Vol.4 1990年~92年発売のコラボレーション・シングル【8cmシングル時代のJ-POP ~短冊CDが起こしたムーブメント~】


ミリオンセラーといわれる、売上枚数が100万枚を超えたCDが連発していた1990年代、シングルCDのほぼすべてが「8cmシングル」としてリリースされていました。今回スタートするこの連載では、今も8cmシングルを約4,500枚所有し、フジテレビ系列で放送されたクイズ番組『超逆境クイズバトル!! 99人の壁』のジャンル「90年代J-POP」でグランドスラムを達成した、イントロマエストロの藤田太郎が当時の時代背景や曲について、イントロなど様々な切り口で紹介していきます。
第4回目は、複数ミュージシャンのコラボレーションでリリースされた8cmシングル。デュエットやスプリットシングルも含みます。今回は1990年から92年にリリースされた曲に絞って紹介していきます。この3年間だけでも魅力的な楽曲が満載です!よろしくお願いします。

一点モノの化学反応が楽しい!

 

コラボレーションとは「共同制作」「協力する」という意味の言葉。別のアーティスト同士が一緒に制作することで、ソロやバンド単体ではなかなか聴くことができない新しいサウンドを生み出すことが多いです。
90年代以前には、資生堂の1982春のキャンペーンテーマソングに起用された、忌野清志郎+坂本龍一の「い・け・な・いルージュマジック」や、JAL'84 沖縄キャンペーンソングに起用された石川優子とチャゲのデュエットソング「ふたりの愛ランド」、いまだにCD化されていない、松任谷由実とオフコースの小田和正、チューリップの財津和夫がリリースした「今だから」、井上陽水と安全地帯(玉置浩二)のデュエットシングル「夏の終りのハーモニー」など、豪華なコラボシングルのリリースがありました。90年代に入ってからはその数は大幅に増え、ミリオンヒットを記録する曲も。しっかりと紹介するには、1回では無理だと思ったので、発売年で区切って紹介していきます。

まず、第一弾として今回は1990年から92年にリリースされたコラボレーション・シングルを紹介していきます。いきましょう!まずはこの2枚から!

 

8cmシングル時代のJ-POP(1)


渡辺美里・佐野元春「Home Planet - 地球こそ私の家」(発売日:1990年8月22日 イントロ秒数:53秒)
TMN「RHYTHM RED BEAT BLACK (Version 2.0)」(発売日:1991年2月1日 イントロ秒数:1分52秒)
電気GROOVE「RHYTHM RED BEAT BLACK (Version 300000000000)」(発売日:1991年2月1日 イントロ秒数:27秒)


1枚目に紹介するのは、レコード会社EPICソニーの先輩後輩である佐野元春と渡辺美里がリリースしたシングル「Home Planet - 地球こそ私の家」。
TBSがソビエト連邦宇宙総局と宇宙飛行士搭乗に関する協定を締結し、特派員として記者の秋山豊寛がジャーナリストとして初の宇宙飛行士となり、ソユーズTM-11に搭乗した一連の流れをテレビとラジオで特別番組として放送した、TBS「宇宙プロジェクト」トータルテーマソングに起用された曲。演奏は佐野のバックバンドであるTHE HEARTLANDが担当。53秒の長いイントロから宇宙を感じる浮遊感のあるサウンド。主旋律を佐野元春が歌い、ハモリを渡辺美里が担当。お二人の声が美しいハーモニーを奏でるこの曲ですが、発売後あまりプロモーションは行わず売上枚数は9.5万枚。宇宙へ行くことが当時よりも身近になった今聴くと、よりリアリティのあるサウンドとして響く曲かもしれません。

