をほぐして肩の力を抜いておくこと。少しメンタルの話になるけれど、姿勢が悪い状態だと予期せぬこと(歌っている時に音程がずれる、リズムがずれる、ギターを間違える)が起きたときにパニックに陥りやすい。でも、正しい姿勢=気持ち良い姿勢でいると全体を見渡せて、落ち着いて対応できる気がします。

 

ボーカルレッスンノート VOL.1(2)

 

ボーカルレッスンノート VOL.1(3)

 

腹式呼吸のやり方

 

 よくお腹に息が入ってるかっていう確認をする時に、腰まわりに手を当てる人が多くいます。もっと上の胸のあばらまわりに手を当ててみましょう。そして一回息を吐き切る、しめるってことが大事です。
 歌は“呼吸の芸術”と言われるくらいなので、歌っている時に、どんなに速いメロディーの連続だったり、ロングトーンを歌っても、呼吸が安定している、息が浅くならないってことがとても大事だと思います。
 呼吸が浅い人、深い呼吸(気持ち良い呼吸)を知らない人は肩が上がって歌ってしまいがちで、これが一番良くない歌に繋がることにもなります。まず一番に、深い呼吸を心がけていきましょう。
 骨盤の上に頭までがちゃんと乗っているのを鏡で見て確かめて、胸のあばらが閉じたり開いたりするイメージを持って、息を吐いたり吸ったりする。最初はちょっとしか動かないと思うんだけれど、少しずつ可動域を広げていきましょう。
 僕も昔、腹式呼吸はお腹にだけ息を入れるものだと思って歌っていました。
 でも胸のあばらが閉じたり開いたりすると、お腹にも息は入るし、より深い呼吸ができるんですね。あばらが拡充すれば胸板も厚くなるし息もたくさん入る、これが気持ち良い姿勢で呼吸するということです。

 

ボーカルレッスンノート VOL.1(4)

 

■歌う時の息の使い方

 

 息を一定の圧力で吐き切ること、そして吸うときは一瞬で入れる。それが歌う時の鉄則です。まず、声を出す前に息だけで練習してみましょう。
 スタートは、まず息を吐き切ります。そして息を吸っていきます。慣れてきたら息を吸った時に一度止めてみましょう。そこからもう少し息を吸ってみます。そうやって息を吸える量を少しずつ増やしていきましょう。その時に肩が上がってしまわないように気をつけましょう。
 次に、いっぱい息を吸った状態で、「スー」っと前歯の裏に当てる感じで息を吐き続けます。一定の力で吐くことがポイントです。息を吐き切ったら、なるべく早く1回で息を吸ってみましょう。浅く吸うのではなくて、あばらを広げてその中に入れるというイメージです。
 吐き続ける時の圧力や時間は人それぞれだと思います。大事なのは息の圧力を変えても一定に吐き続けることです。なので圧力を弱くして一定に長く吐き続けるパターンや、圧力を最大にして一定に吐き続けるパターンの練習を両方やることをおすすめします。

 

 

ボーカルレッスンノート VOL.1(5)

 

 毎日歌う前にやってほしいウォーミングアップフレーズを紹介します。2小節でひとつのパターンになっていて、1小節目は「ソファミレド」と実音で歌い、2小節目は息だけを“スー”と吐きます。この時に大事なのはブレス(息を吸うタイミング)です。2小節目の最後、8分ウラで息を吸います(パターン1)。ブレスを決めることで俄然歌うことに近づいていきますし、呼吸をより意識していくことになります。
 慣れてきたら16分ウラで息を吸ってみましょう(パターン2)。いわゆるショートブレス(短い時間で息を吸う)ですね。
 この練習にはメトロノームを必ず使いましょう。まずはBPM85程度でいいと思います。弾き語りはやらなきゃいけないことがたくさんあります。ひとつ間違えても止まらないクセをつけるためにもメトロノームは必須です!

 

ボーカルレッスンノート VOL.1(6)

 

 このウォーミングアップフレーズにはいくつか段階があるのですが、今回はそのスタート地点として、1小節目の「ソファミレド」は歌わず、息の“スー”だけ吐いて行います。なので厳密には音程はなくて構いません。ブレスのタイミングは2小節目の最後のみ。息(音)は一定に出さなければいけないという意識づけができるだけで、相当いいトレーニングになるはず。このウォーミングアップを歌う前に10分間行うだけで、気持ち良く歌う姿勢をイメージできると思うのでオススメです。くれぐれもメトロノームを使うことをお忘れなく!

 

ボーカルレッスンノート VOL.1(7)

 

 


 

“声音人”石田匠が直接指導!!

音楽学校 メーザー・ハウス
※2020年3月 閉校

ボーカルレッスンノート VOL.1(8)
 

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■INFORMATION

PROFILE

石田匠

(いしだ・たくみ) 1973年生まれ・B型、広島県出身のシンガーソングライター。産まれた時からハスキーな泣き声に、両親が驚いたという。中学時代から80年代洋楽を入り口に、ロックを聴いて育つ。1998年、バンド『The Kaleidoscope』でメジャーデビュー。2004年、ササキオサム(MOON CHILD)とのユニット『Ricken’s』に参加。30代半ばになり自身のボーカルスタイルに限界を感じ、歌うことを一から見直すことになる。「気持ちよく歌うためには?」ということをいつも考えている。現在はソロアーティスト『石田匠』として活動中。同時にインストラクター、楽曲提供、コーラスなども行っている。www.kowanebito.jp

 

(Go!Go! GUITAR 2015年6月号に掲載した内容を再編集したものです)

 


 

Edit:溝口元海