Vol.3 1月1日リリースの短冊シングル【8cmシングル時代のJ-POP ~短冊CDが起こしたムーブメント~】


ミリオンセラーといわれる、売上枚数が100万枚を超えたCDが連発していた1990年代、シングルCDのほぼすべてが「8cmシングル」としてリリースされていました。今回スタートするこの連載では、今も8cmシングルを約4,500枚所有し、フジテレビ系列で放送されたクイズ番組『超逆境クイズバトル!! 99人の壁』のジャンル「90年代J-POP」でグランドスラムを達成した、イントロマエストロの藤田太郎が当時の時代背景や曲について、イントロなど様々な切り口で紹介していきます。
第3回目は、元日、1月1日にリリースされた8cmシングルを紹介していきます。どうぞ、よろしくお願いします。

1月1日リリースって昔からテンション上がりますよね!

 

年が明けた最初の日、初日の出を拝み、玄関の前に門松、お雑煮やおせち料理を食べて初詣に。おみくじ引いて、今年は良い年にしたいなあ、と、みんながお正月モードに浸る元日はレコード・CDショップもお休みなところが多いですが、そんな日をあえてリリース日にした楽曲があります。リリース後、ヒットを飛ばした曲も少なくないので覚えている人も多いと思います。

一番古いヒット曲だと、1969年1月1日リリースのピンキーとキラーズ「涙の季節」。それ以降も、石川さゆり「津軽海峡・冬景色」(1977年1月1日)、沢田研二「TOKIO」(1980年1月1日)、中森明菜「北ウイング」(1984年1月1日)、新田恵利「冬のオペラグラス」(1986年1月1日)、近藤真彦「愚か者」(1987年1月1日)などなど。
なぜ多いかの理由は2つ。一つは、1月1日はレコード・CDショップがお休みになるため、もっと早い日に商品がお店に並ぶこと。「フライングリリース」っていわれることもありますが、早いとクリスマス前にレコード・CDショップに曲が並び、年明け後もそのままキープという形がとれるのがメリットと考えてのこと。もう一つは、「1月1日リリース」ってなんかインパクトあるし、覚えやすし、忘れないから。実際、こうやって令和時代になって書いている記事で取り上げているわけで。ということで、今回は1月1日にリリースされた8cmシングルを紹介していきます。まずはこの2曲から!

 

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和久井映見「マイ・ロンリィ・グッバイ・クラブ」(発売日:1990年1月1日 イントロ秒数:28秒)
CoCo「Live Version」(発売日:1991年1月1日 イントロ秒数:9秒)

 

1曲目に紹介するのは、和久井映見のデビュー曲「マイ・ロンリィ・グッバイ・クラブ」。作詞を手掛けた康珍化と作曲を手掛けた亀井登志夫が組んでいたバンド、トラストが「グッドバイクラブ」というタイトルでリリースした曲のカバーです。失恋をクールに歌った歌詞や、間奏で入るサックスの音など、全体的に夜を感じるアーバンな雰囲気のナンバー。
編曲を担当したのは、Winkの「Sexy Music」などを手掛けた門倉聡。Winkも和久井映見も同じレコード会社ポリスターからリリース。1年前の89年に「淋しい熱帯魚」がレコード大賞を受賞したポリスターがWinkの次にヒットを作る、という意気込みがサウンドからも1月1日リリースというところからも伝わってきます。残念ながらこの曲はヒットと言えない結果でしたが、今聴いても色褪せない、語り継がれる名曲となりました。和久井映見は、この曲のリリースから2年後の1992年に映画『就職戦線異状なし』と『息子』の出演で、日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞。役者として大成功を収めることになります。

「Live Version」は、フジテレビのテレビ番組『パラダイスGoGo!!』内の乙女塾から誕生した女性アイドルグループでCoCoの5枚目シングル。89年リリースのデビューシングル「EQUALロマンス」が11.9万枚のヒット、その後「はんぶん不思議」、「夏の友達」、「ささやかな誘惑」も安定した売上をキープした流れで「Live Version」を1991年1月1日リリース。売上枚数11.8万を記録しました。アメリカで流行していたハウスミュージックに呼応する形で日本でもハウスDJが登場していた時代に、そのサウンドを上手く取り入れイントロから四つ打ちに跳ねるピアノのメロディがクールに響く、ダンサブルなナンバーは今なおフロアでかけてもアガル1曲です。
 

 

8cmシングル時代のJ-POP(2)

 

THE 虎舞竜「ロード-第2章-」(発売日:1994年1月1日 イントロ秒数:17秒)
THE 虎舞竜「ロード-第3章-」(発売日:1995年1月1日 イントロ秒数:22秒)

 

高橋ジョージがボーカルを務めるロックバンド、THE 虎舞竜がファンから届いた手紙をもとに恋人を突然の交通事故で失った男性の哀しみを歌った曲「ロード」。有線放送で話題となり、シングルチャートでもロングヒットし199万枚のヒットを記録。その後、シリーズものとして5章までが8㎝シングルとしてリリースされ、2021年現在で第15章まで制作されています。第1章のリリースは1993年1月21日でしたが、第2章、第3章は2年連続で1月1日リリース。第2章がリリースされることが発表された当時「えっ!?続きがあるの!?」と、かなりの人が感じていましたが売上枚数は59万枚。第3章も、リリースから3日後の1995年1月4日に、高橋ジョージが内館牧子脚本の新春ドラマ『転職ロックンロール』に主演するなどメディアでの活発なPR活動を展開し、売上枚数31.8万を記録。シリーズのヒットロードをつなげる結果となりました。
1995年1月1日は「ロード-第3章-」がリリースされた以外にもヒット曲が多く誕生した日でした。次は1995年1月1日リリースの別の2曲を紹介します。
 