「RHYTHM RED BEAT BLACK (Version 2.0)」は、TMN(当時はTM NETWORKではなくTMN名義)と、電気GROOVEの2アーティストが同じCDに曲を収録したスプリットシングル。1曲目はTMNが前年にリリースした「RHYTHM RED BEAT BLACK」に全編英詞を付け、イントロだけでも1分52秒、フルで9分25秒と長尺でリミックスした曲を収録し、2曲目は電気GROOVEが「RHYTHM RED BEAT BLACK」に過激なラップやレゲエアレンジを加えカバーした「RHYTHM RED BEAT BLACK (Version 300000000000)」(Version後の読みは「3なゆた」)を収録。
小室哲哉は、ニッポン放送のラジオ番組『オールナイトニッポン』のプロデューサーの紹介で電気GROOVEと出会い、曲のリミックスを依頼。その時のリミックスを“全てにおいてシニカルでカッコイイ!”と評したことがきっかけで、このシングルが誕生することに。
これまでは、別のアーティストが別々の音源を1枚に収めたスプリット・シングルという形でリリースされましたが、今作は、同じ楽曲のリミックスとカバーをしていて電気GROOVEがジャケ写でTMNのアルバム「CAROL」のパロディをしていることなどをみると、遊び心満載のコラボシングルと言っても良い、素晴らしい作品だと思います。

次の2枚ですが、先に断言させてください。90年代初期のコラボキングは近藤房之助である!
近藤房之助は、1990年にアニメ『ちびまる子ちゃん』のエンディングテーマ曲「おどるポンポコリン」がミリオンヒットを記録し、第32回日本レコード大賞ポップス・ロック部門を受賞したグループ、B.B.クィーンズのボーカル・ギターを担当。「♪タッタタラリラ~」のハスキーなシャウトでもおなじみですね。近藤房之助は、90年代初期今でも名曲と語り継がれる熱いコラボ曲をリリースしています。こちらです!
 

 

8cmシングル時代のJ-POP(2)

 

藤房之助&織田哲郎「BOMBER GIRL」(発売日:1992年1月21日 イントロ秒数:22秒)
宇徳敬子&近藤房之助「Good-by morning」(発売日:1992年11月21日 イントロ秒数:15秒)


「BOMBER GIRL」は「おどるポンポコリン」や、ZARDの「負けないで」、横ジャケシングルで紹介したコラボシングル「世界中の誰よりきっと」など、ビーイング系アーティストのヒット曲を量産した織田哲郎とのコラボ曲。国民的ヒットを手がけた二人が、ストレートにカッコいいものを一緒に作ろうと完成させた、イントロからソウルフルな熱いボーカルが響く、日本のポップス史上、一番エモーショナルなデュエットソングといっても過言ではないナンバーです!

「Good-by morning」は、B.B.クィーンズのコーラス担当だった宇徳敬子とデュエットした曲。オリジナルは1976年に女性シンガー・サンディーが歌っている。当時、宇徳敬子はB.Bクイーンズの他のコーラス担当村上遙、渡辺真美と3人でアイドルユニットMi-Keを結成し、1991年に「想い出の九十九里浜」でNHK紅白歌合戦にも出場している。新しい道へ旅立つ決意をする歌詞に、宇徳敬子がメインボーカルをとり、雲一つ無い青空のような透明感のある歌声を披露。そこに決意に関してまだ少し悩んでいるような、リアリティのある表現でシャウトする近藤房之助のコーラスが響くアコースティックサウンドのバラード。サウンドアプローチが全く違う2曲ですが、どちらの曲も令和になっても根強いファンが多い完成度の高いナンバーです。

 

8cmシングル時代のJ-POP(3)

 

堀内孝雄&桂銀淑「都会の天使たち」(発売日:1992年3月11日 イントロ秒数:21秒)

1988年から放送がスタートした藤田まこと主演のドラマ『はぐれ刑事純情派』。放送開始年からエンディング曲はプロデューサーの意向で堀内孝雄が担当していました。初代主題歌の「ガキの頃のように」から「冗談じゃねえ」「恋唄綴り」「さよならだけの人生に」とソロシングルが続き、シリーズ5年目にして初の桂銀淑とデュエットというコラボ曲としてリリースされたのが「都会の天使たち」。シングルチャートの最高位は33位でしたが、100位内に44週ランクインというロングヒットを続け、売上枚数26万枚を記録。優しく語りかけるようなスタイルから、サビで低音を遠くまで響かせる堀内孝雄の歌声と、囁くボーカルもハスキーな桂銀淑の歌声のコラボは、カラオケで挑戦したいと思わせるちょうど良い難易度と、うまく歌えたらバッチリ決まった感じを演出してくれる未練を残したまま終わるサウンドアレンジに彩られ、令和になった今も夜の街で歌い継がれています。
 