 

8cmシングル時代のJ-POP(3)

 

ASKA「晴天を誉めるなら夕暮れを待て」(発売日:1995年1月1日 イントロ秒数:22秒)
小沢健二「カローラIIにのって」(発売日:1995年1月1日 イントロ秒数:12秒)

 

1995年1月16日付のシングルチャートは熱かった!TOP10に、1995年1月1日リリース曲が4曲ランクインしたのです。8位に、先ほど紹介したTHE 虎舞竜の「ロード-第3章-」、4位に小沢健二の「カローラIIにのって」、2位に1つ前の横ジャケ8㎝シングルの記事で紹介したtrfの「CRAZY GONNA CRAZY」そして、それらのライバルを振り切り1位を獲得したのは、ASKA「晴天を誉めるなら夕暮れを待て」。1月1日リリース曲史上、最も熱い争いを制したのは、CHAGE&ASKAとして90年代前半に数多くのヒット曲を生み出してきたASKAの、日が昇ってくるような神々しいイントロから颯爽と風を切るようなサウンドアレンジが展開していくロックナンバー。ものごとは終わってみるまで分からないものだから、最後まで油断してはならないという意味の諺「晴天を誉めるには日没を待て」から取ったタイトルも、新しい年を迎える1月1日リリースにピッタリでした。

「カローラIIにのって」は、インディー・ポップバンド、フリッパーズ・ギター解散後1993年にシングル「天気読み」でソロデビューし『渋谷系の王子様』と称されていた小沢健二がタイトルにも登場するトヨタの「カローラII」のCMソングを歌った曲。当初は、全国の販売店向けに5,000枚をプレスしたのみで、リリースする予定は無かったのですが、CMが話題を呼び1995年1月1日にリリース。作詞は、のちに「だんご3兄弟」も手掛ける、CMクリエイターの佐藤雅彦。作曲も小沢健二ではない別の方が担当した曲ですが、イントロからボサノヴァ調のゆったりのしたサウンドとゆるい日常を描いたCMが絶妙にマッチし小沢健二のシングルとして最大の82万枚のヒットを記録しました。
ラストに紹介するのは、当時のJ-POP界、演歌界の真ん中にいたこの2枚!


 

8cmシングル時代のJ-POP(4)

 

TK PRESENTSこねっと「YOU ARE THE ONE」(発売日:1997年1月1日 イントロ秒数:30秒)
川中美幸「二輪草」(発売日:1998年1月1日 イントロ秒数:24秒)


「YOU ARE THE ONE」は、小室哲哉が学校のマルチメディア環境整備を支援するプログラムの一環としてこの曲で得た収益金をすべて寄付する、という名目でリリースされたチャリティソング。プロデュースや楽曲の作詞・作曲を手掛けたアーティスト達に賛同を求め安室奈美恵、華原朋美、globe、trf、ダウンタウンの浜田雅功、hitomi、dos、観月ありさ、内田有紀など、小室ファミリーが一堂に集結。イントロから前へ進んでいく雰囲気を感じる凛としたサウンドが響き「未来」という言葉をキーワードにした歌詞を順番にリレーで歌っていくこの曲は、1997年1月1日リリース曲。小室哲哉は、1995年1月1日にtrfの「CRAZY GONNA CRAZY」、1996年1月1日にglobe「DEPARTURES」と、プロデュースした曲を2年連続で元旦リリース、3年連続となるタイミングでこの曲をリリースしたのは過去2年の経験を活かした実績を元に「勝ち」パターンとわかった上でだったと思います。結果、売上枚数122万枚を記録。小室哲哉は、3年連続、1月1日リリース曲でミリオンヒットを生み出しました。

「二輪草」は、演歌歌手の川中美幸が1980年にリリースし68万枚のヒットを記録した「ふたり酒」の平成版として1998年1月1日にリリースしたシングル。「♪ふたりは二輪草~」と歌うキャッチーなサビを満面の笑みで歌うシーンが話題となり、この年の日本有線大賞で最多リクエスト曲賞を受賞。1998年は、宇多田ヒカル、椎名林檎、aiko、浜崎あゆみ、MISIAと新しいタイプの女性シンガーがデビューした豊作の年でしたが、演歌ではベテランの川中美幸が1月1日にリリースした曲で話題を席捲していた年でした。

ここまで読んでいただきありがとうございました。第3回目は1月1日リリースにフォーカスし曲を紹介しました。これからも「8cmシングルって音楽メディアがあったことを忘れないで」という気持ちではなく、「8cmシングルって音楽メディアでこんな素敵な曲があったこと、知っていた方が面白いよ!」を伝えていきますので、次回以降もよろしくお願いします!

 

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Text&Photo:藤田太郎
※画像は全て著者私物