 

8cmシングル時代のJ-POP(4)

 

松任谷由実・カールスモーキー石井「愛のWAVE」(発売日:1992年11月9日 イントロ秒数:28秒)

「愛のWAVE」は、フジテレビのミュージックキャンペーンテーマソングとしてリリースされたシングル。ユーミンと、この年のドラマ『素顔のままで』主題歌に起用された「君がいるだけで」がダブルミリオンを記録した米米CLUBのボーカリスト、カールスモーキー石井がタッグを組んだスペシャルコラボ。
2枚のジャケット画像を紹介したのは、2人の所属レコード会社が東芝EMIとSONY RECORDSと異なり、左下にある会社ロゴが違います。カップリングの3曲目が、東芝EMI盤はボーカルがユーミンのみ、SONY RECORDS盤はボーカルがカールスモーキー石井のみと別れています。
作詞・作曲のクレジットも2人が並ぶこの曲は、イントロから、バブルの雰囲気を感じるキラキラした王道のJ-POPサウンド。当時の想い出がサウンドから滲み出ているこの曲を聴いて、華やかだったあの時代に戻りたい!と思うのは私だけではないと思います。



8cmシングル時代のJ-POP(5)

 

高野寛&田島貴男「Winter's Tale ~冬物語~」(発売日:1992年11月4日 イントロ秒数:0秒)
谷村新司と加山雄三「サライ」(発売日:1992年11月16日 イントロ秒数:25秒)

「Winter's Tale ~冬物語~」は、サッポロビール株式会社が製造・販売する冬季限定販売の生ビール『サッポロ冬物語』のCMソングに起用された曲。
1988年10月に発売開始された『サッポロ冬物語』は、3年後の1991年からTVコマーシャルの広告展開をスタート。夏川結衣が出演した初年度のCMに起用された曲は、槇原敬之「冬がはじまるよ」。この曲がヒットを記録し、その勢いのまま2年目の1992年に起用された「Winter's Tale ~冬物語~」は、90年に「虹の都へ」「ベステン ダンク」でスターダムにのし上がった高野寛と、1991年放送のドラマ『BANANA CHIPS LOVE』の主題歌に「月の裏で会いましょう」が起用されたORIGINAL LOVEのフロントマン、田島貴男という、コアな音楽ファンの認知度が絶大だった2人のコラボは、当時大きな話題になりました。ホーンセクションとギターがオシャレでファンキー響くポップサウンドは、冬の寒い季節を暖かい温もりを感じる雰囲気にしてくれる素晴らしいナンバーです。

ラストに紹介するのは、1992年に放送15回目を迎えた、日本テレビ『24時間テレビ』の番組内企画として、24時間以内に全国の視聴者から寄せられた愛のメッセージを基に、谷村新司が作詞をし加山雄三が作曲を手掛け誕生した「サライ」。
「サライ」はペルシア語で「宿(または家)」という意味。曲のテーマが「心のふるさと」だったことからこのタイトルに。放送から3か月後にリリースされたシングルはロングヒットを続け、13万枚のヒットを記録。現在も8cmシングルとして販売され続けています。
羽田健太郎がアレンジを手掛けたイントロのピアノからノスタルジーを感じられる名バラード。カラオケの最後にみんなで大熱唱したい曲として定着しているスタンダードナンバーです。


ここまで読んでいただきありがとうございました。第4回目は1990年から92年にリリースされたコラボシングルをを紹介しました。これからも「8cmシングルって音楽メディアがあったことを忘れないで」という気持ちではなく、「8cmシングルって音楽メディアでこんな素敵な曲があったこと、知っていた方が面白いよ!」を伝えていきますので、次回以降もよろしくお願いします!


 

←前の話へ          次の話へ→

 


 

Text&Photo:藤田太郎
※画像は全て著者私物